マキペディア(発行人・牧野紀之)

本当の百科事典を考える

北海道(01、実力)

2008年10月27日 | ハ行
 北海道には経済停滞、公共投資依存のイメージがつきまとうが、新たな成長の芽はいくつも出ている。

 1つが2001~2006年度の間に24万人から59万人へと2.5倍に増えた外国人観光客。同期間の全国の伸び(1.5倍)に比べ、際立っている、。彼らの道内での消費額も1300億円(2006年度)と、ほぼ同時期の道内の大型店売り上げ総額の8分の1程度で、経済押し上げ効果は大きい。

 豊かになった東アジア向けを中心に、農水産物の輸出も急増している。2006年の実額は362億円と、まだ外国人観光客の消費額には及ばないが、2001~2006年の伸びは3.6倍だ。ホタテ貝柱など水産品が目立つが、薬膳向けに台湾でブレークしている長イモなど、農産品の将来性も大きい。

 先日、酪農で知られる道東地方の別海町の大平原を夜遅く車で走っていたら、24時間営業のコンビニエンスストアに出くわして驚いたが、横にそびえる巨大な建物にはさらに驚いた。中国への輸出もにらみ、大手食品メーカーが70億円を投じたチーズ工場だ。乳製品関連の工場投資は十勝地方でも活発だ。

 世界的なエネルギー価格高騰を受け、美唄市では新たな露天掘り石炭鉱床の開発も報じられている。

 道内では、最近の大手自動車部品工場進出を喜ぶ声が大きい。だが今後、世界的に需要が増大するのは、車やハイテクよりも、水や食料、木材、エネルギー、そして富裕層向けの観光だ。北海道にはそのすべてを供給する余力がある。

 前世紀の機械産業中心のモデルにとらわれず、「東アジア地域の北欧」という新たなポジショニングを獲得する先にこそ、この島の未来がある。
  (地域経済アナリスト藻谷浩介、協力・日本政策投資銀行地域振興部)

  (朝日、2008年04月12日)
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