ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

「わたしを離さないで」を読んでみました

2017-11-01 10:48:12 | 文化
今年のノーベル文学賞に、日系人のカズオ・イシグロ氏が決まりました。

彼がどんな文章を書いているのか全く知りませんでしたが、何冊か日本語に翻訳されており電子化していましたので、「わたしを離さないで」という小説をタブレットに購入し読んでみました。もともとはかみさんが読みたいというので購入したのですが、私の方が先に読み終わりました。

この小説は本来何の予備知識もなく読む方が良かったような気もしますが、購入時に「臓器提供者」という生まれたときから大人になれば、自分の健康な臓器を病気の人に移植することが義務付けられている特殊な人たちの物語ということが分かっていました。

時代は1990年代イギリスという設定でしたが、これが書かれたころクローン羊などが生まれて話題になっていたのかもしれません。

主人公のキャシーという女性は、冒頭31歳で提供者の介護人を11年もやっているというところから始まります。話は彼女の思い出という形で、おそらく小学生から中学生ぐらいの年代を過ごした、ヘールシャムという施設での出来事に移ります。

そのほとんどが彼女の親友のルースとその恋人トミーを中心に進んでいきますが、その中に保護官と呼ばれるいわば教師のような人たちとの関わりが描かれています。ここは完全な閉鎖社会ですが、小さな住人達は自分が将来提供者となる運命が分かっており、それを前提とした色々な出来事が起きてくるわけです。

色々な出来事も普通の養護施設などで起こりそうなものですが、若干異常なところがあると、それはこの提供者になるという運命のためというやや恐ろしい感じも出ています。それでも大部分はこの頃の年代の子供たちにありそうな事項を、淡々と述べています。

ある程度大きくなるとコテージと呼ばれる施設に移りますが、ここはある程度一般社会とのつながりも出てきます。免許を取ってドライブに出かけたり、外で食事をしたりするようにもなります。

ここで大きな話題がルースの親探しです。これは後になって分かるのですが、ここの人たちは全員がクローン人間ということになっています。それでもやはり自分の親がどんな人かを知りたいというのは、普通の感情のような気もします。

ここでは介護人になる訓練をしたりしていますが、まず介護人となりその後提供者となるという道筋となっています。キャシーの親友ルースも提供者となり、亡くなって初めてトミーが本当に愛しているのが自分とわかりました。すでにこの時トミーは提供者となっていたのですが、二人は提供者になる「猶予」を願うのですがかなえられませんでした。

このトミーが4回目の提供をする(たぶん亡くなります)ところで終わっています。推理小説好きの私としては、あまり読んだことのない部類でしたが、短時間で呼んでしまったということは、かなり興味を持てた面白い小説と言えるのかもしれません。