日本の現代の芸能を語る上で外せないのが、日本独自の「アイドル文化」です。この独自の文化は日本の芸能事務所のスタイルあってこそ生まれたものといっていい。
海のものとも山のものともわからない子供たち、少年少女たちをゼロからレッスンし、スターへと育てていく。前回の記事で紹介したようなすべての権能を一つの事務所が有しているからこそできたこと。日本的な芸能事務所の形態なしには、このような文化は生まれ得なかった。
日本的な芸能事務所のスタイルがなければ、ももクロは生まれ得なかったわけで、そういう意味では日本の事務所様様ではあるわけですが、
しかし一方では、所属タレントに対する支配力が巨大化し、ジャニーズ事務所や吉本興業のような問題を引き起こす元となっているのも事実。
いずれにしろ、今は変革の過渡期が来ていると思う。一つの参考として、ハリウッドスタイルを学んでみるのもいいかもしれませんね。
では、簡単に
【エージェント】
長期的な視点からタレントのキャリア設定を考慮しつつ、オーディションの情報を収集し、出演契約のギャラの交渉をタレントの代理人として行う。
【マネージャー】
プロデューサーやスタジオとの連絡係であり、タレントが仕事を続けていく上で必要なことを忠告するなど、タレントの個人的な支援者のような役割。ちなみにタレントの身の周りの世話などの雑用を行うのは、マネージャーではなくアシスタント。
【バブリシスト】
タレントの広報担当者。取材時のタレントの発言をコントロールし、タレントの注目度が高まるようメディアに求める仕事を行う。
アメリカでタレント活動をするにはまず、エージェントと契約しなければなりません。新人は小さい規模の仕事を扱うエージェントとまず契約し、仕事の幅が広がってくる、大きな仕事がくるようになるにつれて、大きな仕事を扱えるエージェントへと移っていきます。その過程で、気に入らないエージェント、思うような仕事を持ってこないエージェントとは息契約解除して、他のエージェントに移籍することは全くの自由です。
このエージェントは日本の芸能事務所とは全く異なっています。日本ではタレントは「所有物」ですが、アメリカのエージェントにとってタレントは、先述したように「お客様」。主体はあくまでタレントの側にある。
また、ハリウッドのあるカリフォルニアの州法には、タレントの権利を守るために特化した法律が存在します。
タレント・エージェンシー法と呼ばれるこの法律は、非倫理的なビジネスマンからタレントを擁護するために制定された法律で、例えばエージェントになるためのライセンス制度を設け、ライセンスを持たないものはエージェントの仕事ができない。しかもこのライセンスは毎年の更新が義務づけられている、かなり厳しいものになっています。
エージェントは「善い道徳人」であることが常に求められます。これはタレントとの間に不公正な契約を結ぶことを防ぐという目的があるようです。例えば新人タレントと契約する場合など、まだ若くて世間知らずで芸能界に憧れる若者など、誑かそうと思えば簡単に誑かせるわけです。そうして事務所に有利で不公正な契約を結ばせ、タレントをがんじがらめにする。日本の芸能事務所がよくやるパターンですね。
ハリウッドではこうしたことが起こらないように、法律という「第三者」の介入により、タレントの権利や活動が守られているんです。
日本とはエライ違いですね。
こうした法律がありますから、日本の吉本興業みたいに「ギャラの元手が明かされない」だとか「契約書がない」なんてことはあり得ないわけですね。
アメリカの場合、100年近くもかけて権利を勝ち取るための戦いを続けてきたという経緯があります。ここまで整備させるまでには実に長い年月がかかっています。だから日本に於いても、一朝一夕に変えるなんてことは不可能。時間はかかるでしょう。
それでも、時代は変革の時を迎えています。芸能界も変わらなければ、未来はないと思うべき。
個人事業主としての自覚をしっかりと持ち、自分たちは「モノ」じゃない、「人間」だ!と声をあげること。
まずはユニオン、組合を、それも芸能界全体をカヴァーできるような、大きな組合を立ち上げること、ですが、
さあて、出来ます事やら……。
参考文献
『芸能人はなぜ干されるのか 芸能界独占禁止法違反』
星野陽平著 鹿砦社