田舎に住んでる映画ヲタク

「映画大好き」の女性です。一人で見ることも多いけれど、たくさんの映画ファンと意見交換できればいいなぁと思っています。

キャロル(Carol)

2016年06月04日 08時07分57秒 | 日記

Carol Movie Poster

 「ブルージャスミン」のケイト・ブランシェットと「ドラゴン・タトゥーの女」のルーニー・マーラが共演し、1950年代ニューヨークを舞台に女同士の美しい恋を描いた恋愛ドラマ。「太陽がいっぱい」などで知られるアメリカの女性作家パトリシア・ハイスミスが52年に発表したベストセラー小説「ザ・プライス・オブ・ソルト」を、「エデンより彼方に」のトッド・ヘインズ監督が映画化した。52年、冬。ジャーナリストを夢見てマンハッタンにやって来たテレーズは、クリスマスシーズンのデパートで玩具販売員のアルバイトをしていた。彼女にはリチャードという恋人がいたが、なかなか結婚に踏み切れずにいる。ある日テレーズは、デパートに娘へのプレゼントを探しに来たエレガントでミステリアスな女性キャロルにひと目で心を奪われてしまう。それ以来、2人は会うようになり、テレーズはキャロルが夫と離婚訴訟中であることを知る。生まれて初めて本当の恋をしていると実感するテレーズは、キャロルから車での小旅行に誘われ、ともに旅立つが……。テレーズ役のマーラが第68回カンヌ国際映画祭で女優賞を受賞した。(映画.comより)

 

 

 トッド・ヘインズ監督って、本当にすごいですね。いくらゲイだからって、ここまで女性の感性を描けるなんて。美しい世界、独特の感性。私、実は「safe」を見てあるんですね。ジュリアン・ムーアの。その時も、感動したとかそんな気持ちではなくて、表現しづらいのですが、なにか特別な世界観・・・そんなものを感じて「ふぅぅぅん」と思ったのを強く覚えています。ごく若い頃に「ベルベットゴールドマイン」を、ビデオかなにかで見た時は「過激なのね」くらいにしか思わなくて、「目立ちたい新進の気鋭監督」くらいに思っていたのですが。

それが、「safe」を経て「エデンより彼方に」くらいになってくると、深い世界観に共感。そういえば「エデン~」もジュリアン・ムーアでしたね。時期を同じくするのではと思うのですが、スティーブン・ダルドリー監督の「めぐりあう時間たち」のジュリアンにも(もちろんニコール・キッドマンにも)深く、深く共感したのを覚えています。気のせいでしょうか、この「キャロル」も、どこかスティーブン・ダルドリー監督と同じ匂いがするように思います。

さて、前置きが長くなりました。主人公は女性二人。舞台は1950年代。まだ人生について、自分がなりたい自分について、深く考えたこともないような若さを持つテレーズと、美しく裕福な人妻キャロル。女が一人で自立して生きてゆくなど、考えられないような時代。当たり前のようにテレーズは恋人にプロポーズされ(それが、男が生きてゆく道に女が沿うようになっている形の愛情表現だとしても、誰もそれを自覚することなく)、またキャロルはお飾りの妻となっています。そして二人は、目が合った瞬間から恋に落ちるのです。

キャロルは、過去にも女性とのつきあいはあった模様。ただ、その関係が終わった今も、よき友人として彼女は近くに存在します。そんなキャロルを愛している夫は、気が気ではありません。裕福な夫は、決して悪い人ではなく、ただ娘に悪影響はないか、あるいは自分の妻であるのにどうしていつも外の世界ばかりを見ているのかが理解できないだけなのです。この時代から言えば、キャロルが気ままなのでしょう。何不自由ない暮らしをしながら、不実や暴力を働いたわけでもない夫に離婚を切り出しているのですから。

ただ、キャロルも娘だけは手放したくありません。彼女なりに努力はしますが、やっぱりハイソな世界が合わないのか、あるいは根っから奔放なだけなのか。うまくいかずにとうとうテレーズと逃避行に出かけてしまいます。しかしながら、二人はこの小旅行でお互いの愛を確認し、紆余曲折を経ながらも、離れられない関係にと目覚めてゆくのです。

セリフの多い映画ではありません。テレーズも口数が少ないですし、大人なキャロルは目で多くを語りかけます。この二人の間の感情の機敏は、よく目線で語られます。もちろん、行動を伴うこともありますが、大仰な台詞回しはいっさいありません。これだけ美しい映画がよく撮れたんだなぁ、と感心するばかりです。原作がパトリシア・ハイスミスだというのも、ちょっとした驚きでした。私、若い頃アラン・ドロンの「太陽がいっぱい」を見て、ゲイの映画だと見抜けなかったクチなので、当時それを看破した淀川長治さんの意見も聞きたい気がします。

おすすめです。

コメント
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