石原延啓 ブログ

seeking deer man

nobuhiro ishihara blog 

USAR( アーバン・サーチ・アンド・レスキュー)

2011-05-01 11:53:05 | Weblog


大船渡滞在では公民館で他のボランティアの方々と寝袋を並べて雑魚寝したのだが、その中でボランティアの消防士の人たちと一日の終わりに一緒に酒を酌み交わすうちになぜだか意気投合してしまった。
彼等の心意気と行動力には本当に頭が下がる。
そして今回の震災に於ける初動の不手際や救援体制の構造上の問題、さらには救援活動の本当の本当に芯となる部分「いのち」にまで話は及び、本当に多くのことを学ばせてもらった。

私たちが同宿したのは新潟、愛媛、兵庫の消防士。
彼等は行政の指導で各所在地から震災後に正式な消防部隊として一度現地入りしたが、一度帰郷した後に再度ボランティアで大船渡入りしているのだ。
(休暇を利用しているのだが、何度か行来している方もいた!)
さらに驚くべき事に、彼らは既成の日本の消防における救助をより発展させたシステムを模索していて、レスキューシステムジャパンというNPOの訓練に参加したり、自費でアメリカまで出向いて最新の救助法を勉強しているような勇士たちだということだ。
興味深いのは「USAR( アーバン・サーチ・アンド・レスキュー)」という救助方法の概念。
もとはアメリカ陸軍で戦場で傷ついた味方兵士を瓦礫の中から救出するために編み出された方法論らいしのだけれども、
それを災害時に使用できないかということで改良が重ねられたものらしい。
今回同宿したのは海外で独自に研修を積んだ方をリーダーのもと、意識の高い各地の消防士がチームを形成して救助捜索にあたっていた。
そういった防災の新しいプラットフォームの存在について、我々一般市民も災害へ対する危機意識とともに知識として知っておかねばならないと思った。
東海大地震の可能性が提唱されて早数十年、彼等は可能性として東京に於ける有事を想定している。
旧来の防災救援体制、各地域毎の救援隊や海外救援隊との連携、意思統一や訓練施設の問題など、徹底的に話し合い早期にUSARの概念を啓蒙推進実現していって欲しいと切に思う。

「僕ら、それぞれの消防署では浮いてますから~」
笑いながら言うカッティングエッジをゆく消防士たちの話を甚大な被害を受けたこの被災地で聞くと切実である。
男たちはガンガンに酒を飲みながら冗談を連発し、やたらと明るい。
しかし現場の話になった途端に神妙になり目に涙を浮かべながらとつとつと話す。
つかの間の時間、少しでも明るく勤めなければやっていられないような仕事だ。
私は救援と復旧の境がどこになるかを聞く。
地元大船渡の消防士の方曰く「救助とは、待つ人がいる限り続くものです。」
(後で捜索に同行させてもらい知ったが、行方不明者の捜索は本当に地道な作業だ。)

救助の基本はまず第一に自分の身は自分で守り、次に仲間の身を守る。そしてその次にはじめて助けを求める人を助ける事ができる。
ここで素人である私たちは何かもの申したくなるかもしれない。
あななたちプロなんだから助けてよ。
だが実は、日頃平穏に生きる私たちは忘れてしまっている。
生きていく上でもっとも基礎的な事柄「自分の身は自分で守る。」ということを。
基本さえできていれば、あとは応用すればどのような対処も出来る、と彼等は言う。
ある消防士が言った。
「あなたの隣に常に消防署があるわけではない。」

酒と共に夜は更け話は続く。
「自分の子供と他人の子供が助けを求めていたらどちらを先に救うか?」といった究極の問いかけまで出る。
前述の消防士が語る。
「私は息子を救います。いつも『例え何があっても絶対にパパはお前たちを救ってやる。』と言っている。
自分の子供も救えずに、何が消防士だと思っている。」
涙ながらに自らの家庭の状況から全てを真っ正直に告白する彼を見ながら私は確信する。
「ああ、この人たちは自分のだろうが他人のだろうが、自らの命を捨ててでも全ての子供たちを救おうとするだろう。」

前述の基本は、まず自分の身を守る。しかし同時に救援活動には究極のジョーカーが存在するそうだ。
自己犠牲。
何と悲しくも逞しい漢たちだろう!!

朝の4時半、リーダーが寝袋から外へ出てゆく。
後で尋ねると走って酒気を抜いていたそうな。
「自分は現役を退いて久しいから、こうして少しでも態度で示さないと若い彼等は命を張ってまでついてきてはくれないでしょう」
54歳の彼は私にコーヒーを入れてくれながら言った。

最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Thank you! (Toku)
2011-08-18 02:10:09
Great real story - namida shite yonda yo.

コメントを投稿