ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

外注化のメリットと落とし穴

2019-12-13 15:25:37 | 労務情報

 労働基準法や労働安全衛生法が改正され、最低賃金も引き上げられ、従業員が事故を起こせば使用者責任を問われ、セクハラ・パワハラへの対処も求められ、人を雇うのが煩わしくなってきた経営者もいるのではなかろうか。そんな昨今、「雇用契約から業務委託契約への切り替え」(いわゆる「外注化」)を進める(もしくは検討している)会社が目立ってきた。

 業務委託契約に切り替えると、会社にとって次のようなメリットがあるとされる。
  1.身分保障の義務(解雇制限等)を課されない
  2.社会保険料・残業代・有給休暇等の人件費が発生しない
  3.給与計算(年末調整を含む)や社会保険手続き等の事務作業が不要になる
  4.採用や教育に掛けるコスト・労力も不要
  5.本則課税の場合は、消費税の節税効果を得られる

 その一方で、次のようなデメリットも挙げられる。
  1.会社への帰属意識が希薄になる
  2.ノウハウが社内に蓄積されない(社外に流出する危険性すら有る)
  3.後継者が育成できない
 もっとも、これらは、このご時世、雇用契約のままであっても期待できなくなりつつあるので、「デメリット」というより「リスク」程度の認識でいる会社も少なくないかも知れない。

 さて、こうした動きが、「外注化(アウトソーシング)」という意味合いで検討されているなら、法的に特段の問題は無い。しかし、もし従業員各人の業務内容を変えないまま「個人事業者」に切り替えて「業務委託契約」を締結するのだとしたら、仮に本人が同意していたとしても、グレーな部分が大きいと言わざるを得ない。
 というのも、契約上は「個人事業者」とされていても、実態として“使用従属関係”に在る場合は「労働者」として扱うべきだからだ。

 具体的に「使用従属関係にない」ことは、次のような観点で判断される。
  1.業務指示に対し諾否の自由があるか
  2.他の者が代わりに業務を行うことができるか
  3.報酬が「時間」を単位として計算されていないか
  4.作業の具体的な内容について指揮監督を受けていないか
  5.設備・機器・材料等を作業者本人が負担しているか
   (ただし、高度な技術・専門性をもってこれらを使用している場合を除く)
 これらは例示だが、つまりは「“業務の委託”であって“労務の提供”ではない」という概念で一貫している。
 逆に、これらに当てはまらないなら、「偽装請負」ということになる。

 意図的であるか否かを問わず、偽装請負の状態を作らないよう、正しい知識を身につけておきたい。


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