カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

オタク女子の日本の暮らしと比較文化   北欧女子オーサが見つけた日本の不思議

2017-09-07 | 読書

北欧女子オーサが見つけた日本の不思議/オーサ・イェークストロム著(メディアファクトリー)

 題名の通り、オーサという名前のスウェーデンから来た女性の描いた四コマ漫画集。少女時代に日本のアニメ、セーラームーンをみて衝撃を受け、マンガやアニメーターを目指すことに。自国で漫画家デビューはしていたようだが、留学して日本にやって来て、ブログで漫画を発表したのが認められて、このような本にまとめられたということのようだ。
 比較文化の漫画は数多いが、北欧人の文化も分かるというのが貴重なところかもしれない。さらに政治的な視点はほとんどなく、女性ながら少しばかりオタクっぽいところが(日本にもいるはずだが、恐らく日本文化内では遠慮して埋没している可能性がある)面白さにつながっている。日本人にとっては大変に意外だが、スウェーデン人そのものがおとなしく、控えめな国民性があるらしい。そのくせにハグ文化だったりするので、彼女も日本に混乱しているのは分かるにしても、それを読んでいる日本人の僕も少なからず混乱することになる。もともとそういうギャップを楽しむ本だと思うが、だから漫画としてそういうところが大変に成功している。
 また、恐らく編集との相談もあったことと思うが、基本的に日本大好きというのが前面に出ていて、不快さがあまりないという配慮があるようにも感じた。好きだという素直さは本当らしいというのは伝わるが、そのまま日本にいるだけでしあわせだとする感覚そのものが、何とも好ましく感じられるというのがあるだろう。日本の経済的な価値より、文化的な価値の方が世界的に重要だという指摘も、改めて考えさせられるものがある。また、今この時においても、日本に憧れている個人が海外にたくさんいるだろうという指摘は、本当に何か驚くべきことのようにも思う。
 一方で日本は相変わらず保守的である。このような作家であっても、日本にどれだけの期間自由に住めるのかというのは不明確だ。それは日本を守っているというような政治的な考えの元だろうが、日本人の多くは、さらに無自覚なことなのではなかろうか。海外の、特に外国人の驚異は、日本にとってはイスラムや東アジア問題の方が大きいと思われるが、だからこそさらに少数派の外国人の存在は、まったく見えていないのではなかろうか。そういうことに風穴を開け得るような本であるかはともかく、ある程度は啓蒙に役立つかもしれない。少なくとも僕らが北欧に住むハードルよりもはるかに高い壁が日本にあるらしいことくらいは、日本人は自覚した方がいいのでは無いだろうか。
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