田舎に住んでる映画ヲタク

「映画大好き」の女性です。一人で見ることも多いけれど、たくさんの映画ファンと意見交換できればいいなぁと思っています。

あなたを抱きしめる日まで(Philomena)

2014年04月20日 17時10分46秒 | 日記

 

 イギリスでベストセラーとなったマーティン・シックススミスによるノンフィクションを映画化し、50年前に生き別れた息子を探し続けた女性の姿を、「クィーン」のスティーブン・フリアーズ監督、名優ジュディ・デンチ主演で描いた。1952年、アイルランド。18歳で未婚の母となったフィロメナは親から強制的に修道院に入れられ、3歳になった息子のアンソニーはアメリカに養子に出されてしまう。それから50年後、イギリスで娘のジェーンとともに暮らしていたフィロメナは、手離した父親違いの息子の存在をジェーンに明かす。ジェーンが偶然知り合ったジャーナリストのマーティン・シックススミスとともに息子探しの旅に出たフィロメナは、アメリカの地で思いもよらぬ事実を知ることになる。「24アワー・パーティ・ピープル」などで知られる英俳優スティーブ・クーガンが企画を立ち上げ、脚本やプロデューサーを務めたほか、原作著者でもあるシックススミス役を演じている。(映画.comより)

 

 

 

 こういう映画に弱いんです。自分でもわかってるんです。子供に関してはいろいろあったので、本当に涙もろくなるのがわかっているのに・・・つい、見てしまいます。

この映画、お話は完全に「マグダレンの祈り」です。まさにあのまま。

厳しいカソリック国だったアイルランド。18歳で妊娠してしまった主人公フィロメナは、「堕落した女」として家族からも見捨てられ、収容所さながらの修道院に入れられ、出産後は重労働(主に洗濯業務)に勤しみながら、一日1時間だけ息子との面会を許されています。しかし、それも束の間、やがて子供たちはアメリカの裕福な家庭に引きとられ、新たな人生を歩むことになります。

それだけなら、なにも子供にとって不幸とは限りません。もちろん、実の母親の愛情は大切ですが、子供を真に欲している、経済力のある夫婦に引き取られ、きちんと育てられるのなら、それはそれで幸せかもしれません。

問題は、「マグダレン・・・」でも描かれましたが、「堕落女」に対する虐待と、宗教を傘に着てより裕福な家庭に子供を売り飛ばしていた実態、そしてそれを隠すために実の母子には「書類は火事で焼失した」、「あなたの母親はあなたを捨てて以降、消息を絶っている」あるいは「一切の連絡を拒んでいる」などと嘘をつき通したこと、それでも「私達はあなたの傍に寄り添います。なにか手掛かりがあったらすぐに連絡します」などと善人ぶっていたこと、さらには、それが暴かれたときですら「私は神に仕え、一生純潔を守り通した。あなたは不純で子供を産んだくせに」と言い放つ、歪んだ価値観を持ったシスターが現存したことです。

悲しいですね。宗教は人を救うためにあるのではないのですか。

主人公のフィロメナも、なにもレイプされたわけではありません。年老いても「彼はハンサムで優しかった」と言ってました。若かったであろう二人に、周りの理解と協力さえあれば、あるいは一生を添い遂げられたかもしれません。「若くて未婚だった」この一点で、なにもかもを取り上げてしまう・・こんな理不尽なことが許されていいわけはありません。

そういえば「マグダレンの祈り」でも、魅力的で異性の目を惹く、というだけの理由で修道院に入れられていた少女もいましたね。なんなのでしょうね。

ともかく、今回の映画はハッピーエンドではありません。バッドエンドでもないのでしょうが、年老いた母親は、その長い人生経験と信仰から、誰かに対して怒ることをやめています。それも信仰(宗教)なのですから、複雑なものですね。

彼女に同行した、元エリートジャーナリストのスティーヴ・クーガンも、鼻持ならないバカ男(?)から、少しずつ彼女の影響を受けて価値観が揺らいでゆきます。でも、大きくは変わりません。人はそれほど単純ではありませんから。

それでも、すべてを暴き(今でこそ公になっているが、修道院の実態を暴いたのは初めてだった)怒りに震えていた彼は、フィロメナに「そんなに怒っていたら、さぞかし疲れるでしょうね」と言われ、すこし考えるのです。

そして、考えた末、彼は本を出版します。それが今回の原作『The Lost Child of Philomena Lee』です。原作の方も読んでみようかな、とちょっと思いました。

コメント
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