…と、まあそういうことで。
運転免許証を自主返納して、その代わりに「運転経歴証明書」をもらう手続きをするために、警察署へ行った。
昼前だったが結構混んでいた。ほとんどが免許の更新手続きの人のようだった。「案内」の看板のところにいた人に「免許証を返納したいんですが」と伝えると、カウンターの上の整理券を取ってくれと言われたので、それを持って長椅子に座って待った。
男の人や女の人が次々名前を呼ばれ、視力検査をしていた。それを見ながら、自分は今後こういう検査もしなくていいんだなぁ、と思った。運転免許を取って45年。その間、何度免許証の更新をしてきたことだろう。それがもうなくなるというのも「身辺整理」のひとつなんだろうな、と、少し改まった気分になる。
…それにしても最近のニュースを見ていると、高齢者の自動車事故がやたらと多い。ついこの間も、93歳の女性が高校生をひき逃げしたり、76歳の男性が運転する車が飲食店に突っ込み10人以上ケガをさせたり、宮崎市では73歳の男性が車で歩道を暴走して女性2人が死亡する事故などが続々と報じられている。
こういう状況を受けて、自治体でも、高齢者の免許証の自主返納を呼びかけているようである。大阪府の公安委員会は2年前に、65歳以上の人が免許証を返納すると、それに代わる「運転経歴証明書」を、正式な身分証明書として発行してくれる…という制度ができた。で、僕も「そりゃ便利でいいわ」と返納することにしたのである。僕など、免許証は身分証明のためにだけ、これまで更新してきたわけだから…。
それで、自主返納する人も一挙に増えたそうである。しかし、車がなければ生活できないという人もいるので、これは僕みたいに簡単には済まない問題も数多くあることは確かである。
さて…その警察署で順番を待っていたら、やがて僕の番号が呼ばれた。カウンターに行くと、男性係官が「免許の更新ですか?」とまず尋ねたので、「いえ違います、免許証を返納したいのです」と答えた。すると相手は、「取り消しですね。では、今、この瞬間から運転が出来なくなりますが、よろしいですか?」と確認をした。その時僕が「へっ? 実は車で来ているんだけど帰りはどうしたらいいの?」な~んて言ったら相手はズッコケただろうなぁ(笑)。
むろんそんな冗談を言える雰囲気でもなく「はい、結構です」と微笑む僕なのであった。そして、運転免許証を手渡した。係官は僕の免許証を見ながら、すぐにどこかに電話をした。
「こちら○○警察署です。免許の取り消しです。免許番号は…」
と、僕の免許証に掲載してある長い番号を電話で伝えたあと
「ではよろしくお願いします」
と言って切った。電話の先は大阪府公安委員会なのだろう。
電話を切った係官は僕に、
「これでこの免許は取り消されました。今後、運転はできません」
とまた念を押した。わかってるっちゅうねん。
「では、顔写真をお持ちですか?」
「運転経歴証明書」に添付する顔写真のことで、むろん用意してきた。縦3センチ、横2.4センチの顔写真で、これまでの免許証と全く同じ規格であるが、この写真は前夜、自宅で妻に撮ってもらい、プリンタで印刷し、規格どおり慎重にハサミで切り抜いた写真だった。
係官はその写真を見て、「う~ん」と首をかしげ、
「他に写真はお持ちじゃないですか?」
と、少し困った顔をして僕に訊いた。
「ありません。ちゃんと縦3センチ、横2.4センチになってるでしょ」
と僕はその写真の何が不都合なのかわからず、抗弁した。
「この顔写真がねぇ…」と係官。
「全体に見て、少し右に寄ってるんですよね」
よく見ると、確かに…わずかだが右に寄っている。一目見ただけではわからないほど、ほんのわずかだけどね。こういう顔写真を1ミリも狂わさずに真ん中に切り抜くのは、なかなかむずかしいのだ。
「この程度だったらいけるんじゃないですか?」
と僕が言えば、係官は僕の免許証の写真の部分にその写真をかぶせてみて、
「ふ~む。いけますかねぇ…」とつぶやいたあと、
「ま、これでいきましょうか」と納得してくれた。やれやれ…
「では、この書類に1,000円の証書を貼ってください」と言われ、
すぐ横にある窓口で証書を買って貼り、再びそれを係官に渡した。
「これですべて手続きは終了です」と係官。
「運転経歴証明書は11月17日以降にこちらでお渡しします」
以上で免許証の返納とそれに伴う取り消し処置が終わった。
45年間のつき合いに、あっけなく終止符が打たれたわけだ。
まあ、それほど親密なつき合いでもなかったけれど(笑)。
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