第一次世界大戦で、日本とドイツは敵同士でした。日本軍はドイツが租借する中国の青島(チンタオ)を攻略、約5千人のドイツ人俘虜を日本各地の俘虜収容所に送り込みました。
その内の約千人が、徳島県鳴門市の坂東俘虜収容所に送られました。
坂東俘虜収容所においては、他の収容所では考えられない、“自由”がありました。収容所の中にはサッカー場あり、ホッケー場あり、俘虜達手作りのヨットを浮かべる池もあり、時には外出して、監視付きではあれ海水浴も許されました。
俘虜達は劇団や楽団を作り、新聞の発行も許され、精肉店やパン屋を開き、町の人々がその店(収容所内)を訪れることによって交流が生まれ、俘虜達は町の人達にソーセージの作り方を、パンの作り方を伝授する。
戦争が終わり、彼らドイツ人達は国へ帰ります。彼らが残した言葉。
「世界のどこに、バンドーのような俘虜収容所があったか。世界のどこに、マツエ大佐のような収容所長がいたか」
所長の名前は松江豊寿、父親は会津若松市の警察官でした。
父・松江久平は、斗南帰りの元会津藩士、豊寿はその父の遺訓を受けて育ちました。
映画の中で描かれていた斗南の状況は、正直?なところもあり(笑)会津の悲劇をいささか扇情的に描き過ぎです。まるで斗南が“強制収容所”ででもあったかのような描き方で、ある種の対比として描いたのかもしれませんが、明らかに史実と異なる描写があるのはいただけない。
それはともかく、豊寿の俘虜に対する人道的配慮は、陸軍内部の不興を買い、豊寿はしばしば陸軍省に呼び出されます。その度、豊寿は言いました。
「彼らは犯罪者ではない。国のために戦った愛国者である。英雄にはそれ相応に接しなければならない」
陸軍省は坂東俘虜収容所の予算削減を決定、豊寿はそれに対抗するかのように、収容所近くの山を買い、俘虜達に木を伐らせてそれを売り、収容所予算の穴埋めに回します。なぜそこまでして、俘虜達の自由を守ろうとしたのか。
戊辰の戦に敗れ、敗者の憂き目を見た会津。会津人に対する“差別”的扱いは至る所でみられたようです。
それでも、会津武士達は誇りを失うことはなかった。恥じ入ることはなにもないのだから。
「卑怯なまねをしてはなりませぬ」「弱いものをいじめてはなりませぬ」
それは一言で言えば、それが【会津武士道】だから。
戦の勝敗は時の運。互いに誇りを持って、名誉を賭けて、国のために戦った。その武人同士なればこそ、相手の誇りを、名誉を重んじ、傷つけぬよう配慮しなければならぬ。
それが「武士の情け」というもの。
西郷隆盛は戊辰戦争に敗れた庄内藩に対し、その降伏調印式の際、庄内藩士達に帯刀を許し、逆に新政府軍の兵には一切の武器をもたせずに、警備にあたらせました。これは庄内藩を信頼しているというメッセージであり、庄内武士を虜囚ではなく、あくまで武士として扱ったということ。庄内藩士達はこれに甚く感激し、たちまち西郷の信奉者になったとか。
残念ながら会津藩士には、そのような丁重な扱いはありませんでした。
人は信頼されれば、それに応えようとするもの。武士道というのは、戦っているときもそうですが、寧ろ戦いが終わった後にこそ、その本領を発揮するものなのかも知れない。
信頼するためには、憎しみがあってはいけない。
しかし、憎しみを持たずに戦うのは、難しい。
それ故の
会津の悲劇…。
父より聞かされたであろう、会津の悲劇。その父より叩きこまれたであろう会津武士道。
豊寿はその武士道を貫いた。
会津武士道を貫いたのです。
ドイツ人俘虜により結成された楽団が、豊寿への、町の人々への感謝を込めて演奏したのが、ベートーヴェンの“第九”です。日本で“第九”が初めて演奏されたのがこの収容所だそうです。
以来、日本人にとって第九は、もっとも親しみあるクラシック曲となりました。
映画の中で演奏された第九ですが、素人の兵隊さん達の演奏にしては上手すぎる(笑)。ヘタでも感動は得られるのにね。「スィング・ガールズ」観てないのかよ(笑)
参考文献
『会津武士道』
中村彰彦著
PHP文庫
『会津のこころ』
中村彰彦著
PHP文庫
映画「バルトの楽園(がくえん)」
監督・出目昌伸
脚本・古田求
出演・松平健
阿部寛
高島礼子
大後寿々花
ブルーノ・ガンツ
東映株式会社
愛溢れる人間かあ、なりたいですねえ。
心温まる話をありがとうございました。
バルトの楽園、是非見てみたいです。
戦った相手の尊厳を認める。武士道のもっとも美しい部分だと思いますが、なかなか出来ないんですよね。戦争は殺し合いですから、やはり相手を憎んでしまう。そして戦いが終わった後も憎しみは続く。悲しいですね。
きっと、感じているのですね。びっくり(@@)の人がで、お陰様で続いてるのですね。
お疲れ様です。ありがとう御座います。
臭かった剣スイングするばかりじゃ、迷惑になっちゃうから気をつけます!。朝から失礼しました(^_^)☆
ドイツもこいつもどうにもブルドッグ、ワオ♪
…わけわかんねー(笑)