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9条安全保障論(連載最終回)

2016-09-17 | 〆9条安全保障論

Ⅵ 恒常的軍縮政策

三 国際的軍縮活動

 9条安保論における恒常的軍縮政策の最後の柱は、国際的軍縮活動である。この点、従来から、日本国は唯一の被爆国として核軍縮に取り組む「姿勢」は見せてきた。
 しかし、その実態は「姿勢」とは裏腹に、米国の核の傘に依存し、核の先制不使用に反対する、自ら国連の核兵器廃絶決議を主導しながら、核兵器の禁止・廃絶に向けた法的枠組の強化を誓う決議案(オーストリア提出)については、同盟主米国への「配慮」から棄権するなどの矛盾した行動に終始している。本年5月のオバマ米大統領の広島訪問のような象徴儀礼的なイベントも、自己矛盾を取り繕うための煙幕のような働きをしているようにしか見えない。

  このような表裏二枚舌の国際行動は、9条が示す方向性とは合致しない。9条が最終的に目指す未来の非武装世界の実現のためには、ぶれることのない一貫した国際的軍縮活動の軸が必要である。核廃絶は、その最初の一歩にすぎない。
 核廃絶は通常兵器の温存やその反射的増強を意味してはならないのであって、兵器の中でも最も反人道性の高い核兵器―広くは大量破壊兵器―を手始めに、およそあらゆる兵器の廃絶を目指す必要がある。このことを「非現実的」と言うなら、それは9条を離れた「普通の」安保論にすぎない。

 まずは核‐大量破壊兵器廃絶を大前提としつつ、将来における全兵器廃絶及び軍隊廃止の誓約決議を国連レベルで採択できるように日本国が率先して運動していくことが9条の指示する道である。一方では、軍事行動を招くような現実の国際紛争の解決と平和構築のための具体的な仲裁活動にも積極的に取り組む必要がある。「世界の保安官」ならぬ「世界の仲裁官」たらんとすることである。
 それによって「恐怖の均衡」によるのでない真の国際平和が実現され、すべての国にとって巨額の財政負担を強いる兵器や軍隊の必要性が低減していけば、自ずと未来の非武装世界への展望が開けてくるであろう。このような実のある国際的軍縮活動の進展に合わせて、国内の自衛武力の削減を順次進めていくことが、恒常的軍縮政策の意味である。

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 今回をもって、9条に則った安全保障論に関する一連の短い連載を終える。これを通じて示したかったことは、従来想定されてきたような理念的な平和主義を超えて、9条が秘める幅広い可能性である。同時に、本連載は自身の目の黒いうちに実現しそうにない未来の非武装世界へ向けた道しるべでもある。どなたかがこの連載を偶然にでも目にし、これを希釈化することなく、さらに発展させ、現実の安全保障政策にも活用してくださることをわずかでも願いつつ、稿を閉じる。(了)


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