星のひとかけ

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「それから」 、の、、、それから先は、、、?

2005-09-09 | 文学にまつわるあれこれ(漱石と猫の篭)
台風が通った日、、、
燃え立つようなバラ色の夕焼けと、
瞑った片目のような細い月が、西の空に懸かっていました。
月の傍には、ちいさな星の泣きぼくろ、、、。

どんなに荒れ狂っても、自然より美しいものはないです。

 ***

夏目漱石の 『それから』 の〈六〉に、こんな一文があります。

 「代助はロシア文学に出て来る不安を、天候の具合と、政治の圧迫で解釈していた。フランス文学に出てくる不安を、有夫姦の多いためと見ていた。ダヌンチオによって代表されるイタリア文学の不安を、無制限の堕落から出る自己欠損の感と判断していた。だから日本の文学者が、好んで不安という側からのみ社会を描き出すのを、舶来の唐物のように見なした。」

ここにある、ダヌンチオのほか、ロシア文学ではアンドレーエフと、トルストイの名が、『それから』には出て来ます(他にもあったかも…?) 勿論、そんな名も作品も関係なくても、『それから』は美しい恋愛小説です。・・・でも、、、アンドレーエフの『七刑人』と出てきたところで、もし、「どんなのかなあ、、」と思っても、今はとてもとても見つけるのは大変なんです。ダヌンチオもそう。。。今では、本屋さんでも、図書館でも、、、大学の図書館でだって、探すの大変なんですもの。

アンドレーエフは、『七死刑囚物語』の題で、'75年に河出書房新社から出ているのをやっと見つけて読みました、、、とても感動しました。絞首刑を宣告された若き5名のテロリストらと、ふたりの殺人者の、判決から死までの物語、、、。

テロリスト、、、という言葉は、9・11以来すっかり変ってしまいましたね。・・・テロリストの物語と言えば、わりと沢山思い出されます、、、映画にもなっているマヌエル・プイグの『蜘蛛女のキス』 。、、、こちらも印象深い映画になっている、五木寛之の古い名作『変奏曲』の政治運動家や、、遠藤周作の『砂の城』 のハイジャッカーも、今ならテロリストと呼ばれるでしょう。ノンフィクションでは、沢木耕太郎の『テロルの決算』 。、、、無差別、、などという言葉の無い時代のテロリストたちの物語。
今あげた本でも、なかなか書店では見つけにくいかもしれません。

そうやって、たくさん失われていく物語があるのだなあ、、、と考えてしまいました。だけど、、、今の世だからこそ、、、思い出されてもいい名作だとも思うなあ、、、と。

 ***

『それから』といえば、森田芳光監督の映画。。。
松田優作さんが亡くなられて、、日本の或る美意識が、永遠に失われたような、そんな気がします。美意識、というか、美学というか。。
だから、だと思います、『それから』以降、、漱石作品は映画化されたことがありません、、、演じられる俳優さんが見当たりません、、、。これは他でも書きましたが、優作さんと小林薫さんで『虞美人草』のドラマ化も話が進んでいたとのこと、、、本当に惜しい、、。

優作さんのことを思い出したら、、、『新・夢千代日記』がとても観たくなってしまいました、、、。夢千代さんの物語、、、どこかに漱石の『夢十夜』の匂いが感じられます。夢千代さんが臥せっていた枕辺に優作さんが坐っていたような、そんなシーンがあったような、、、。あの記憶喪失の男も、、、やっぱり優作さんしか思い浮かばない、、。
優作さん、、もう17回忌になるそうです。


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