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祭りのよそおい ~その残酷なストーリー~

2015-11-18 16:04:23 | 美術


 この絵は女性日本画家の島成園(1892~1970)による大正2年(1913)の作「祭りのよそおい」である。この絵を数年前に初めて見た時から、一見可愛らしい、微笑ましい風景ながらも、なぜか妙に心に引っ掛かるものを感じた。
 最近になって、この絵について、大阪市の生涯学習情報誌「いちょう並木」の「おおさかKEYわーど」というコラムに、大阪大学教授で美術史家の橋爪節也さんがこの絵について解説しているのを発見した。これを読んで腑に落ちた気がする。 

――大阪の女性画家らしい個性的な作品を紹介しよう。大正2(1913)年の第7回文部省美術展覧会で入選した島成園《祭りのよそおい》(大阪新美術館建設準備室蔵)である。祭の幔幕を張る豪家の店先の縁台に、晴れ着を着飾った三人の少女が座っている。右端には立った少女が一人。一見すると楽しい祭の日の少女たちを描いた、類型的にいえば“乙女チック”で愛らしい作品に見える。しかし、この絵にはある意味、残酷なストーリーがある。
 たとえばこの四人の家庭環境はどんな状態だろう。着物や草履、扇子などから見て左端の少女が最も裕福であり、順に経済力が落ちていく。三番目の絞りの子どもは、どことなく左の裕福な少女たちに媚びを売っているように見える。右端に立つ少女は着物も粗末で、裕福な少女たちをジッと見つめ、それも横向きで目しか描かれていない。
 この絵のテーマは、少女たちの可憐さではなく、子どもの世界に投影された大人社会の格差、残酷な現実社会の姿である。成園は堺に生まれ、船場にも道頓堀にも近い大阪市南区鍛治屋町(現中央区島之内)で成長した。《祭りのよそおい》の心理劇は、とりわけ大阪都心の日常風景だったはずであり、男性の画家ではなかなか思いつかない発想である。あなたなら、これまでの人生をふりかえって、四人の少女の誰に一番共感するだろうか?――

 大正・昭和初期には多くの女性日本画家が活躍した。その中心にあった「女四人の会」。左から岡本更園、木谷千種、島成園、松本華羊



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