尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

安斎育郎さんの「福島原発事故」

2011年06月24日 21時00分24秒 |  〃 (原発)
 いろいろ原発事故に関する本が出てます。もちろん全部は読めません。そんな中で、東京の本屋だとあまり見ないけどおススメ本を一冊紹介。安斎育郎さんの「福島原発事故 どうする日本の原発政策」(かもがわ出版)と言う本です。あとがきの日付が4月18日、発行日が5月13日。だから、事故後にすぐ書かれた本で、事故の現況については出てきません。しかし、そういうことが全部わかるにはまだ時間もかかるだろうし、事故内容だけでなく、放射線の危険性、核分裂のしくみ、原発政策の歴史などがわかりやすく書かれた本として、とても貴重だと思います。とにかく説明がわかりやすい。

 安斎さんは東大工学部の原子力工学科の第1期生だった方です。ところが原子力開発政策に批判的だったため、東大医学部助手になったものの口もきいてもらえない「アカデミック・ハラスメント」を受けます。その後、京都の立命館大学で平和学を教えるようになり、狭義の原子力研究とは離れていたのですが、本来の専門が放射線防護学ということで、今回の緊急出版となります。

 立命館大学では国際平和ミュージアムを作り、今年3月の退職後も名誉館長を務めています。そこは長野県上田市にある戦没画学生美術館「無言館」の京都別館があるところで、最近公開された記録映画「無言館」にも安斎さんが出ていました。ホームページを見ると、来週6月29日(水)の16:45~18:00の時間に、「福島原発から何を学ぶか?-二度の現地調査をふまえて-」という安斎さんの講演が立命館大学で行われるとのことです。京都まではなかなか行けませんが。

 安斎さんは最近は原子力というよりも、岩波新書「だます心だまされる心」のような科学を装ったエセ科学への批判、正しい科学教育の普及などに力を入れてきました。これらの活動はとても貴重なものだと思います。「福島原発事故」も「事態を軽視せず、過度に恐れず、被害者支援と復興にモリモリと取り組もう」という姿勢で貫かれています。なお、微量放射線について、「ちょっと不謹慎」と言いつつ「がん当たりくじ」と表現していて、この表現は前からのものですが、なるほどそうか!とあまりにピッタリの表現にとても納得できました。

 安斎さんの名前は前から知っていて、それは都立両国高校出身だからです。両国高校も中高一貫になり附属中に扶桑社の歴史、公民教科書が採用されています。その問題が起きたときに、都立高校出身者の学者、文化人などを調べたことがありました。僕はかつての都立高校の自由闊達な校風を誇りに思っているので、都立出身者が平和や人権のために活動しているのを知るととてもうれしく思うのです。

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