金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

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昨日今日明日あさって。(アリス)91

2019-01-20 07:38:54 | Weblog
 ブルーノは家系図を読み込む。
祖母のジェナが小島子爵家でクララとコーリーの姉妹を生み、
そのクララは木村子爵家で当主と妹を、
コーリーは神崎子爵家で当主と弟を生んだ。
木村家の当主は断頭台に消えた。
神崎家の当主も同様に消える予定でいた。
残る問題は木村家の妹と神崎の弟、二人の存在が頭を悩ませた。
 するとベティの懇願。
「ねえ、お願いがあるの。
妹や弟だけでなく、ジェナも含めてなんだけど、
その三人の追跡調査は妾に任せてほしいの」
「どうした・・・、何かあるのか」
「鑑定スキル持ちとしての興味ですわ。
同族に固有のスキルが遺伝することは知ってらっしゃるでしょう。
例えば水の魔法。
親が高レベルですと、子供や孫達の多くにそれがスキルとして現れる。
事実、妾の母親も鑑定スキル持ちでした。
高ランクでスキルレベルは☆三つ。
スキルと血、興味をそそられます。
スキルは別にして、
連綿と繋がる血が如何なる影響を子孫にもたらすのか・・・。
スキルに昇華されないのは何故か・・・。
ユニークスキルとしても現れませんものね」
「問題はない。
ポールに任せるつもりでいたが、そちに頼もうか。
事情が事情だから内密に進めてくれ。
スキルとか血とか、貴族が好む話の一つだ。
我は好かんが、貴族なら暇にあかせて如何様にも転ばせる」
「承知しています。
宮廷の人間ではなく、忍者を用いる予定でいますの」
「ほう、そちは忍者に伝手があったのか」
「妾付きの女武者の一人が伝手を持っています。
彼女を窓口にして口の固い腕利きを集めますわ」

 ブルーノはベティとポールがもたらした情報を元に、
判決文を書き上げた。
それをボルビン佐々木侯爵に渡した。
「下書きだ。遠慮はいらん。問題箇所があれば言ってくれ」
 ボルビンは片手に判決文を持ち、顎に手を当てた恰好で言う。
「苦渋の決断をなさいましたな」
「それが我の仕事だ」
 貴族に相応しい最期にしてやろう、と思っていた。
毒を下げ渡し、領地は半分没収に留める。
残った領地は爵位降格の上で実弟に継がせる。
子爵から男爵に。
没収した領地と同等の金額を被害者に損害賠償金として与える
そのつもりでいたが、取り止めた。
実弟に継がせる気が失せた。
少しでも疑問のある血は、禍根は残せない。
 ベティとポールも下書きを読んだ。
「早いですわね」ベティが驚いた。
 処刑日は明早朝にした。
場所は二つある刑場の一つ、西門刑場。
犯罪人として断頭台に送り、首を刑場に晒す。
「何かと口出す輩が増えてきたから、その前に処刑することにした」
「もしかして、あの方々ですわね」
「この国都は元より、山城一帯は国王の直轄地であるというのに、
何かと五月蠅い」
 評定衆のことだ。
彼等は国政全般への助言が役目で、
国王直轄地への口出しは越権行為として禁止されていた。
それでも彼等は何かにつけ、直轄地に食い込もうとする姿勢を見せた。
中には国王の専権事項にまで手を伸ばそうとする者も。
一線を越えようとして口先介入を試しみる者が多く、手を焼いた。
 それらを間近で見聞きしている三人が気の毒そうな表情をした。
陰にいる侍従は思い当たりが有り過ぎるのか、
拳を握り締めて下を向いた。
 ボルビンが思い出したように言う。
「一罰百戒、と言う言葉があります。
ここは一つ、処刑を遅らせてみようではありませんか」
 ベティが首を傾げた。
「評定衆が口を出して来るのではなくて。
神崎子爵の領地がある但馬地方は、
もしかして毛利侯爵の派閥ではなかったかしら。
寄親の伯爵がそうだとすると、
面子を潰された、とか言って毛利侯爵を担ぎ出すかも知れないわ」
 ボルビンは悪い笑顔。
「そこを待ってから処刑して、国王専権を思い知らせるのですよ」
「喧嘩を売るつもりなの」
「まさか、常識を教えてやるのですよ。
毛利が相手なら三好が味方するでしょう。
簡単に一蹴できます」
 ブルーノは引き出しから新しい用紙を取り出した。
「処刑日付を遅らせよう。
出来るだけ見物人が集まるようにしよう」

 ブルーノはアルバート中川中佐を呼び出した。
今回の取り調べを任せている近衛士官だ。
制帽を脱いで入室し、無表情で執務机の前に立つと、
制帽を持つ手を胸元に置き、背中を真っ直ぐ伸ばして言う。
「中川中佐、お召しにより参りました」
「待たせたな」
「いえ、職務です」
 ブルーノは判決文を手渡し、よく読んで間違いを指摘せよ、と命じた。
アルバートは制帽を脇の下に挟んで、両手で判決文を大きく広げた。
ゆっくり視線が動いた。
早く読もうという気はないらしい。
人ひとりの命がかかっているだけではない。
多くの家臣や領民の生活もかかっている。
それが分かっているので判決文を丁寧に精査している様子。
もしかすると、行間の意味まで汲み取っているのではなかろうか。
 アルバートが顔を上げた。
判決文を下ろして言う。
「遺漏もありません。
要約で確認いたします。
・・・。
六日後に西門刑場。
断頭台送り。
首晒し期間は十日。
遺体は、希望すれば遺族に送り返す。
国都の屋敷、領地は没収。
家名、爵位は取り上げの上、平民に落とす。
遺族や家臣は領地から三ヶ月の間に退去のこと。
移住先は国都以外ならどこでも許可する。
没収した屋敷は国軍の預かりとする。
同じく領地も現地の国軍の預かりとする。
被害者への賠償金は国王が差配する。
・・・。
以上ですね。よろしいでしょうか」
「よろしい。
それを近衛軍司令官に届けてくれ。
処刑人の選定から、諸々一切を司令官に一任する。
国軍との繋ぎも任せる」
「了解いたしました」
「あっ、そうだ、被害者の賠償金は我が差配する、となっているが、
もしかすると状況にもよるが、領地を与えるかも知れない。
その際は神崎子爵から没収した領地ではなく、
関係のない他の土地を振り分ける。
そこは承知して置いてくれ」
「余計な口出しになるかも知れませんが、
被害者のエリオス佐藤子爵様は宮廷貴族です。
領地運営の経験がない、と思うのですが」
 貴族と言っても様々な形態があった。
その一つが宮廷貴族。
領地を持たぬがゆえに文武官として国王の膝下、直に仕え、
引き換えに年俸を得る者達のことをそう表現した。
「そうか、失念していた。よくよく考慮しよう」
「了解いたしました。
他に何かございませんか」
「牢の神崎子爵には最後まで快適な暮らしを提供せよ。
面会希望も可能な限り許すように」




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