【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

言葉狩り

2011-09-14 18:28:19 | Weblog

 「失言」で大臣が辞めましたが、その記者会見でまるでヤクザのような口調で暴言(「あんたね、辞めるんでしょ。その理由くらいきちんと説明しなさい!」「きちんと説明しろっていってんだよ!」)をはいていた記者のことが一部で話題になっています。たしかに私が知る範囲での記者会見でも居丈高な口を利く記者が時々出現するなあ、とこれまでも思ってはいましたが、今は便利なネット時代、マスコミ編集フィルターを通さなくてもこうしてこちらも直に何があったかを検証できる、良い時代です。
 で、「みんな楽しくHappy♡がいい♪」の「速報!大スクープ!!鉢呂大臣辞任会見での「やくざ記者」が誰なのか判明しました。動画あり・写真あり」によると、時事通信の記者のようですね。「失言で大臣が辞めたのだから、暴言で記者も辞めろ」なんてことを言う気はありませんが、せめて「きちんと説明しろ」くらいは言っても良いですよね?(「説明」以前に「社会人として最低限の礼儀」くらいは欲しいところですが)

【ただいま読書中】『魔法泥棒』ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 著、 原島文世 訳、 創元推理文庫、2009年、1200円(税別)

 英国は「リング」と呼ばれる魔法使いの組織によって守られていました。しかし「グローバル化」によって、リングの活動は全地球的な規模に拡大しています。チェルノブイリ・温暖化、それらに対応する必要があるのです。ところが“それ”は陰謀でした。地球とは別の宇宙に存在する世界の魔法使いたちが、地球を危機に陥れ、地球人がそれに対して科学や魔法での対抗策を編み出すと、まんまとそれを盗み出していたのです。リングの人々は激怒します。やり方があまりに阿漕だ、と。この剽窃行為(と地球に対する干渉)をやめさせるため、襲撃隊が組織されます。しかし事故で襲撃隊はほぼ全滅。生き残ったのは5人の女性(と、密航者の母子)だけ。
 地球から様々な“収穫”を得ていたのは、「五国」と呼ばれる世界とその上に浮かぶ城(僧院)アルスでした。実は五国はせっぱ詰まった状況に追いつめられていました。そしてアルスも。そこにぼろぼろになった襲撃隊がやってきてアルスに不時着したのですから、てんやわんやの事態に。
 自分たちの正体が知られていないのを良いことに、襲撃隊の面々はアルスの中で破壊工作を始めます。その手段は、料理・タロット占い・ダンスとヨガ・誘惑……いやもう、大笑いですが、DWJ節は“全開”です。
 本書は、大人向けのファンタジー(+SF)という位置づけです。スジは複雑だしきわどい言葉やシーンも出てきますから、お子ちゃまにはちょっと難しいかもしれません(だからと言って、お色気むんむんを期待して読んだらがっかりするでしょうが)。頭の固い人が唱えるフェミニズムをおちょくっているような所もあります。
 登場人物(地球側、アルス側の双方)の関係がなかなか複雑なのですが、さらに事態を混乱させるのが、地球とアルス(あるいは五国)との関係です。単に平行宇宙で近くに存在しているだけ、ではなくて、過去から両者には「関係」があったのです。それが少しずつ姿を現し、人々の行動に影響を与えます。
 とうとう「リング」の最長老(グラディスというばあさま)が腰を上げて、五国に入っていきます。すると、神霊は出るわ神様は出るわ、もうお話がスキップスキップランランラン状態です。アルスはアルスで、盛大な踊りの行列ができてしまって、こちらはこちらでスキップスキップランランラン。そして最後には、デウス・エクス・マキナ、ではなくて、国王の出動……なんですが、グラディスと国王の出会いの所はもう抱腹絶倒です。ぜひぜひご一読を。
 最初は「この大風呂敷をどうたたむんだ?」と思えましたが(なにせ、地球の温暖化をどうするか、ですよ)、さすがDWJ、ちゃんときれいにたたんでしまいます。いやあ、参ったなあ。