風の向くまま薫るまま

その日その時、感じたままに。

橋本功

2018-08-31 05:16:53 | 名バイプレーヤー












「橋爪」じゃないですよ、「橋本」ですからね。



この方の演技の特徴はなんといっても、その「顔」の動きです。大げさといって良いような表情にセリフ回し、でもこれがこの方の「味」となっていて、全然臭さを感じない。むしろ面白いんですね。


情に篤く人の好い頑固者、本人はいたって真面目なのだけれど、どこか笑いを誘うコミカルさがある、そういう役をやらせたら抜群にハマる方でしたね。

また目力のある方でしたから、悪役も演じたし、軍人とかの役も多かったんじゃないかな。




1977年公開の映画『八つ墓村』では、八人の落ち武者を騙し討ちにする村の首謀者で、後々落ち武者の祟りで気が狂い、自分で自分の首を斬り飛ばすという怖い役を、お得意の「顔芸」で強烈な狂いっぷりをみせてくれました。

1984年版『ゴジラ』では、自衛隊の超兵器スーパーXのパイロット役で出演。ゴジラを睨みつけるその目が凄かった。



この方が演じた役の中で私が特に好きなのは、テレビ時代劇『同心部屋御用帳 江戸の旋風(かぜ)』で、加山雄三演じる主人公、南町奉行所同心・千秋城乃介に仕える岡っ引、勘八です。


通称「勘弁の勘八」。威勢は良いが慌て者で、すぐに頭に血が上る。本人はいたって真面目だが笑いを誘うコミカルさのある役で、口癖は「勘弁ならねぇ!」。

まさに橋本さんのためにあるような役でした。個人的には橋本さん最大の当たり役だったんじゃないかと思います。



『同心部屋御用帳 江戸の旋風(かぜ)』シリーズは、刑事ドラマのスタイルを時代劇に取り込んだ作品で、難事件に挑む刑事(同心)たちの活躍に重厚な人間ドラマが絡み合う、非常にレベルの高いドラマです。

出演は加山雄三、橋本功他、小林桂樹。近藤洋介。津坂まさあき(現・秋野大作)。露口茂など。

露口さんなんか、『太陽にほえろ!』の山さんがそのままちょんまげをつけたような役柄で、静かに確実に事件の裏側に迫っていく。まさに時代劇版山さん。カッコイイですよ~。


『同心部屋御用帳 江戸の旋風(かぜ)』シリーズは現在、CS時代劇専門チャンネルにて絶賛放送中!





橋本功さんは2000年、食道がんのため58歳の若さで逝去されました。まるで勘八のように猛然と駆け抜けていってしまった。


でも、きっと短くも密度の高い役者人生であっただろうと思います。


本当に希少価値の高い、名バイプレーヤーでした。大好きでした。


沢山の思い出を、ありがとうございました。






『同心部屋御用帳 江戸の旋風(かぜ)』OPテーマ。時代劇というより刑事ドラマのような曲ですね。
 

桜木健一

2018-08-30 04:47:29 | 名バイプレーヤー










私が子供の頃の「青春スター」といえば、森田健作さんと、こちら桜木健一さんでした。


『柔道一直線』とか見てましたね~。この番組に触発されて柔道を始めたという子供たちも多かった。オリンピック金メダリスト、斎藤仁選手なども、その御一人だそうな。

あと『刑事くん』とかね。30分番組の刑事ドラマという、ちょっと変わった番組でしたね。とにかく一時期は大変人気のあったスターで、ちょっと天狗になっていた時期もあったようですが、その後イメージチェンジが上手くできずに、30代半ばくらいから苦しい時期が続いたといいます。

その後主な活動の場を舞台に転じ、80年代から90年代頃は、時代劇のチンピラ役で度々お見かけするようになってましたね。

『鬼平犯科帳』の「逢い引き」というエピソードで、人の弱みに付け込んで金をせびるこすっからいチンピラ役で出ていて、最後には刺されて殺されてしまう役なのですが、この役を実に楽し気に伸び伸びと演じていて、青春スターの頃より面白みを感じたものです。



バイプレーヤーに転じてからの方がむしろ生き生きしている。そういうことってあるんですよね。



近年でも様々なドラマや映画に出演されていて、御活躍の御様子。御年70歳だそうですが、流石元青春スター。まだまだお若いです。


これからも末永いご活躍を期待します。頑張って!






『柔道一直線』主人公・一条直也(桜木健一)

出来なかったこと 知らなかったこと 見えなかったこと わからなかったこと

2018-08-29 04:09:36 | 有安杏果





出来なかったこと
知らなかったこと
見えなかったこと
わからなかったこと

ゆっくりと一つずつ
楽しみながら勉強してますっ
(有安杏果インスタグラムより)





人間って奴は、出来るつもりでも全然できなかったり、
知ってるつもりで全然知らなかったり、
見ているのに見えていなかったり、
わかってるつもりで全然わかってなかったりするものです。



そう、「知らない」ということを知らないし、「わかっていない」ということをわかっていないのだ。


そんなもんだ。


自分はなにも知らないのだ、ということを知ること。自分はなにもわかっていないのだ、ということをわかること。


だから、「謙虚」さって大事なんですな。私なんぞは耳が痛い……。







杏果がどういう意図でこの言葉を書いたのか、その真意はわからない。ただ杏果は、、我々が思っている以上に、本気で様々なことを学びたいと思い、学んでいる真っ最中なのでしょう。


自身の芸能生活の中で落さざるをえなかったもの、出来なかったこと、やり残したことを、学びつくそうとしている、やりつくそうとしている。

おそらく、ツイッターやインスタに挙げていること以外にも、学んでいることはたくさんあるに違いない。


どこかの誰かが、「べつにももクロ辞めなくたって出来んじゃね?」なんて無責任なことをのたまっとったけど、杏果がやりたいこと、学びたいことは、そんな生易しい範囲のものじゃないんだよ。



芸能界から距離を置いてでも、この子は多くの事を学びたかったのだ。


その「本当」の想いは、結局他人がうかがい知ることのできない領域なのだろう。だから、私は杏果の意志を、どこまでも尊重するよ。



思うとおりにやりなさい。行け!杏果、自分の道を。

YOSHIKIとももクロ

2018-08-28 05:37:15 | ももクロ











昨日、ニコニコチャンネルの『YOSHIKI CHANNEL』において、YOSHIKIとももクロによる対談及びコラボが実現しました!!


うむ、目出度い!!!



私は番組そのものは観れていないのですが、YOSHIKIとももクロの共演は、私の個人的な「夢」の一つでしたから、記事を読んでいるだけでも涙が出るくらいうれしいです。



いやあ、目出度い!素晴らしい!



YOSHIKIはももクロについてかなり詳しく調べていたようです。きっかけとなったのは、親友でもあるアメリカのロック・レジェンド、KISSとももクロがコラボしたことだったようです。その際、KISSのジーン・シモンズとポール・スタンレーがえらくテンションが上がっていたそうで、この人たちをこんなに楽しませるももクロって、どんな子たちなんだろう?と興味を持ったようです。



ももクロがどんなライヴを行ってきたかとか、相当詳しく知っていたようで、ももクロちゃんたちは恐縮することしきりだったようです。


なんか嬉しいですね。YOSHIKIがこんなにももクロに関心を持っていたなんて、あっ、また涙が出てきそうだ……。





さて、YOSHIKIとももクロがコラボした曲は、ももクロの曲から『白金の夜明け』X JAPANの曲から「紅」。


YOSHIKIはクラシック畑出身ですから譜面が読めます。そのYOSHIKIが『白金……』の譜面を初めて見た時、「これ間違ってるんじゃないのか!?」と思ったくらいに難しい譜面だったそうで、「誰だよ、この曲書いたのは?」と思ったそうです。

YOSHIKIが難しいと思うほどの曲を、ももクロは普段から歌っているんですねえ。改めてももクロって、凄い音楽的環境の下に置かれているんだなあと思いますね。ちなみに『白金……』の曲を書いたのは横山克という方です。世間的にはそんなに名前が知られていなくても、日本の音楽業界には、才能と実力を併せ持った人たちがひしめいているという事であり、そうした人たちがももクロに多数関わってくれている。

やっぱももクロって、スゲエや。






YOSHIKIが「難しい」といった曲。ももいろクローバーZ『白金の夜明け』





『紅』はYOSHIKIのピアノ一本によるバラードアレンジで、歌ったのは我らがリーダー、百田夏菜子。YOSHIKIは夏菜子のヴォーカルに「オーラが出ている」と大絶賛だったそうです。

上手いとか下手とかではない。オーラが出ているとはすなわち「気持ち」が乗っているという事。


歌は気持ち。歌の一番重要な要素を、夏菜子のヴォーカルに感じてくれたわけです。やはりね、本当に本当に、本当に分かる人には分かるんですよ、夏菜子の、ももクロの歌の魅力が。






X JAPAN『紅』これのバラードアレンジを夏菜子が歌ったんだね。






モノノフは自信を持っていい、誇りをもっていい。YOSHIKIがももクロの歌を認めてくれたって、俺たちの姫はスゲエんだぞって、


自慢していい。



嬉しいねえ、本当に嬉しい。イカン、また涙が……。




ももクロとX JAPANは似ているように、私には思える。デビュー当時はキワモノに近い扱いを受け、底辺から力技で這い上がってきた点もよく似ている。

そして、数多の試練を乗り越えてきたことも。



この二組の共演には絶対的に意味がある。YOSHIKIは番組のさいごに、「もしよろしければ曲を書きます」と宣言したそうな。この腰の低い、遜る感じで、あの優しい声で語ったんだろうね。YOSHIKIらしいや。


これにももクロちゃんたちはキャーキャー言って喜んだようです。本当に心から、実現を願うものです。


YOSHIKIの書いた曲をももクロが歌う。これは私の「夢」です。


この「夢」本当に叶うかもしれない。



ダメだ、もうホントに、涙が止まらない。






中村仲蔵の「型」

2018-08-27 07:07:46 | 時代劇






「仮名手本忠臣蔵」は文楽や歌舞伎の人気演目。御存じかとは思いますが、赤穂浪士による吉良邸討ち入りを題材としたお話です。


とはいえ、そのまま取り上げたのではなにかと都合が悪い。そこで時代設定は室町時代とされ、登場人物もその時代の人物と置き換えられます。


吉良上野介は「高師直」。浅野内匠頭は「塩谷判官」に置き換えられ、大石内蔵助は「大星由良之助」と微妙に名前を変えられます。



こうして名前を変えられら実在の人物や、架空の人物が入り乱れながら物語は進んで行くわけです。演目は全部で十一段あり非常に長い。



この長い忠臣蔵の第五段目に、斧定九郎という人物が登場します。



父親は斧九大夫、モデルとなったのは元赤穂藩家老の大野九郎兵衛です。大野九郎兵衛は赤穂藩お取り潰しに際し、とっとと出奔してしまったとされる人物で、忠臣蔵界隈では非常に評判が悪い。そんな人物の息子ということで、この斧定九郎も悪人として登場するわけです。



この定九郎、元々の原作では山賊に身を窶したという設定になっており、みすぼらしい蓑を身に着けて登場し、老人を殺して金を奪う。派手さも面白みもまるでない「つまらない」役とされ、観客もこの第五段目は弁当の時間とされ、誰も舞台など見ていなかったそうな。


この状況を大きく変えた人物がいます。


江戸時代の歌舞伎役者、初代中村仲蔵です。


当時仲蔵は人気急上昇中の役者でしたが、こんなつまらない役を割り振られたことで一時は意気消沈してしまいます。しかし心機一転、この度つまらない役を面白い、見ごたえのある役に変えてしまおうということで、



山賊という設定を浪人者に変え、みすぼらしい蓑を着ていた姿から、伸び放題の月代に黒縮緬の単物を身に着け、黒鞘の大小を腰に挿した浪人姿で登場したのです。袴をつけないその着物の裾からチラリと伺える素足が色気を醸しだし、これが観客の大評判を呼ぶことになるのです。


斧定九郎は老人を殺して金を奪うわけですが、その後、イノシシと間違えられて猟銃で撃たれて死んでしまう。撃たれたとき、定九郎は口から多量の血糊をたらし、その血糊が剥き出しの太ももの上に垂れて、白い太ももが真っ赤に染まるという、凄絶且つ色っぽい演出を施すことで、つまらない役を派手で見ごたえのある役に変えてしまった。





初代中村仲蔵の斧定九郎



以後の歌舞伎では、この「仲蔵型」が定番となり、今日まで伝わっています。悪のロマンといいますか、不良のカッコよさとでもいいましょうか、大衆はこういうものを求めたがる。この傾向は古今変わらないようです。


リアリティよりも「夢」。エンタメは「夢」


ですねえ。




この「仲蔵型」のスタイルは時代劇にも継承され、ヒーローのスタイルの一つとして定着していますね。中山安兵衛(後の堀部安兵衛)が裾をからげて素足丸出しで仇討の現場へ走るシーンなどはその典型だし、渡辺謙さんが20年程前に演じた『御家人斬九郎』などは、この斧定九郎を相当意識したスタイルのように思えます。同じ「九郎」だし(笑)。







『御家人斬九郎』の主人公・松平残九郎(渡辺謙)



時代劇というのはリアルさとファンタジー性とか絶妙に合体した「夢」を見せてくれる。工夫次第で「つまらない」話を面白く見ごたえのある作品に作り替えることも出来る。



時代劇にはまだまだ、可能性がある、そんな風に思いますねえ。



時代劇は日本の大切は伝統文化。伝統は時代とともに歩むもの。


現代という時代とともにある、新たな「時代劇」の展開を望むものです。

【祝!200本目記念!】IRON MAIDEN [The Trooper] 1983

2018-08-26 05:30:27 | 今日のメタル











「今日のメタル」カテゴリーが目出度く200本目を迎えたことを記念して、1本目と同じ、アイアン・メイデンの『ザ・トルーパー』を貼ってみました~♪名曲や!



全編ほぼ同じギター・リフとメロディの繰り返しですが、このシンプルさがめっちゃカッコイイ。でも演奏してみると結構難しいとか。


ファンの間でも支持者の多い人気曲。私自身、メイデン曲のなかでは一番といっていいくらいに大好きな曲です。



祝200本。これからも「今日のメタル」カテゴリーを



よろしくね。





メイデン最高!!

ドラマ2題

2018-08-25 05:37:27 | エンタメ総合





ラインドラマ『ミライさん』予告編



まずはラインドラマって何?って感じです。


私、ラインとかやらないものですから。ドラマとか流せるの?よくわからん。




まあ、とにかく、のんちゃんとしては約4年ぶりの本格的な女優の仕事ということで、まずは目出度い!


いままでにないくらい「クズ」な役だったそうで(笑)、相当楽しんで演じられたようです。

良かったね。遂に女優復帰だ。これを足掛かりに、もっと大きな現場へ出て行けたらいいね。


焦らず、着実に、一歩づつ、前へ進もう。



いやあ、目出度い。実に目出度い。



9月から配信開始だそうな。私としては円盤化を待つのみ、だね(笑)、だってラインとか



わかんないんだもーん!









24時間テレビスペシャルドラマ『ヒーローを作った男 石ノ森章太郎物語』




まずは、中島健人って誰?って感じです。


キスマイ?関ジャニ∞じゃないの?よくわからん。なにせアイドルには詳しくないもので……ももクロ以外は(笑)、


少なくともこの予告編を観る限り、石ノ森先生を演じるにしては、


カッコよすぎ!!


申し訳ないですが、石ノ森先生はこんなにカッコよくない!明らかなキャスティングミス、うーむ、困った。


ちなみに赤塚不二夫先生を演じるのは林遣都くんだそうな。これも違うだろ!?



とりあえずジャニーズとイケメンを出しときゃ視聴率は稼げるだろうという姑息な発想。いやだね、こういうの。



というわけで、最初からまったく期待できないドラマですが、それでもせっかく石ノ森先生を取り上げてくれたんだから、録画だけでもしておきましょうかね。


気が向いたら、暇なときにでも見てみましょう。



まあねえ、少しでも多くの人に見てもらうためには、人気者を使った方が手っ取り早いというのもわかるけど、石ノ森ファンとしては、こういうのは逆に嫌な感じもする。まあなんとも、複雑な気分ではありますね。



個人的には濱田岳くんとか、もっと相応しい役者はいるだろうに、と思っちゃいます。



放送は8月25日(土)夜9時ごろからだそうな。つまり本日です。興味がおありの方はどうぞ。







マンガの「王様」、石ノ森章太郎先生。




あっ、そうそう、マンガの「神様」手塚治虫先生も勿論登場されます。演じるのはバカリズムさん。

これは面白いかも。

追悼、菅井きん

2018-08-24 05:22:51 | 名バイプレーヤー







必殺仕置人(1973)より。
左から中村主水(藤田まこと)、中村りつ(白木真理)、中村せん(菅井きん)





「ムコ殿!」という声が聴こえてきそうです。


昭和元年(1926)生まれということですから、この必殺仕置人に初登場した時点ではまだ47歳だった!もっと齢がいっているイメージがあったのですが、意外とお若かった。若い頃から老け役を演じることも多く、実年齢よりも老けて見られることは多かったようです。

それがあってこその、この姑役だったのでしょう。



この『必殺仕置人』の頃は中村主水が主役ではなかったということもあり、「せん」と「りつ」(戦慄)のコンビは登場が少なかった。

それに、後の必殺シリーズでみられるようなコミカルな要素は一切なく、せんは本当に意地悪な、怖い怖い姑として描かれていました。


これがコミカルかつホームドラマ的要素をもったキャラクターとして毎回登場するようになるのは、シリーズ第6弾『必殺仕置屋稼業』(1975)からのこと。以来、中村主水とともに必殺シリーズ不動のレギュラーとして、お茶の間の人気を博していくことになるのです。



大変な人気を誇った役であり、菅井さんの役者としての地位やイメージを確立させた役柄といってよいのですが、あまりにこの「怖い姑」というイメージがつきすぎたため、娘さんの縁談に支障をきたすのではないかという危惧が生じ、菅井さんは役の降板を申し出ます。


制作サイドとしてはシリーズの継続を望んでおり、それには菅井さんの存在は不可欠でした。そこで一定の譲歩を示します。

その時丁度放送されていた『必殺からくり人』(中村主水が登場しない「非・主水シリーズ」)の放送を急遽延長することを決定、『必殺からくり人血風編』という「繋ぎ」の作品を制作し、その間に菅井さんの娘さんの縁談は目出度く決定。こうして菅井さんは、りつ役を降板することなく、必殺シリーズ第10弾『新・必殺仕置人』(1977)に出演。シリーズはさらに続くことになるのです。


それほどに、菅井さん演じるせんというキャラクターは、シリーズの命運を決するほどの重要なキャラでした。



必殺シリーズというのは、金ずくで人を殺す「殺し屋」の物語ですから、そのままでは結構暗いドラマになりがちです。そんな中で、明るくほっと出来る要素が、中村家の「ホームドラマ」的要素でした。プロデューサーの山内久司氏は、シリーズを支えているのは中村家の「ホームドラマ」にあり、これを失くしてはシリーズは続かないという信念に近いものをもっていたようです。

実際、それは当たっていた。


闇を走る殺し屋たちのドラマを支えていたのは、「せん・りつ」コンビによるコミカルなホームドラマだった!このコンビを演じた菅井きん、白木真理の両女優がいなければ、必殺シリーズは続いていなかったわけですね。




これぞまさに、名バイプレーヤー。



心よりの称賛と哀悼と感謝を送りたい。



菅井きんさん、長い間本当に、本当にお疲れ様でした。ありがとうございました。


どうかごゆっくり、お休みください。



稀代の名女優、名バイプレーヤーに、



合掌。

ドラマ『果し合い』 平成29年(2017)

2018-08-23 04:41:25 | 時代劇










武家の家督を継ぐのは、基本、長男と決まっています。


では家督を継げない次男以下の男子はどうするか?比較的家格の高い家柄の場合は、分家・独立も可能ではあったようですが、下級武士の場合はそんな余裕などありません。ですから他家へ養子に出るなどするほか身を立てる術はなかった。

それが叶わなかった者は「部屋住み」と云われました。





「御役」というのは通常、家の当主にしか与えられませんから、部屋住みには御役つまり仕事がつきません。ですから部屋住みはその家の居候のような位置に甘んじることとなる。


早い話が「厄介者」です。









奥羽のとある小藩ー。


庄司佐之助(仲代達矢)部屋住みの身に甘んじたまま生涯を終えようとしている老武士。家の者たちからはあからさまに厄介者扱いされ、当主である甥の弥兵衛(増岡徹)の娘・美也(桜庭ななみ)だけが「大叔父、大叔父」と慕ってくれている。


この美也に縁談が持ち込まれます。相手は藩の大身の家柄縄手家の嫡男・達之助(高橋龍輝)。願ってもない好条件の縁談に、庄司家の者たちは乗り気になりますが、当の美也だけは浮かぬ様子。

実は美也には密かに言い交した牧野信次郎(柳下大)という相手があったのです。


深夜、密かに逢瀬を交わす二人。二人はいっそのこと駆け落ちをしようかとまで話し合います。これを聞いてしまう佐之助。


佐之助は美也に、縁談を断るようアドバイスをします。美也の固い決心に弥兵衛は致し方もなしと、この縁談を破談にしました。


弥兵衛の妻・多津(原田美枝子)は、きっと佐之助の入れ知恵に違いないと思い、佐之助を益々嫌うようになっていきます。



さて、縁談を断れた側の縄手達之助は、相手が格下の家柄だったこともあり、体面を潰されたと憤懣やるかたない。しかも断った相手、美也には言い交した男がいた。これを知った達之助はその男、牧野信次郎に果たし状を送りつけます。

達之助は剣の達人。信次郎など到底敵う相手ではない。しかし武士として果たし状を送られた以上、これを受けないのは大いなる恥辱。


信次郎は美也に手紙を送ります。もし自分が果し合いに勝ったら、一緒に駆け落ちをしようと。


美也からそのことを聞く佐之助。


美也と信次郎。佐之助は己が部屋住みの身に甘んじねばならなくなった若い頃の経緯を思い、自分の二の舞にはさせたくないと、その手に刀を取るのでした。


二人の行く末のために……。












前回の記事で、時代劇の所作などについて取り上げましたが、この作品はそうした部分が実に丁寧に作られています。


特に美也を演じた桜庭ななみさん。この方は映画『最後の忠臣蔵』でも武家の娘を演じており、その映画撮影の際、所作や言葉使いなど、そうとう厳しく訓練されたそうで、実にさまになっていました。どこから見ても武家の子女になり切っており、素晴らしかった。


他の若い役者さんたちもかなり特訓を受けたようで、この作品では敵役に当たる縄手達之助を演じた高橋龍輝さんもなかなか良かった。

そぼ降る雨の中、傘をさして竹林の中を行く美也と、達之助がすれ違うシーン。縁談が断られた後とあって、達之助は急ぎ立ち去ろうとする美也の前に傘を突き出し、美也を逃がすまいとします。この傘で遮る一連の動作が、優雅でありながら隙がない。この達之助という男がかなりの「使い手」であることを知らしめるという重要なシーンなんですが、なかなかうまく見せていましたね。

相当、特訓したのではないでしょうか。



今どきの若い方々でも、訓練すれば出来るようになる。時代劇を後世にきちんと伝えて行くことは、まだまだ可能かもしれない。


そんなことを感じさせた作品ではありました。


ワンカットごとの画作りも実に丁寧。そこは流石の杉田成道監督です。このように丁寧に作り、丁寧に後進を育てていけば、


まだまだ、まだまだ、


時代劇は、何とかなるかもしれない。



しかしそれも、「今」を逃したら手遅れになるでしょう。



やるなら「今」しかない。




もっと時代劇を!













『果し合い』
原作 藤沢周平
プロデューサー 佐生哲雄 高橋志津子 秋永全徳 足立弘平
脚本 小林正弘
音楽 加古隆
監督 杉田成道

出演

仲代達矢

桜庭ななみ

増岡徹
原田美枝子

矢島健一
小倉一郎

柳下大
高橋龍輝

進藤健太郎

松浦唯

徳永えり


平成29年 日本映画放送
      時代劇専門チャンネル

五郎蔵さんの着流し

2018-08-22 04:32:34 | 時代劇






右から2番目が大滝の五郎蔵(綿引勝彦)



鬼平さんと密偵たち揃い踏み。伊三次(三浦洋一)がいないのがちょっと寂しいですが、それはともかく。



みなさん上手に衣装を着こなしていらっしゃる。「着せられている」感がまったくないですもんね、流石です。


若い役者さんの中には、いかにも衣装を着せられているようにしか見えない人もいて、ダメだこりゃと思う事もしばしば。やはり着慣れていないものというのは、さまにならないものです。


私が特に好きなのは、大滝の五郎蔵さんの着流し姿です。同じ密偵の粂八(蟹江敬三)さんがいつも地味な着物ばかり着ているのに対し、五郎蔵さんはおしゃれなんですよね。地味すぎず派手過ぎない着物を、若干崩し気味に着ているんですが、この崩し具合がまた絶妙で、めちゃめちゃカッコイイ。

あのガタイのでかい身体によく似合ってらっしゃる。



時代劇というのは、こういう衣装の着こなしから、所作に至るまで、出来なきゃならないことが沢山あります。それも武士と町人では全く違うし、町人でも商家の者と職人、農民ではそれぞれまた違うわけで、こうしたことがパッと出来るようになるには、数をこなして慣れるしかないわけですが、


時代劇の製作本数が激減している昨今。実に難しいことになってます。



五郎蔵さんを見る度、思うんですよねえ。こういう大切な文化、伝えて行きゃならんなあって。



なんとかならないものか……。