亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

LTROの副作用

2012年05月15日 17時37分59秒 | 金融市場の話題
流れの変化がない限りギリシャのユーロ圏離脱は蓋然性の高いシナリオとして認識されてきているが、その場合でも大きな影響はないとの見方も広がっていた。ところが週明け14日のユーロ圏からNY市場での反応は、むしろそのスペインやイタリアへの連鎖を恐れる心理状態が前面に出る形になった。つまり先週一気に広がったリスク‐オフ(リスク回避)モードは、さらに高まっている。

すでにギリシャ株は1992年11月以来約20年ぶりの安値に下げ、スペイン、イタリア株ともに下げ幅を拡大してきた。「質への逃避」ということで、ユーロは売られ1.28ドル台前半と4ヵ月ぶりの安値に。米国債は買われ利回りが低下、逆にスペイン、イタリア国債は売られスペイン国債は昨年11月の危機時の水準となる6%超に。一方でドイツ国債が買われていることから、両国の利回り格差は過去最大となっている。

スペインでは国債が売られる中で、金融株が急落となったが、これは年末そして2月末にECB(欧州中銀)が実施した3年物特別融資(LTRO)を使い自国国債の保有を大きく増やしていたことによる。新発債のみならず他国の投資家が手放した既発債もこの資金を使って積極的に買い増していたようだ。つまりスペインの銀行は、以前より自国債の下げに弱い体質になっているといえる。一時は資金繰りを助け安定をもたらしたECBのLTROだが、こうなると皮肉なことにマイナス要因となっている。この木曜日に2015、2016年償還の国債の入札が予定されている。要注目事項になってきた。

金市場ではここまで指摘してきたように、テクニカルの悪化を材料にしたファンドのショート(空売り)が続いている。現時点では、需給に無関係の“流れに乗った”トレードとなっている。ショートの増加は、将来の「買い(戻し)」が溜まっていることを意味するが、市場は下げの流れがどこで止まるかを見ている状況。すでに売られ過ぎ状態の域に入ってきているといえるが、全般の環境が崩れている中で、下値模索中。なお日本時間の本日7時過ぎに格付け会社ムーディーズが、イタリアの銀行格下げを発表した。この発表に対する市場の反応にも関心が集まりそうだ。

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