漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符 「貌ボウ」 <人の容姿>「邈バク」「藐バク」と「兜トウ」

2023年08月31日 | 漢字の音符
[皃] ボウ・かたち  白部

解字 金文は「白(人の顔)+人(ひと)」の会意。篆文第1字は「白(人の顔)+儿(ひとあし)」で、金文・篆文とも皃ボウで人の容姿をあらわす。篆文第2字は、皃に豸(むじなへん)がついた貌ボウになった、豸(むじなへん)は動作の機敏な動物を表すが、ここでは皃の意味である容姿を強調する字。したがって貌は、人の顔かたちや、ふるまい・動作などの様子・ありさまを表す。皃は貌の原字であり、単独では使用されない。
意味 (1)かたち(貌)。人のすがた。「容貌ヨウボウ」(顔かたち)「風貌フウボウ」(風采と容貌。すがたかたち) (2)外に現れたようす。ありさま。「全貌ゼンボウ」「変貌ヘンボウ

イメージ  
 「かたち・すがた」
(貌)
 「形声字」(邈・藐)
 「同体異字」(兜)
音の変化  ボウ:貌  バク:邈・藐  トウ:兜

形声字
 バク・とおい・はるか・かろんずる  辶部
解字 「辶(ゆく)+貌(ボウ⇒バク)」の形声。[説文解字]は「遠い也(なり)」とし、バクの発音で、とおい・はるかの意。また同音の藐バクに通じ、かろんずる意がある。
意味 (1)とおい(邈い)。はるか(邈か)。「曠邈コウバク」(広くとおい)「邈遐バクカ」(はるかなこと)「邈志バクシ」(遠大な志) (2)あなどる。藐バクに同じ。
 バク・マク・ビョウ・ミョウ・はるか・かろんずる  艸部
解字 「艸(くさ)+貌(ボウ⇒バク・ビョウ)」の形声。[説文解字]は「茈艸むらさきくさ也(なり)」とするが、この草は夏に白色の小花を開くので、ちいさい・かろんじる(小さいものとみなす)意味に用いる。また、邈バクに通じ、はるか・とおい意味もある。
意味 (1)ちいさい。かよわい。「藐孤ビョウコ」(小さなみなしご)「藐爾バクジ」(小さくかよわい)「藐焉バクエン」(孤独なさま) (2)とおい。はるか。「藐然バクゼン」(①遠く離れたさま。②孤独なさま) (3)むらさきそう。紫の染料をとる草。

同体異字
 トウ・ト・かぶと  儿部

解字 篆文は、かぶとをつけた人の象形。白はかぶとの部分、左右の半円は垂れたしころ(首をまもるおおい)を誇張して描いた形と考えられる。下の儿は人を表す。現代字は兜となった。
意味 (1)かぶと(兜)。甲コウ・冑チュウとも書く。頭にかぶる武具。「兜牟かぶと・トウボウ」 (2)頭にかぶるもの。「兜巾トキン」(修験者がかぶる黒いちいさな頭巾) (3)梵語の音訳。「兜率天トソツテン」(仏教の六天の第四位。ここの内院に弥勒菩薩が住むとされる)

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音符「聿イツ」<ふで>と「筆ヒツ」「律リツ」「昼チュウ」「画ガ」「津シン」「書ショ」

2023年08月29日 | 漢字の音符
  増補改訂しました。
 イツ・イチ  聿部         

解字 甲骨文・金文は、先が三本にわかれた筆を手にもつ形。篆文から手が筆の軸にかさなり、下部も変化した。現在の字は篆文の形を引き継いでいる。筆の原字。
意味 ふで(聿)。のべる。

イメージ 
 「ふで」
(聿・筆・律・葎・昼・画・劃) 
 「形声字」(津・書)
 「その他」(肄)
音の変化  イ:肄  イツ:聿  カク:画・劃  ショ:書  シン:津  チュウ:昼  ヒツ:筆  リツ:律・葎  

ふで
 ヒツ・ふで  竹部
解字 「竹(たけ)+聿(ふで)」の会意形声。竹の柄の筆。
意味 (1)ふで(筆)。「毛筆モウヒツ」「土筆つくし」(土から出てくる筆のような、つくし) (2)かく。かきしるす。「筆記ヒッキ」「代筆ダイヒツ」「筆耕ヒッコウ」(筆で田を耕すように生計をたてる。①写字をする人。②文筆により生計をたてる人)
 リツ・リチ・のり  彳部
解字 「彳(人の行くべき道)+聿(ふで)」の会意。書き表わされた人の行くべき正しい道。
意味 (1)のり(律)・おきて。さだめ。「法律ホウリツ」「規律キリツ」「律義リチギ」 (2)音楽の調子。音階。「旋律センリツ」「音律オンリツ」 (3)漢詩の体のひとつ。「律詩リッシ」(第3・4句、第5・6句がそれぞれ対句をなす漢詩。五言と七言がある)
 リツ・むぐら  艸部
解字 「艸(草)+律(律する。おきてにより束縛される)」の会意形声。トゲのある草であることから、トゲで人の行動を律する(自由にさせない)草の意。
意味 (1)むぐら(葎)。ヤエムグラやカナムグラなどのつる草の総称。トゲがあり生い茂って人の動きをさえぎる。荒地や湿地などに雑草として密生し藪をつくる。 (2)人が訪れず荒れ果てたさま。「葎生むぐらふ」(ムグラが生い茂ること)「八重葎やえむぐら」(むぐらが繁茂しているさま。荒廃した家のさま)
[晝] チュウ・ひる  日部         

解字 篆文は「聿(ふで)+日(太陽)+凵(区切る)」の会意。日の出ている時間を区切って書く形で、ひるまを表わした。旧字体は日の下の一線を残した形。新字体は聿を尺に置き換えた。尺は長さの単位でひるまの長さを示す。
意味 (1)ひる(昼)。ひるま。「昼間ひるま」「昼夜チュウヤ」 (2)まひる。正午ごろ。「昼食チュウショク」「白昼ハクチュウ
[畫] ガ・カク・え・えがく  田部      

解字 篆文は「聿(ふで)+田(土地)+凵(区画する)」の会意。耕地の区切りを図面上に描く意。また、区切りをつけようと計画(はかる)こと。のち、絵画の意味ができた。旧字体は区画が田の下に一線となり、新字体は聿(ふで)の大半を略して一として田に続け、下に凵をつけた形。
意味 (1)かぎる。くぎる。さかい。「区画クカク」 (2)はかる(画る)。「画策カクサク」「計画ケイカク」 (3)え(画)。えがく(画く)。「絵画カイガ」 (4)漢字を構成する点や線。「画数カクスウ
 カク  刂部
解字 「刂(刀)+(くぎる)」の会意形声。刀でくぎること。現在は画が書きかえ字となる。
意味 かくする(劃する)。くぎる。区分けする。かぎる。「劃一カクイツ」(全体を一つに区切る、一様にする。=画一)「劃定カクテイ」(区切りをつけて定める。=画定)

形声字
 シン・つ  氵部
解字 「氵(かわ)+聿(シン)」の形声。シンは進シン(すすむ)に通じ、川を舟で進んでついた向こう岸、船の渡し場をいう。また、滲・浸シン(しみ出る・しみる)に通じ、身体からしみ出てくる汗・なみだなどをいう。
意味 (1)つ(津)。みなと。渡し場。「津駅シンエキ」(船着き場の宿場)「津涯シンガイ」(舟を着ける岸)「津波つなみ」(津を襲う大波)「大津おおつ」(地名) (2)しる(汁)。あせ・なみだ・つばき、など。「津液シンエキ」(つばき)「津津シンシン」(つばがわくように次々とわき出る)「興味津々キョウミシンシン
 ショ・かく  日部          

解字 古代文字は「聿(ふで)+者(シャ⇒ショ)」の形声。ショは諸ショ(もろもろ)に通じ、もろもろのことを筆で書くこと。現在の字は者の下の日だけが残った形。
意味 (1)かく(書く)。かきしるす。「書写ショシャ」「清書セイショ」 (2)しょ(書)。書いたもの。てがみ。ほん。「書簡ショカン」「書物ショモツ

その他
 イ・ならう  聿部

解字 篆文第一字は「聿(先が三本にわかれた筆の変形)+㣇(長毛の獣の形)」、第二字は㣇が「ヒ矢」に変化した肄となり、この字が現在に続いている。[説文解字]は第一字について「習(なら)う也。聿に従い㣇の聲(声)」とし、㣇は発音を表す字としている。意味は、①ならう。筆をうごかし習う。②ひこばえ(切り株から生じる枝)があるが、②の意味は解字不能であり、長毛の獣の形とされる㣇イが関与しているのかもしれない。正体不明の字ですが、聿を含むので、ここに配置しました。
意味 (1)ならう(肄う)。学習する。練習する。「肄業イギョウ」(わざをならう)「肄習イシュウ」(肄も習も、ならう意)「肄武イブ」(武術をならう) (2)ひこばえ。切り株から生えた短い枝。「其(その)肄(ひこばえ)の條(えだ)を伐(き)る」(「詩經·周南」)
覚え方 ヒ矢(ひや)、ふで(聿)もち、肄(なら)う。
<紫色は常用漢字>

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音符「木ボク・モク」<枝葉のある木> と 「沐モク」「杢もく」「休キュウ」「閑カン」「困コン」「宋ソウ」「床ショウ」

2023年08月27日 | 漢字の音符
  増補改訂しました。
 ボク・モク・き・こ  木部         

解字 甲骨文字から現代字まで、枝のある木の象形、下部は根を表す。枝があれば葉が茂る。木陰が示すように木には「枝葉のある木」、木を加工してできる「木材・角材・板」のイメージがある。木は部首になり、また音符ともなる忙しい字だが、ここでは音符だけでなく会意となるさまざまな字を集めた。
意味 (1)き(木)。「樹木ジュモク」「木陰こかげ」「大木タイボク」 (2)材料としての木。「材木ザイモク」「土木ドボク」 (3)五行の一つ。「木星モクセイ」 (4)七曜のひとつ。「木曜日モクヨウビ

イメージ 
 「枝葉のある木」
(木・休・沐・宋・凩・杲・杳)
  材料としての「木材・角材・板」(閑・困・梱・杢)
 「形声字」(床)
音の変化  ボク・モク:木・沐・杢  カン:閑  キュウ:休  コウ:杲  コン:困・梱  ショウ:床  ソウ:宋  ヨウ:杳  こがらし:凩

枝葉のある木
 キュウ・やすむ・やすまる・やすめる  イ部
解字 「イ(人)+木(枝葉の茂った木)」 の会意。人が枝葉の茂った木陰で休むこと。[説文解字]は「息止(=休息)也。人に従い木に依る」とする。「木に依る」とは木をたよる意であり、木の下で日光や雨を避けたりすることをいう。
意味 (1)やすむ(休む)。やすまる(休まる)。いこう。やすみ。「休息キュウソク」「休憩キュウケイ」 (2)やめる。「休止キュウシ」「運休ウンキュウ
 モク・あらう  氵部
解字 「氵(みず)+木(枝葉の茂った木)」の会意形声。枝葉の茂った木に雨がふる形。木にとって水分が補給でき、恵みを受ける意となる。また、木の枝葉の茂ったさまを頭髪になぞらえて、水で髪の毛を洗う意ともなる。[説文解字]は「髮を濯(あら)う也。水に従い木の聲(声)」とする。
意味 (1)めぐみをうける。こうむる。うるおう。「沐恩モクオン」(恩恵をこうむる) (2)あらう(沐う)。髪をあらう。「沐浴モクヨク」(髪や体を洗う:浴は体を洗う意)「沐雨モクウ」(①雨で身を洗うこと。②苦労すること) (3)「沐猴モッコウ」とは、さるの意。
 ソウ  宀部

解字 甲骨文字は、三角の上部(やね)の下に木を配した形の会意。屋根または覆いの下に木があるさま。甲骨文字では地名またはその長として用いられている[甲骨文字辞典]。金文は「宀(たてもの)+木」の宋となり篆文をへて宋となった。意味は国名・王朝名となった。
意味 (1)殷が周に滅ぼされたのち、遺民を集めてつくった国の名。春秋十二列国の一つ。前286年に斉に亡ぼされた。(2)王朝名。後にできた中国の王朝名。①劉が建国した宋。420年~479年。②趙が建国した宋。960年~1276年。臨安(今の杭州)に遷都以前を北宋、以後を南宋という。「宋音ソウオン」(宋代以後に禅僧らが日本に伝えた日本の漢字音)「宋版ソウハン」(宋代に出版された書物。=宋本)
<国字> こがらし  几部
解字 「几(風の略体)+木(枝葉のある木)」 の会意。枝葉のある木に強く吹く冷たい風を表した国字。
意味 こがらし(凩)。「木枯らし」とも書く。晩秋から初冬にかけて日本の太平洋側で吹く、強く冷たい風。「こがらし」とは、木を吹き枯らす意。
 コウ・あきらか  木部
解字 「日(太陽)+木(枝葉のある木)」 の会意。太陽が枝葉のある木の上にあるさまを表し、あかるく明らかの意をあらわす。
意味 (1)あきらか(杲らか)。「杲杲コウコウ」(太陽がかがやいてあかるい) (2)たかい。「杲乎コウコ」(たかいさま。乎はその状態であることをしめす)
 ヨウ・くらい・はるか  木部
解字 「木(枝葉のある木)+日(太陽)」 の会意。木の下に太陽が沈んでくらいことを表す。また、おくぶかい意から、はるかの意となる。
意味 (1)くらい(杳い)。おくぶかい。「杳杳ヨウヨウ」(①くらいさま。②はるか遠いさま)「杳ヨウとして」(暗くてよくわからないさま。奥深く暗いさま)「杳冥ヨウメイ」(くらいさま。くらく奥深いさま) (2)はるか(杳か)。「杳然ヨウゼン」(はるかに遠いさま)「杳乎ヨウコ」(深く広いさま。はるかなさま)「杳窕ヨウチョウ」(①はるかなさま。②遠くおくぶかいさま)

木材・角材・板
 カン・ひま・しずか  門部
解字 「門(もん)+木(角材)」 の会意。門扉のかんぬきを表わす。門を閉じてかんぬきを差すと、その役所の仕事ができないので、することがなく暇で静かな意。
意味 (1)ひま(閑)。いとま。「閑職カンショク」「閑居カンキョ」(ひまで居る) (2)のどか。しずか。「閑静カンセイ」 (3)なおざり。おろそか。「閑却カンキャク
 コン・こまる  囗部
解字 「囗(出入り口)+木(角材)」 の会意。出入り口に角材をはめて出入りをとめ、とじこめる形。こまる意となる。
意味 (1)こまる(困る)。くるしむ。きわまる。「困難コンナン」「貧困ヒンコン」「困窮コンキュウ」「困惑コンワク
 コン・しきみ・こり  木部
解字 「木(き)+困(とじこめる)」 の会意形声。困が「こまる」意となったので、本来のとじこめる意を木をつけて表す。荷物をとじこめる(たばねる)意や、門の仕切り(とじこめる)の横木などを表す。
意味 (1)たばねる。しばる。「梱包コンポウ」(たばねて包む) (2)しきみ(梱)。門や戸の仕切りを設けるために敷く横木。「梱外之任コンガイのニン」(宮門の梱(しきみ)の外の任務。国外遠征など) (3)[国]こり(梱)。こうり(梱)。(荷物をとじこめる)竹や柳で編んだかご。行李とも書く。
<国字> もく   木部
解字 「木(木材)+工(工作する)」 の会意。木材を工作する大工・木工。
意味 (1)もく(杢)。こだくみ。大工。木工。 (2)木目のうち、まれに現れる複雑な模様のもの。「杢目もくめ」「玉杢たまもく」(渦状をなした美しい木目)

形声字
 ショウ・とこ・ゆか  广部
解字 「广(やね)+木(=牀の略体。ショウ)」 の形声。牀ショウは、①ねどこ。ねだい(寝台)、 ②こしかけ(牀几ショウギ)の意味があり、この意味を广(やね)をつけて表した牀の異体字。日本ではさらに、ゆか(床)、ここから派生した土台・地盤の意味で用いられる。
意味 (1)とこ(床)。ねどこ。寝台。「起床キショウ」(ベッドから起きる)「病床ビョウショウ」「同床異夢ドウショウイム」 (2)こしかけ。「床几ショウギ」(折りたたみ式の腰掛け) (3)ゆか(床)。家の中で地面より高い位置に板を敷いた所。「床上ゆかうえ」「床下ゆかした」 (4)土台。地盤。「河床カショウ」(川底の地盤)「鉱床コウショウ」(地中に形成された鉱物の層)
<紫色は常用漢字>

木は木へんになる。
 常用漢字の木へんは86字あり部首の第4位(以下は「常用漢字の部首別ランキング」より)
木 札 本 末 未 机 朽 朱 朴 材 条 杉 束 村 来 果 枝 松 枢 析 東 杯 板 枚 枕 林 枠 栄 架 柿 枯 査 柵 柔 染 柱 栃 柄 某 柳 案 桜 格 核 株 桁 校 根 栽 桟 栓 桑 桃 梅 械 梗 巣 梨 椅 棺 棋 極 検 植 森 棚 椎 棟 棒 楷 楽 棄 業 楼 概 構 模 様 横 権 槽 標 機 橋 樹 欄


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音符「爿ショウ」 と「牀ショウ」「状ジョウ」「壮ソウ」「装ソウ」「荘ソウ」と「片ヘン」

2023年08月25日 | 漢字の音符
  増補改訂しました。
 ショウ  爿部           


  下は 疒(やまいだれ)
解字 爿は木製のベッド(寝台)や、物を置く台をタテに描いた象形。甲骨文字は単独で原義の使用例はないが、疒(やまいだれ)の字などに含まれている。新字体に用いられるとき、爿⇒丬に変化する。
意味 (1)だい。物をのせる長い台。寝台。 
参考 爿は部首「爿しょうへん」になる。漢字の左辺(偏)について木の板や長いなどの意味を表す。しかし、この部首は非常に少なく主な字は、牆ショウ・かき(爿+音符「嗇ショク」)しかない。

イメージ    
 「細長い台」(爿・牀) 
 「形声字」(状・妝)
音の変化  ショウ:爿・牀・妝  ジョウ:状  

細長い台
 ショウ・ソウ  木部
解字 「木(いた)+爿(細長い台)」の会意形声。木製の寝台や腰かけをいう。日本では床ショウがよく使われるが、この本字。
意味 (1)ねどこ。寝台。「病牀ビョウショウ」(=病床)「対牀風雪タイショウフウセツ」(隣同士の寝床で吹雪の夜に友人と語りあかすこと) (2)こしかけ。「牀机ショウギ=床几」(①細長いこしかけ。②折りたたみ式のこしかけ) (3)物を置く台。

形声字
 ジョウ・かたち  犬部
解字 旧字は狀で「犬(いぬ)+爿(ショウ⇒ジョウ)」の形声。[説文解字]は「犬の形(かたち)也。犬に従い爿ショウの聲(声)」とし、犬のかたちとする。この意味から転じて、形状・形状の貌(ありさま)の意味になった。新字体は、狀⇒状に変化する。
意味 (1)かたち。すがた。「形状ケイジョウ」「環状カンジョウ」 (2)ものの様子やすがた。ありさま。「状況ジョウキョウ」「状態ジョウタイ」「情況ジョウキョウ」 (3)書き付け。てがみ。「書状ショジョウ」「紹介状ショウカイジョウ
 ショウ・ソウ・よそおう  女部
解字 「女(おんな)+爿(ショウ)」の形声。[説文解字]の上記「狀(状)」の解字を踏襲すると、「女の形(かたち)也」となるが、実際は「飾る也」とし、女がその容貌を飾ることをいう。現代中国で化粧する意は、この略字(妆)が使われる。
意味 よそおう(妝う)。よそおい。化粧する。「妝楼ショウロウ」(化粧部屋)「妝匣ショウコウ」(化粧箱)「妝梳ショウソ」(髪をとき化粧する。梳は、くしけずる意)


   ソウ<大きな男>
[壯] ソウ・ショウ・さかん  士部

解字 旧字は壯で「爿(ショウ)+士(おとこ)」の会意形声。爿ショウは木製のベッド(寝台)や、物を置く台をタテに描いた象形。士はおとこ。タテにした長い台と士(おとこ)を並べた形で、背の高い堂々とした男の意となる。[説文解字]は「大也。士に従い爿の聲(声)。発音は「側亮切(ソウ)」とする。新字体は旧字の爿⇒丬 に略された状になる。
意味 (1)おおきい。大きい男。 (2)充実した年頃。「壮年ソウネン」(働き盛りの年頃。三十歳前後)「壮丁ソウテイ」(①壮年の男子。②夫役や軍役の壮年男子)「壮健ソウケン」(元気でたっしゃ) (3)さかん(壮ん)。勇ましい。「勇壮ユウソウ」「壮絶ソウゼツ」「壮挙ソウキョ」(めざましいくわだて) (3)大きくて立派。「壮観ソウカン」「豪壮ゴウソウ

イメージ  
 「大きな男」
(壮・装・奘[弉]) 
 「形声字」(荘)
音の変化  ソウ:壮・装・荘  ジョウ:奘[弉]

大きな男
 ソウ・ショウ・よそおう  衣部
解字 旧字は裝で 「衣(ころも)+壯(大きな男)」 の形声。大きな男が身ごしらえを整えること。転じて、男女に限らず「よそおう」「表面を飾る」意となる。[説文解字]は「裹(つつむ)也。衣に従い壯の聲(声)。(発音は)側羊切(ソウ)とする。また[唐韻]などの韻書は「音は莊ソウ。意味は裝束ショウゾク(身支度すること)也」とし、身支度をととのえる意とする。新字体は装になる。
意味 (1)よそおう(装う)。よそおい。「服装フクソウ」「武装ブソウ」 (2)飾る。見栄えを整える。「装飾ソウショク」「装丁ソウテイ」(本の表紙をつけ外形を整える) (3)取り付ける。「装備ソウビ」「装置ソウチ
奘[弉] ソウ・ショウ・ジョウ・さかん  大部
解字 「大(おおきい)+壯(大きな男)」 の会意形声。大きく立派な男。弉ソウは異体字。
意味 (1)さかん(奘ん)。壮大。おおきい。「奘腰ショウヨウ」(大きな腰。たくましい) (2)人名。唐代の僧の名。「玄奘三蔵ゲンジョウサンゾウ」(長安から天山南路でインドに入り仏典を学び帰国後、多くの仏典を翻訳した。『大唐西域記』『西遊記』を著わす) (3)日本神話の人名。「伊弉諾尊いざなぎのみこと」(日本神話で伊弉冉尊(いざなみのみこと)と共に日本の国土や神を生んだ男神)

形声字
 ソウ・ショウ・おごそか  艸部
解字 旧字は莊で「艸(くさ)+壯(ソウ)」の形声。壯は、さかんなどの意味があるが、草をつけて様々な意味に用いる。①田舎の家。②みせ。やど。③おごそか、などの意味になる。新字体は荘になる。
意味 (1)納屋。田舎の家。いなか。「村荘ソンソウ」「別荘ベッソウ」 (2)みせ。やど。「茶荘チャソウ」(茶葉や茶具を売る店)「旅荘リョソウ」(旅館) (3)おごそか(荘か)。「荘厳ソウゴン・ショウゴン」(荘も厳も、おごそかの意)「荘重ソウチョウ」(おごそかで重々しい) (4)[国]中世の貴族や社寺の私有地。「荘園ショウエン
<紫色は常用漢字>

 ヘン・かた  片部 

 上が片、下が木         
解字 木の右半分を残した形で、木片・木切れ(いずれも木の切れ端の意)を表した字。楚簡(東周)の片は[漢字字形史字典]による。片の下に同じ年代の「木」を配した。楚と篆文(説文解字)の片と木を比較すると、木の右半分を残したかたちであることが判る。現代の木の右半分から、片を想像することはできない。
 私はこれまで[字統]の「版築工事に用いる型枠の板の象形で、「爿ショウ」と対面するもう一方の板を片という。爿と片で両側のあて木の形」という説を掲載していたが、ここに訂正させていだだきます。
意味 (1)かた(片)。かたほう。「片腕かたうで」「片方かたホウ」 (2)きれはし。かけら。「木片モクヘン」「片雲ヘンウン」(ちぎれぐも) (3)わずか。「片言かたこと」「片時かたとき
参考 片は部首「片かた・かたへん」になる。漢字の左辺(偏)につき、木の薄い板の意味を表す。常用漢字は版ハンのみ。主な字は以下のとおり。
 片ヘン・かた(部首)
 版ハン(片+音符「反ハン」)
 牌ハイ(片+音符「卑ヒ⇒ハイ」)
 牒チョウ(片+音符「枼ヨウ⇒チョウ」)
<紫色は常用漢字>

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音符「也ヤ」<へび> と「施シ」「弛シ」「他タ」「地チ」「池チ」

2023年08月23日 | 漢字の音符
  也の古文字変遷を改めました。
 ヤ・なり・や  乚部   

解字 金文はへびの象形で、頭とまがる胴をえがく。篆文は蛇らしくなくなり[説文解字]は「女陰也」とおかしな解字をしている。この字は隷書(漢代)をへて「也」の形となり、意味も断定の助字「なり」や、感嘆の助字「や」などとして用いられる。
意味 (1)なり(也)。~である。断定の語気をあらわす助字。 (2)や(也)。か(也)。文中や文末にあって語の勢いを強めたり、感嘆・疑問・反語の語気を示す助字。

イメージ 
 「へび」
(也・他) 
  ヘビの特徴である「うねる」(施・絁)
  ヘビが「ながくのびる」(地・池・馳・弛・髢)
音の変化  ヤ:也  シ:施・弛・絁  タ:他  チ:地・池・馳  テイ:髢

へ び
 タ・ほか  イ部
解字 「イ(人)+也(タ=它。へび)」の会意。タの音は它と同じでヘビ(蛇)の意、古くは、ヘビの多い地域で安否を尋ねるとき「它無きか」(ヘビの害はないか)と聞いた。転じて「別条ないか」の意となり、そこから它は「別のこと・ほかの」などの意となった。それを佗でも表した。他は、もと佗の俗字として使われたが、のち正式な字となった。このため発音がタになっている。也はもとヘビの意だから発音だけがヤ⇒タに変わったかたち。
意味 (1)自分以外の人。血族以外の人。「他人タニン」「他家タケ」 (2)ほか(他)。ほかの。べつの。「他国タコク」「他意タイ」「他山の石タザンのいし」(他の山から出る粗末な石でも自分の宝石を磨くのに役立つ。粗末なものでも自分を磨く助けとなる)

うねる
 シ・セ・ほどこす  方部
解字 「方𠂉(旗の略体)+也(うねる)」の会意。うねりながらなびく旗のこと。旗をなびかせて人々を指揮して動かし、諸事をおこなうこと。また、「ほどこす」(必要な処置をとる)意から「めぐみ与える」意が派生した。[説文解字]は「旗の貌(さま)。㫃に従い也の聲(声)」とする。
意味 (1)旗がなびく。(2)実行する。おこなう。ゆきわたらせる。しく。「実施ジッシ」「施政方針シセイホウシン」「施工セコウ・シコウ」(工事をおこなう)「施行シコウ」(①実施する。②法律の効力を発生させる)「施術セジュツ」(手術などを実施すること)(3)ほどこす(施す)。必要な処置をとる。「施策シサク」(ほどこすべき対策)「施錠セジョウ」(錠をかける)(4)ほどこす(施す)。めぐみ与える。「布施フセ」(施しめぐむ)「施薬セヤク」(薬をほどこす)「施主セシュ」(①寺や僧に物を施す人。②法事や葬式の当主。③建築主)
 シ・あしぎぬ  糸部
解字 「糸(=絹・きぬ)+施の略体(ほどこす)」の会意形声。日本の古代では、律令政府の官人が政府から受け取る(ほどこされる)給与は布・綿など現物給与が多かった。絁は現物給与の絹織物をいう。現物給与は諸国からの現物租税であり、諸国の調(絹・綿・布)のうち、絹織物を絁とも言った。のちに貨幣経済が発達するにつれて現物納税の絁は粗悪化し、太い糸で織ったものが出回ったので、あしぎぬ(悪し絹)と呼ばれるようになった。なお、中国では粗い絹の意。
意味 あしぎぬ(絁)。ふとぎぬ(太絹)⇔ 縑かとり。古代日本に存在した絹織物の一種。交換手段・課税対象・給与賜物・官人僧侶の制服などに用いられた。なお、中国では粗い絹の意。

ながくのびる
 チ・ジ  土部
解字 「土(とち)+也(ながくのびる)」の会意。ながくうねうねとのびる大地。なお、[漢字字形史字典]は、「墜ツイ(おちる)の㒸の部分を声符の「也」に変えた形があり、さらにそこから阝を略した地が天の対義語として土の意味に使用された」とする。しかし、説明が複雑になるので、池と同じく「ながくのびる」意で解字させていただいた。
意味 (1)つち。とち。「地面ジメン」「陸地リクチ」 (2)ところ。場所。「地域チイキ」 (3)その土地の。「地酒ジざけ」「土産みやげ」 (4)身分。位置。「地位チイ」 (5)本来持っている性質。「素地ソジ
 チ・いけ  氵部
解字 「氵(水)+也(ながくのびる)」の会意。長く水を引いた通水路や城の堀池のこと。のち、庭の池などをいう。[説文解字注]は「水を畜(ため)るを陂(つつみ)と曰い、地を穿(うが)ち水を通すを池と曰う」とする。
意味 (1)ほり。みぞ。「城池ジョウチ」(城のほり)「金城湯池キンジョウトウチ」(熱湯をたたえた堀と金属の城。守りが固くせめおとすことができない城) (2)いけ(池)。地を掘って水をためたところ。「貯水池チョスイチ」「池塘チトウ」(池の堤) (3)硯などの水をためておく所。「硯池ケンチ」「電池デンチ
 チ・はせる  馬部
解字 「馬(うま)+也(のびる)」の会意形声。馬が両脚を前後にのばして疾走すること。[説文解字]は「大駆(勢いよく走る)也。馬に従い也の聲(声)」とする
意味 はせる(馳せる)。かける。速くはしる。「馳名チメイ」(名声がひろまること)「駆馳クチ」(はせかける。駆も馳も、はせる意)「馳走チソウ」(食事の準備のためにかけまわる:もてなしの立派な料理)
 シ・チ・ゆるむ・たるむ・たゆむ  弓部
解字 「弓(ゆみ)+也(のびる)」の会意。弓の弦をはずして弓がのびたさま。
意味 ゆるむ(弛む)。たるむ(弛む)。「弛緩シカン」(ゆるむこと。弛も緩も、ゆるむ意)「弛張シチョウ」(緩むことと張ること)
 テイ・かもじ  髟部かみがしら
解字 「髟(かみ)+也(ながくのびる)」の会意。長くのびた髪の毛で、長い髪が原義。のち、もとの髪に毛を加えて長くする髪の意となった。
意味 かもじ(髢)。髪文字かもじとも書く。(1)長い髪。女房詞の髪 (2)婦人の髪に加えて長くする髪。そえがみ。いれがみ。「髢屋かもじや」(かもじの材料を買い取って、かもじを作ってうる店)。「髢草かもじぐさ」(イネ科の多年草。子供がこの葉で人形のかもじを作って遊ぶのでこの名があるという)
<紫色は常用漢字>

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音符「粛 シュク」<淵に臨む心境>と「繍シュウ」「簫ショウ」「嘯ショウ」「蕭ショウ」「瀟ショウ」

2023年08月21日 | 漢字の音符
  解字を改めました。
[肅] シュク・つつしむ  聿部ふでづくり


  上が粛、下が淵
解字 金文は第一字・二字とも「聿イチ・イツ(手に筆をもつ形)+淵(ふち)」となっている(聿は甲骨・金文では、下部が三つに分かれた形。筆を参照)。第一字の淵(ふち)は淵の金文第二字とほぼ同じであり、第二字も水流の点があることから淵と思われる。金文は淵に面して聿イチ・イツがある形である。金文の意味は[簡明金文詞典]に、①厳粛。②決断、とあり、また同書に「肅哲シュクテツ」という語があり意味は「威厳、明知」とする。この意味から考えると、淵を前にその心境を筆で記した会意と解字することができる。
 後漢の[説文解字]は「事を持する振敬シンケイ(つつしみうやまうう)也。聿に従い淵(氵なし。以下同じ)上に在り,戰戰兢兢キョウキョウ也」とする。意味は完全にはつかみ難いが、「事にあたってつつしみ敬う。聿が淵の上にある。戰戰兢兢(おそれつつしむさま)」。つまり、深く水流が渦巻く淵を前に、その心境を戰戰兢兢と表現した。また後の宋代の[広韻]は「恭也,敬也,戒也」としている。
意味 (1)つつしむ(粛む)。うやうやしい。「粛恭シュクキョウ」「自粛ジシュク」「粛粛シュクシュク」 (2)きびしい。おごそか。「厳粛ゲンシュク」 (3)しずか。「静粛セイシュク」 (4)ただす。いましめる。「粛清シュクセイ」(反対者を逮捕し排除する)「粛正シュクセイ」(きびしくただす)「綱紀粛正コウキシュクセイ

イメージ 
 「淵に臨む心境」
(粛)
 「形声字」(繍・簫・蕭・嘯・瀟)
音の変化 シュク:粛  シュウ:繍  ショウ:簫・嘯・蕭・瀟

形声字
繡[繍] シュウ・ぬいとり  糸部
解字 正字は繡で「糸(いと)+肅(シュク⇒シュウ)」の形声。シュウは秀(ひいでる)に通じ、色糸で布を縫いすばらしい文様を縫い出すこと。綉シュウは異体字。[説文解字]は「五采(彩)の備(そな)え也。糸に従い肅の聲(声)」とする。新字体に準じた繍も通用する。
意味 (1)ぬいとり(繍)。ししゅう。「刺繍シシュウ」「繍衣シュウイ」 (2)うつくしい。「錦繍キンシュウ」(錦と刺繍を施した織物。美しい衣服)
 ショウ・よもぎ  艸部
解字 「艸(くさ)+肅(シュク⇒ショウ)」の形声。[説文解字]は「艾蒿ガイコウ(よもぎ)也。艸に従い肅の聲(声)」とし、ショウという名の草で、ヨモギに当てる。また、さびしい意に用いられることがある。
意味 (1)よもぎ(蕭)。かわらよもぎ。キク科の多年草。「蕭艾ショウガイ」(①よもぎ。蕭も艾も、ヨモギの意。②身分の低い人) (2)さびしい。ひっそりした。「蕭然ショウゼン」(ものさびしいさま) (3)姓の一つ。「蕭何ショウカ」(漢の高祖を助け天下を統一した功臣)
 ショウ・ふえ  竹部

排簫(復元品)(「音楽研究所」の排簫から)
解字 「竹(たけ)+肅(シュク⇒ショウ)」の形声。ショウという名の竹管の笛をいう。[説文解字]は「參差シンサ(ふぞろいな)管楽。象は鳳(おおとり)之(の)翼。竹に従い肅の聲(声)」とし、排簫の説明をしている。
意味 (1)ふえ(簫)。しょうの笛。「排簫ハイショウ」(長短の竹管10~24本を長さ順あるいは左右対称となるよう平らに並べて、木帯でおさえた笛)「簫鼓ショウコ」(笛と太鼓) (2)単管の笛。「洞簫ドウショウ」(尺八に似て底がない笛)
※笙ショウは、竹管をまるく並べた管楽器で吹き口は一つ。(排)簫ショウは吹き口は管の数だけある。
 ショウ・うそぶく  口部
解字 「口(くち)+肅(ショウ)」の会意形声。ショウは小ショウ(ちいさい)に通じ、口をちいさくすぼめて声を強く出すこと。口笛をふく形だが、鳥や動物の鳴き声、詩歌を歌う、大きなことを言う等の意味にひろがった。[説文解字]は「吹く聲(声)也。口に従い肅の聲」とする。また、「同注」は「(詩経の)召南箋曰く。嘯は口を蹙(ちぢ)め而(て)出す聲(声)也」とする。
意味 うそぶく(嘯く)。①口をすぼめて声を大きく強く出す。また、口笛をふく。②鳥や獣が鳴き声をあげる。長く声を引く。「猿嘯エンショウ」「虎嘯コショウ」「海嘯カイショウ」(海が鳴るように波が川を溯り押し寄せてくる現象)③詩歌を口ずさむ。「吟嘯ギンショウ」(声を長く引いて詩歌を歌う)④大きなことを言う。えらそうなことを言う。
 ショウ   氵部
解字 「氵(水)+蕭(ショウ)」の形声。ショウという名の川で瀟水ショウスイをいう。湖南省にみなもとを発し湘水ショウスイに合流する。瀟水は水が清く深いので、きよい意ともなる。[説文解字]は「水名。水に従い蕭の聲(声)」とする。
意味 (1)中国の川の名。「瀟水ショウスイ」(湖南省の山間部から流れ永州市で湘水に合流する)「瀟湘八景ショウショウハッケイ」(瀟水が湘水に合流する付近の八つの良い景色。中国の山水画の伝統的な画題)(2)きよい。清く深い。「瀟洒ショウシャ」(さっぱりとして清らかなさま。すっきりと洗練されたさま)
<紫色は常用漢字>

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音符「叚カ」<磨かれていない玉の原石>と「仮(假)カ」「暇カ」「瑕カ」「蝦カ」「霞カ」

2023年08月19日 | 漢字の音符
  改訂しました。
 カ   又部             

解字 金文は、「厂(がけ)+二(玉石二つ)+両手(上からの手と下からの手)」の会意。二は未加工の玉石ふたつを表わし、ガケから玉の原石を両手で採取しているさま。「厂(がけ)+二(玉石二つ)」は、「段」の金文左辺と同じ。段がガケをたたいて普通の石を切り出している形なのに対し、叚は、たたいたガケからが玉の原石を両手で取り出すさま。原石はまだ磨かれておらず表面がざらざらしており瑕(玉にあるキズ)の原字。両手は篆文で、「ヨ(右手の略体)+又(て)」と「コ(ヨの略体)+又」の二種があったが、現代字では「コ+又」が残った。字形が変わっているので語呂合わせで覚えると便利。 こ()ぼう・棒()に()こ()また()で叚カ
意味 (1)かり。表面におおいをかぶって正体をかくす。 (2)かぶりもの。うわべ。(=假)

イメージ 
 「玉の原石」(遐)
 採取した玉の原石の「表面がざらざらしている」(瑕・蝦)
 ざらざらが「表面をおおう・うわべ」(仮・暇・霞・葭)
音の変化  カ:遐・瑕・蝦・仮・暇・霞・葭

玉の原石
 カ・とおい・はるか  辶部
解字 「辶(ゆく)+叚(玉の原石)」の会意形声。玉の原石が加工される場所へ運ばれること。宝石の加工は都会が多いので、採掘場所から、とおい・はるかの意となる。
意味 (1)とおい。はるか。「遐域カイキ」「遐壌カジョウ」(遐は遠い、壌は土地。遠くへだたった土地)「遐陬カスウ」(遠い辺鄙なところ。陬は、かたいなかの意)「遐齢カレイ」(はるかな年齢で、長寿) (2)(はるかな場所の意から)死ぬ。「昇遐ショウカ」(貴人が死ぬこと=升遐ショウカ)「登遐トウカ」(貴人が死ぬこと)

表面がざらざらしている
 カ・きず  王部
解字 「王(玉)+叚(表面がざらざらしている)」の会意形声。表面がざらざらしている玉。
意味 きず(瑕)。玉にあるきず。ひび。欠点。あやまち。「瑕疵カシ」(①きず。②欠点・欠陥のあることをいう)「細瑕サイカ」「小瑕ショウカ」「瑕瑾カキン」(瑕は玉のきず瑾は美玉で、美玉のきずをいう。短所。欠点)
 カ・えび  虫部
解字 「虫(小動物)+叚(表面がざらざらしている)」の会意形声。[説文解字]は「蝦蟆(がま)也。虫に従い叚の聲(声)」とし背面に多くのイボがあるガマガエルの意とする。しかし、この字は現在、えび(蝦)として使われることが多い。蝦の字は「蝦蛄シャコ」として、甲殻類のシャコの意味で用いられることから、単独の蝦がシャコと似ているエビの意味になったと思われる(私見)。
意味 (1)えび(蝦)。エビ科の甲殻類の総称。鰕。海老。蛯とも書く。「蝦蛄シャコ」(エビに似たシャコ科の小動物。浅い海の泥にすむ。食用にする) (2)がま。蛙の一種。「蝦蟇がま」(ヒキガエルの別称。背面に多くのイボがある) (3)「蝦夷えぞ」とは、①北海道の古称。②古代、東北地方から北海道にかけて住み、朝廷に従わなかった民族。えみし(蝦夷)。

表面をおおう・うわべ
[假]  カ・ケ・かり  イ部
解字 旧字は假で 「イ(ひと)+叚(うわべ)」 の会意形声。人のうわべ。人の本当のすがたでなく、表面的な仮のすがたのこと。叚の内側は玉であり、表面は本当の姿ではない意。[説文解字]は「眞(真)に非ず也。人に従い叚の聲(声)」とする。本当の姿でないため「かり・かりの」の意となる。新字体は、旧字の叚⇒反に簡略化された仮になる。
意味 (1)かり(仮)。かりの。かりに。「仮定カテイ」「仮病ケビョウ」「仮面カメン」(①顔にかぶる面。②正体を隠すみせかけのもの) (2)かりる(借りる)。かしあたえる。「仮貸カタイ」(①かりる。②かす) (3)ひま。いとま。(=暇)
 カ・ひま・いとま  日部
解字 「日(ひ)+叚(=假[仮]。かり・かりの)」の会意形声。仮のすがたの日。すなわち、働いている本来の姿でなく、その日は働いていない仮の姿の意。働いていないので、ひま・やすみの意となる。[説文解字]は「閑(しずか)也。日に従い叚の聲」とし、[同注]は「閒(間あいだ)也」とする。
意味 (1)ひま(暇)。いとま(暇)。やすみ。「閑暇カンカ」(することのない状態。ひま)「休暇キュウカ」(休も暇も、やすみの意)「暇日カジツ」(ひまな日)「暇(いとま)がない」(休むときがない) (2)[国]いとま(暇)。わかれ。「暇乞(いとまご)い」(別れをつげる) 
 カ・かすみ・かすむ  雨部
解字 「雨(あめ)+叚(表面をおおう)」の会意形声。微細な水滴が空中に浮遊して、空をおおっている状態。日本では、かすみの意味とするが、霞かすみに朝日・夕日があたる朝焼け・夕焼けの意味もある。[説文解字]は「赤雲の气也」とし朝焼け・夕焼けの意とする。
意味 (1)かすみ(霞)。かすむ(霞む)。空がぼんやりして遠くがはっきり見えない。「春霞はるがすみ」「朝霞あさがすみ」「雲霞ウンカ」(①雲とかすみ。②人が多く集まっているさま) (2)朝やけ。夕やけ。「霞光カコウ」(朝焼け・夕焼けなどの光。転じて錦などの織物)
 カ・あし  艸部
解字 「艸(草)+叚(表面をおおう)」の会意形声。河川の下流域から汽水域上部、あるいは干潟の陸側に広大な茂み(ヨシ原)を作り、あたり一面をおおうように広がるアシ。[説文解字]は「葦(あし)の未(いま)だ秀(ひいで)ざる者」とするが、葦と葭は同じ植物である。
意味 あし(葭)。よし(葭)。イネ科の多年草。「葭簀よしず」(葭で編んだすだれ)
<紫色は常用漢字>

<参考音符>
 ダン  殳部

解字 金文は、「厂ガン(がけ)+二(石二つ)+殳(打つ)」の形。「厂(がけ)+二(石二つ)」は、ガケの石切り場の石を表す。殳は、手にツエボコを持って打つ形で、ここではクサビ(セリ矢)を打ちこむ意。全体は、ガケの石切り場でセリ矢を打ちこみ、石を切り出している形。切りだした跡は段々が残る。篆文以降は、「切り出してできた段+殳(打つ)」の形で、打って切り出してできた段々を表わす。
意味 (1)だん(段)。きざはし。だんだん。「階段カイダン」「段丘ダンキュウ」 (2)ひとくぎり。切れ目。「段落ダンラク」 (3)方法。てだて。「手段シュダン」「算段サンダン
イメージ  「段々」 (段)
      ガケをたたくことから「打ちたたく」 (鍛)
      「同音代替」 (緞)
音の変化  ダン:段  タン:鍛・緞 
音符「段ダン」へ

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音符 「監カン」 <水かがみを見る> 「鑑カン」「艦カン」 「濫ラン」「藍ラン」「覧ラン」

2023年08月17日 | 漢字の音符
 「覧ラン」を独立させ音符字をさらに追加しました。
 カン・みる  皿部            

解字 甲骨文は、水の入った皿(うつわ)をのぞきこむ人(「目+人」=見)の形だが、意味は祭祀名になっている。金文と篆文は、「臣(目を90度回転させた形。下を見る目)+人(ひと)+一(水をはった)+皿(さら)」 の会意。現在の字は、人⇒𠂉に変化した監になった。人が水を張った皿(水盤)の上に、おおいかぶさるようにして下を見て顔を映し見ること。水鏡、および鏡を見る意となる。転じて、見張る意となり、さらに見張る意から監房(ろうや)の意となる。監を音符に含む字は、「かがみ・よく見る」「見張りをする」、水を張ってある水盤である「うつわ」のイメージを持つ。
意味 (1)みる(監る)。みはる。とりしまる。「監視カンシ」「監督カントク」 (2)ろうや。「監房カンボウ」「収監シュウカン

イメージ 
 「かがみ・よく見る」
監・鑑
 「見張りをする」艦・檻
  水かがみの「うつわ」濫・籃・藍・襤・塩
音の変化  カン:監・鑑・艦・檻  ラン:濫・籃・藍・襤  エン:塩

かがみ・よく見る
 カン・かがみ・かんがみる  金部

呉王夫差鑑(上海博物館所蔵。春秋時代・前5世紀)
解字 「金(金属)+監(かがみ)」 の会意形声。青銅製の水かがみ。監(水かがみ)に金をつけ水盤が青銅であることを示した字。また、かがみに自分を映してよく見る意から、かんがみる・見分ける意ともなる。なお、同じ意味をもつ鏡キョウは、「金(金属)+竟(さかいめ)」で、金属の表面をみがいた境目で姿を映すかがみの意。
意味 (1)かがみ(鑑)。手本。「明鑑メイカン」(曇りのないかがみ) (2)かんがみる(鑑みる)。見分ける。照らし合わせて見る。「鑑査カンサ」(優劣を目利きする)「鑑定カンテイ」「鑑賞カンショウ

見張りをする
 カン・いくさぶね  舟部
解字 「舟(ふね)+監(見張りをする)」 の会意形声。敵を監視する舟が原義。転じて、軍艦の意となる。
意味 いくさぶね(艦)。戦闘用の船。「軍艦グンカン」「艦隊カンタイ
 カン・おり  木部
解字 「木(き)+監(見張りをする)」 の会意形声。木の枠にとじこめて監視するおり。
意味 (1)おり(檻)。猛獣や罪人などを入れておく丈夫なかこい。「檻車カンシャ」(罪人などを運ぶ、おりのついた車)「檻猿カンエン」(檻に入れられた猿。自由がきかない例え)「檻穽カンセイ」(おりと、おとしあな) (2)てすり。「欄檻ランカン」(=欄干)「折檻セッカン」(檻が折れる。宮殿のてすりにしがみついて皇帝に諫言しようとした朱雲を役人がひき下ろそうとしたとき檻が折れた。①きびしく意見すること。②子供などをきびしくしかる)

うつわ 
 ラン・みだれる・みだりに  氵部
解字 「氵(水)+監(うつわ)」 の会意形声。うつわを越えて水があふれること。
意味 (1)水があふれる。ひろがる。「氾濫ハンラン」 (2)みだれる(濫れる)。みだりに(濫りに)。「濫獲ランカク」「濫用ランヨウ」「粗製濫造ソセイランゾウ
 ラン・かご  竹部
解字 「竹(たけ)+監(うつわ)」の会意形声。竹で作ったうつわ(竹かご)。
意味 かご(籃)。竹などを編んで作ったかご。「華籃カラン」(はなかご)「魚籃ギョラン」(魚をいれるびく)「籃輿ランヨ」(竹作りの駕籠かご)「揺籃ヨウラン・ゆりかご
 ラン・あい  艸部
解字 「艸(くさ)+監(うつわ)」 の会意形声。うつわの中(藍がめ)で染める草。あい染めの草。
意味 (1)あい(藍)。あいぐさ。タデ科の一年草。葉を発酵させて染料とする。「出藍シュツラン」(藍草で染めた藍色は、もとの藍草より青い) (2)あいいろ。「藍綬ランジュ」(勲章をさげる藍色のひも) (3)梵語の音訳語「伽藍ガラン」(僧園) (4)(襤ランに通じ)ぼろ。「藍褸ランル」(ぼろ。弊衣ヘイイ
 ラン・ぼろ  衣部
解字 「衣(ころも)+監(=濫。みだりに)」の会意形声。濫りに用いた(濫用した)衣。使い古したぼろの衣をいう。
意味 ぼろ(襤)。使い古した衣。また布切れ。ぼろぎれ。「襤衣ランイ」(ぼろの衣。やぶれごろも)「襤褸ランル・ぼろ」(①使い古した衣。②使い古した布。③使い古して役に立たないもの。④欠点。短所。「襤褸が出る」)
[鹽] エン・しお  土部
 海水をうつわで煮つめて作る塩
解字 旧字は「鹵(岩塩を袋に入れた形の象形:しお)+監(うつわ)」 の会意形声。うつわの中に塩田で濃くした海水を入れて煮つめて作る塩。新字体は、から臣を取り、さらに鹵⇒口に略したものに、土(塩を含んだ塩田の土)を加えたもの。もと、天然の岩塩を鹵、海水から作る塩を鹽エンと区別 していた。
意味 (1)しお(塩)。「塩田エンデン」「食塩ショクエン」 (2)塩素。「塩酸エンサン



   覧[覽]ラン <広くながめる>
[覽] ラン・みる  見部
解字 旧字はで「見(みる)+監の略体(皿⇒罒となり右上に移動)」 の会意。監の原義である水かがみをみる形にさらに見をつけた字。水かがみは下を向いて見るので、高い所から下をひろく見る意となる。新字体は旧字から皿を略した。
意味 (1)みる(覧る)。広くながめる。「展覧テンラン」(並べ広げたものを見る)「天覧テンラン」(天子がながめる)「遊覧ユウラン」(旅をしながら広く見る) (2)全体を見通せるようまとめたもの。「便覧ビンラン」「要覧ヨウラン

イメージ
 「上からみる」覧・攬・纜
 「形声字」
音の変化 ラン:覧・攬・纜・欖

上からみる
 ラン・とる  扌部
解字 「扌(て)+(上からみる)」の形声。上からひろくみて手でコントロールすること。
意味 (1)とる(る)。集めて手に持つ。とりまとめて持つ。「収攬シュウラン」(とりまとめる)「攬裙ランクン」(裙クン(スカートのすそ)をまとめて手にもつ)「覽筆ランピツ」(筆をとる) (2)まとめて扱う。「包攬ホウラン」(半職業的に納税代行を行うこと)「承攬ショウラン」(一手に請け負う)
 ラン・ともづな  糸部
解字 「糸(つな)+覽(上からみる)」の形声。比較的新しい字。南北朝時代(543年刊)の[玉篇]は「舟を維(つな)ぐ索(つな)也」とする。従って部首の糸は索または綱(つな)の略体であろう。舟の艫(とも・船尾)から岸を見て係留する場所におろすロープ(つな)をいう。かなり大型の船が出来て以降の字であろう。
意味 (1)ともづな()。舟を岸につなぐつな(綱)。ともづなする。「牽纜ケンラン」(ともづなをひく)「解纜カイラン」(ともづなを解く)「収纜シュウラン」(ともづなを巻きとって船出する) (2)太いつな。「電纜デンラン」(絶縁体でおおった太い電線。ケーブル)

形声字
 ラン  木部
解字 「木(き)+(ラン)」の形声。ランという名の木。
橄欖
https://baike.baidu.com/item/橄榄/220866?fr=aladdin
意味 「橄欖カンラン」に使われる字。「橄欖カンラン」とは、カンラン科の常緑高木。東南アジア原産。楕円形の核果は食用。果実は食用にされ、種子からは油が採れるため、東南アジアや華南で栽培される。「欖仁ランニン」(橄欖の種子。油をとる)
<紫色は常用漢字>

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音符「白ハク」<しろい>「伯ハク」「舶ハク」「泊ハク」「迫ハク」「拍ハク」

2023年08月15日 | 漢字の音符
  改訂しました。
 ハク・ビャク・しろ・しら・しろい  白部

解字 甲骨・金文の形から、白骨化した頭骨の象形[字統]とも、どんぐり状の実の象形で木の実の白い中身を表す[学研漢和]とも言われる。私は「楽」の字に含まれる白がドングリと解字している(音符「楽ラク」を参照)ので、どんぐり派といえるがドングリの実が白いとは思えない。白は単純な図形であり、白に似た形は古文字の中にも希に見受けられる。現在の段階では白の字源は不明であるようだ。字形は篆文から上に線がでた形になり、現代字で白となった。白を含む字のほとんどはハクの音による形声字である。
意味 (1)しろ(白)。しろい。「白馬ハクバ」「白波しらなみ」 (2)しろくする。しらげる。「精白セイハク」「漂白ヒョウハク」 (3)きよい。けがれない。「潔白ケッパク」 (4)はっきりしている。あかるい。「明白メイハク」 (4)なにもない。「空白クウハク」 (5)もうす。告げる。「告白コクハク」「白状ハクジョウ」「建白ケンパク」(自分の意見を申し立てる)

イメージ 
 原義である「しろい」(白・魄)
 「形声字」(伯・舶・柏・泊・箔・迫・怕・粕・狛・拍)
 「ヘキの音」(碧)
音の変化   ハク:白・魄・伯・舶・柏・泊・箔・迫・怕・粕・狛・拍    ヘキ:碧

しろい
 ハク・たましい  鬼部
解字 「鬼(死者のたましい)+白(しろ)」 の会意形声。白はここで白骨、鬼はここで死者のたましい。魄ハクは白骨となった死者の「たましい」の意で、人が死ぬと「たましい」の魂コンは天にのぼり、魄ハクは地にとどまるとされた。
意味 (1)たましい(魄)。地にある死者のたましい。陰の精気で死後も地にとどまるとされる。「魂魄コンパク」(たましい。精霊。魂は天にあるたましい、魄は地にあるたましい)「落魄ラクハク」(おちぶれること。零落レイラク。) (2)地球の影によって生ずる月の暗い部分。「死魄シハク」(陰暦の朔日サクジツの月。⇔生魄セイハク)「生魄セイハク」(①陰暦16日の月。②たましい。生霊) (3)迫ハクに準じた用法。「気魄キハク」(強い精神力。=気迫キハク。)

形声字
 ハク・ハ  イ部
解字 「イ(人)+白(ハク)」の形声。甲骨文字は白の字を、首長・領主の意味で用いている[甲骨文字辞典]。金文も同じである。なぜ白が首長の意味になったのか不明であるが、首長は老人がなることが多いので、髭(ひげ)や髪の毛が白いのでハク(白)と呼んだのではなかろうか。イ(人)がついた伯は秦代になって出現した。また、伯は首長以外に年齢の上の者にも言うようになった。
意味 (1)かしら。おさ。「伯王ハオウ」(諸侯のはたがしら。=覇王) (2)おじ。おば。「伯父おじ」「伯母おば」 (3)一番上の兄・長兄。中国では兄弟の長子を伯、二番目を仲チュウ、末子を季と言った)「伯仲ハクチュウ」(①兄とその下の弟。②優劣のつけられないこと) (4)一芸に秀でた人の称。「画伯ガハク」「詩伯シハク
 ハク  王部
解字 「王(玉)+白(ハク)」の形声。ハクとよばれる玉。単独で使われず琥珀コハクとして用いられる。

琥珀のペンダント(ウィキペディア「琥珀」より)
意味 「琥珀コハク」に用いられる字。琥珀とは、地質時代の樹脂などが埋没して出来た一種の化石。中国で虎が死後に石になったものだと信じられていたことに由来する。黄色味を帯び透明ないし半透明で、装身具などに利用される。
 ハク  舟部
解字 「舟(ふね)+白(ハク)」の形声。ハクという名の舟。比較的新しい字で、宋代の[広韻]は「海中大船」とする。海を渡る大きな船をいう。
意味 ふね(船)。海を渡る大きな船。「舶来ハクライ」(外国から舟で運ばれてきたもの)「船舶センパク」(大型の船)
 ハク・ビャク・かしわ  木部
解字 「木(き)+白(ハク)」の形声。ハクという名の木。[説文解字]は「椈キク(このてがしわ)也(なり)」とする。漢代の[春秋緯]は「諸侯の墓、柏を樹える」と墓の木としている。日本では、カシワの木をいう。
意味 (1)このてがしわ(柏)。ヒノキ科の常緑高木。墓のまわりに植えることが多かった。「柏酒ハクシュ」(邪気をはらうため元旦に飲む酒。このてがしわの葉を入れた酒)「柏城ハクジョウ」(天子の墓地。御陵) (2)ヒノキ科の常緑樹の名。「柏槙ビャクシン」(イブキの一品種) (3)[国]かしわ(柏)。ブナ科の落葉高木。葉は大きく食物を包むのに用いる。「柏餅かしわもち」(柏の葉でくるんだ餅) (4)「柏手かしわで」(両方の手のひらを打ち合わせて鳴らすこと=拍手かしわでとの混同)
 ハク・とまる・とめる  氵部
解字 「氵(水)+白(ハク)」の形声。[甲骨文字辞典]は「泊は甲骨文字からあり、ハクという名の川を意味した。この字は一旦亡失し、古文(春秋戦国)で浅瀬を意味して同形の形声文字が作られ、さらに後に舟が停泊する意味に転用された」とする。おそらく船が先端を浅瀬に乗り上げて泊まり、船がとまる意から、転じて、宿泊する意となったのであろう。
意味 (1)とまる(泊る)。船がとまる。「停泊テイハク 」 (2)とまる(泊る)。人がやどる。「宿泊シュクハク」「外泊ガイハク
 ハク   竹部
解字 「竹(たけ)+泊(ハク)」の形声。ハクは薄ハク(うすい)に通じ、金や銀をたたいて薄くのばしたものをいう。薄いので竹刀で切る。また、竹を細工して編み、薄くのばしたすだれをいう。
意味 はく(箔)。(1)金属をたたいて紙のように薄くのばしたもの。「金箔キンパク」「銀箔ギンパク」 (2)竹で編んだすだれ。「簾箔レンパク」(簾も箔も、すだれの意)
 ハク・せまる  之部
解字 「辶(ゆく)+白(ハク)」 の形声。ハクは薄ハク(相手との距離が少ない。肉薄ニクハク)に通じ、相手との間隔をつめること。543年に編纂の[玉篇]は「逼迫ヒッパク也」。北宋(1008年編纂)の[広韻]は「急也」とする。
意味 (1)せまる(迫る)。さしせまる。「迫力ハクリョク」(圧迫する力)「迫撃ハクゲキ」(敵に迫って攻撃する) (2)追いつめる。苦しめる。「迫害ハクガイ」「逼迫ヒッパク」(追い詰められて、ゆとりがない) (3)おどしつける。おびやかす。「脅迫キョウハク
 ハ・ハク・おそれる  忄部
解字 「忄(心)+白(ハク)」の形声。ハクは迫ハク(おどしつける)に通じ、脅迫されて、心でおそれること。宋代の[集韻]も「懼(おそれ)る也」とする。
意味 おそれる(怕れる)。こわがる。「恐怕キョウハク」(恐も怕も、おそれる意)「害怕ガイハク」(こわがる)
 ハク・こま・こまいぬ  犭部
解字 「犭(いぬ)+白(ハク)」の会意形声。ハクは迫ハク(おどしつける)に通じ、吠えて羊を誘導する牧羊犬をいう。日本では神社の前に置かれ、魔よけにする「こま犬」を表す字となる。[説文解字]は「狼の如くして善く羊を駆る。犬に従い,白の聲(声)」とし、牧羊犬とする。日本では高麗犬(こまいぬ)とも言い、魔よけの像として用いられる。
茨木神社(大阪府茨木市)の狛犬
意味 こま(狛)。こまいぬ(狛犬)。獅子や犬に似た獣で、像として神社の入口などに守護獣として一対で向き合う形で置かれる。
 ハク・かす  米部
解字 「米(米の原酒)+白(ハク)」の形声。ハクは迫ハク(押しつける=圧迫)に通じ、原酒(もろみ)を押しつけて絞り、板のように薄くした酒粕をいう。[説文解字]は「糟粕ソウハク(酒のしぼりかす)。酒滓(さけかす)也」とする。
意味 (1)かす(粕)。かもした酒をしぼってこしたカス。「酒粕さけかす」「糟粕ソウハク」(①酒かす。②残りかす) (2)[国]かす(粕)。良い所をとり去ったのこり。役に立たないもの。
 ハク・ヒョウ・うつ  扌部  
解字 「扌(手)+白(ハク)」 の形声。ハクは搏ハク(うつ・たたく)に通じ、手を打つこと。後漢末の辞典[釋名]も「搏(たた)く也。手を以って其の上を搏く也」としている。
意味 (1)うつ(拍つ)。手でたたく。「拍手ハクシュ」「拍手かしわで」(神を拝む時、手のひらを打ち鳴らすこと) (2)リズムや音数の単位。「拍子ヒョウシ

ヘキの音
 ヘキ・みどり・あお  石部
解字 「王(たま)+石(いし)+白(ヘキ)」の形声。ヘキは白ハクの転音で、発音のみ表す。碧ヘキは、ヘキという名のあおや、みどり色の石で、これが宝石のようなので王(玉)がつく。
意味 (1)あお色の美しい石。「碧玉ヘキギョク」 (2)みどり(碧)。あお(碧)。「碧眼ヘキガン」(あおい目。西洋人)「碧海ヘキカイ」(あおい海)「碧空ヘキクウ」(あおい空)「紺碧コンペキ」(深みのある濃いあお色)
覚え方 おう()が、しろ()い、いし()を、みどり()に変えた。
<紫色は常用漢字>

<参考> 白は部首「白しろ」になる。字の上下左右に付いて白い意などを表す。常用漢字で5字で以下のとおり。
 白ハク・しろ (部首) 
 的テキ・まと(白+音符「勺シャク」)
 百ヒャク(一(ひとつ)+白(ヒャク・ハク))
 皇コウ・オウ(白+王)の会意
 皆カイ・みな(白+比)の会意、などがある。
  このうち、皇コウ・皆カイは音符になる。

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音符「奇キ」<人がまたがる> と「騎キ」「寄キ」「崎キ」「埼キ」「椅イ」

2023年08月13日 | 漢字の音符
  奇の解字をやりなおし増補改訂しました。
キ・めずらしい・く  大部

解字 戦国(秦)の奇は「大(手足をひろげた人)+「可(カ⇒キ)」の会意声形。この字形は篆文・隷書および現代にいたるまで変わらない。この字は大の人がどんな状態かを表しており、発音はカが変化したキである。可の丁(実際は上部の右が短い。パソコンで出ない)の部分は木の枝を利用した斧の柄を表しており、発音はカで柯(斧の柄)の原字である。
石斧の復元模型(ネット写真より。現在なし)
 写真は石斧複製展示品であるが、木の枝別れした部分を切り取り柄にしており、鋭角の枝を利用している。これは枝の先に付ける石刃を傾斜させて使いやすくするためである。したがって柄は鋭角にまがったものを表している。では「大+可」の奇は何を表すのか? 私は大の人の脚が鋭角に開いている形であると思う。つまり何かにまたがっている形であり、それは馬にまたがる形である。
 人が馬にまたがる形の騎は戦国時代からあり、奇も同じ時代に成立している。[説文解字]は奇を「大に従い可に従う。異(ことな)る也。一に曰(いわ)く耦(偶)不(なら)ず」とし、他と異なっており偶グウ(つれあう)でなく単独だとする。しかし、奇がもつ豊富な意味には言及していない。私は奇の主な意味は同音の騎に由来するのではないかと思う。
 古代中国の人びとにとって乗馬は遊牧民族の習俗であり、それを見ることは「めずらしい」ことだった。また、乗馬の兵は機動力があり、「おもいがけない」所から表れ攻撃をする「すぐれた」兵士であった。また、馬に乗るのは単騎であることから、偶数に対する「奇数」の意となる。
意味 (1)めずらしい(奇しい)。ふしぎな。「奇術キジュツ」「奇妙キミョウ」「奇貨キカ」(めずらしい品物) (2)特にすぐれた。「奇才キサイ」 (3)思いがけない。くしくも(奇しくも)。「奇跡キセキ」「奇遇キグウ」 (4)二で割り切れない数。半端(はんぱ)。「奇数キスウ

イメージ 
 「またがる」
(奇・騎・羇)
 意味(1)の「めずらしい」(綺)
 「形声字」(倚・椅・寄・崎・埼)
 「その他」(畸)
音の変化  キ:奇・綺・寄・崎・埼・騎・羇・畸  イ:椅・倚 
 
またがる
 キ・のる  馬部 
  
解字 「馬(うま)+奇(またがる)」の会意形声。戦国期の騎は、形の整わないプリミティブな字形だが「漢字古今字資料庫」に見える。奇は、またがる人の形。そこに馬をつけて馬にまたがる意を表す。
意味 (1)のる(騎る)。馬にのる。「騎乗キジョウ」「騎射キシャ」 (2)馬に乗った兵士。また、その兵士を数える語。「騎将キショウ」「騎士キシ」「単騎タンキ
 キ・たび  罒部よこめ   
解字 「罒(=网。あみ。かぶせる)+革(かわ紐)+奇(=騎。馬にのる)」の会意形声。人が乗っている馬のあたまにかぶせる革のひもである、「おもがい」や「たずな」の意。また、馬に乗って、たずなをとり旅をすること。
意味 (1)たび(羇)。たびびと。「羇旅キリョ(たび。羇も旅も、たびの意)」「羇旅漫録キリョマンロク」(曲亭馬琴が書いた江戸時代後期の旅行記) (2)おもがい。馬具の一種。くつわを固定するため馬の頭からかける革紐。また、たずなをいう。

めずらしい
 キ・あや  糸部
解字 「糸(いと)+奇(めずらしい)」の会意形声。めずらしい模様を糸で織りだしたぬの。
意味 (1)あや(綺)。あやぎぬ。美しい模様を織りだした絹織物。「綺羅キラ」(あやぎぬと、うすぎぬ)「綺雲キウン」(あやぎぬのような雲) (2)うつくしい。きれい。きらびやか。「綺麗キレイ

形声字  
 イ・よる  イ部
解字 「イ(ひと)+奇(キ⇒イ)」の形声。[説文解字]は「依(よ)る也。人に従い奇の聲(声)」とする。
意味 (1)よる(倚る)。もたれる。よりかかる。「倚門イモン」(門によりかかること)「倚伏イフク」(よりそってひそむ)「禍福倚伏カフクイフク」(災いと幸せはよりそってひそむ。順繰りにやってくる) (2)たよる。たよりにする。「倚信イシン」(信用してたよる)「倚頼イライ」(たよる。=依頼)
 イ  木部
解字 「木(き)+奇(=倚。よりかかる)」の会意形声。人がよりかかる木製のイス。
意味 いす。こしかけ。「椅子イス」「椅几イキ」(寄りかかる台。脇息キョウソク。)
 キ・よる・よせる   宀部  
解字 「宀(いえ)+奇(=倚。よりかかる)」の会意形声。家によりかかること。家をたよる意。日本では、立ち寄る、集まる(寄席)意でも使われる。
意味 (1)よせる(寄せる)。身をよせる。たよる。「寄宿キシュク」(①他人の家に身をよせる。②学校の宿舎に住むこと)「寄生キセイ」(他人にたよって生活する) (2)他の人にたより、まかせる。あずける。「寄託キタク」(あずけたのむ) (3)おくる。やる。あたえる。「寄付キフ」「寄進キシン」 (4)[国]たちよる。よる(寄る)。「寄港キコウ」 (5)[国]あつまる。人をよせる。「寄り合い」「寄席よせ
 キ・さき  山部
解字 「山(やま)+奇(キ)」の形声。キは危(危ない)に通じ登るのに危険な山をいう。[説文解字]は「険ケン也。本(もと)は、危に従い攴の聲(声)に作る。今の文、崎に作る」とし、もとは危に従う字であった。山道がけわしいこと。日本では、陸部が水中に突出し、地形が変化の多いところをいう。
意味 (1)けわしい。「崎傾キケイ」(けわしくかたむく)「崛崎クッキ」(山が険しくそそりたつさま) (2)[国]さき(崎)。みさき。海中につき出た陸地。また、地名・姓に用いられる。「長崎ながさき」「山崎やまざき」「大崎おおさき
 キ・さい・さき  土部
解字 「土(つち)+奇(キ)」の形声。[広韻]などの韻書は「岸べの曲(まが)った頭(あたま)也」とし、湾曲した岸をいう。日本では山や丘のつき出た部分をいう。
意味 (1)[国]さい(埼)。さき。みさき。山や丘のつき出た部分。「埼玉さいたま」(地名。関東地方の県名) (2)陸地が海や湖などの中へつきでた所。みさき。きし。
 イ・ああ  犭部
解字 「犭(けもの。動作が俊敏)+奇(イ)」の形声。動作が俊敏なけものに感嘆の声をあげること。発音はイ。ああ。感嘆の声。 
意味 (1)ああ。感嘆の声。「猗嗟イサ」(ああ) (2)うつくしい(猗しい)。「猗猗イイ」(うつくしい) (3)たおやか。なよやか。すなお。「猗靡イビ」(女子の容姿のたおやかなさま)
 イ・キ・ああ・そばだてる・かたむける  欠部
解字 「欠(口をあける)+奇(イ・キ)」の会意形声。①イの発音。猗(ああ)に通じ、感動の声を表す。②キの発音。崎(けわしい)に通じ、そばだつ・かたむく意。  
意味 (1)ああ(欹)。嘆美の声。「欹與イヨ」(嘆美のことば。ほめそやす) (2)そばだてる(欹てる)。かたむける(欹ける)。「欹傾キケイ」(かたむくさま)「欹斜キシャ」(斜めにかたむける)「欹器キキ」(かたむける器。水を入れる器で、空のときは傾き、半分ほど水を入れると真っ直ぐたち、満ぱいにするとひっくりかえる。『荀子ジュンシ』に見える言葉で中庸の大切さを示す器として古くから親しまれた。 別名「宥坐ユウザの器」(自らの戒めとするために身近に置いてある道具のこと。「宥坐」は身近や身の回りという意味 )

宥坐の器「欹器キキ(壬生町立歴史民俗資料館。復元品)
その他
 キ  田部
解字 「田(区切った土地)+奇(はんぱ)」の会意形声。奇は奇数の意味があり、二で割り切れない数から、半端(はんぱ)の意がある。古代中国の土地制度(井田法)で開墾した土地を分配する際、一定の大きさにならない半端な耕作地のこと。転じて、人とそりが合わないさまの意で用いられる。
意味 (1)井田として区切ることのできない半端な耕作地。(2)単位以下の半端な数。「畸零キレイ」(小数点以下の数。はした) (3)人とそりが合わないさま。孤立したさま。風変わりなさま。「畸人キジン」(=奇人)
<紫色は常用漢字>

<関連音符>
 カ  口部
解字 「口(くち)+丁(斧の柄にするまがった木)」の形声。音符「可カ」を参照。
 ア  阝部こざと
解字 「阝(おか)+可(まがる)」の会意形声。おかの曲がったところ。音符「阿ア」を参照。

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