ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

懲戒解雇された者や競合他社へ転職した者に退職金を支払わないのは許されるか

2014-11-23 15:28:32 | 労務情報

 退職金は、法律で支給が義務づけられているものではないため、退職金制度を設けるか否かは会社の任意とされる。しかし、退職金制度を設けたなら、その計算方法等を就業規則(またはその別則)に定めておかなければならず(労働基準法第89条第3号の2)、当然、退職者には定められたとおりに計算して支払わなければならない。

 ところで、まれに、「懲戒解雇された者や競合他社へ転職した者には退職金を支払わない」とする規程条文を見掛けることがが、こういった定めを設けることは問題ないのだろうか。
 これについては、そういった定めを置くこと自体は一応会社が一方的に決めることができるものとされているが、現実にその文言通りに運用する(すなわち退職金を支払わない)のは、裁判所が“権利の濫用”として否認するケースがあることは覚えておきたい。

 そもそも、退職金は、「賃金の後払い」と「功労報償」の2面を併せ持つと言われる。
 このうち「賃金の後払い」の面を考えるなら、退職金を全額不支給とするのは、「労働者の永年の勤続の功を抹消してしまうほどの重大な不信行為」(名古屋地判S47.4.28、東京高判H15.12.11等)でも無かった限りは、無効とされうる。
 一方、「功労報償」の面からは、懲戒解雇の場合や競合他社へ転職した場合は、退職金の一定割合を不支給とする(減額する)のは是認されるケースが多い(最二判S52.8.9等)。ただし、競合他社への転職に関しては、予め会社と従業員の間に競業避止の特約があり、その内容が合理的であることを要する。

 そのように考えてみれば、就業規則または退職金規程には、「懲戒解雇された者や競合他社へ転職した者には退職金の全部または一部を支払わないことがある」と記載しておくのが無難ではある。ただし、この文言は、一定の抑止的効果は期待できるとしても、実務上は「ケースバイケースで対応せよ」ということに他ならず、使いづらいことは予め承知しておくべきだろう。


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