ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

遺伝する家族性高コレステロール血症

2021-05-31 10:25:23 | 健康・医療
健康診断などで血中コレステロールが高く、高脂血症と診断され薬を飲み始める人も多いようです。

私の歳になるともう動脈硬化になってもあまり影響はなさそうですが、一時はスタチン系などの薬剤が大量に使用されていた時期もありました。

このような脂肪分の取りすぎなどと違って、生まれつきの体質で子供のころから血液中にコレステロールが溜まって動脈硬化が進む病気が「家族性高コレステロール血症」です。

コレステロールは細胞膜やホルモン類、脂肪の消化を助ける胆汁酸などの原料となる重要な物質です。LDL(低比重リポタンパク質)に覆われて全身に運ばれます。LDLコレステロールが血中で増え過ぎると、血管壁にコレステロールが溜まりやすくなり、「悪玉」と呼ばれています。

余分な悪玉コレステロールは、本来肝臓の表面にあるLDL受容体というタンパク質を通じて取り込まれ、胆汁酸になります。国内に30万人以上いると推定される家族性コレステロール血症患者の大半は、遺伝子の異常でこの受容体がうまく働きません。

この病気(FH)の患者がそんなに多いとは思いませんでしたが、子供のころからではなかなか発見が難しいのかもしれません。20〜30代でまぶた、ひざ、手の甲などに黄色い膨らみ「黄色腫」ができたり、アキレス腱が厚くなったりする患者もいるようです。

FH患者の場合、心筋梗塞は男性で20歳代、女性で30歳代で始まり、男性は40歳代、女性は50歳代で発症のピークを迎えます。

日本動脈硬化学会の指針では、15歳以上の場合、1.悪玉コレステロールの値が治療前の状態で180以上、2.黄色腫がある、3.二親等以内の家族にFH患者が早発性(男性は55歳未満、女性は65歳未満)の心筋梗塞や狭心症の患者がいる、のうち2項目が当てはまればFHと診断されます。

診断後は生活習慣を改善し、悪玉コレステロールの値を100未満に下げることを目指します。肝臓でコレステロールの合成を妨げるスタチン系の薬を使い、食物からのコレステロール吸収を妨げる薬「エゼチミブ」などを併用することもあります。

十分な効果が無ければ、LDL受容体を壊すタンパク質の働きを抑える「エボロクマブ」などを使用します。自覚症状が無くても、子供のころから動脈硬化は進行しますので、早期に病気に気づいて治療を始められるかは重要なポイントとなるようです。

この家族性高コレステロール血症という病気を身近に効いたことはありませんが、両親の一方がこの遺伝子を持っていると、子供が発症する可能性があるようです。親のLDLコレステロール値が高い場合は、子供の値を調べてみる必要がありそうです。

新型コロナワクチンとアナフィラキシー

2021-05-30 10:25:47 | 健康・医療
私の住んでいる市はやや対応が遅いようで、先日やっとワクチン接種券が送られてきました。

体育館などに並んで集団接種は受けたくないので、かかりつけの医院のHPを見たところ隣の市ですが、既に予約は埋まっているようでした。

市の広報に出ていた個別接種できる医療機関の一覧表に自宅のすぐ近くの昨年開業したクリニックがありましたので、そこに電話したところ簡単に1回目が7月上旬、2回目が7月下旬に予約できました。

麻雀仲間など友人に連絡したところ、6月中に予約できたのもいれば、まだ予約ができず苦労している等様々なようです。

このところワクチンとアナフィラキシーが話題になっていますが、頻度は非常に低いようですのでそれほど気にすることはないのですが、少し調べてみました。

ファイザーのコロナワクチンの添付文書には、予防接種を受けることが適当でないものとして、以下の記載があります。1.明らかに発熱している(37.5℃以上)、2.重い疾患にかかっている、3.ワクチンの成分に対し、アナフィラキシーなど重度の過敏症の既往歴がある、となっています。

アナフィラキシーについては「アレルゲンなどの侵入により、複数臓器に全身性のアレルギー症状が惹起され、生命に危機を与えうる過敏反応」と定義されています。これで有名なのがハチ毒に対しての反応です。

1回目にハチに刺されてハチ毒が体内に入った時に、IgEというハチ毒のみに結合する免疫反応物が体内で生成されます。そして2回目にハチに刺された際には直ちにハチ毒とこのIgEが体の中で結合し、その結合体が皮膚や気道、消化管など全身のいたるところで「即時型アレルギー」と呼ばれる反応を起こし命にかかわることがあります。

アナフィラキシーは、「急に症状が出る」「急速に進行する」「複数の臓器にまたがる」ということが特徴です。その中で血圧低下や意識障害を伴った場合「アナフィラキシーショック」と呼ばれており、生命に危機が及ぶため速やかな診断と医療処置が必要となります。

アメリカ疾病予防センター(CDC)によると、ファイザー製のワクチン接種でのアナフィラキシーの頻度は100万回接種当り4.7回と報告されていますので、頻度としては非常に低くあまり気にする必要はないのかもしれません。

アナフィラキシーが起きるときには、投与以前に原因物質に対するIgEが体内で産生されている必要があります。始めて接種するのにアレルギーが起きてしまう原因としては、ワクチンに含まれる成分であるPEG(ポリエチレングリコール)の存在が推定されています。

ワクチンでのアナフィラキシーの90%以上が女性に起きているのは、化粧品に含まれるPEGが関与している可能性が考えられています。実際の頻度から見ても、ワクチン接種でアナフィラキシーを気にする必要はなさそうです。

香りのデジタル化で脳を活性化

2021-05-29 10:48:34 | 化学
好きな香りを嗅ぐと気持ちが安らいだり、気分転換できたりするのは香りに情動を動かす力があるからとされています。

香りは数千年前から注目され、多くの研究がなされてきましたが、近年「香りの研究」が盛んになってきたようです。

嗅覚は五感の中で唯一嗅覚細胞などを介して喜怒哀楽などの感情を司る大脳周辺系に直接つながっているため、情動と関連付けしやすいとされています。香りの感覚に個人差が大きいのは、嗅覚受容体の遺伝的差異や記憶、人生経験とも密接につながっています。

地球上には数十万種類ものにおい分子があるといわれています。ヒトはそれらを鼻腔の奥にある約400種類の嗅覚受容体を使って感知しています。一つひとつの匂い分子は複数の嗅覚受容体によって認識され、どの受容体と結合するかは匂い分子ごとに異なっています。

香りの研究をさらに複雑にしているのが、嗅覚受容体の特徴です。例えばAという匂い分子とBとは異なった受容体に結合し、良い匂いとか嫌な香りと認識されます。ところがAとBが一緒に嗅覚受容体に結合すると、それぞれ異なった受容体に結合しているのに全く違ったCという香りとして認識するのです。

このあたりが香り研究の難しい所でもあり面白いところかもしれません。東京工業大学は嗅覚受容体の解明を進めることで、ヒトの香りの感じ方を予測し自在に香りをデザインする技術の確立に取り組んでいます。

ターゲットの受容体が結合する匂い分子を特定できれば、その受容体を活性化する匂い分子をデザインできます。その人の嗜好性、性格、体調などの情報と合わせれば、好みや場面に応じた香り成分の配合が可能になり、テーラーメイドで香りを供給できる時代になるとしています。

またここでは遠隔地でにおいを再現するシステムの開発にも取り組んでいます。匂い分子は嗅覚細胞にある嗅覚受容体に結合し、受容体が活性化され嗅覚細胞の内と外の間に電位差が生じ、匂いの電気信号として脳へ運ばれます。

この匂い分子ごとに異なる応答パターンを脳の中で認識し、どのような臭いかを識別すると考えられています。そこで脳の神経回路の一部を模した数理モデルを用いて応答パターンをデータ認識し、匂いの識別を行うセンシングシステムを開発しました。

いわば嗅覚のデジタル化と言えます。このように香りの研究は近年一段と進んでいますが、このブログで取り上げた「香害問題」などという課題もあります。

ただ嗅覚受容体がわけのわからないブラックボックスから、科学的な光が当て始めらて来たことは確かなようです。

気が付きにくい不整脈、脳梗塞や心不全の恐れも

2021-05-28 10:22:37 | 健康・医療
常に動いている心臓ですが、自分の心臓の鼓動による脈拍を意識することはほとんどないような気がします。

私は若いころ脈拍が速いのではないかと心配していた時期があります。何かあるとすぐにドキドキし、脈拍数が90ぐらいとなっていました。

その後会社の健康診断に心電図が入るようになり、その結果全く異常は見つかりませんのでやや早い体質だろうということで特に受診もしないまま過ごしています。

脈がバラバラになる不整脈は、脳梗塞や心不全などの重い疾患につながる恐れもあり、日常自分の脈拍に注意することが大切なようです。心臓が働く仕組みは、心臓の筋肉にごく微量の電気が流れて筋肉が収縮し、心臓は全身に血液を送り出すポンプの役割を果たします。

この電気信号に変調が起きると、脈拍が乱れて不整脈を起こします。不整脈には速すぎる「頻脈」と遅すぎる「徐脈」があり、心室から血液を送り出すタイミングがずれたり、正常と反対方向に血液を送ったりすることもあるようです。

この不整脈には過度のストレスや寝不足、極端な肥満や飲酒、喫煙などの生活習慣、さらに睡眠時無呼吸症候群などさまざまな要因が考えられます。

また加齢によるものも多く、心筋梗塞や炎症などによって心臓の筋肉が変性し、電気の流れが悪くなるため、電気興奮が旋回して不整脈を生じることもあります。また本来と違う部位が興奮し、高い頻度で電気が発生し心臓の心房が痙攣するように小刻みに動くのが心房細動です。

不整脈の症状としては、動悸や息切れといったことに加え、胸が痛かったり詰まったりするといった胸部の不快感があります。不整脈や心房細動が誘発する合併症で最も怖いのが脳梗塞です。

脳細胞への酸素の供給が閉ざされて意識を失い、失神するようなケースだけでなく、生命の危機や半身まひなど重篤な後遺症を引き起こす恐れもあります。不整脈は病気ですが、心臓自体の機能が悪いというわけではありません。

不整脈で警戒しなければいけないのが心不全です。心房細動で脈が急に早くなりすぎ、有効に血液が送れなくなり、肺に水がたまることで肺から心臓の左心室へいき全身に送るという血液の循環に大きな障害が出ます。

早期発見が重要ですが、一般的な検診では発見は難しいようです。脈の動きが不明な時点のデータが診断には欠かせないため、24時間心電図を記録するホルダー心電図などによる検査が必要となります。

不整脈と診断された場合は、アミサリンやブロカインなどの抗不整脈剤がありますが、心臓や腎臓などの機能により服用を避けるケースもあるようです。

やはり早期発見するためには、自分の身体に興味を持ちいかに異常を察知するかが重要なようです。

「健康寿命」を伸ばすための5つのM

2021-05-27 10:24:43 | 健康・医療
日本人の平均寿命は男性が約81歳、女性が約86歳と報告され、年々伸びているようです。

しかし単に生きるだけではなく、「元気に自立して生きる」ということが重要です。この目安として「健康寿命」という言葉が定義されており、内閣府によって毎年調査されているようです。

日本人の健康寿命は男性が約72歳、女性が約75歳と報告されており、平均的に最後の約10年を支援や介護を受けて生きているということを意味しています。

しかし私はこの健康寿命の数値には大いに疑問を持っています。まずこの健康寿命の調査方法は、アンケートというあまり正確さが無い方法が取られています。詳しい数値は分かりませんが、各世代にアンケートを実施し、現在健康かどうかを調べるというものです。

例えば若者がたまたま風邪をひいており、健康でないと答えたり、中年がやや疲れていると答えると健康でないと判断されるものです。これを全世代で集計したものが健康寿命となっています。

現実に私の友人はほとんどが後期高齢者(75歳)になりつつありますが、支援や介護を受けているものは誰もいません。確かに何人かは高血圧の薬や糖尿病の薬を飲んでいるようですが、それでも元気に自立して生きています。

健康寿命というのは、単に保険会社などの宣伝のために使われているにすぎないような気がします。実際に介護を受けている人たちは、大部分が80代後半であり、平均寿命を超えた人たちというデータもあるようです。

それでも最後の10年を元気に生きるために、何ができるのかを考えることは良いことです。これを5つのコンセプトに整理したのが「5つのM」で、2017年カナダ及び米国の老年医学会から提唱されました。

当然英語の頭文字ですが、ここでは訳語を示します。最初が「からだ」と訳していますが、可動性とか移動性といった言葉です。若いうちは何の支えもなしに自由に動き回れますが、歳を重ねるとだんだん不自由になります。

2番目が「こころ」で認知機能や精神状態を指します。身体が元気でも脳や心が元気でないと、結局体の具合が悪くなりヒトの助けが必要となります。

3番目が「よぼう」としていますが、多様な疾患というような意味です。歳を重ねると様々な病気のリスクが上がるというような意味です。4番目が「くすり」で、高齢になると多くの人がたくさんの薬を服用するようになります。

そして最後が「いきがい」で、人生にとって何が最も大切かというような意味です。上手に歳を重ねるための方法論が、以上の5つの視点としています。これは高齢者自身が考えるというよりは、高齢者を診療するための基本指針とされているようです。

それほど感心するような内容ではありませんが、元気で自立して生きるためには考慮すべきことなのかもしれません。