Side Steps' Today

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散財日記

2020年10月17日 | CD批評
渡辺香津美「THE SPICE OF LIFE in Concert」
ライブ盤、それは罪な存在…。企画ありきのライブ盤では、ライブ収録を前提に話が進行。音だけでなく映像までいろいろ費用をかけてライブに臨んだものの演奏はイマイチ。しかし費用をかけたというサンクコストへのコダワリのためにどうしても商用化しないといけない。結果、演者にとっては不本意な作品が出来上がる。海外から人を呼んできてやろうものなら、こうなるリスクは格段にエンハンスさせられるが、選んだそんな一枚がコレ。名盤「THE SPICE OF LIFE」をライブでという企画だが、とにかくスタジオ盤対比で落差著しい。通常はライブ盤の方が熱気やスピード感があり、その後にスタジオ盤を聴くとガッカリというパターンは多いがその逆はまず珍しい。演奏はトリオ形式で渡辺香津美(Gt)、ジェフ・バーリン(B)、ビル・ブラフォード(Dr)という素晴らしいメンツだが、ビルが本当に冴えない…。他の演奏を聞くにビルは曲構成を覚えるのが困難なようで、明らかに構成上パターンを間違っていることが結構多い。間違ったならそのまま間違ったパターンでゴー・アヘッド!という場面でも、1~2小節間違って叩いたところで気がついて本来のパターンに戻るという正直者。イソップ童話「ヘルメースと木こり(金の斧)」の正直者の木こりのように…「私が落としたのは鉄の斧です」(ビル)。ちなみにワタクシもかつてはライブで間違った際は顔に出る性格で、アンケートにも「間違っても聴いている人はわからないので顔に出さない方がいいと思います」とお客様から指摘される側だったのだが、いつのまにか「私が落としたのは金の斧ですが、それがなにか?」という厚顔な性格になってしまいました…。名曲「Hiper K」の4:35付近は特にヤバイ。ビルは自ら3連系フィルをフリながら自ら拍を見失っているが、フッた本人が拍を見失うことって普通はアマでもあまりないような気も(ドラマーならなおさら)。もはやテロの領域だが、おそらくジェットラグで体調が悪かったのだろう、と思いたい。渡辺香津美は毎度のようにライブでの出音がショボい印象変わらず。お金のない中学生時代、立ち読みのギタマガに載っていた冷蔵庫のような豪華巨大ラック2台(40U位?)のエフェクトの機材写真を見た時に「こんな機材使っているのに音がショボいんだ…」と童心にも思った記憶が蘇る。そんな中での白眉はマイ・アイドルたるバーリン!しかし、トリオというあまりにコード感の無さからシンセを弾かざるを得ない場面もあって「俺のバーリンがなんでシンセを…」という義憤も。しかしそれ以上に動くバーリンに感動ひとしおで、これだけでDVD購入した価値ありと自らを無理に納得さす。