星のひとかけ

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すべての美しい馬と・・・

2005-09-05 | 文学にまつわるあれこれ(ほんの話)
小説の映画化は、
どうしたって原作にかなわない、ことが多い。

小説が、いくつものエピソードが連なって、
遠くのエピソード同士が、遠くのページで繋がって、
そうして大きな曼荼羅が出来上がって、
誰かの生涯なり、ある時代なりを描いているものだとしたら、
2時間にそれらのエピソードを詰め込もうとしても不可能。

小説が、老婆の顔や手に刻まれた数え切れない皺のようなものだとしたら、映像は、たったひとつでその人の過去を語ってしまうような、意味深い傷痕のようなものでなくちゃ。。

 ***

コーマック・マッカーシー著 『すべての美しい馬』 (ハヤカワepi文庫)
しばらく前に買って、70ページ余り読んだところで忙しくなってしまって中断した本だけど、その濃密な文体と、メキシコという未知の土地の、鮮明な自然描写が見事で、印象的でした。ちょうどその頃、この小説が、マット・デイモン主演で映画になっていると知った。・・・下で書いたBlack Rebel Motorcycle Clubといい、マイWesternブームでもあるので、時間が出来たらぜひ観ようと思っていて、、、そして、、、見た感想が、最初に書いたようなこと。。。悪くは無かったんですが。

小説でとても印象的な少年、ブレヴィンス、という子がいて、13,4才? なんというか、『クイック&デッド』の時のビリー・ザ・キッド、つまりレオナルド・ディカプリオのような手に負えない(哀しい)悪童で、、、こんな子、演じられる俳優がいるんだろうか、、、って一番楽しみだった。。。でも、いました、上手な子でした。ルーカス・ブラックと言う子で、なんと、『アメリカン・ゴシック』の時のケイレブでした。

原作者マッカーシーは、「おそらくフォークナーの遺産をもっとも純粋に引き継ぐ作家」だそうで、「ただ、フォークナーと違うのは、マッカーシーの作品には、南部の歴史性を引きずった人物は登場しないことだ。・・・彼が関心を寄せ、繰り返し描くのは、もっぱら社会の底辺でほとんど無一物で暮らす、あるいはそうすることを選ぶ、歴史とは無縁な名もなき人々である」」(解説より)とのこと。
解説には、彼の他の作品(未翻訳)も紹介されていて、かなりグロテスクで凄惨な主題のものもあるようです。だからフォークナー、なのでしょうか。『すべての…』は、彼の中では最も理解し易いものらしいけれど、Amazonのコメントにもありましたが、私もメルヴィルの文章の方が近いかな、と感じました。

映画「さすらいのカウボーイ」
こちらは原作の無い、まったき映像詩。。。言語表現では得がたい世界。何の説明もなく、ひとりのカウボーイと彼が愛する女とを描いている。西部劇らしくない、と理解されなかったようですが、大好きです、こういうの。
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