マキペディア(発行人・牧野紀之)

本当の百科事典を考える

福井県(01、実力)

2008年10月30日 | ハ行
 目立たないけれどしっかり者、という人が世の中にはいる。都道府県でいえば、福井県だろう。

 完全失業率全国最低(2005年国勢調査)、世帯当たりの自動車や携帯・PHSの保有率1位、同貯蓄額3位(2004年全国消費実態調査)、0歳児の平均余命2位(2000年都道府県別生命表)、刑法犯検挙率1位(2005年犯罪統計書)と並べれば、地味なイメージとは異なる、豊かで堅実な県民性が見てとれる。

 福井の豊かさを支えるのは、ハイテク化の進む繊維産業と機械産業、そして女性パワーだ。共働き世帯割合、女性労働力率、就労女性の常用雇用率はいずれも1位(2005年国勢調査)。広い持ち家に両親と同居し、自分の車で勤務先に通う正社員、というのが当たり前の女性像となっている。

 「女性が働くと子どもが減る」と誤解する向きがあるが、合計特殊出生率でもトップクラス(2005年の1.50は沖縄に次ぐ2位)だ。ちなみに女性の労働力率が高いほど出生率が高いのは、都道府県比較でも、先進国比較でも共通の現象である。

 「オバマ(米大統領)候補を勝手に応援する会」が盛り上がる小浜市で、同会がオバマ氏応援のために作ったCDを買った。若い男女が掛け合うスタイルが福井らしい。ファンキーな歌声が讃えるのは、同候補の出身地ハワイと小浜の共通点である美しい海だ。

 水産加工中心の地味な町だが、出生率は県内の市でもトップクラス。民主党予備選を制する勢いのオバマ氏がもし将来、米大統領として来日する日が来たなら、住んで良し、訪れて良しの当地にもぜひ足を運んでほしいものだ。

  (朝日、2008年05月24日。地域経済アナリスト・藻谷浩介、協力・日本政策投資銀行地域振興部)
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