会報いしかり
第115号(令和元年10月12日)
いしかり手打ちそば同好会 初版発行:平成20年9月13日
〒061-3202 石狩市花川南2条6丁目256 URL:http:blog.goo.ne.jp/it sobo
三段位試験を受けて
原口 明美
私は色々な方々にお世話になり、三段の試験に合格することが出来ました。
初段、二段の時も、とても最悪な状況で困難でした。どんどん難しくなっていきます。
水回しは手が上手く動かすことが出来ず、手前に溜まってしまいます。
菊練りすると、山の部分に亀裂のように割れ目が入ります。
地のし、厚さも均等にならず、指の凸凹痕がついてしまいます。
練りが悪いとそのようになり、その前の水回しがキチンと出来ていなくてもなってしまいます。
捏ねでも、生地がぼそぼそして、きれいにならず艶やかさが出なく、厚さが均等でないと、四つだし、丸出しも上手くいきません。
延しはあちらこちらと気になり、右往左往しきりで、40分の制限時間に切り終えるのもままなりません。
時間が気になり、焦って自分が何をしているかも分からなくなる。教えてくれたことが頭の中でグルグル・・・失敗ばかりです。
審査方法が改正されて、後片付けも40分以内に終わらないと減点されてしまいます。
「もっと、大きく手を動かし、ゆっくりゆったり打ってごらん」
手直しして、見せて頂くとあっという間に丸くなり、厚さが平らになり、鮫肌のようだった生地が直ぐに艶やかになる。
私は魔法の手だとつくづく実感し思います。
粗挽きが入っているから、今までと同じやり方では、駄目なのだと、全く違うのだと言われてしまい、全否定された気がしました。
今まで一年間何をしてきたのだろう。
何故なのか、どうしてなのか言われても理解できない。出来ない。手が動かない。
幌加内がそばの聖地と聴いて、受けたことを後悔もしました。
石狩から一人で受けるということは、石狩を代表するとゆうことだと言われ、会長が審査委員で出席されるのだから、
恥をかかされないだろうと言われました。益々プレッシャーがかかります。
そんな時に四段の方と一緒に特訓を受けさせて頂ける事となりました。
皆さんにご迷惑がかかるのではないか?足手まといではないだろうか?と、考えながら特訓に参加させてもらいました。
皆さんは温かく受け入れてくださり、助け舟を何度も何度も出してくれました。
優しく見守ってくれ、勇気づけてくれて本当にありがたかったです。感謝しかありません。
四段の方々は粗挽きに加えて、つなぎ100gと、三段の三分の一の量。物凄い難易度。
黙々とそばと向き合い、闘うように感じました。
「上手く出来るようになるには、何度も何度も打ち、失敗を繰り返し、克服する。
本番で失敗しても慌てない様、動揺しないようにして置くことが大事」だと。
私の場合は特にパニくる。要注意!と言い聞かせます。
当日、一人で椅子に座り、落ち着いた独特のオーラを感じる人に出会った。
試験1回目で受け、後ろで見させてもらう。やはり、淡々とこなし堂々としている。姿勢、立ち振る舞いがきれい。
後で話をさせてもらうと「とても緊張していて、ドキドキしていた」と初めて微笑んでくれました。
そんなこと全く感じさせない。あんな風に打ってみたいと思いました。
そんな私は緊張しすぎて手が震えて、暑さ対策に冷えピタが良いと聞いて8枚身体中に貼るも汗が出てきて止まりません。
なんと、水回しが5分ぐらいでまとまってしまう。落ち着けと心で叫ぶ。「妥協も大事!」先輩の言葉を思い出します。
いつも切りだけは良いと言われていたのに、筏になり麺並びも良くない。
「落ちたかもしれない」今更考えても、自分の実力がこれまでなのだと思う。しかし、結果は合格。安堵しました。
これからがもっと大変になるよと先輩から助言され、「三段位」という目で評価されるからだそうです。
まだまだ、これからも精進して先輩方の姿勢や技を見習い、楽しみ、美味しいそば打ちを続けていきたいと思っています。
お世話になった先輩方々、頑張れと背中を押してくださった方々、お陰様で何とか三段に受かることが出来ました。
本当にありがとうございました。
※ 皆さんからの寄稿をお待ちしています。テーマは問いません。
“ そ ば 識 ” Part16
蕎道塾勉強会のおさらい・・・“そばつゆⅣ「出汁の引き方」”です。
○ 出汁の引き方
出汁の引き方には「吸い物」と「煮物」によって異なっているようです。
鰹節の場合、吸い物は、薄削り(花鰹)を煮だつ寸前に節を入れ、沸騰したら火を止め、
沈んだところで出しがらを漉す(他にもいろいろあります)。煮物は時間をかけ煮出す。
これは料理によって、期待する効果が異なるので使用目的によって出汁のひき方を決める必要があります。
昆布も、水に30分浸してから引き上げるとか、水が80℃になったら入れ沸騰直前に引き上げるとかいろいろありますし、
料理によって真昆布、利尻昆布、羅臼昆布、日高昆布など使い分けがあります。
江戸風そばつゆの鰹節の量は、辛汁の場合水の量に対し4~6%、甘汁の場合はその半量程度とされています。
辛汁の節は本枯節、枯亀節で取るのが常法とされていました。
これはコクのある出汁が取れ、香りが強くないので、そばを邪魔しないことからです。
甘汁の節は枯鯖節や、枯宗田節など枯本節ほど出汁は出ないが、風味があり甘汁に適しているとされています。
(1)辛汁の鰹節出汁の引き方
蕎麦の場合厚削りの鰹節を使い、出汁をつめていきます。薄削りの鰹節を使わないのは、
水の量に対し4%の鰹節の量は鍋が一杯になることや、鰹節が水を吸ってしまい長時間煮沸続けることができない、
長時間煮沸すると溶けて雑味がでてしまうなどがあります。
そば店では使う鰹節の厚さもありますが、煮沸する時間は30分~1時間程度が多く、煮詰め加減は、
入れた水の量に対し10%~20%蒸発する割合が多いようです。
蕎麦全書では「緩火でそろりそろり」鰹節の味がしなくなるまでとあります。なお、アクは小まめに取ります。
※ 厚削り0.2㎜以上、薄削り0.2㎜以下(日本農林規格)
(2)昆布の出汁のひき方
実験では水の量の1~2%ぐらいが適当とされ、に昆布を入れ30分以上1時間以内に昆布を引き上げてから加熱する方法と、
80℃になったところで昆布を投入し3分間加熱してから昆布を引き上げる方法が良かったようです。
昆布は根元の方がいい出汁が取れるので、切り分けて、先と根元を混合して使うことをお奨めします。
また、東京の老舗のそば店では昆布は使わない方が多いようです(濃口醤油はグルタミン酸が多く含まれていることから)。
参考図書:「そば打ち教本」、だしの本(ハート出版)
☆ 特 訓・イ ベ ン ト
○ 四段位認定会の特訓佳境を迎える
令和元年10月20日(日)に北竜町で四段位認定会が開かれます。
当会から、川村洋一さん、藤野英雄さん、高橋晴好さん、成田直喜さん、加藤宏一さん、原田典子さんが受験され、
特訓にも気合いが入っています。
○ そば打ち体験会など佳境を迎える
新そばの時期になり、町内会や福祉施設でのそば打ち教室、
そば打ち訪問などイベントが目白押しです。
みなさんのご協力をお願いします。