ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

老化細胞の除去ワクチンを開発

2021-12-31 10:25:36 | 健康・医療
最近の研究では分裂することができなくなった老化細胞が、慢性炎症などを引き起こし加齢が進むとされています。

順天堂大学の研究グループが、この老化細胞を取り除くワクチンの開発に成功したと発表しました。

細胞は分裂を繰り返すと徐々に分裂が遅くなり、最終的には全く分裂できなくなってしまいます。通常はこのような細胞はアポトーシスにより死滅するのですが、残ってしまうことがあり、これを老化細胞と呼んでいます。

この老化細胞が臓器や血管などにたまると、慢性炎症が引き起こされ加齢や肥満に伴う病気が進行することが分かってきました。最新の研究ではこの老化細胞を除去するのに、NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)が効果があるとされ、すでにサプリメントとして販売されています。

これが本当に若返りに効果があるのかは、今後の研究の推移を見る必要がありそうです。さて研究グループは老化細胞に働くワクチンを開発したのです。

研究グループは、老化細胞に多く見られるタンパク質をヒトの血管内皮細胞で発見しました。このタンパク質が動脈硬化や高齢のマウスの血管や内臓脂肪で増加していることも確認しました。

肥満食を与えたマウスの実験で、そのタンパク質を薬で取り除くと肥満に伴う動脈硬化や糖代謝異常の改善が見られたようです。このタンパク質を老化細胞を見つける目印の「老化抗原」とし、その抗体を作るための「老化細胞除去ワクチン」を開発しました。

これを接種すると、抗体がタンパク質と結合し、白血球などが食べて老化細胞を除去してしまうとしています。肥満食を与えたマウスにこのワクチンを接種すると、老化細胞が除去され糖代謝異常が改善され、動脈硬化のマウスでも症状が改善しました。

そのほか加齢に伴うフレイル(虚弱)の進行の抑制や、寿命が短い早老症のマウスの寿命が伸びる効果も得られたようです。このワクチンがどういうものかの具体的な記載はありませんが、老化細胞に発現するタンパク質を接種するものかもしれません。

研究グループは、動脈硬化や糖尿病はもちろん希少疾患である早老症、アルツハイマー病や肺線維症、変形性膝関節症などへの応用が期待されるとしています。また加齢とともに増える病気の多くが標的になる可能性もあるようです。

この老化細胞除去ワクチンには若干疑問な点も残っていますが、老化細胞に発現するタンパク質を標的にするといった手法は画期的なものなのかもしれません。

まだ動物実験での効果を見る段階ですが、ヒトを対象にした臨床試験が可能なのかを含めて、今後の展開を期待しています。

2021年の科学ニュースをまとめます

2021-12-30 10:26:53 | 時事
2021年も残すところ僅かとなりましたが、今年も新型コロナに翻弄された1年といえそうです。

年間を通じでほぼまん延防止措置や緊急事態宣言が出ており、10月以後やっと日常生活が戻ってきたような気がします。マスクの着用や手の消毒などの感染対策が、完全に日常生活に定着しワクチン接種が進んでも同じ状況が続いています。

従って今年の科学ニュースの第1は新型コロナとなります。感染力の強い変異株の出現で、今年の世界の感染者は1億9000万人で昨年の2.3倍となり、死者も1.8倍の346万人に達しました。

コロナの「懸念される変異株」として日本では今春の第4波を引き起こしたアルファ株に始まり、過去最高の感染者となったデルタ株で第5波となりました。このため東京オリンピックは原則無観客となりました。

このオリンピックの総括的なことを全く見ませんが、そんなこともあった程度の印象しか残っていません。さてワクチン接種も順調に進み、国民の8割近くが2回接種が完了しましたが、予防効果を上げるため3回目接種が始まりました。

次が真鍋淑郎さんに温暖化予測など気候変動予測研究に対してノーベル物理学賞が授与されました。この内容は私の理解の範囲を超えていますが、気温や風向きといった大気の状態が、物理法則に基づいてどう変化するかの計算を確立しています。

3番目は気候変動対策としてCOP26では、気候危機を防ぐために「産業革命前からの気温上昇を1.5度に抑える努力を追求する」ことで合意しています。今年は世界各国で洪水や森林火災などの気象災害が相次ぎました。

そこでこういった世界目標が強く位置付けられたようです。既に地球の気温は約1.1度上昇しており、今後20年の間に1.5度に達する可能性があると警鐘を鳴らしています。ただ私は地球温暖化は太陽原因説ですので、人間が二酸化炭素削減して効果があるのか疑問に思っています。

4番目としては、ゲノム編集食品の販売が開始されたことを上げます。遺伝情報をピンポイントで変えられる「ゲノム編集技術」を使って、品種改良した食品の販売が相次ぎました。

遺伝子組み換え食品に大きな反発が起きた割には、今回はあまりそういった話が出てこないのは不思議な気がします。

その他あまり興味がないので取り上げませんでしたが、宇宙開発が進み民間人が宇宙へ出て行ったことは最近のトピックスです。福島原発の処理水を海に放出することが決まったり、子宮の生体移植が容認され、海底火山の噴火による軽石が問題になったりもしました。

1年を振り返るといろいろあったのですが、どうもコロナの陰で霞んでしまった1年といえるのかもしれません。

肥満でコロナは重症化するか

2021-12-29 10:29:12 | 健康・医療
このところ新型コロナは落ち着いた動きを見せていますが、オミクロン株の市中感染が見つかっており、増加してもおかしくない状況かもしれません。

東京都の感染者数が前週の同じ曜日を上回ったとはいえ、30人が40人という低いレベルですので、それほど急激には増加しないでしょう。

一説によると肥満の人は新型コロナの重症化リスクが高くなるという話があります。日本は海外ほど極端な肥満の人は少ないのですが、ここでは体格指数のBMI(体重÷身長の2乗)が30以上の人を指しています。

BMI30というと身長1メートル70センチで87キロぐらいですので、該当者は多いかもしれません。大阪府の調査では、第5波で重症になった40歳代以下のコロナ患者で、BMIが30以上の人の割合は2割を超えていました。

肥満はたまった脂肪によって肺や気道が圧迫されている状態で、もともと呼吸に負担がかかっています。内臓脂肪は普段から病気とは言えない程度の軽い炎症があることが多く、ウイルス感染が引き金になって炎症が急にひどくなると、免疫が暴走して重症化につながるとみられています。

肥満の人は、もともと感染リスクが高いという話もあるようです。ウイルスは受容体と呼ばれるタンパク質と結合し、細胞の中に入り込んで症状を引き起こします。

コロナウイルスと結合する受容体は、肺や腎臓といった臓器のほか脂肪にもあり、脂肪が多いと感染しやすいといわれています。また肥満の人には「隠れ糖尿病」も多いようです。

血糖値が高いのに放置して、コロナになってから急に糖尿病が悪化し、コロナ自体も重症になるという悪循環に陥るケースが臨床現場でもでています。

厚生労働省が国内の感染者を分析したところ、重症化要因とされる肥満や糖尿病、喫煙などがない感染者が亡くなる確率は0.41%で、肥満の感染者は1.55%と4倍近くになっています。これは死亡率ですが、当然重症化率も同じように高くなっていると考えられます。

ここでいうウイルス受容体(ACE2といわれています)が肥満細胞に多いという話は初めて聞きましたが、感染者の中で肥満の人がどの程度いるのかの調査が必要な気もします。

肥満と糖尿病の関連はよく言われていますが、肥満の原因の60%が遺伝的な体質のためであるというデータもあり、肥満を減少させるのは難しいようです。

ここで述べている肥満でコロナが重症化するというのはありそうな話ですが、コロナ禍で家にいる時間が増えて運動不足など太る要素が多い現在は、肥満にならないようにするというのはなかなか難しいのかもしれません。

認知症が増え続ける日本の危機

2021-12-28 10:30:11 | 健康・医療
このところ認知症について取り上げていますが、やはり高齢になると気になる病気のひとつです。

私も認知症を発症した人をかなり多く見ていますが、患者自身は認知症であることを自覚せず介護をする側が大変な病気といえるのかもしれません。日本ではこの認知症が増え続けているため、大きな社会問題となって来そうです。

OECD(経済協力開発機構)によると、日本人の認知症有病率(認知症の人の割合)は2.33%で、先進35か国の中で最も高くなっています。OECDの平均は1.48%ですので、なぜか日本は認知症を発症する人の数が多いということになります。

これは日本の平均寿命が長いことと関連しているのかもしれません。日本の認知症の高齢者数と有病率の将来推計によれば、認知症の患者数は2012年には約462万人で、65歳以上の7人に1人でしたが、さらに軽度認知症患者が約400万人と推計されています。

認知症の患者は今後も増え続け、我々団塊の世代が75歳になる2025年には約700万人に達し、高齢者の5人に1人がなる計算となります。さらに内閣府の「高齢社会白書」によると、認知症患者は2030年には830万人になり、2050年には1000万人を超えてしまうといわれています。

高齢化社会の進行に伴い、認知症予備軍も含めるとさらにその数は増えていくことが予想されます。認知症はもはや「他人事」ではなく、「自分事」として早急な対策を迫られています。

国もこうした事態に手をこまねいているわけではなく、認知症の予防については省庁を超えて取り組む国家戦略案が示されています。

厚生労働省は2015年に「新オレンジプラン(認知症施策推進総合戦略)」を策定して、認知症患者の人権と意思を重んじ住み慣れた地域で暮らしていける社会の実現を目指す、としています。

これが具体的にどのように認知症の予防になるのか分かりませんが、単なる戦略案にすぎないような気もします。認知症とは「いったん獲得した知的機能が持続的に低下し、複数の認知機能障害のために社会生活に支障をきたすようになった状態」と定義されています。

つまり認知症というのは「状態」のことであり、特に認識力、記憶力、判断力といった社会生活や対人関係に欠かせない能力が衰え、生活に支障をきたす状態を指しています。

認知症の有効な治療は見つかっていませんし、治療薬が認可されようとしていますが進行を止めるのが限界かもしれません。認知症の予防には生活スタイルを変え、健康的な生活を送るということが出てきますが具体的なことはありませんし、予防できるものではない気がします。

私は認知症は老化のひとつであり、個人差が大きいものですので発症したらあきらめるといった類の病気と考えています。

コロナの飲み薬を厚労省が特例承認

2021-12-27 10:25:23 | 
国内のコロナ感染者数は300人前後とあまり増加の傾向はみられませんが、オミクロン株の市中感染が出てくるなど、まだまだ予断を許さない状況です。

海外ではフランスで10万人を超し、イタリアでも5万5千人と過去最多を更新しています。欧米ではけた違いの感染者が出ており、韓国も増加しているのに、なぜ日本ではこの程度で治まっているのか、いろいろな説が出ていますがこれといった理由は分からないようです。

ここにきて厚生労働省は、新型コロナウイルスの飲み薬として開発されたメルク社の「モルヌピラビル」の国内での製造販売を特例承認しました。

軽症者にも使えるコロナの飲み薬は国内初で、政府は全国の指定の医療機関や薬局に20万人分を配送し、早期に使えるようになるようです。

モルヌピラビルは、細胞に感染したウイルスが増殖するのを抑える効果が期待でき、12時間おきに1日2回、5日間で計10回服用します。対象は18歳以上で高齢や基礎疾患があるなど重症化リスクが高い軽症から中等症の患者としており、発症から5日以内で効果が期待できます。

医療機関で患者に服用してもらうほか、外来での診療後に院内の薬局で処方したり、院外の薬局から自宅に配送して届けたりできます。新型コロナの薬は国が費用を賄うため、患者の自己負担はありません。

メルク社によると発症5日以内で、重症化するリスクが高い軽症から中等症の患者約800人が参加した臨床試験での中間結果では、プラセボを飲んだ患者に対し、この薬を飲んだ患者は入院や死亡するリスクが約50%低下しました。

しかしより規模の大きい約1400人が参加した治験の最終解析では、入院や死亡リスクは約30%の低下となっています。

この30%低下というと少ないように感じるかもしれませんが、これは1000人に投与して700人が重症化するリスクがあるという意味ではありません。実際に1000人に投与した場合、日本では約80%がワクチン接種が終わっていますので、800人は重症化しないと考えられます。

またコロナの重症化リスクは20%程度ですので、残りの200人のうち40人ほどが重症化リスクが出てくるわけです。これがモルヌピラビルを飲めば、プラセボ効果も入れて50%程度に低下するとして20人に重症化リスクが出てくるという計算になります。

つまり1000人に投与すれば、重症化するリスクのある患者はわずか20人になり、十分効果が認められる薬となるわけです。この辺りが臨床試験の有効率より、実際に使用した時はよく効くという薬の特性といえます。

この辺りは使用開始後の国内での使用例の追跡調査が出るはずですので、実際の有効率が出て来るでしょう。この薬が出てきたことで、日本もコロナに対する新しい武器を持ったといえるのかもしれません。