漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

コロナ「禍」をコロナ「渦」と書き間違えている人も多いようだ

2020年12月31日 | 紛らわしい漢字 
 ネットを検索していたら、私が発行した『音符順 精選漢字学習字典』を購入された方が、ご自身のブログに、コロナ禍の「禍」について書いておられるのを見つけた。簡潔な文章で最後にオチもついており、面白いので引用させていただきます。

コロナ「禍」をコロナ「渦」と書き間違えている人も多いようだ
僕が漢字学習に愛用している
石沢誠司編 『音符順 精選漢字学習字典 ネット連動版』によると、


冎(カ)は、手足の骨が連続してつながる形で、ここでは関節部分をさす。そこに口のついた咼カは、関節部分がまるいことを表し、関節の先端が、とびでてまるい意と、それを受けるへこんでまるい部分をいう。具体的には、大たい骨のまるい上部とそれを受ける骨盤の骨臼をさすものと思われる。咼を音符に含む字は、関節の骨の一方のくぼんだ「まるい穴」、骨の一方のまるく出た「まるい山形」のイメージをもつ。

とあり、それぞれの次の解説を見ていくと

 カ・わざわい  ネ部
解字 「ネ(=示。祭壇・神)+咼(まるい穴)」の会意形声。神のたたりを受けて思いがけない穴(落とし穴)にはまること。

 カ・うず  氵部
解字 「氵(水)+咼(まるいくぼみ)」の会意形声。水がうずまいてまるい穴のようになること。
意味 (1)うず(渦)。うずまき。うずまく。

とあり、今回の件は新型コロナによる「災い」なわけだから「コロナ禍」が正しい
「渦」の方は「渦中(うずまきの中。転じて、事件の混乱したさわぎの中)」という熟語に引っ張られているような気がする

中には「コロナ鍋」などと、とんでもない単語を生み出す人もいるようだが

ちなみに音符「冎」を持つ漢字には
「渦」「過」「禍」「鍋」(ここまでが常用漢字)「堝」「窩」「蝸」があり、音読みは全て「カ」であるから、まあどの字を当てても「コロナカ」とは読める

参考:『漢字の音符』


ブログ K.Jun's Photograph より


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音符「旁ボウ」<かたわら・ひろがる>と「傍ボウ」「榜ボウ」「謗ボウ」「牓ボウ」「膀ボウ」「蒡ボウ」「磅ボウ」「滂ボウ」

2020年12月28日 | 漢字の音符
  増補改訂しました。
 ボウ・ホウ・かたわら・つくり  方部

解字 甲骨文と金文は、「凡ボン・ハン(木製の容器)+方(方向)」の会意形声。凡は、木製の角ばった容器などの象形と考えられ、方は方角・方向の意で発音も兼ねる。甲骨文字はこの他にも多様な字体があるが意味は、①地名またはその長。殷に敵対した「旁方」と呼ばれる地名、②祭祀名,[甲骨文字辞典]。金文は、①方向、方位、②人名,[簡明金文詞典]。篆文は方以外の部分が大きく変化した。[説文解字]は「溥(あまねし・ひろい・おおきい)也(なり)。方の聲(声)」とし意味が変化した。その後の隷書(漢代)以降では、隋の訓詁書の[博雅]は「旁,大也。廣(ひろい)也」とし説文解字と同じ意味だが、543年の[玉篇]は「猶(なお)側ソク(そば・かたわら)也(なり)。一方に非(あら)ず也(なり)」とし、「かたわら」の意味があるとする。しかし、その字体から意味の変化を知るのはむずかしい。現代字は旁となったが、意味は篆文以降の、あまねく・ひろい意、および、かたわらの意味があるが、「かたわら・そば」の意は、日本では人をつけた傍ボウが受け持っており、現在、旁の字は、漢字の「つくり(旁)」の意がポピュラーである。なお、あまねくの意は、「ひろがる」イメージで音符となる。
意味 (1)あまねく。ひろい。「旁引ボウイン」(広く調べ出す。広く考証する。博引)「博引旁証ハクインボウショウ」(広く引用し広く証拠を示して説明する) (2)かたわら(旁ら)。(=傍ら) (3)つくり(旁)。漢字の右辺の部分。
覚え方 傍の字を参照。傍を、ごろ合わせで覚えておくと、旁も書けて便利。

イメージ 
 「かたわら」
(旁・傍・榜・牓・膀)
 あまねくの意から「ひろがる」(謗)
 「形声字」(蒡・滂・磅)
音の変化  ボウ:旁・傍・榜・牓・膀・謗・蒡・磅  ボウ・ホウ:滂

かたわら
 ボウ・かたわら・はた  イ部
解字 「イ(人)+旁(かたわら)」の会意形声。かたわらにいる人。転じて「かたわら」の意となる。旁が、あまねく・かたわら両方の意があるので、人をつけて、かたわらの意を明確にした字。
意味 (1)かたわら(傍ら)。はた(傍)。そば(傍)。わき(傍)。「傍線ボウセン」(文字や文章のわきに引く線)「路傍ロボウ」(みちばた)「傍観ボウカン」(かたわらで見る)「傍若無人ボウジャクブジン」(傍らに人無きが若(ごと)し) (2)分かれた。派生した。「傍系ボウケイ」「傍流ボウリュウ」「傍証ボウショウ」(証拠となる傍系の資料。間接の証拠) (3)つくり(傍=旁)  
覚え方 ひと()たつわ(立ワ)ほう()ぼうに観者 (※立の下とワの上は重なる)
 ボウ  木部
解字 「木(いた)+旁(かたわら)」の会意形声。道や建物のかたわらに立てた木製の掲示板。
意味 (1)たてふだ。掲示板。「榜札ボウサツ」(たてふだ)。 (2)官吏登用試験の合格者を発表する掲示板。「金榜キンボウ」(金色の字で書いた合格者の掲示板)「榜元ボウゲン」(官吏登用試験の首席合格者) (2)かかげしめす。「標榜ヒョウボウ」(かかげあらわす)
 ボウ  片部
 牓示石
解字 「片(木の板)+旁(かたわら)」の会意形声。土地の境界(かたわら)に立てた目印の木札。
意味 (1)たてふだ。「牓札ボウサツ」(たてふだ=榜札)(2)境界の表示札。「牓示ボウジ」(木の杙くいや石などで領地の境界を標示したもの)「牓示杙ボウジぐい」(荘園などのさかいぐい)「牓示石ボウジいし」(荘園などの境界石)
 ボウ  月部にく
解字 「月(からだ)+旁(かたわら)」の会意形声。月(からだ)の旁(かたわら)にある部分で、片腹、片腕、昆虫などの羽をいう。なお、膀胱ボウコウ(ゆばりぶくろ)には、かたわらの意味はなく、「ひろがる」イメージの字。
意味 (1)わき。わきばら。 (2)かたうで。「膀臂ボウヒ」(片腕。助っ人。臂は、うでの意) (3)かたわらに付く羽。「翅膀シボウ」(昆虫などの羽) (4)「膀胱ボウコウ」とは、尿を一時的に溜める袋状の器官(ゆばりぶくろ)に使われる字。下腹部中央に位置する。旁ボウのイメージは「ひろがる」で、体(月)の中のひろがる袋の意。

ひろがる
 ボウ・そしる  言部
解字 「言(いう)+旁(ひろげる)」の会意形声。人々の前でひろく言いふらすこと。特に相手の欠点をあげつらう言葉をいうことをいう。
意味 そしる(謗る)。悪口をいう。「謗言ボウゲン」「誹謗ヒボウ」(誹も謗も、そしる意)「誹謗中傷ヒボウチュウショウ」(悪口を言いふらして他人を傷つける)「毀謗キボウ」(人を非難する。毀はこぼつ意)「讒謗ザンボウ」(あしざまに言ってそしる)

形声字
 ボウ  艸部
 葉付きの牛蒡
解字 「艸(草)+旁(ボウ)」の会意形声。ボウという名の草。「牛蒡ゴボウ」に用いられる字。
意味 「牛蒡ゴボウ」とは、キク科の二年草。古くは薬草として中国から伝来。日本では根菜として栽培される。牛は草木の大きいものに冠され、蒡ボウのなかでも大きいものを指して言った言葉。「牛蒡子ゴボウシ」(ゴボウの種子を乾燥したもの。民間薬として消炎、解毒、解熱効果がある)
 ボウ・ホウ  氵部
解字 「氵(みず)+旁(ボウ・ホウ)」の形声。水が盛んに流れたり、雨が盛んに降るさまを滂ボウ・ホウという。[説文解字]は「沛ハイ(雨や水の勢いがよいさま)也(なり)。水に従い旁の聲(声)」とする。
意味 (1)水が盛んに流れたり、雨が盛んに降るさま。「滂湃ホウハイ」(水勢の盛んなさま)「滂沛ホウハイ」(①水の豊かで広い。②雨が盛んに降る。③恩沢が豊か) (2)涙の盛んに流れるさま。「滂沱ボウダ」(①大雨が降る。②涙が盛んに流れる) (3)豊かで広い。「滂洋ホウヨウ
 ホウ・ポンド  石部
解字 「石(いし)+旁(ホウ)」の形声。石が落ちる音を磅ホウという。六朝時代の梁の[玉篇]は「石の聲(声)なり」とし石の崩落する音の形容。また、イギリスの重さの単位であるポンド(pound)をいう。
意味(1)石が落ちる音の形容。(落ちる音が)広く広がる。「磅薄ホウハク」(広大で無辺)「磅唐ホウトウ」(ひろくゆきわたる。あふれる) (3)ポンド(磅)。イギリスの重量の単位(pound)。また、貨幣の単位(pound)。
<紫色は常用漢字>

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音符 「㬎ケン」  <あきらか> と 「顕ケン」「湿シツ」

2020年12月24日 | 漢字の音符
 㬎 [显] ケン  日部

解字 「日(太陽)+絲(いと)」の会意。太陽の下に細い絲がある形(現在、糸と書くが、以前は絲と書いた)。この字は顯(顕)ケンの字から頁を省いて作られた後起の字と思われる。明るい日光の下の糸は、細いがはっきり分かる(あきらか)意で、顕(顯)ケンの音符となる。なお新字体では、㬎 ⇒显に簡略化される。単独で使われることなく「あきらか」のイメージで音符となる。

イメージ 
  「あきらか」 (顕・湿・隰)
音の変化  ケン:顕  シツ:湿・隰

あきらか
 ケン・あきらか・あらわれる  頁部

解字 金文は太陽の下の絲を、目を強調した見に近い形の人が見ている形。あきらかの意に用いて「明顕メイケン」(あきらか)「顕揚ケンヨウ」(表章する)などの語がある。篆文は頁に日と絲がつく。旧字は絲の下部が四点に略された顯になった。新字体は、顯⇒顕に変化する。意味は「あきらか」の他に、太陽の光の下で「あらわになる」。
意味 (1)あきらか(顕らか)。はっきりしている。あきらかにする。「顕著ケンチョ」「顕在ケンザイ」「顕彰ケンショウ」「顕微鏡ケンビキョウ」(微細なものを顕かにする鏡レンズ) (2)あらわになる。あらわれる(顕れる)。「露顕ロケン」 (3)名高い。地位が高い。「顕官ケンカン」「顕貴ケンキ」(名声があり地位が高い)
湿 シツ・しめる  氵部
解字 旧字は濕で 「氵(水)+㬎(あきらか)」 の会意形声。水気があきらかなこと。しめる意となる。新字体は、濕⇒湿に変化する。
意味 しめる(湿る)。しめりけ。うるおす。「湿気シッケ」「湿地シッチ」「湿原シツゲン」「湿潤シツジュン」「除湿ジョシツ
隰 シツ・シュウ  阝部こざと
解字 「阝(おか)+㬎(濕の省形)」の会意形声。丘の付近の湿地。
意味 (1)さわ(隰)。湿地帯。「原隰ゲンシツ・ゲンシュウ」(高原と、低湿地)「隰畔シツハン」(湿地の水際) (2)にいばり。新たに開拓した土地。
<紫色は常用漢字>

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同訓異字「すすめる」 進める・勧める・薦める

2020年12月21日 | 同訓異字
問題 に上の漢字を入れてください。
(1)あの人をめる
(2)入会をめる
(3)交渉をめる    

「スス-める」(他動詞)は、「スス-む(自動詞)」(前に向かって出る。先へ動く・行く)」の動作をさらに促進させることで、
① 「スス-む」状態から、物事を一歩先の状態にまで持ってゆく。はかどらせる。
② 相手に「スス-む」状態から、さらに先の動作をするよう働きかける。
③ 人・物事などの良い点をのべて、その採用を相手にうながす。
などの意味をもちます。
漢字字典で「すすめる」を引くと主なもので7字ありますが、今回は代表的な3つに限定して紹介します。

 シン・すすむ・すすめる  之部

解字 金文は隹(とり)の左横に彳(ゆく)、下に止(あし)が付いた形。隹が止(あし・あるく)で彳(ゆく)形。篆文は彳と止が合体して辵チャクになり、現代字は辵⇒辶に変化した進になった。辶は移動する意味であり、隹が移動するとは、空を飛ぶ意。隹は飛んで上昇して前にすすむ。したがって、進の字には、①上昇する。②前にすすむ。の二つの意味がある。
意味 (1)すすむ(進む)。前に出る。「前進ゼンシン」 (2)すすめる(進める)。前に出させる。「進軍シングン」(軍隊を進める) (2)のぼる。あがる。「昇進ショウシン」(地位がのぼりすすむ)「進捗チンチョク」(①官位などをあげる。②物事がはかどる)(3)ささげる。たてまつる。「進上シンジョウ

 カン・すすめる  力部

解字 篆文は「力(ちから)+雚カン(カン)」の形声。カンは讙カン(やかましい)に通じ、やかましく言って力でおすこと。すすめる・説きすすめる意となる。雚カン(フクロウ科の鳥)は夜に仲間同士で鳴き交わして生活しており、「さわがしい・にきやか」のイメージがある。なお、雚は漢字字典ではコウノトリ科の鳥とされるが、文字の形からみて疑問がある。
意味 (1)すすめる(勧める)。はげます。奨励する。「勧誘カンユウ」「勧業カンギョウ」(産業を発展させるよう勧める)「勧進カンジン」(寺院・仏像のために寄付を募ること)(2)説得する。「勧告カンコク」(あることをするように説きすすめる)
音符「雚カン」へ

 セン・すすめる  艸部

解字 「艸(くさ)+廌タイ(不正を指摘する聖獣)」の会意。聖獣が食べる草の意。転じて、この草をきちんと揃えて聖獣にお供えし、すすめる意となる。また、草をそろえて供える形から敷物・こもの意ともなる。
意味 (1)草。細かい草 (2)すすめる(薦める)。人を選んで推挙する。「推薦スイセン」「薦挙センキョ」(人を挙げてすすめる)「自薦他薦ジセンタセン」 (3)しく。敷物。こも(薦)。「薦席センセキ」(こもを敷いた席)「薦被(こもかぶ)り」(薦でつつんだ酒樽)
音符「廌タイ(不正を指摘する聖獣)」へ
<紫色は常用漢字>

問題と解答
(1)あの人をめる
(2)入会をめる
(3)交渉をめる
回答
(1)は、人・物事などの良い点をのべて、その採用を相手にうながす意ですから、です。
(2)は相手にある動作をするよう働きかける意ですから、です。
(3)は物事を一歩先の状態にまで持ってゆく。はかどらせる意ですから、です。

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音符「干カン」<①たて ②サスマタ状の武器>と「刊カン」「汗カン」「肝カン」「岸ガン」「軒ケン」 

2020年12月17日 | 漢字の音符
 カン・ほす・ひる  干部         

解字 干には二種類の文字が混在して描かれている。甲骨文第1字は、羽飾りのついた盾(たて)、第2字は、長柄の先が分れた刺股(さすまた)のような武器である単を簡略化した形。金文第1字は盾、第2字がサスマタ状の武器である。甲骨文字は地名などで原義の用法は見られないが、金文は防御の武器である盾の意味で用いられ「干戈カンカ」(盾とほこで、攻守の武器)という語がある。篆文は形がサスマタ状に統一され、後漢の[説文解字]は、「犯す也」としてサスマタ状の武器で「おかす・かかわる」意に用いている。このほか、干はその発音から乾カン(乾燥する)に通じ「かわく・ほす」意に、幹カン(みき)に通じ、十幹十二枝(十干十二支)の意となる。
意味 (1)おかす。かかわる。「干渉カンショウ」「干犯カンパン」(干渉して権利を犯す) (2)たて(盾)。ふせぐ。まもる。「干戈カンカ」(たてとほこ)「干城カンジョウ」(城をまもる。国家を防ぎ守る武人) (3)ほす(干す)。ひる(干る)。かわく。「干拓カンタク」「干天カンテン」「干害カンガイ」 (4)みき。干支のじっかん(十干)。「干支えと・カンシ」 (5)てすり。「欄干ランカン

イメージ 
 サスマタ状の武器で「おかす・かかわる」(干・奸)
 防御の武器である「たて(盾)」(扞)
 幹カンの原義は木の旗竿であり「木の棒」(刊・岸・軒・竿・杆・罕)
 幹カン(主要な部分)に通じ「体幹・身体の主要部分」(汗・肝)
 「カンの音」(鼾)
音の変化 カン:干・奸・扞・刊・竿・杆・罕・汗・肝・鼾  ガン:岸  ケン:軒

おかす・かかわる
 カン・おかす・よこしま  女部
解字 「女+干(おかす・かかわる)」の会意形声。女をおかすこと。また、よこしまなことをすること。
意味 (1)おかす(奸す)。 (2)よこしま(奸)。わるがしこい。「奸婦カンプ」(悪賢い女)「奸臣カンシン」(わるだくみをする家臣)「奸計カンケイ」(わるだくみ)「漢奸カンカン」(中国で、敵に通じる者。売国奴。裏切者)

たて(盾)
 カン・ふせぐ  扌部
解字 「扌(て)+たて(干)」の会意形声。たて(干)を手でもち、身をふせぐこと。
意味 (1)ふせぐ(扞ぐ)。まもる。「扞禦カンギョ」(ふせぎまもる)(2)こばむ。「扞拒カンキョ」(扞も拒も、こばむ意)「扞格カンカク」(互いに相容れぬこと) 

木の棒
 カン・けずる  刂部
解字 「刂(刀)+干(木の棒)」の会意形声。刀で木の棒をけずる意。また、けずる・きざむ意から、木の板に文字をほって刷り、出版する意となる。
意味 (1)けずる(刊る)。きざむ(刊む)。ほる。 (2)書物を出版する。「刊行カンコウ」「刊本カンポン」「週刊シュウカン
 ガン・きし  山部
解字 「山+厂(がけ)+干(=刊。けずる)」の会意。山際のがけが水でけずられているところ。
意味 (1)きし(岸)。がけ。みぎわ。かどだった水ぎわ。「海岸カイガン」「岸壁ガンペキ」「護岸ゴガン」 (2)たかい。けわしい。 (3)おごる。「傲岸ゴウガン」(おごりたかぶる)「傲岸不遜ゴウガンフソン」(おごりたかぶり謙虚さがない)
 ケン・のき  車部
解字 「車+干(木の棒)」の会意形声。二本の轅(ながえ:前に長く平行に出た二本の棒)がある車、特に身分が高い人が乗る反り上がった轅の車をいう。転じて、先が反り上がった家のひさし(のき)の意となる。
 反り上がった轅の馬車
意味 (1)のき(軒)。ひさし。「軒端のきば」 (2)家を数える語。屋号。雅号。「三軒の家」 (3)(軒のきは上にあることから)あがる。高くあがる。「意気軒昂イキケンコウ」(意気込みがあがる) (4)轅の高く反り上がった車。また、車の総称。「軒車ケンシャ」(身分の高い人が乗る車)
竿 カン・さお  竹部
解字 「竹(たけ)+干(木の棒)」の会意形声。竹の棒、すなわち竹ざおのこと。
意味 さお(竿)。たけざお。「物干し竿」「竿灯カントウ」(長い竹竿に横竹を付け、そこにいくつも提灯をつけたもの。秋田市の七夕祭で練り歩く)

 カン・まれ  网部あみ

解字 篆文は、「网(あみ)+干(木の棒)」の会意形声。棒(柄)の先に網をつけた鳥を捕える鳥網をいう。「まれに」の意となるのは、鳥網で鳥を捕えることのできるのは、まれにしかないからか? 現代字は、网⇒「冖+八」に変化した罕になった。
意味 (1)とりあみ。鳥をとる。長い柄の先に小網がついたもの。(2)まれ(罕)。まれに。たまに。めったにない。「子罕言利シカンゲンリ」(孔子はまれに利を言う。先生はめったに利のことは語らなかった。論語より)。現代中国では「罕見カンケン」(まれに見る=まれだ。めったにない)の形でよく使われる。
 カン・てこ  木部
解字 「木(き)+干(木の棒)」の会意形声。木の棒である干に木をつけて原義を確認した字。また、木の棒を重い物の下にいれて動かす「てこ」の意味に用いる。
意味 (1)木の棒。さお。「杆棒カンボウ」(こんぼう)「杆秤カンショウ」(さおばかり) (2)てこ(杆)。重いものを動かす棒。「槓杆コウカン」(槓も杆も、てこの意) (3)たて(盾) 

身体の主要部分
 カン・あせ  氵部
解字 「氵(水)+干(身体の主要部分)」の会意形声。身体からにじみ出る水。
意味 あせ(汗)。汗をかく。「汗顔カンガン」(恥ずかしくて顔から汗がでる)「発汗ハッカン
 カン・きも  月部にく
解字 「月(からだ)+干(主要な部分)」の会意形声。身体のもとになるところの意で、気力・精神力をいう。また、ひろく内臓の総称である「はらわた」の意から、具体的には肝臓にあてる。
意味 (1)こころ。「肝胆カンタン」(心のなか・心のそこ) (2)大事なところ。かなめ。「肝要カンヨウ」「肝心カンジン」 (3)きも(肝)。はらわた。「肝臓カンゾウ」「肝油カンユ」(魚類の肝臓からとった油)

カンの音
 カン・いびき  鼻部  
解字 「鼻の旧字+干(カン)」の形声。カンは喊声カンセイ(さけびごえ)や、歓声カンセイ(よろこびのさけび)に通じ、声を大きく出すような寝息を鼻から出すこと。
意味 いびき(鼾)。ねいき。「鼾声カンセイ」(いびきの音)
<紫色は常用漢字>

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音符「享キョウ」<先祖を祀る建物>「亨コウ」「烹ホウ」と「郭カク」「廓カク」「槨カク」

2020年12月07日 | 漢字の音符
 キョウ・うける  亠部

   上は享、下は亨
解字 甲骨文・金文は、基礎となる台の上に建っている先祖を祀った建物の象形で「高」の字と似た高い建物を表す。祖先神に飲食物をたてまつって、祖先神をもてなす意を表わす。また、その結果、神の恩恵を受ける意ともなる。篆文から形のことなる第二字が出現し、現代字はその字の系統を受けつぎ、さらに下部が子になった。なお、その下の亨は同源字。
意味 (1)たてまつる。すすめる。ささげる。「享祭キョウサイ」(物を供えて神を祭る)「 (2)(祖先神を)もてなす。ふるまう。「享宴キョウエン」(もてなしの酒盛り) (3)(神の意志を)うける(享ける)。受け納める。「享年キョウネン」(神からさずかった年数)「享楽キョウラク」(楽しみを受ける。十分に楽しむ)「享有キョウユウ」(生まれながらに身に持っているもの)

イメージ  
 「先祖を祀る建物」
(享) 
  「変形字(とおる)」(亨・烹)
音の変化  キョウ:享  コウ:亨  ホウ:烹

享の変形字(とおる) 
 コウ・キョウ・とおる  亠部
解字 篆文は享と同じ形で、下部が了に変形した亨となった。享キョウの意味は祖先神に飲食物を奉って、もてなし、神の恩恵をうける意だが、亨は、神がそのもてなしを受け入れて物事がうまくとおる意味で使われる。
意味 (1)とおる(亨る)。さしさわりなく行なわれる。「亨通コウツウ」(順調にいく)「亨運コウウン」(順調な運命) (2)ささげる。すすめる。(=享) (3)煮る。(=烹)
 ホウ・にる  灬部
解字 「灬(火)+亨(とおる)」の会意。火がとおる意で、にる意味を表す。
意味 にる(烹る)。「割烹カッポウ」(切ったり煮たりする⇒料理する。料理屋。)


   カク <城壁と南北の城門>
 カク・くるわ  阝部おおざと 

 城郭「BTG城郭都市研究会」から

解字 甲骨文・金文は真ん中に囗で表された城壁があり、その南北に城門のあい対するさまを描いた象形。都市のまわりを囲む城壁を意味する。篆文は、高(高い城門)を上と下から合わせた形に都市を表わす邑(阝)をつけた。現在の字は篆文左辺の下部が子に変形し、郭の字形となった。したがって郭の左辺と享キョウは、成り立ちがまったく違う字である。
意味 (1)くるわ(郭)。都市のまわりを囲む壁。「城郭ジョウカク」(城も郭も、城壁の意。また、城壁をめぐらした都市。日本では外囲いを作った城の意)「郭門カクモン」 (2)物の外がこい。「輪郭リンカク」「外郭ガイカク」 (3)大きい。ひろびろとした。「郭大カクダイ」 (4)「郭公カッコウ」(鳥の名。カッコウと鳴くから)「郭公花ほととぎす」(山地に自生するユリ科の多年草)

イメージ
 「くるわ」
(郭・廓)
 意味(2)の「外がこい」(槨・椁)
音の変化  カク:郭・廓・槨・椁  

くるわ
 カク・くるわ  广部
解字 「广(やね)+郭(くるわ)」の会意形声。くるわで囲まれた家屋。
意味 (1)とりで。都市やとりでの周囲にめぐらす外かこい(=郭)。 (2)大きい。「廓然カクゼン」 (3)[国]遊里。くるわ(廓)。「遊廓ユウカク」(遊女屋がたくさん集まっている外かこいで囲まれた地域。いろまち)

外がこい
 カク・うわひつぎ  木部
解字 「木(き)+郭(外がこい)」の会意形声。木製の外囲いの意で、棺(ひつぎ)をいれる外側の箱をいう。
意味 (1)うわひつぎ(槨)。棺をおさめる外箱を槨(椁)という。「木槨モッカク」(木製の槨)「木槨墓モッカクボ」(棺のまわりを木材で取囲んで造った墓室をもつ墓のこと。中国古来の重要な葬制であった)「石槨セッカク」(石でつくった、棺を入れる外箱)
 カク・うわひつぎ  木部
解字 「木(き)+享(=郭カクの略体。外がこい)」の会意形声。木製の外囲いの意で、棺(ひつぎ)をいれる外側の箱をいう。槨カクは異体字。
意味 うわひつぎ(椁)。そとかん。「棺椁カンカク」(棺とその外箱。ひつぎ)
<紫色は常用漢字>

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紛らわしい漢字 「貝バイ」と「具グ」

2020年12月04日 | 紛らわしい漢字 
 バイと具は似ている。貝バイの目とハの間に一を入れると具になる。しかし、両者の元の字形はまったく違う。貝バイは貝殻であり、具は「鼎かなえ」なのである。

 バイ・かい  貝部        

解字 子安貝のかたちの象形。かいの意味を表わす。甲骨文字と金文は貝のかたちを描いているが、篆文(説文解字)は「目+ハ」と大きく変化してしまった。現代字はそれを引き継いだ貝。貝の一種・子安貝は貨幣として使われたので、かね・たからの意となる。
子安貝の貝貨(引用サイトは現在ない)
意味 (1)かい(貝)。かいがら。「貝殻かいがら」「貝塚かいづか」「法螺貝ほらがい」「貝独楽ベイごま」(巻貝で作ったこま) (2)たから。かね。「貝貨バイカ」(貝の貨幣)

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 「かい・財貨」(貝・敗・負・買・売)
 「バイの音」(唄)
音の変化  バイ:貝・買・売・唄  ハイ:敗  フ:負  

かい・財貨
 ハイ・やぶれる  攵部
解字 「攵ボク(=攴。うつ)+貝(宝器)」の会意形声。宝器を打ってこわすこと。戦いに敗れたとき持っている宝器を打ちこわして逃げるので、敗北する意となる。
意味 (1)やぶれる。「敗北ハイボク」「敗走ハイソウ」 (2)そこなう。だめになる。くさる。「敗毀ハイキ」(敗も毀もこわれる意)「腐敗フハイ」(3)しくじる。「失敗シッパイ
 フ・おう・まける・まかす  貝部          

解字 「人(ひと)+貝(貝貨)」の会意。篆文は人が上にきているが、この字は(つながった)貝貨を人が背負う意。貝の貨幣は大量に必要とされるときは、背負って運んだ。また、財貨を背負うことから、たよる、たのむ意が生まれた。なお、負ける・負かす意は、負債(借金)がある意から生まれた。現代字は、人⇒クに変化した負になった。
意味 (1)おう(負う)。せおう。「負担フタン」「負荷フカ」 (2)受ける・こうむる。「負傷フショウ」 (3)たよる。たのむ。「自負ジフ」(自分の能力や仕事に自信をもつこと)「抱負ホウフ」(抱いている自負。将来の計画や決意) (4)まける(負ける)。まかす(負かす)。「勝負ショウブ
 バイ・かう  貝部
解字 「罒(=网・あみ)+貝(おかね)」の会意形声。網をおおうように貝(おかね)で物を買い集めること。
意味 かう(買う)。代金を払って品物を求める。「仲買なかがい」「買収バイシュウ」「購買コウバイ」(買いいれること)
[賣] バイ・うる・うれる  士部              

解字 篆文は「出(でる)+買(かう)」の会意形声。買ったものを出す、すなわち売ること。旧字で「士+買」に変化し、さらに新字体で「売」に変わった。
意味 うる(売る)。あきなう。ひろめる。「売却バイキャク」「商売ショウバイ」「売名バイメイ

バイの音
 バイ・うた  口部
解字 「口(くち)+貝(バイ)」の形声。口から発せられるバイの音。梵語(古代インドの文語)・バイの音訳語に使う。
意味 (1)梵唄ボンバイとは、仏典を調子にあわせて歌うこと。 (2)[国]うた(唄)。民謡や俗謡のこと。「小唄こうた

    グ <鼎をささげもつ>
 グ・そなわる・そなえる  ハ部    

解字 甲骨文・金文は、「鼎(かなえ)+両手」の会意。両手で鼎を奉じる形。鼎は、儀礼のときの器であり鼎を奉ずることにより、儀礼の祭具一式すべてがそなわっていることを示す。篆文は鼎が目に変化した。新字体は、旧字から具に変化する。目の下の「一+ハ」は両手が変化した形である。
意味 (1)そなわる(具わる)。そなえる。「具備グビ」 (2)そろっているもの。そなえつけの器物。「道具ドウグ」「玩具ガング」 (3)つぶさに(具に)。くわしい。「具体的グタイテキ

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 「そなわる・そろう」(具)
 「同音代替」(惧)
音の変化  グ・ク:具・惧

同音代替
 ク・グ・おそれる  忄部
解字 「忄(心)+具の旧字(ク)」の形声。クは瞿(おどろく)に通じ、驚いたり恐れる心の状態。瞿は、「目二つ(きょろきょろする)+隹(とり)」の会意で、鳥が目をきょろきょろさせることで、落ち着かない状態を表わす。惧は懼の俗字で、日本では「危惧」のときはこの字を使うのが一般的である。新指定の常用漢字のため旧字のままだが、右辺を具と表記しても可。
意味 おそれる(惧れる)。「危惧キグ」(あやぶみおそれること。気がかり。=危懼キク
<紫色は常用漢字>

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音符 「旱カン」 <ひでり>

2020年12月01日 | 漢字の音符
 カン・ひでり  日部

解字 篆文から「日(太陽)+干(かわく)」の会意形声。干は本来、タテ(盾)やサスマタなどの防御用武器の象形だが、乾カン(かわく)に通じ、かわく意でも用いられる。旱は、日によってかわく意で、日照りをいう。
意味 (1)ひでり(旱)。「旱魃カンバツ」(①ひでり。②ひでりを引き起こす悪神)「枯旱コカン」(ひでりで枯れる)「旱災カンサイ」(ひでりによる災害=旱害カンガイ) (2)かわく。「旱路カンロ」(陸路。水路に対していう)

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 「ひでり」(旱・悍・駻)
 「かわく」(稈)
 「同音代替」(捍)
音の変化  カン:旱・悍・駻・稈・捍

ひでり
 カン・あらい  忄部
解字 「忄(心)+旱(ひでり)」の会意形声。ひでりで心がすさみ凶暴になること。
意味 あらい(悍い)。あらあらしい。たけだけしい。「悍然カンゼン」(あらあらしいさま。たけだけしいさま)「悍馬カンバ」(あばれ馬)「悍婦カンプ」(気性のあらい女)
 カン・あらうま  馬部
解字 「馬(うま)+旱(=悍。あらあらしい)」の会意形声。性質のあらあらしい馬。
意味 あらうま(駻)。あばれ馬。はねうま。「駻馬カンバ」(あばれうま=悍馬)「駻突カントツ」(あばれ馬)

かわく
 カン・わら  禾部
解字 「禾(いね・むぎ)+旱(かわく)」の会意形声。稲や麦などの穀物のくき。かわいた稲わら・麦わら。
意味 わら(稈)。いね・麦などの茎をほしたもの。「麦稈バッカン・むぎわら」「禾稈カカン」(穀類のわら)「麦稈帽子むぎわらぼうし」「麦稈細工むぎわらざいく

同音代替
 カン・ふせぐ・まもる  扌部
解字 「扌(て)+旱(カン)」の形声。カンは干カン(たて:盾)に通じ、手でタテを持ち相手の攻撃をふせぐこと。干は本来、タテやサスマタを描いた文字。通常は乾カンに通じ、かわく意だが、ここでは本来のタテの意。
意味 (1)ふせぐ(捍ぐ)。まもる(捍る)。「捍禦カンギョ」(ふせぎ守ること。禦もふせぐ意)「守捍シュカン」(まもりふせぐ) (2)こばむ。「捍格カンカク」(互いに相手をこばみ、受け入れない)

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