「橋爪」じゃないですよ、「橋本」ですからね。
この方の演技の特徴はなんといっても、その「顔」の動きです。大げさといって良いような表情にセリフ回し、でもこれがこの方の「味」となっていて、全然臭さを感じない。むしろ面白いんですね。
情に篤く人の好い頑固者、本人はいたって真面目なのだけれど、どこか笑いを誘うコミカルさがある、そういう役をやらせたら抜群にハマる方でしたね。
また目力のある方でしたから、悪役も演じたし、軍人とかの役も多かったんじゃないかな。
1977年公開の映画『八つ墓村』では、八人の落ち武者を騙し討ちにする村の首謀者で、後々落ち武者の祟りで気が狂い、自分で自分の首を斬り飛ばすという怖い役を、お得意の「顔芸」で強烈な狂いっぷりをみせてくれました。
1984年版『ゴジラ』では、自衛隊の超兵器スーパーXのパイロット役で出演。ゴジラを睨みつけるその目が凄かった。
この方が演じた役の中で私が特に好きなのは、テレビ時代劇『同心部屋御用帳 江戸の旋風(かぜ)』で、加山雄三演じる主人公、南町奉行所同心・千秋城乃介に仕える岡っ引、勘八です。
通称「勘弁の勘八」。威勢は良いが慌て者で、すぐに頭に血が上る。本人はいたって真面目だが笑いを誘うコミカルさのある役で、口癖は「勘弁ならねぇ!」。
まさに橋本さんのためにあるような役でした。個人的には橋本さん最大の当たり役だったんじゃないかと思います。
『同心部屋御用帳 江戸の旋風(かぜ)』シリーズは、刑事ドラマのスタイルを時代劇に取り込んだ作品で、難事件に挑む刑事(同心)たちの活躍に重厚な人間ドラマが絡み合う、非常にレベルの高いドラマです。
出演は加山雄三、橋本功他、小林桂樹。近藤洋介。津坂まさあき(現・秋野大作)。露口茂など。
露口さんなんか、『太陽にほえろ!』の山さんがそのままちょんまげをつけたような役柄で、静かに確実に事件の裏側に迫っていく。まさに時代劇版山さん。カッコイイですよ~。
『同心部屋御用帳 江戸の旋風(かぜ)』シリーズは現在、CS時代劇専門チャンネルにて絶賛放送中!
橋本功さんは2000年、食道がんのため58歳の若さで逝去されました。まるで勘八のように猛然と駆け抜けていってしまった。
でも、きっと短くも密度の高い役者人生であっただろうと思います。
本当に希少価値の高い、名バイプレーヤーでした。大好きでした。
沢山の思い出を、ありがとうございました。
『同心部屋御用帳 江戸の旋風(かぜ)』OPテーマ。時代劇というより刑事ドラマのような曲ですね。