切れ切れ爺さんの徒然撮影&日記

主に寺院や神社等を中心に、文化財の撮影と紹介。
時に世の中の不条理への思いを発言していく。

《 ロシアによるウクライナへの侵略という暴挙 》 ⑯  2022.4.22

2022-04-22 23:23:11 | 社会


◆ マリウポリは陥落したのか、徹底抗戦中なのか?

 この間、マリウポリにおけるウクライナ軍とロシア軍の激戦は物量に勝るロシア軍が優勢と言われ、ウクライナ側はマリウポリの都市内にある巨大製鉄所の地階に追い込まれる形となっている。地上におけるウクライナ側の援軍についてはかなり厳しい状態で、実質上支援経路が途絶え、ウクライナ軍としては共に逃れている民間人を支援しながら、次第に弾丸等がなくなりつつあり戦闘継続がまもなく尽きようとしている。
 ゼレンスキー大統領も SNS で世界に向けて発信を続けており、製鉄所の地階に逃れている民間人の救出に向けて、全勢力をかけて助けてほしいと願っている。こういった状況に対してロシアのプーチン大統領は実質的に、マリウポリが掌握できたとの軍司令部からの報告を受け、これ以上の地上戦は犠牲者を出すので無駄であるとして、中止を命令し同時に製鉄所を包囲して誰一人出入りができないようにするよう指示したとされる。
 ゼレンスキー大統領はプーチン大統領のこの発言に対して、マリウポリにおいては未だにウクライナ軍が抵抗を続けており、降伏はしていない、徹底抗戦の最中であると発言している。実際のところ様々な情報が錯綜する中で、どの情報がどこまで信憑性の高いものであるかは分かりにくいのが実態だ。ただこれまでの経緯からしてロシア側の発表は嘘であるケースが多く、あくまでも世界に対してマリウポリがこれで「解放された」と発信することによって、国外においても国内においても正しいことをしているのだと言うことを印象付けようとしている。
 これによって5月9日の対独戦勝記念日の軍事パレードが戦果を伴って実施できると判断したのだろう。しかも戦勝記念パレードをマウリポリの市街地で行うと言うのだ。厚顔無恥も甚だしいとしか言いようがない。
 ウクライナはこのようなプーチン大統領の発言に対して、巨大製鉄所に民間人と兵隊たちが追い詰められていることを認めつつも、一部の部隊が地上戦において未だに戦闘状態にあると明確に発言した。実際米軍などの衛星画像解析からも、ロシア軍の大きな変化移動の状況が見られず、膠着しているような状況から判断するに、やはり戦闘状態にあるのは確かではないかとの推測が発表されている。



◆ ロシアに連れ去られた民間人の運命は?

 ウクライナ東部戦線の地域において、ロシアと国境を接するウクライナの市街地に住むウクライナ人たちのかなり多くがロシア側に連れ去られた。その時点で命だけは助けられたという形になるが、戦争状態にある中では民間人であっても捕虜の扱いとなる。捕虜は捕らえられた時点でたとえ敵の国内であっても、生存権は保障されなければならない。そして戦争の終結と同時に元の国へ帰されるのが筋だ。基本的には第1次対戦であろうと第二次対戦であろうとそのように扱われてきたはずだ。
 しかしロシアにとって、それ以前の旧ソ連にとって、この筋は通用しないようだ。周知の通り第二次世界対戦において捕虜となった民間人であれ兵士であれ、捕らえられた者はソ連の広大な国土の東部へ、つまりシベリア地方へ送られ、そこで強制労働の任務が与えられ少ない食料しかない中で、朝から晩まで肉体労働をさせられ大勢の人が栄養失調や病気その他で亡くなっている。後年強制労働から解放され国へ戻ってきた人々の証言は、その過酷な強制労働の実態を数多く明らかにしている。
 そして今回のウクライナ侵略戦争においてもすでに、大勢連れ去られた民間人、中心は老人、女、子供達となるが、彼ら彼女たちは極東シベリアの地へ送られるのではないかと心配されている。このところロシア国内では極東に住む人たちが生活の厳しさを嫌って、西部の人口密集地帯の方へ移住する傾向が強まり、シベリアの地が人口不足で荒れ地も増えているという。その地域にウクライナから連れ去った人たちを送り込んで労働させようというのがロシアのやり方ではないか、ともっぱら心配されている。
 つまりロシアという国は、国際的な人権上の取り決めなどを守るような国ではなく、自分勝手にご都合主義で個々人の人権を奪い自由権を奪い、何もかもロシアという国のために人々を強制することなどを平気でやれる国、ということだ。無論これはロシアという国の過去の歴史的な経緯や国民性、そしてさらに加えて独裁体制が成せる技といえよう。


 
 ロシア側の一方的な言い分としてはあくまでも戦争ではなく、「特別軍事行動」というウクライナによって虐げられたドネツクやルガンスク地方の人々を解放するための作戦であるとの主張であり、戦争との認識はないと主張している。従ってロシア側に連れ去られたウクライナの民間人や兵士たちは捕虜ではなく、自ら進んでロシアに身を寄せた人々であり、その人たちに働く場を与えるという名目でシベリア送りをすると言う詭弁を弄することになるのだと思う。
 無論こんなことが許されるはずもなく、こういう事態が起これば世界中がロシアに対して非難すべきだし、更に厳しい措置を取るべきだというのは当然のことだ。
 
◆ ロシアに対する経済制裁は効果が上がっているのだろうか?

 先日プーチン大統領は西側諸国の経済制裁は完全に失敗に終わったと主張した。すなわちルーブルの貨幣価値はさほど下がらず、大きな影響を受けなかったという。また国内物価も少し上がった程度であり、国民生活に大きな打撃を与えるに至っていないというのだ。ただこのあたりの問題については、まだ判断は時期尚早であるのではないかとも考えられる。今後じわじわとルーブルの価値が低下し物価の激しい高騰等、品不足も加えて国民生活に大きな影響をもたらす可能性は十分にあるのだろう。
 しかし懸念されるのはロシアに対する経済制裁に対して、これにどの国もが賛成しているわけではないという事実があることだ。これは EU 諸国の内部やアジア諸国の中でも態度が分かれている部分であり、経済制裁をするにしても、その程度の足並みが必ずしも揃っているわけではない。そういった点からはロシアにとっても、いわば抜け道が数多く存在する可能性があるのではないかと考えられる。そういったところからこの経済制裁というのは効き目半ば、といった状態で推移する可能性も十分にある。
 日本にしても経済制裁には参加しているが、重要なエネルギーの輸入についてはロシアからの輸入量がかなり大きな部分を占めており、これらがすべてストップできるのかどうかという点で弱みがあるのは確かだ。サハリンの天然ガス開発においても、日本の民間企業がロシアの企業と共同での開発を進めてきたが、現時点においては日本政府はここから引き上げることはしないとの判断だと言う。イギリスのシェルオイルは既に撤退を完了した。しかし日本はどのような理屈なのかわからないが、ここから撤退するとかえってロシアを利することになると主張して、現段階においては共同開発から撤退はしないらしい。

 これは何もエネルギー問題だけではなく、農産物においても小麦などの食料品についてはロシア依存度はかなり大きく、多数の品目にわたっている。これらを完全にストップさせるとたちまち最初言われていた、いわゆるブーメラン効果で制裁したはずが、逆に制裁を受けてるかのようなダメージを受けてしまうことになりかねない。そういった意味では日本はエネルギーにおいても穀物類の輸入においても新たな国から、あるいは既存の国から輸入量を増やす交渉をしなければならない。無論それが困難であることは言うまでもない。
 そして実際にこのところ日本の中で、エネルギー及び食料品の値上がりが急激に進みつつある。天然資源開発においては日本の近海で海底に膨大な量のエネルギー資源が発見されたなどとは言っているが、これらが実際に採掘されるようになるまでにはまだ10年20年とかかるだろう。元々天然資源は無いに等しい国なのだ。更に食料についてもかねてから「食料安保」という表現がずっと使われてきていたが、現実に日本の政府は食料自給率を高める政策をほとんどとってこなかった。むしろ逆に日本の得意分野であった一次産業の収穫が一部を除きどんどん減っており、そのぶん輸入を増やさざるを得ないような実態となっている。
 日本という国が独立国家として自立していくためには、基本的なエネルギー資源や食糧資源がどれだけ自給できるのかというのが決定的に大事な問題となる。やはり先の太平洋戦争において日本が戦争に踏み切る原因の一つになったのは、資源不足という背景があったはずだ。そういったところから日本は戦後何も学んで来なかったんだろうか。これから先日本という国が世界のどの国とも仲良く共存共栄できるとは限らない。日米安全保障条約という名のもとに、いわば軍事同盟的なものを結んでいる限りは、当然日本は平和を希求する国家としては認められることはないだろうと思う。



◆ ロシアの今後の戦略はどの方向に向かうのか

 現時点でウクライナ東部については、そして南部の湾岸地帯については実効支配の中に入ってしまっている。ウクライナ軍が今後体制を整えて、西側諸国から大量の武器援助を受けながら反撃を開始すればどのようになるかはわからない。しかしこのままいってしまえば東部は完全にロシアのものになる可能性が高い。
 すでにロシア側も甚大な損害を出しており、多くの兵士の死者を出している。プーチン大統領は国内向けに正義の作戦行動だということを主張しながら、ナショナリズムを煽ってなんとかこの戦争を乗り切ろうとしている。
 仮に5月9日までの時点で、東部の地域が支配されたまま一旦停戦となれば、事実上そこはロシアのものとなる。ひょっとすれば名前だけの独立国として存在させておき、傀儡政権を存続させて後日、ロシアとの併合に持っていくということが考えられる。この時にすでにクリミア半島が実効支配下にあり、そこを結ぶ湾岸地帯も支配されれば、重要な地域がロシアのものとされてしまう可能性が極めて大きい。更にロシアが軍隊の力でウクライナ全土を掌握、などということはロシアの経済的な事情からは考えられないだろう。今現在マリウポリの製鉄所の包囲を行っていること自体で手一杯という状況なのであり、とてもウクライナ全土への拡張は無理だと思われる。そういったところから考えて、東部から南部にかけての支配で停戦合意に持っていく可能性が高い。それだけでもロシアにとってみれば大きな戦果となる。無論西側諸国はそれを許すはずがない。そういった意味ではロシアは今後何十年にもわたって制裁を受けることになるだろうと考えられる。少なくともプーチン氏が大統領でいる限りは原状回復なんていうことはありえないと考えるべきだ。
 そしてまた何年か経ってから体制を整えて、さらにウクライナへの侵略を開始することがあるかもしれない。こうして年数をかけてじわじわとウクライナに攻め込んでいく。最終的にはウクライナ全土を手中に収めるというのがロシアにとって、最も望ましい戦略となるだろう。最終的には旧ソ連邦時代の国土を全て回復する、というのが大きな目的ではないかと思う。



  (以下続く)  (画像はTVニュースより)
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