尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

映画「リザとキツネと恋する死者たち」

2016年01月12日 21時38分16秒 |  〃  (新作外国映画)
 映画の話を書くときは、これはぜひ見て下さいという感じで書くことが多いけど、ここで紹介する「リザとキツネと恋する死者たち」という映画はちょっと違う。変な映画大好きの僕でも、ちょっと引いてしまうほど変すぎる映画である。ここまで変だと、なかなか面白いと言えない。そのぐらいぶっ飛んだ映画なんだけど、変に気になる。それに「日本」に関する映画である。だから、まあ書いておこうか。

 この映画はどこの国の映画かというと、ハンガリーの映画寝たきりの元日本大使夫人マルタの看護師リザの物語ということで、日本が関わってくる。日本語を教えられ、日本の恋物語を愛する不思議な30歳の「乙女」リザ。そして、リザだけに見えるユーレイ日本人歌手トミー谷(トニー谷にあらず)が昭和歌謡風の歌を歌いまくる。これは日本の歌謡曲を聞きこんだスタッフのオリジナルソングである。リザは30歳の誕生日に、お気に入りの「メックバーガー」に行って「蟹肉バーガー」を食べながら、運命の人の登場を待つが、その間に大使夫人が殺される。その後もリザに関わる事件が続発し、警察に疑われるハメになるが、リザの運命やいかに…。

 この「トミー谷」なる(演じるのは日本人の父とデンマーク人の母を持つデヴィッド・サクライという人)歌って踊れるおかしなユーレイ歌手が、奇妙すぎて笑えるというレベルを超えて、あ然ぼう然。題名のキツネとは、この「事件」に関わる「九尾の狐」伝説のこと。日本の伝説と日本調の歌が、不可思議な事件を起こしていく。おかしな「ジャポニズム映画」とでもいうものはときどき出てくる。昔ドイツで作られた「ベルリン忠臣蔵」なんていう映画があったが、これはそれ以上の珍品ではないか。

 ウッイ・メーサーロシュ・カーロイ監督という人は、相当変な「日本マニア」である。映画は70年代を舞台にしているが、現実のハンガリーはソ連圏時代である。その後、冷戦崩壊後に自由化して、今はEUに加盟しているが、難民問題を受け右派が勢力を強めている。だけど、そんな現実界と離れて、この映画は「異界」を描く。そのポップな感覚に、「日本」がうまくはまったのかと思うが、本国では「驚愕の大ヒット」というけど、ホントかな。「世界三大ファンタスティック映画祭のうちの2つの映画祭である、第35回ボルト国際映画祭でグランプリ、第33回ブリュッセル国際ファンタスティック映画祭で審査員&観客賞を受賞」なんだというけど、この映画は現実の日本ではどうなんだろうか。「幻想の日本」にハマったハンガリー映画が興味深いけど、それほど面白い気もしなかったけどなあ。新宿のシネマカリテでレイトショーだったけど、来週からは昼の時間帯になる。まあ、映画というより、「日本の大衆文化の国際的影響」みたいな関心がある向きかも。
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