見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

阿羅漢・異形の人々/金沢文庫

2006-05-24 23:02:21 | 行ったもの(美術館・見仏)
○神奈川県立金沢文庫 特別展『阿羅漢』

http://www.planet.pref.kanagawa.jp/city/kanazawa.htm

 ちょっと損をしている展示会ではないかと思う。見ものは、宮内庁三の丸尚蔵館の『十六羅漢像』と称名寺(金沢文庫)蔵『十六羅漢像』の比較展示。よく似ている。どちらも、中国・元時代の逸品である。

 しかし、お世辞にも「きれい」な画題ではない。東洋美術を見るようになって、仏画は抵抗なく受け入れた。孔雀明王とか、如意輪観音とか、うっとりするほど美しいものもある。頂相(名僧の肖像)も、個性豊かで面白いと思う。しかし、羅漢図というのは、どうして、こんなキチャない爺さんたちを(しかも集団で)描くのか、今もって分からないところがある。

 とりわけ、今回の展示品は「禅月様」と呼ばれる、奇怪な風体が売りである。黒ずみ、干からびて皺のよった身体。長く伸びた眉。ぎょろぎょろした目。ポスター(上記に画像あり)を見ても、ぜひ「会いたい!」という気持ちにはならない。しかし、これも悪食(あくじき)というものか、実際の作品を前にすると、E.T.みたいな羅漢たちが、意外と魅力的だったりする。

 余談だが、私はこの羅漢図を見ていると、金庸の武侠小説を思い出した。中でも、いま展示中の1枚は、2002年CCTV版『射雕英雄伝』に出てくる一灯大師(段皇帝)にそっくりである。中国の娯楽映画に登場する仏僧は、日本人から見ると、どうもあやしげだが、実は伝統的な羅漢のイメージを引いているのだと思う。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする