ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

新型コロナ死者数は過小評価か

2020-06-30 10:41:05 | 時事
厚生労働省は最近の人口動態調査の結果「人口動態統計速報」を発表しました。この速報はある大切な意味を持つと注目されていました。

新型コロナの感染が拡大した4月において、全国でどのくらいの人が亡くなったかが初めてわかるということです。

結果としては、去年と比べて、死亡者数はほとんど変わらなかったことが分かりました。2019年4月の死亡者数が11万2939人だったのに対し、2020年4月は11万3362人で、その差は423人(0.4%増)でした。

人口動態統計は、国の統計の中でも重要度が高いとされる「基幹統計」のひとつです。子供が生まれると出生届を、誰かが亡くなると死亡届を出すことが定められていますが、そうした届け出のデータを全国で取りまとめたものです。

その期間に国内で生まれたり亡くなったりした人の全数を把握することができます。日本ではある月の人口動態統計の速報値は、翌々月の月末に公表されることになっており、その決まりに従い4月分の速報データが発表されたわけです。

新型コロナの感染が拡大した4月、厚生労働省が感染による死亡者として公表したのは約400人程度でした。この数字に対しそんなに少ないわけがないという指摘が、メディアやSNSで相次いでいました。

国際的に見た場合のPCR検査の実施数の少なさや、手書き・FAXなどに頼るデータの収集体制が指摘されるにつれ、新型コロナと判明せずに亡くなっている人がもっといるのではないか、という声が上がりました。

大枠は把握されているという指摘もあり、実態を示すデータが求められていましたが、その他にも新型コロナによる被害の影響を見積もりたいというニーズがあったようです。

検査により分かる感染者数は、検査体制の問題や検査対象といった影響を受けるため、国際比較をするためには死亡者数を調べるのが良いと考えられています。

この死亡者数には「超過死亡」という概念があり、例年より今年だけ多かったら特別な要因があるとするものです。BBCの試算ではフランスでは例年の25%増え、イギリスでは43%、アメリカでは16%ですが10万人以上増加したとされています。

こういった点からも日本でのコロナ死者数は過小評価されていなかったといえるようです。ではなぜ日本は多くの死者が出なかったのかは、様々な仮説が出されている段階でよく分かっていません。そもそもインフルエンザ以下の脅威でしかなかったという声さえあるようです。

私は今回の自粛生活が効果があったとは考えにくいような気がします。この答えが出せるかどうか疑問ですが、ほとんどの規制が無くなったこれからの推移をみることが重要なような気がしています。

液体なのに結晶のような酸化物

2020-06-29 10:25:12 | 化学
希土類元素のひとつであるエルビウムの酸化物(Er2O3)は、高温で溶けて液体なっても原子が規則的に並んでおり、結晶のような構造をしていることが分かったと、宇宙航空研究開発機構(JAXA)などの研究グループが発表しました。

国際宇宙ステーションでの実験や大型放射光施設での分析などによる成果で、ガラスに関する理解や、スマフォの高性能ガラスの開発などに幅広く役立つ可能性がありそうです。

人類はガラスを紀元前から加工して利用しています。主に酸化物が原料で、原子や分子が結晶のように規則正しく並ばず、不規則なまま冷えて固まったものです。原料を加熱し液体にしてから急冷して造りますが、この時にガラスになる物質と結晶になる物質の違いは、未だによく分かっていません。

これを原子や電子のレベルで解明することが大きな課題となっています。従来の研究はガラスになる酸化物液体の構造解明が焦点でしたが、グループはガラスにならないことが分かっている液体に注目し、そのひとつであるEr2O3の原子配列や電子状態の解明を試みました。

Er2O3は融点が2413℃と極めて高く、液体だと容器に反応するなどして実験が難しいものです。そこでグループはISSの日本実験棟「きぼう」にある分析装置で、静電気でEr2O3を浮遊させて密度を測定しました。

またスプリングー8の高エネルギーX線回析の測定装置で試料ガラスを浮遊させ構造を測定しました。その結果Er2O3の液体はガラスにならない他の液体に比べ、結晶のように原子配列の規則性が極めて高いことが分かりました。

また浮遊炉で得られた密度のデータにコンピューターシミュレーションを加味して三次元モデルを作ったところ、原子の集合体がガラスにならない他の高温液体には見られない歪んだ状態になりました。

さらにシミュレーションや先端数学に基づいた解析で、Er2O3の液体の特徴が位相幾何学的に結晶に似ていることなどを解明しました。

この成果で得られた高温液体の知見は、ガラスができる条件の解明や、高温液体であるマグマから鉱物が形成される過程、つまり地球の成り立ちの理解につながるようです。

こうした基礎科学のほか、スマフォの画面のカバーやレンズのガラス、耐熱セラミックスの高性能化など、材料の革新にも道を開く期待があります。

こういった分野は私は不得意であり、あまり良く理解できないのですが、無重力の実験設備がこういった研究にも役に立つというのは、面白い実験結果といえるのかもしれません。

太る朝食と痩せる朝食

2020-06-28 10:25:58 | グルメ
普段何気なく食べている朝食ですが、バランスが良くても「太ってしまう朝食」と「痩せる朝食」があるようです。

まず標準的な2種の朝食を見ますが、Aロールパン2個、目玉焼き、ウインナー、レタス、ヨーグルト、Bご飯、みそ汁、焼き魚、ほうれん草のおひたし、というパン食派とご飯派です。

一見するとどちらも品数が多くバランスがとれている良い朝食のようですが、実はAは太る朝食のようです。Aの朝食は野菜もタンパク質も乳製品もそろっているので、栄養バランス的には問題はありません。

AとBの決定的な違いは、「油」の量で、ご飯一杯分で脂質は0.4gほどですが、ロールパンは2個で4.8g、目玉焼きとウインナーを油で焼けばその分油の摂取量はさらに増えてしまいます。

またパン食の場合は、食べるおかずがほぼ毎日同じというケースに陥りやすいため、1食のバランスは良くても1カ月単位で見ると栄養バランスに偏りが出て代謝が落ちてしまいます。一般的なパンは小麦粉からできていますが、小麦粉は小麦を粉砕した物なので、粒になっているコメに比べると、早い時間で消化できます。

つまりそれだけ空腹になりやすいという事で、必然的に昼食までの間食が増えたり昼食でカロリーの高いものを選んだり過食につながります。朝は前日の夕食から10時間近くたっているため、胃腸が空になっています。

つまり食べものをよく吸収するということです。朝は空っぽの腸に食べ物を送り込むわけですから、栄養素をよく吸収するのです。脂質の多いパンの朝食が太りやすいのは、腸の吸収の良さも関係しています。

以上の理由から、ダイエットに効果があるのはごはん食で、魚や煮物、納豆などヘルシーなおかずとの組み合わせも増え、食品に偏りが出にくくなるので栄養バランスも整います。

日本肥満学会が定義した肥満の基準であるBMI25以上の人に、「朝食の主食」についてアンケートを取ったところ、48%がパンで半数にまで至りました。ちなみにご飯と答えた人は18%、麺類は11%でした。

一方BMI22以下の体重が標準以下の人の場合は、67%がご飯と回答しました。これでも朝のパン食が太りやすいという傾向があるという結果になりました。これはダイエットという程ではないものの、体重を気にした場合の朝食の摂り方ですが、やや誇張しているような気もします。

私の朝食は基本的には卵かけごはんで、たまにロールパンやクロワッサンを食べていますが、この説によれば比較的良い朝食なのかもしれません。やはり腸の吸収が良い朝食に、しっかりと食べることが健康には良いような気がします。

糖尿病高齢者の心不全対策

2020-06-27 10:22:55 | 健康・医療
現在は糖尿病を発症しても、適切なタイミングで適切な治療・検査を受けていれば50代、60代で亡くなることはほとんどありません。

効き目の良い糖尿病の薬がたくさん出ているため、長生きする糖尿病患者が珍しくなくなりました。今問題になっていることのひとつが、糖尿病を患う高齢者の心不全です。

高齢者になると健康な人でも血管が硬くなり、動脈硬化が起こります。糖尿病の場合、心臓に栄養を送る太い血管(冠動脈)の動脈硬化が起こりやすいだけでなく、心筋細胞に直接栄養を送る顕微鏡レベルの細い血管(微小血管障害)にも動脈硬化が起こり、心筋のエネルギー代謝に影響を与えます。

それによって糖尿病がある人は、心不全のリスクが高くなるのです。動脈硬化は心筋梗塞や脳卒中などの原因にもなりますが、これらはステントやカテーテル治療の進歩で助かる人が増えました。しかし心筋梗塞で命を落とさなくても、心臓に疾患を抱えていることは変わりません。

心不全とは、心臓が悪いために息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり生命を縮める病気と定義されています。心不全の定義に当てはめると、糖尿病がある時点でステージAとなり、心筋梗塞などを起こして心臓に疾患を抱えるようになるとステージBとなります。

心機能が低下して心不全を発症するとステージCです。心不全を発症すると、現在の医療では完治しづらく、5年以内に50%の人が亡くなるともいわれています。

つまり糖尿病を発症しないことが重要であり、もし発症してしまったら今度は心筋梗塞を発症しないことが非常に重要となります。これまでは糖尿病の薬は血糖値は下げるものの、心不全に関しては予防効果が見られませんでした。薬によってはかえって心不全のリスクを高めるものもありました。

日本で広く使われているDPP-4阻害剤も、心不全予防効果があるのではないかと期待されましたが、結局抑制効果が証明できず、むしろ心不全が増えるという結果が出ています。

ところが血液中の過剰な糖を尿に積極的に排出して血糖値を下げる、SGLT2阻害剤という糖尿病治療薬の研究で、画期的な結果が出ました。この薬を服用すると、血糖降下作用だけでなく、心不全予防にも役立つことが分かったのです。

さらに専門医の注目を集めたのは、糖尿病患者の心不全リスクを下げるばかりか、糖尿病でない人のリスクを下げる結果も出ました。

この薬はナトリウムの再吸収を抑える作用もあり、血圧低下にも効果があります。ただし残念ながら脱水作用や頻尿という副作用もあるようですが、糖尿病の高齢者には理想的な薬といえるのかもしれません。

この辺りをどの程度通常の医師が分かっているのかは、やや疑問のような気もします。

メタボやアレルギー性疾患がなくなる刷子細胞

2020-06-26 10:23:53 | 健康・医療
近年はアレルギー性疾患やメタボリックシンドロームが解決すべき重要な社会問題になっています。

その治療法として、研究者の間で注目されているのが「刷子細胞」です。この細胞は全く知りませんでしたが、小腸をはじめ体内の色々なところにあるといわれる細胞で、60年ほど前に発見されたものです。

小腸には栄養素を吸収する上皮細胞など4種類の主要な細胞がありますが、刷子細胞は全体の約0.4%程度と非常にごく僅か存在しています。細胞は必要なタンパク質をつくるとき、mRNAを転写しますが、この時転写を制御するのが転写因子です。

マウスを使いこの転写因子のひとつであるSkn-1aを欠損させると、消化管の刷子細胞も完全に消失することが分かりました。

この刷子細胞の無いマウスと、通常のマウスを同じようにえさを与えていると、通常のマウスは正常に成長し体重も増えますが、刷子細胞の無いマウスは体重が増えず、成長も抑えられてしまいました。

さらに高脂肪食を与えると、通常のマウスはどんどん太りますが、刷子細胞の無いマウスはそれでも体重が増えないのです。このメカニズムは完全には分かっていませんが、刷子細胞の無いマウスの代謝エネルギーが、通常のマウスよりも増えていることは分かりました。

運動量に差はなく、マウスの体温にも差がないのに代謝エネルギーの差が体重が増えないことに関係していることは確かなようです。そこで消費エネルギーを上昇させるホルモンを調べたところ、血清中の甲状腺ホルモンに変化は見られませんでしたが、カテコールアミンの尿中分泌量が刷子細胞のないマウスでは増えていることが分かりました。

カテコールアミンとは、ドーパミン、アドレナリン、ノルアドレナリンなどの総称で、快い感情や意欲などに関わるホルモンです。

このカテコールアミンが増えたことで、脂肪分解の亢進、肝臓のケトン体の上昇、筋肉の熱生産量の増加、膵臓のインスリンの低下につながり、消費エネルギーが上昇し体重の増加が抑えられたと考えられます。

この仕組みをさらに解明すれば、メタボを始めとした肥満や糖尿病の新たな治療法の開発につながる可能性があります。

長くなりましたのでアレルギー疾患については省略しますが、免疫のセンサーとなる刷子細胞の働きを抑えることができれば、過剰な応答を抑えることができ、アレルギー疾患の予防につながると考えられています。

この刷子細胞の研究は始まったばかりですが、小腸などに存在するこの微量な細胞が色々な働きをしているようで、研究が進展すれば面白い効果が見つかるような気もします。