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実験

2011年03月09日 | サ行
  参考

 01、実験はもちろん対象を具体的な場合の中で直観に対して示すのである。しかし、実験は、それが科学的であるためには、一方においてその対象にとって必然的な諸条件のみを取り上げなければならないし、他方において又、これらの必然的な諸条件から切り離すことは出来ないが非本質的な具体的付随物をそれとして示すために、その対象を他の具体的な形態で現象させ、更に又、他の形態でも現象させる、というようにして、認識に対してその対象の抽象的な形のみが残るように、多面的なものにならなければならない。(大論理学第2巻460頁)

 02、自然を観察する場合、実際の自然の現象には色んな因子が複雑に入ってきているので、その各々の因子がどんな役割を演ずるかということが問題になるときには、われわれは何らかの手段をこうじなくてはならないのである。

 たとえば植物の生長が問題になる場合に、これにはさまざまな波長の光、温度、土質、肥料、水分といった多くのものが問題になってくるが、この各々がどんな影響を及ぼすかを知りたい場合には、われわれは自然のままでなくて、他の条件を一定にしておいて一つの因子だけを変えていく。たとえば温度だけをいろいろと変えるというような実験をやるわけである。こうしていろいろな因子の間の関係を見出すのである。

 実験においては以上のように各因子の関係を知ることになるわけであるから、実験をおこなう際にまずこの因子についての概念分析をおこなわなくてはならない。もしわれわれがその自然現象にとって無意味な概念とか、また非常にこみ合った概念、また実際には各因子の間にまたがったような概念を一つの因子として問題にして実験をしたとしたならば、何ら意味ある結果をうることはできないのである。

 実験によって得られたこれらの諸因子間の関係を実験法則というのである。これはもちろん自然法則なのであるが、まだ体系的に掴まれていない訳で、まだ本質的な解明がなされていないことから、現象論的と言われる。(武谷三男「続弁証法の諸問題」理論社134-5頁)

 03、実験によって得られた諸概念の間の数量的関係を数式で表わしたものを実験式という。実験式はしかし何ら理論ではない。(武谷三男「続弁証法の諸問題」理論社138頁)