１
早食い競争よりも、遅喰い競争をしたらいいのではないか。
２
胃腸の負担も少なくなって、健康状態がうんと高まるのではないか。
３
若いときの早食いは仕方がないところがある。食欲旺盛なのだから。早く・沢山・山盛り食べたくて食べたくてならないのだから。
４
退職後は、それを改めることが出来る。少ない量を食べるために、噛む回数を多くする。ご飯一椀をむにゃむにゃむにゃ３０分掛けて食べる。老人は無職。此と言ってほかにすることはないのだから。
５
すると胃腸の機能が百倍回復する。健康が維持できる。遅喰い競争、これだ！ 長寿の秘訣は此だ！
６
そして手にしている人生を味わう。おいしいおいしいにする。
７
１日をおいしく味わって１００日分にする。１年をおいしくゆっくり味わって１００年にする。
「常に菜根を咬み得れば即ち百事なすべし」 朱子「小学」より
菜根は堅い。だから咬まねば呑み込めない。その間に唾が出る。消化酵素ジアスターゼがここで活躍する。口の中で咬んだものが甘くなる。おいしくなる。噛みしめて噛みしめて行くと今日が味わい深くなる。人生の百事百般が甘くおいしくなる。
＊
ここの菜根は牛蒡のことだろうか。朝鮮人参のことだろうか。ほかに堅い繊維質の薬草があるのかもしれない。
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これが中国明代末の洪自誠の著した「菜根譚」の由来らしい。堅い繊維質の菜根を口の中で噛みしめるようにゆったり、今日の我が人生を味わえということなのだろうか。そうありたいものだ。
「快意の時は、須（すべか）らく早く頭（こうべ）を回（めぐ）らすべし。敗後には、或いは反（かえ）りて功を成す。故に払心の処（ところ）は、便（たやす）くは手を放つこと莫（なか）れ」
「菜根譚」の解説書をひもといていたら、こうあった。なるほどなるほどだった。
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で、そこのところを次のように解説してあった。
失敗や逆境は順境のときにこそ芽生え始める。物事がうまくいっているときこそ、先々の災難や失敗に注意することだ。成功、勝利は逆境から始まるものだ。物事が思い通りにいかないときも決して自分から投げやりになってはならない。
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人生塞翁が馬である。次へ次へ回転して行く。現在にとどまっていない。動く。だから、固定した結果などはないのだ。無結果といってもいいだろう。結果がすぐに原因になって行く。だからその原因の処で修正を施せばいいのだ。逆境を大事にすればいいのだ。現在を泣くな。
順境を驕ってはならない。威張り散らしてはならない。
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人生は波状を成している。波の動きをする。高くなったところから低いところへ、低くなったところから高いところへと動く。動きながら進んで行く。いっときも黙っていない。
腹が立つ腹が立つ腹が立つ。老人のくせに腹が立つ。こうなるともはや糸の切れた凧だ。己の力ではもはや何もできないのに、腹ばかりが立つ。腹を寝せるのは難しい。
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「冷眼にて人を観（み）、冷耳にて語を聴き、冷情にて感に当たり、冷心にて理を思う」 中国明代末期の随筆集「菜根譚」より
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（逆上興奮しないで）冷静な眼で人物を観察し、冷静な耳で人の話を聞き、冷静な情感で感覚を制御し、冷静な心でものの道理を考察する。
なるほどそうすれば、感情の糸がもつれないですむだろう。（しないでいい）喧嘩を遣り過ごすことも出来るだろう。喧嘩をしたところで解決にはならないのだ。せっかちにならないことだ。急がないことだ。
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ついかっとなる。それで自分にも相手にも大波荒波が逆巻くことになる。そしてあらぬ方向に逸れて決着を見ることになる。高熱になった目と耳と感情と心を冷やすには、即行動を起こさないことだ。待つ。冷えるまで待つ。菜根譚の作者、中国明代末期の洪自誠（還初道人）はそう諭している。
座禅の「禅」ももともと「静慮」ということである。落ち着きを取り戻すということである。
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と諭してあるが、己はどうもせっかちで困る。慌てる。そしてし損じて、目の前に引き出されて来た惨憺たる結果に泣くということになる。自己コントロールは難しいものだ。
昨日、昼間に、近所の方から甘夏蜜柑🍊を届けて頂いた。紙袋に詰めて。玄関でお話しした、ほんの暫く。久しく会っていなかった。お元気そうで何よりだった。わたしの尊敬する方である。上がってもらってゆっくりお酒でも飲みたいと思った。
昨日は冬至。柚子湯をした。我が家の庭になった柚子を浮かべた。そこに、頂いた甘夏蜜柑も浮かべた。届けて下さった方の温情に温まった。湯気の中で、柚子と甘夏蜜柑がぷかりぷかりした。玩具にして遊んだ。老爺が子どもになった。
昨日、農作業を終えた頃、振り返って夕月を見た。西の空に。細い月、繊月だった。痩身で前屈みで、色白で、寒そうだった。
寺の門の脇にある掲示板にこう書いてあった。「人の為と書いて偽りと読む」
人の為と思ってすることに偽りの心が忍び込んでいる、というのだろうか。してやった、とか、してあげた、とか思うからだろうか。そうやって己を優位にするところがある。そしてあろうことかそれを根に持つ。してあげた分は倍にして返して欲しいとも思う。返してこないと腹が立つ。憎む。欺瞞が蠢く。駆け引きの道具に善を使ってみただけ、というお粗末な結果にぎょっとする。
で、ついつい笑いが込み上げて来てしまった。人が人にする善は、善の思いは、所詮は偽りの善の腐敗菌によって腐敗して、臭くなる。そういうことがある。善人の顔は出来ない。
親鸞聖人は、「牛盗人と言われるともゆめ、仏法者と見られまじく候」と自戒されている。仏法者という澄まし顔をしてはならぬ、と。
昨日は午後から畑に出た。スコップを使って根深ネギを堀り上げた。一籠いっぱいも。今年のは出来が悪い。ほっそり痩せている。施肥を怠ったからだろう。余所様にはあげられそうもない。座り込んで、食べられるように揃え、台所へ運んだ。その後ここを深く耕して、有機石灰と上等乾燥粒状牛糞を投入した。寒くて鼻水が鼻の下を湿地帯にした。それが済んで、買ってきていたカリフラワー苗を７株植えた。間隔を置いて。それから、さっきのさらさら牛糞を、残っている根深ネギにばらまいた。白菜畑にも撒いて回った。ここで日が暮れてしまった。台所へ上がってきて今度は切り干し大根作りに精を出した。夕食になるまで。夕食の後で隼人瓜の漬け物の樽に溢れている水を捨てた。そしてもう一度隼人瓜を樽の底に並べ直した。今度は下向きにして。そして重石を載せた。もう一度水分を吐き出させるために。
こうやってあれこれすることがあると助かる。淋しい時間を忘れることができる。今は真夜中の５時過ぎ。じっとして夜が明けるのを待っている。
バイクの音がした。新聞が配達されて来たようだ。まもなく４時半。外は凍て付いて寒いだろう。老爺は電気毛布を被ってふかふかにしてやすんでいる。働く者と働かない者との違いに戸惑う。何だかすまなくなる。新聞を待つ人がいる、早く届けてあげねばならない、そういう使命感で気合いがはいっているから、ここを凌いでいけるのだろう。偉いなあ。配り終える頃には夜が明けているだろう。天候が荒れて雪が降って道が凍り付いてしまったらどうするのだろう。
