ごっとさんのブログ

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平均寿命、男女とも過去最高に

2018-07-31 10:04:45 | 自然
2017年の日本人の平均寿命は、男性81.09歳、女性87.26歳で、いずれも過去最高を更新したことが厚生労働省の調査でわかりました。

この平均寿命に関しては、厚生労働省から発表になると大体このブログでも取り上げていますが、私もだんだん平均寿命の歳に近くなっているためか対して面白くないのですが何となく興味を持っています。

前年からの伸びは、男性0.11歳、女性0.13歳で、男性は初めて81歳を超えました。主な国・地域との比較では、女性は香港に次ぐ2位、男性は香港、スイスに続く3位で、前年は男女とも2位でしたので、スイスの平均寿命が伸びたことになります。

平均寿命は、その年に生まれた0歳の子供が平均して後何年生きられるかを示した指標ですが、各年齢の死亡率が今後も変わらないと仮定して算出します。統計を取り始めた戦後間もない1947年(男性50.06歳、女性53.96歳)からほぼ右肩上がりで伸び続けています。

私はこの年に生まれていますので、本来50歳ぐらいしか余命がないはずですが、それがこの年まで生きたというのは面白い気もします。過去最高の更新は、男性が6年連続で女性が5年連続しています。

厚生労働省は「ガン、心疾患、脳血管疾患の三大死因による死亡率の低下傾向が、平均寿命の延びに貢献している」と分析しています。平均寿命に最も大きく関与するのが若年層、特に子供の死亡ですが、これはもうほぼ少ないところで一定の値になっていそうですので、やはり医療の進歩ということになるのかもしれません。

2017年生まれの日本人で75歳まで生きる人の割合は、男性75.3%、女性88.1%で、90歳まで生きる人の割合は男性25.8%、女性50.2%といずれも過去最高となり、女性の90歳の割合が始めて5割を超えています。

本来平均寿命よりはいわゆる「健康寿命」が問題なのかもしれません。これは毎年調査しているわけではないようですので、2016年の結果しか出ていませんが、男性72.14歳、女性74.79歳であり、前回調査の2013年と比べ、男性は0.95歳、女性は0.58歳延びています。

これは3年間ですが、平均寿命の延びよりもやや上回っており、厚生労働省の目標が達成できたことになります。この健康寿命の定義がよく分かりませんが、平均寿命との差は8年以上あり、これをいかに縮めるかが課題なのかもしれません。

私の持論である団塊の世代まではある程度長生きするが、その後の飽食の時代の人たちは寿命が短いだろうということは確かめられませんが、本当にこうやって寿命が伸びていくことが良い事なのか、健康寿命と絡めていろいろ考えています。

酵素・微生物の有機化学への利用 その3

2018-07-30 10:44:41 | 化学
前回、凍結乾燥したり固定化した酵素や、パン酵母などの菌体が有機溶媒中でも活性を発揮し、いわば通常の有機化学の触媒と同じように使えるということを書きました。

これによって非常に多くの化合物を酵素でどんな反応が起きるかを簡単に検証することができるようになりました。前回書きましたがこれがいわば流行りの学問となり、非常に多くの大学や企業でこういった研究が活発になったわけです。

しかしこれは研究者の興味を引き、酵素触媒でどんな反応が生じるかを調べることで終わっていました。

私は企業研究者ですので、こういった反応が企業化できるかも当然研究していたわけです。その結果前回最後に書きましたように、採算が取れるような反応を見つけるのは非常に難しい事でした。

一つが反応濃度の問題です。酵素というのは反応点に基質(原料)が入り、そこで目的とする反応が起きると生成物が離れるということを繰り返しています。この時濃度が高いと当然生成物も増えてきますので、基質の代わりに生成物が入るようになります。そうすると反応はほぼそこで止まってしまうのです。

これを生成物阻害と呼んでいますが、これが起きない程度の濃度で反応させることになると、通常の化学反応の何倍も薄い条件となってしまいます。その他大量の酵素を使うためのコストなどもかかり、現実的なプラントとすることが難しいことが分かりました。

ところがこの時期に面白い仕事が出てきました。医薬品を開発するためには、動物に投与して代謝物なども調べるのですが、それがどういうものかを詳しく調べなければいけなくなってきたのです。

ところがこの動物の代謝というのは、大部分が水酸化というOHを入れるのですが、これが化学的には非常に難しい部位に入るのです。そこで動物の酵素で反応が進行するのならば、微生物にも同じような酵素があるのではないかということで、微生物のスクリーニングをやってみました。

すると細菌や放線菌、酵母類はあまりそういった能力はなかったのですが、ある種のカビが動物の代謝物を作ることが分かりました。この過程で動物代謝物中にあるのに少量過ぎて構造確認ができないようなものもできてきて、開発グループから大いに感謝されました。

この様に私の興味も医薬品の微生物変換という方向に変わっていったわけです。こういった医薬品を水酸化するカビというのを集めておき、新しい薬剤の依頼が来ても比較的早く対処できるようになりました。

この微生物変換というのが、こういった方面の私の最後の研究となりましたが、医薬開発支援研究としてなかなか面白い仕事ができたと思っています。


科学論文にご用心

2018-07-29 10:28:39 | その他
数年前ある研究者が、普通の料理本で最も使用されている50種類の材料を取り上げ、ガンのリスクや予防に関連付けられているものがいくつあるかを科学雑誌に掲載された様々な論文を基に研究しました。

その結果、塩や小麦粉、パセリ、砂糖など50種類中40種類がガンと関連付けられていることが分かりました。この結果を2013年に論文として発表し、私達が食べている物はすべてガンに関係しているのではないかという疑問を呈しました。

この調査は、科学界において認識されてはいるものの依然起こり続けている問題、十分な量の試料を収集していない研究が多いことを示していました。またスタンフォード大学の研究者も、発表される論文の大半は、たとえまじめな雑誌に掲載されたものであってもかなりずさんなものだと結論付けています。

一部の雑誌は現在、論文の執筆者に対し研究計画書(プロトコル)の事前登録と未加工データの提供を求めており、これによって研究者が結果を不正操作することが困難になったとしています。こうした方法を取ることで、論文を著者以外の人々が検証したり再現したりすることも可能になります。

ここでは2015年に実施された大規模な試験では、心理学の3大専門誌に掲載された100件の論文のうち再現に成功したのはわずか3分の1と報告しています。この記事ではこういった再現性が出ないのは研究方法や研究者の問題といいたいようですが、私はそういった結果が出るのが科学であると感じています。

昔から私の専門である有機化学では論文の内60%は再現され、生物・生態学では30%、医学・生理学分野では10%といわれてきました。この再現されない研究論文の著者が不正をしたわけではありません。

私の経験からもある反応が1,2回うまくいったのに、その後同じ条件でやっているはずなのに何度やっても失敗してしまうということは結構ありました。私は反応理論を研究しているわけではなく、あくまでモノ作りですので、こういった場合はほとんど深追いせず違うルートを取ってしまいますが、追及していけば新しい発見が出るのかもしれません。

ここで強調しておきたいのは、良い結果が出た場合もその時点では真実であるということです。しかしその後の実験でうまくいかないことが分かり、この反応は駄目という結論を出したときもその時点での真実であることです。

なぜこんなことが起きるのか全く分かりませんが、私はこういった現象が起きるから科学は面白いと思っています。例えば健康に関しても、昔と運動した時の水分補給など常識が全く変わってきています。論文などの情報を読むときは、こういった科学の世界を知ったうえで読む必要があるのかもしれません。


胃瘻(胃ろう)は無意味な延命治療か

2018-07-28 10:42:03 | 健康・医療
このところ胃ろうで延命することの是非が議論され、この処置を受けたくないという人が増えているようです。

この胃ろうを推進する立場の人からのコラムがありましたが、私としては当然やりたくない治療の一つです。

ここで実例が示されていましたが、認知症の93歳の女性が食べられなくなり、家族は胃ろうを作るかどうかの判断を迫られ、結局手術を受けることにしました。その結果胃ろうからの栄養補給で衰弱した身体も回復し、リハビリをする意欲が出てきて、また自分で食事をするまでに元気になったということです。

胃ろうは、口から食餌を取れなくなったとき、胃に小さな穴をあけて栄養剤を直接注入する「人工栄養」です。その他の人工栄養としては鼻から胃に管を通して栄養剤を送る経鼻栄養や、太い血管から点滴投与する中心静脈栄養などで、手術の必要はありません。しかし誤嚥や感染症の恐れがあり、長期の継続は難しいようです。

一方胃ろうは局所麻酔の内視鏡手術で、15~30分ででき、医師が1か月から半年ごとに器具を交換すれば、日々の管理は家庭でも可能となります。自分の消化器官を使うため体調が安定しやすく、1990年代前半から爆発的に普及したようです。

医療経済研究機構が2012年に調査した1467人のうち、胃ろうを作る時点で再び口から食べられる可能性が「なかった」患者は59%でした。可能性が「あった」患者は24%でしたが、そのうち2割余りはリハビリが行われていなかったとしています。

私も何人か胃ろうを受けていた人を知っていますが、いずれもそのまま亡くなっています。私の母の時は、ボケる前から尊厳死を望んでいましたので、胃ろうは作らず点滴だけにしましたが、約3か月で亡くなりました。もし胃ろうをしていれば半年か1年延命できたかもしれませんが、それが意味ある延命とは今でも思っていません。

実際厚生労働省の2017年の調査では「自身の認知症が進行し、身の回りの手助けが必要でかなり衰弱が進んできた」場合、胃ろうを「望まない」と答えた人が72.4%に上っています。また医師や看護師、介護職員はさらに多く90%前後となっています。

このコラムの著者は胃ろうが悪者というイメージが、医療や介護従事者にまで広がっていると嘆いていますが、こういった数値の割には胃ろうを受けている人が多いような気がします。

それでもここ数年は胃ろう関係の医療費も下げられ、実施件数も減少しているようです。やはり例のように回復して自力で食べられるようになる人以外は、無意味な延命処置といっても良いような気がしています。


ビタミンCが転移がん抑制

2018-07-27 10:27:39 | 健康・医療
東京工科大学の研究グループが、高濃度ビタミンC(VC)によるガン転移抑制メカニズムに関して新発見をしたと発表しました。

高濃度のVCの投与についてはガン治療に効果があることが報告されており、副作用のない治療法として注目されています。また外科手術や放射線療法、化学療法などの補助で用いられる「高濃度ビタミンC点滴」は、ガン転移を制御する可能性が示唆されているものの、詳細なメカニズムは明らかになっていませんでした。

最近民間でいわれている全く副作用のない治療法としてアスピリン、重曹、ビタミンCといわれていますが、本当に効果があるかどうかはかなり怪しいとものと考えていました。

ただこういった噂のようなものは、効果が出ることもあるというような知見に基づいていることもあり、一概に排除すべきではないのかもしれません。少なくとも今回の研究でビタミンCに関しては抑制効果が出てきたようです。

研究グループは、ガン治療に効果があると報告されているVCについて、その抗酸化作用とガン細胞に対する毒性を酸化型ビタミンC(DVC)と比較して調べました。

細胞内の活性酸素を蛍光色素などで定量したところ、VCはDVCとくらべて活性酸素のレベルを低下させることが分かりました。またガン細胞を用いてVCの過酸化水素による細胞死の抑制作用を検討すると、VCにはこの作用はありませんが、DVCは細胞死を抑制しました。

さらに転移能のあるガン細胞に対してVCは選択毒性を発揮しましたが、DVCにはこのような作用はありませんでした。この毒性作用は、過酸化水素を水と酸素に分解するカタラーゼによって抑制されてことから、過酸化水素の産生に起因していると考えられます。

これらによりVCは血液を循環する転移がん細胞を抑制するのに有効であることや、還元型であるVCはガン細胞に対して毒性のみを有することが分かりました。このあたりは実はよく内容が理解できませんでした。

VCは抗酸化作用があるので、過酸化水素を分解しますが、この過酸化水素によって選択毒性が出るというのは不思議な気がします。ですからこの実験では、結局なんでVCが転移ガンを抑制するのかの説明はできていないといえるでしょう。

この研究グループは、酸化型のDVCに細胞死を抑制し、細胞を保護する作用があることも判明したとして、これは神経細胞の変性を主な症状とする脳虚血の治療などに応用できる可能性があるとしています。

今回の研究ではあまりはっきりしたことはわかりませんが、ビタミンCがガン治療に有用であるという裏付けにはなるのかもしれません。