漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「即ソク」<ご馳走の前にひざまずく>と「節セツ」「櫛シツ」「喞ショク」

2024年02月28日 | 漢字の音符
  増補しました。
[卽] ソク・ショク・つく・すなわち  卩部ふしづくり jí

解字 甲骨文と金文は食器に食物を盛った形に人がひざまずく形。食事の席に「つく」意。転じて、地位や位置につく意ともなる。篆文は「皀キュウ(ご馳走を盛った器)+ひざまずいた人」となった。食事の席に「つく」こと。「すぐに」の意は、即座(席につくとすぐに)からくる。旧字は、ひざまずいた人⇒卩に変化した卽になり、新字体は旧字の卽⇒即へ変化する。また、借りて「すなわち」の意味にもちいる。
意味 (1)つく(即く)。地位や位置につく。「即位ソクイ」 (2)すぐに。ただちに。「即興ソッキョウ」(その場ですぐに詩歌などを作る)「即時ソクジ」 (3)すなわち(即ち)。「色即是空シキソクゼクウ」(色とは即ち空なり)

イメージ 
 ご馳走の前に「ひざまずく」(即・節)
 「くぎり(節)」(櫛)
 「形声字」(喞)
音の変化  ソク:即  セツ:節  シツ:櫛  ショク:喞

ひざまずく
[節] セツ・セチ・ふし  竹部 jié
解字 「竹+即(ひざまずく)」の会意形声。ひざを折って折り目がついたように、竹の茎に出ている折り目のようなふし。節は旧字。
意味 (1)ふし(節)。竹のふし。身体のふし。つなぎめ。「関節カンセツ」 (2)くぎり。「音節オンセツ」(ひとまとまりに発音される最小単位)「文節ブンセツ」 (3)とき。おり。気候の変わり目。「時節ジセツ」「季節キセツ」「節句セック」(折り目となる式日。=五節句) (4)ほどよい。ひかえめ。「節制セッセイ」「節度セツド
(5)しるし。割符。節をふくむ竹の左右半分に同じ文章を書き、竹を割って双方がもち、後に節を合わせることにより証とする。西周以降、金文で書かれた割符が多く使われた。

符節(割符)[竹を割った形を青銅で作った通行証で、節を含む竹に細かい決まりを記している。これを通行する側と許可した側が所持する。(ネットの検索画面から。原サイトなし)]
「符節フセツ」(符も節も割符の意)「使節シセツ」(割符を持って行く使い)

くぎり(節) 
櫛[櫛󠄁] シツ・くし  木部 zhì
解字 「木(き)+節(くぎり)」の会意形声。木に一定の間隔でくぎりとなる刻み目をたくさん入れたクシ。発音は、セツ⇒シツに変化。新字体に準じた櫛󠄁も可。
意味 (1)くし(櫛)。くしけずる。髪をすいたり、髪飾りにつかう結髪具。木・竹・べっ甲・象牙などで作る。「櫛笥くしげ」(櫛などを入れる箱)「櫛風沐雨シップウモクウ」(風が髪をくしけずり、雨が体をあらう意。非常に苦労すること) (2)くしの歯のように並ぶ。「櫛比シッピ」(隙間なく並ぶ)「櫛比シッピする家々」(隙間なくならぶ家々)

形声字
 ショク・ソク  口部 jī
解字 「口(くち)+即の旧字(ショク)」の形声。ショクの音を口から出すこと。①虫などが、しきりに鳴く声の形容。②嘆息の声の形容、に用いる。
意味 (1)虫が鳴く声の形容。「喞喞ショクショク」(虫がしきりに鳴く声) (2)嘆息の声の形容。「我喞喞ショクショクたり」(白居易・琵琶行) (3)[国]かこつ(喞つ)。なげく。ひそひそと語る。
<紫色は常用漢字>

    バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。



コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

漢和字典 使った感想(1) 「角川新字源」(角川書店)

2024年02月26日 | 漢和字典・使った感想
「角川新字源」
 私は漢和辞典を十数冊持っているが、その中でも最も多く使うのが「角川新字源」(2017年発行 改定新版)である。収録字数は13,500字。小型サイズ(H18.5㎝)で1,774頁の字典である。収録字数は一般の使用に必要十分といえる。私がなぜこの字典を使うかと言うと、このブログ「漢字の音符」の編集にとても便利だからだ。
 ブログ編集の基になる本は、山本康喬編著『漢字音符字典』(東京堂出版)だが、最初からこの本の音符字のすべてを掲載しているわけではない。基本は私の知っている漢字がメインで、その後、本や新聞やネット記事を見ていて、新しい音符字があれば随時、追加収録する。また、過去に作った特定の音符を全体的に見直す場合、そんな時に役立つのが、この字典なのである。
 私が知りたいのは調べる漢字の基本情報である。その漢字が、象形文字なのか、ことなる文字を組み合わせた会意文字なのか、意味をあらわす文字(多くが部首)に発音を表す文字(音符)が付いた形声文字なのか。それを知りたいのである。これが分かれば、基本音符字にどのような形でほかの要素がくっついているかが分かり、追加がスムースにゆく。

 例えば最近再編集した「午ゴ」で、この字典とのかかわりを語ってみたい。
『漢字音符字典』に、午ゴの音符字は、杵ショ・許キョ・滸・忤がある。これまでは杵ショ・許キョ・滸を掲載していたが、今度、忤を追加しようと思いたった。
 そこで午ゴと、音符字の杵ショ・許キョ・滸が「角川新字源」でどう記述されているかをまず紹介したい。

午ゴ・うま
 [なりたち]として甲骨文字・金文・篆文の古文字を載せてから、「象形。きねの形にかたどる。杵ショの原字。借りて十二支の第七番目に用いる。」とあり、[意味]として、①うま(午)。②さからう。③まじわる、にわけて説明し、最後に熟語・逆熟語の欄がある。

杵ショ・きね
 [なりたち]として篆文の字形を載せてから「形声。木と音符午ゴ→ショとから成る」とあり、[意味]は、①きね(杵)。うすに入れた穀物などをつく道具。「杵臼ショキュウ」②つち。③つく。④武器の名。とし、最後に熟語・逆熟語を列挙する。

許キョ・ゆるす
 [なりたち]として金文・篆文を載せてから「形声。言と音符午ゴ→キョから成る。相手の言葉に同意して聞き入れる、「ゆるす」意を表す」とする。[意味]は、①ゆるす(許す)。②ゆるし。③ばかり(許り)。④もと(許)。ところ。他」としている。最後に熟語・逆熟語を列挙する。

滸コ・ほとり
 [なりたち]として「形声。水+音符許」とあるが、古文字はない。理由は篆文にないからと思われる。[意味]は、ほとり(滸)。みぎわ。みずぎし、で熟語に「江滸」一つがある。

忤ゴ・さからう
 未掲載だった忤は[なりたち]として、「形声。心+音符午ゴ」。意味は、①さからう(忤う)。もとる、②みだれる。くいちがう。「散忤」、とする。古文字はなし(説文解字にないため)。続いて熟語を掲載している。

 以上が音符字「午」の概要である。さて、追加する忤は、心(忄)が部首で音符「午ゴ」の形声字であることが分かる。午ゴの意味②に「さからう」があるが、これは同音の忤に由来すると思われ、さからう意は忤を解字して解かなければならない。
 手がかりとなったのはギョの甲骨文と金文である。それは人が杵形の信仰対象物に祈っている形で、杵は祈る対象物ともなることから、先に登場している許キョは「言(いう)+午(=杵形の信仰対象物)」となり、杵形の信仰対象物が「ゆるすと言う」こと。また許には、もと(許)・ところ、の意味があることから滸は、水のもと・ところで、水ぎわ・みぎわの意味がでる。
 さて忤の解字であるが、御ギョは人が杵形の信仰対象物に祈っている形であるが、同時に示偏(神=信仰対象物)をつけた禦ギョ・ふせぐの原字でもある。御ギョに示(神)をつけて、ふせぐ意味を強調した字であり、災いから身をふせぐ、さらに敵から身をまもる意から転じて、身をふせぐ・身をまもるために⇒さからう意となる。
 
 このようにして私は音符「午ゴ」の派生字を解字したが、あくまで一つの説である。このように、「なぜこうした意味になるのか?」を考察してゆくのは私が重点をおいている点であるが、大変むずかしいテーマである。多くの字典は過去の権威ある「説文解字」とか韻書(発音字典の一種)の「正韻」「広韻」、それに春秋戦国期の古典「詩経」などでの用法を例にあげて、その意味を説明している。
 「角川 新字源」は、こうした根拠付けをいっさい省略している。意味が確立されているなら、その意味の根拠を省略し「部首+音符⇒その変化音」から意味が出ている、と説明しているのである。
 まことに簡潔な説明であり、漢字の由来にこだわる人以外は、こうした説明で十分なのである。私がこの字典をまず引くのは、漢字の構成の基本的な事柄を教えてくれるからである。漢検1級の対象漢字となる約6,400字を音符順にならべた『漢字音符字典』は、すべての字に象形・指事・会意・形声・仮借・国字の区別をしているが、「角川 新字源」に準拠していると記載されている。この字典の信頼性の高さを示しているのであろう。
 なお、上記は「漢字音符字典」の掲載字だが、試みに上記字の発音である、ゴ・コ・キョ・ショで音訓索引を引いてみると、さらに仵ゴ・ならぶ・さからう、迕ゴ・であう・さからう、「午+吾」ゴ・グ・さからう、の3字が見つかった。やはり13,500字を収録する字典は奥が深い。

 その他、「巻末付録」はさまざまな項目があり充実しているが、私は「中国度量衡の単位とその変遷」の表をよく参照する。度量衡を表す漢字が出たときは、この表や図をみて確認する。また「漢字音について」の説明も参考になる。

『角川新字源』[改定新版] 2017年10月30日発行
 編集:阿辻哲次 釜谷武志 木津祐子





コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音符「番バン」<獣の足うら・足あと>と「蹯ハン」「膰ハン」「燔ハン」「藩ハン」「幡ハン」「播ハ」「翻ホン」「審シン」

2024年02月24日 | 漢字の音符
   改定しました。
 バン・ハン・ハ・つがい・つがえる  田部 fān・pān
 熊の足うら

解字 「釆ハン(獣の爪)+田(足のひら)」の象形で、動物の足の爪と、ひら(掌)を表す。釆ハンは獣の爪の別れている形で、田は足のひら(掌)である。また、爪とひらがくっきりと地面につく、動物の足跡の形。大きな動物が通ったあとは、はっきりと順々に足あとが地上に残っている。そこで、足あとの形は、順序よくの意となり、当番・順番の意味となる。 
意味 (1)順序。順位。「番号バンゴウ」「一番イチバン」 (2)かわるがわる。「輪番リンバン」「当番トウバン」 (3)(二人で代わり替わりすることから)一対。①つがい(番い)。「番鳥つがいどり」(雄雌一対の鳥)②つがえる(番える)。「蝶番チョウつがい」(蝶の羽のように動くドアの開閉金具) (4)見張り。「番人バンニン

イメージ 
 「獣のあしうら」
(番・蹯・膰・燔)
  けものが足の爪を「ひろげる」(播・繙)
  足あとが「はっきりと」残る(審・瀋)
 「形声字(ハン・バン・ホン)」(潘・藩・幡・旛・蟠・蕃・翻)
音の変化  バン:番・蟠・蕃  ハン:蹯・膰・燔・繙・潘・藩・幡・旛   ハ:播  ホン:翻  シン:審・瀋

獣のあしうら  
 ハン  足部 fán 
解字 「足(あし)+番(獣のあしうら)」の会意形声。番は獣のあしうらの意で、番が順番の意となったので足をつけて元の意味を表した。
意味 (1)獣の足のうら。また、その肉。「熊蹯ユウハン」(熊の足うら。また、その肉) (2)獣の足あと。
 ハン・ひもろぎ  月部にく fán・pán
解字 「月(にく)+番(獣のあしうら)」の会意形声。獣のあしうらの肉。特に熊のあしうらは熊掌ユウショウと呼ばれ、古くから中国で最も美味とされる。
意味 ひもろぎ(膰)。宗廟のまつりに供える、煮たり焼いた肉。「膰俎ハンソ」(膰肉を載せて神前に供える台)
 ハン・やく    火部 fán
解字 「火(ひ)+番(=膰。獣のあしうらの肉)」の会意形声。獣のあしうらの肉をやくこと。広く動物の肉や犠牲を焼くことをいう。
意味 (1)やく(燔く)。あぶる。「燔柴ハンサイ」(柴の上に犠牲の動物などをのせ、これを焼いて天をまつる祭)「燔祭ハンサイ」(古代ユダヤ教で、供えられた動物を祭壇で焼いて神に捧げたこと) (2)あぶった肉。(=膰)「燔肉ハンニク」(あぶった肉)「燔炙ハンシャ」(焼きあぶる)

ひろげる
 ハ・バン・まく  扌部 bō
解字 「扌(て)+番(ひろげる)」の会意形声。足うらが手をひろげた形に見えるので、手で種をもってから、ひろげて「まく」意に使う。また、まき散らす意から、ひろく伝わる意となる。
意味 (1)まく(播く)。種をまく。「播種ハシュ」「播植ハショク」(種子をまき、苗を植える) (2)まきちらす。ひろく及ぼす。「伝播デンパ」 (3)地名。播磨(はりま)の国の略。現在の兵庫県南西部。「播州バンシュウ
 ハン・ひもとく  糸部 fān
解字 「糸(ひも)+番(ひろげる)」の会意形声。巻物をひろげるため、糸(ひも)をほどくこと。
意味 ひもとく(繙く)。巻物のかたちの書物をひろげて読む。書物を読む。「古典を繙く」「繙読ハンドク」(書物をひらいて読む)「繙閲ハンエツ」(書物を読んで調べる)

はっきりと
 シン・つまびらか  宀部 shěn  
解字 「宀(たてもの)+番(はっきりする)」の会意。物事をくわしく調べ明らかにすること。建物のなかで関係者が集まって行なわれる。
意味 (1)つまびらか(審らか)。あきらか。「審問シンモン」(くわしく問いただす。特に裁判所が関係者から詳しく問うこと)「不審フシン」(疑わしい) (2)つまびらかにする。あきらかにする。「審議シンギ」(くわしく討議する)「審査シンサ」(よく調べて適否を決める)「審美シンビ」(美を他と区別してあきらかにする)「審美眼シンビガン」(美と醜いものを見分ける眼力)
 シン  氵部 shěn
解字 「氵(みず)+審(シン)」の形声。シンという名の川。瀋水をいう。
意味 (1)川の名。「瀋水シンスイ」(遼寧省瀋陽市の南を流れる川) (2)地名。「瀋陽市シンヨウシ」(遼寧省の都市。もと奉天) (3)しる。液汁。「猶(なお)瀋(しる)を拾(ひろ)うがごとし」(ちょうど、(地にこぼれた)汁(瀋しる)を拾うようだ。「春秋伝」)「墨瀋ボクシン」(墨汁)

形声字
 ハン・うずまき  氵部 pān
解字 「氵(水)+番(ハン)」の形声。ハンという名の川。[説文解字]は「水名、河南の熒陽に在り」とし川の名前とするが、同定できない。転じて、水流がめぐり渦巻く意から、米をとぐ意となり、またそのとぎ汁をいう。地名や姓氏ともなる。
意味 (1)うずまき(潘)。水流がうずまく。 (2)しろみず(潘)。渦巻く流れから転じて、米をとぐ意となり、またそのとぎ汁。「潘沐ハンモク」(とぎ汁で髪を洗う) (3)姓のひとつ。「潘楊ハンヨウの好(よし)み」(潘家と楊家が、婚姻関係を結ぶ間柄にあること)「潘基文パン・ギムン」(韓国の政治家。第8代国連事務総長)
 ハン  艸部 fān
解字 「艸(草木)+潘(ハン)」の形声。ハンは樊ハン・まがきに通じ、草木のまがき(=籬)をいう。[説文解字]は「屏ヘイ(かき・かきね)也(なり)。艸に従い潘ハンの聲(声)」とする。転じて、王室を守る垣根の役をする諸侯の意となった。
意味 (1)まがき。かきね。かこい。「藩塀ハンぺイ」(①防ぎ守るための垣根や塀へい)、②帝室を守護する) (2)はん(藩)。諸侯の国。日本では、江戸時代の大名の領地。「藩主ハンシュ」「親藩シンパン」(徳川家の近親が封ぜられた藩)
覚え方  くさ()や、みず()のする、もと主 <明治初期>
 ハン・バン  方部 fān

萬歳旛(ばんざいばん)(中央の2旛)
解字 「旗の略体+番(ハン)」の形声。ハンという名の旗。のぼり旗をいう。
意味 はた(旛)。長く下に垂らして下げる旗。しるしばた。のぼり。「萬歳旛バンザイバン」(萬歳の2字をしるした旛。即位礼などに用いる。)
 ハン・ホン・マン  巾部 fān 
解字 「巾(ぬの)+番(ハン)」の形声。ハンは旛ハン(はた)に通じ、巾(ぬの)の旛をいう。
意味 (1)はた(幡)。のぼり(幟)。「幡旗ハンキ」(のぼりやはた) (2)ひるがえる。「幡然ハンゼン・ホンゼン」(旗のひるがえるさま) (3)「八幡はちまん」とは、八幡宮の略で、武道の神として信仰される八幡神をまつる神社。全国に約44,000社あり、大分県宇佐市の宇佐神宮を総本社とする。また宇佐神宮、石清水八幡宮(京都府八幡市)、筥崎宮(筥崎八幡宮とも。福岡市)の三社が日本三大八幡宮とされる。
[飜] ホン・ハン・ひるがえる・ひるがえす  羽部 fān  
解字 異体字は飜で「飛(鳥がとぶ)+番(ホン)」の形声で、鳥が飛んでひるがえる意。翻は飛⇒羽に変えた「羽(はね)+番(ホン)」の形声字で、鳥の羽がひるがえる意。
意味 (1)ひるがえる(翻る)。ひるがえす(翻す)。「翻意ホンイ」(決心や意志をひるがえす)「翻弄ホンロウ」(もてあそぶ) (2)写し替える。「翻案ホンアン」(原作を生かして改作する)「翻訳ホンヤク」(ある国の文章を他の国の言葉に直す)「翻刻ホンコク」(写本などを木版または活版で刊行する)
 バン・ハン・わだかまる  虫部 pán
解字 「虫(へび)+番(バン)」の形声。蛇がとぐろをまくことを蟠バンという。
意味 (1)わだかまる(蟠る)。とぐろをまく。まがりくねる。「蟠踞バンキョ」(領地を占領して勢力を振う=盤踞バンキョ)「蟠屈バンクツ」(めぐり曲がる。気が晴れない=盤屈)「蟠蜿バンワン」(とぐろをまく) (2)人名。「山片蟠桃やまがたバントウ」(江戸時代後期の大阪商人で学者。大阪の両替商である升屋の番頭だったため、番頭をもじって「蟠桃」と名乗った。蟠桃は中国神話に登場する桃で食べれば不老不死が授かるとされる)
 バン・ハン・しげる  艸部 fān・fán・bō
 解字 「艸(くさ)+番(バン)」の形声。草が生いしげることを蕃バンという。また、藩ハンに通じ「かきね」の意、蛮バンに通じ野蛮の意もある。
意味 (1)しげる(蕃る)。ふえる。「蕃衍ハンエン」(しげりひろがる。=繁衍) (2)まがき。かきね。「蕃屏ハンベイ」(まがき・囲い。帝を守護すること)「蕃籬バンリ」(まがき。かきね) (3)草が生い茂る所に住む人。未開人。外国人。「蕃人バンジン」(原住民。外国人)「蕃夷バンイ」(異民族)「蕃書バンショ」(洋書。特にオランダの書物)
<紫色は常用漢字>

<関連音符>
 ハン・ベン 釆部のごめ biàn
解字 獣の足指や爪の別れている形の象形。熊などの爪を象った。わかれる意で部首となる。
意味 つめ。わかつ。 音符「釆ハン・ベン」を参照。


コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音符「並 ヘイ」<立つ人がよこにならぶ>と「普フ」「譜フ」 

2024年02月22日 | 漢字の音符
  三文字だけですが、すべて常用漢字です。
[竝] ヘイ・なみ・ならべる・ならぶ・ならびに  一部 bìng

解字 立を左右に並べた形の会意。立は、その位置に立つ人の正面をむいた形。竝は、二人がその位置に並んで立つこと。ならぶ意味を表す。新字体は旧字の竝⇒並に変化する(竝の上下の横線がつながり並になる)。
意味 (1)ならぶ(並ぶ)。ならべる(並べる)。「並列ヘイレツ」「並行ヘイコウ」「家並いえなみ」 (2)ならびに(並びに)。 (3)[国]なみ(並)。程度がふつう。「並製なみセイ

イメージ 
 「ならぶ」
(並・普・譜)
音の変化  ヘイ:並  フ:普・譜

ならぶ
 フ・あまねく  日部 pǔ
解字 「日(太陽)+並(ならぶ)」 の会意。太陽が並んでいるように日の光が隅々まで行き渡ること。
意味 (1)あまねく(普く)。あまねし(普し)。広く行きわたる。「普及フキュウ」「普遍フヘン」「普請フシン」(あまねく請うて浄財を集め寺を建築する)「普茶フチャ」(あまねく衆人に茶を施す)「普茶料理フチャリョウリ」(普茶のとき出される食事)「普天フテン」(あまねくおおう空)「普遍フへン」(広くゆきわたる) (2)なみ(並)。「普通フツウ
 フ  言部 pǔ
解字 「言(ことば)+普(あまねく)」 の会意形声。家系などを過去からさかのぼり、あまねく言語で記すこと。のち、音楽の楽曲についてもいう。[説文解字]は「籍録セキロク(戸籍の記録)也(なり)。言に従い普の聲(声)」とする。
意味 (1)しるす。順序に従って系統だてて記す。系図。「系譜ケイフ」(①血縁や系統を体系立てて記したもの)「譜紀フキ」(=系譜)「年譜ネンプ」 (2)楽曲を符号で記したもの。「楽譜ガクフ」「譜面フメン」 (3)代々ひきつぐ。「譜代フダイ」(代々、臣下として主家に仕える)           
<紫色は常用漢字>

   バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。



コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音符「般ハン」 <舟でめぐる・はこぶ>と「搬ハン」「槃ハン」「盤バン」「磐バン」

2024年02月20日 | 漢字の音符
 改定しました。
 ハン  舟部 bān・bō・pán          

解字 甲骨文第1字は「凡ハン(うつわ)+攴ボク(手に持った道具)」の会意形声で、手に道具をもち中空の器(たらいなど)を作る形。第2字は、凡ハン⇒横向きの皿ベイ(さら)に変わった字で、手に道具をもち皿(さら状のうつわ)を作る形で盤バン(おおざら)の原字[甲骨文字字典]。金文で、凡⇒舟になり、篆文で攴⇒殳に変化した般になった。もともと凡(中空の器)を作る形であったが、後に盤バン(おおざら)や槃バン(たらい)が分離し、また凡が舟(くり舟)に変化したことにより、意味も舟を動かして「めぐる」「まわる」、中に物をいれて「はこぶ」、舟による交易や生活の「ありさま・ようす」を表わすようになった。
意味 (1)めぐる。まわる。「般船ハンセン」(船をめぐらす) (2)はこぶ。(=搬) (3)大きい。いわ。 (4)たのしむ。「般逸ハンイツ」(おおいに楽しむ)(5)物事のようす。種類。「諸般ショハン」「全般ゼンパン」 (6)梵語・paññā(パンニャーの音訳語)「般若ハンニャ」(①事物や道理を明らかに見抜く深い智慧。迷いを去って悟りをひらく。②[国]鬼女の能面)「般若ハンニャ」「般若面」とも言う。

イメージ  
 「舟でめぐる・はこぶ」
(般・搬)
 原義の「皿状のうつわ・まるく大きい」(盤・磐・槃)
 「形声字」(瘢)
音の変化  ハン:般・搬・槃・瘢  バン:盤・磐

舟でめぐる・はこぶ
 ハン・はこぶ  扌部 bān  
解字 「扌(手)+般(舟ではこぶ)」の会意形声。般が、物事のようす(諸般・全般)の意に専用されるようになったので、扌(て)をつけて元の「はこぶ」意味を明確にした。
意味 はこぶ(搬ぶ)。持ちはこぶ。移す。「運搬ウンパン」「搬出ハンシュツ」「搬送ハンソウ

皿状のうつわ・まるく大きい
 バン・ハン  皿部 pán
解字 「皿(さら)+般(まるく大きい)」の会意形声。まるく大きい皿。また、まるい台状のもの。転じて、物をのせる台にも使う。
意味 (1)はち。おおざら。まるい台状のもの。「円盤エンバン」(①円く平たいもの。②陸上競技の投擲トウテキ(円盤投げ)に用いる道具。)「旋盤センバン」(回転する盤:工作機械) (2)物をのせる台。「碁盤ゴバン」「基盤キバン」「地盤ジバン」(①地面。②建造物などを据える基礎となる土地。土台)「岩盤ガンバン」(岩石の地盤)」「骨盤コツバン」 (3)わだかまる。まがりくねる。「盤踞バンキョ」(土地を占拠して勢力をふるう。=蟠踞)
 ハン・バン・たらい  木部 pán
解字 「木(き)+般(皿状のうつわ)」の会意形声。まるく大きい木のたらい。また般の意味(4)に通じ、楽しむ意がある。
意味 (1)たらい(槃)。平たい鉢。「槃盂バンウ」(たらいと鉢) (2)梵語の音訳字。「涅槃ネハン」(仏教における理想の境地) (3)たのしむ。たのしみ。「槃楽バンラク」(あそび楽しむ)
 バン・ハン・いわ  石部 pán
解字 「石(いし)+般(まるく大きい)」の会意形声。まるく大きい石、すなわち大きな岩。
意味 (1)いわ(磐)。大きな岩。いわお。「磐石バンジャク」(おおきな岩。非常に堅固なこと)「磐座いわくら」(①神が鎮座する大岩、神社のご神体になっているものが多い。②山中の大きな岩やガケ) (2)地名。「磐城いわき」(旧国名。福島県東部と宮城県南部にまたがる地方。磐州バンシュウ

形声字
 ハン  疒部 bān
解字 解字 「疒(やまい)+般(ハン)」の形声。ハンは斑ハン(まだら)に通じ、皮膚にまだらに残る傷あとが原義。傷あと一般をいう。また、しみやそばかすをいう。
意味 (1)きずあと。「瘢痕ハンコン」(きずあと)「瘢創ハンソウ」(切り傷のあと) (2)しみ。そばかす。「雀瘢ジャクハン」(そばかす=雀斑)
<紫色は常用漢字>

    バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。




コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音符「将ショウ」<肉を供えて神にすすめる>と「奨ショウ」「醤ショウ」「漿ショウ」「蔣ショウ」

2024年02月18日 | 漢字の音符
  増訂しました。
[將]  ショウ・ひきいる・まさに  寸部 jiāng・jiàng

解字 篆文(秦)および旧字は將で「爿ショウ(台)+月(にく)+寸(手)」の会意形声。台の上に手で月(肉)を供えて神にすすめる祭祀儀礼を表し、爿ショウが発音も表している。奨ショウ(すすめる)の原字。また、ひきいる意があるが、この意は、①軍の統率者が祭祀で肉を供え戦勝を祈願したからという説、②仮借カシャ(当て字)説があるが、①が覚えやすい。このほか、「まさに~せんとす」などの助辞に用いられる。新字体は、旧字・將の爿⇒丬、月⇒ノツに変化した将になった。
意味 (1)ひきいる(将いる)。軍をひきいる人。したがえる。「将軍ショウグン」「武将ブショウ」「主将シュショウ」「将棋ショウギ」「女将おかみ・ジョショウ」(旅館・居酒屋などの女主人) (2)まさに~せんとす。「将(まさ)に」「将来ショウライ」(将に来んとする時。未来) (3)はた(将)。それとも。「将又はたまた」 (4)すすめる。=奨。

イメージ  
 「(肉を供えて神に)すすめる」
(将・奨)
 「肉を供える」(醤・漿)
 「形声字」(蔣・鏘)
音の変化  ショウ:将・奨・醤・漿・蔣・鏘 

すすめる
ショウ・すすめる  大部 jiǎng
解字 旧字は「大(ひと)+將(すすめる)」 の会意形声。大は人の正面形で人の意。人が肉を供えて神にすすめること。転じて、すすめる、はげます意となる。新字体は、將⇒将に変化した奨。
※この字は後漢の[説文解字]が、下の大⇒犬にし、現代字は犬の点がとれた大になっている。しかし[字統]は、「本来は廾(両手が変化した形)であろう」としている。現に異体字に㢡ショウがあり、楷書・草書でもこの字体が多い。この解字は両手で肉をすすめる意となる。本稿では覚えやすさを考慮し、大を人と解釈して解字した。
意味 すすめる(奨める)。はげます。力づける。「奨励ショウレイ」(すすめはげます)「奨学ショウガク」(学業を奨励する)「勧奨カンショウ」(勧も奨も、すすめる意)「推奨スイショウ」(推してすすめる)「報奨金ホウショウキン」(行為に報いはげますお金)

肉を供える
醤[醬] ショウ・ひしお  酉部 jiàng
解字 旧字はで「酉(発酵する)+將(肉を供える)」 の会意形声。酉は酒壷のかたちで、中で発酵する意。醤は供えた肉を細かく切り、塩などをまぜて壷にいれて発酵させたもの。ししびしお(肉醤)のことで、肉の塩辛の類をいう。のち、大豆や小麦を材料にした穀醤コクショウ(味噌など)もいうようになった。これが日本の醤油のもとになった。現代字は新字体に準じた醤が用いられる。
意味 (1)ししびしお(肉醤)。しおから。 (2)ひしお(醤)。古代の発酵調味料。現在の味噌の原形。現代中国では、味噌やジャム状食品をいう。 (3)しょうゆ(醤油)。大豆や小麦を原料に麹(こうじ)で発酵させたものに食塩水を加えて発酵・熟成させ、布などで濾して作る液体の調味料。「魚醤ギョショウ」(魚を発酵させて作る液体の調味料)

形声字
漿 ショウ 水部 jiāng・jiàng
解字 「水(液体)+將(ショウ)」 の形声。ショウという名の液体を漿ショウという。[説文解字]は「酢漿サクショウ(古代の一種の酸味のある飲料)」とするが、のちにいろんな意味に用いられるようになり、現在、漿ショウの意味は(1)ある種の成分をふくむ水(しる。つゆ)(2)濃い汁もの。(3)どろどろしたもの。の三種類がある。
意味 (1)しる。つゆ。「漿液ショウエキ」(①しる。つゆ。②粘着物を含まない液)「血漿ケッショウ」(血液の上澄み液。血液の液状成分)「漿果ショウカ」(汁液の多い果物=液果) (2)濃い汁もの。「濃漿こんず」(①米を煮たおもゆ。②美酒の異称)「濃漿こくショウ」(濃く仕立てた味噌汁。鯉こくなど) (3)どろどろとしたもの。「漿飯ショウハン」(かゆ)「岩漿ガンショウ」(火山のマグマ。溶けた造岩物質を主体とする流動体。凝固したものが火成岩)                       
蔣[蒋] ショウ  艸部 jiǎng
解字 「艸(くさ)+將(ショウ)」の形声。將の字に艸(くさ)を配した地名および姓を表す字。蔣姓は、春秋時代に起源をもつ姓。地名・姓以外に「まこも」に当てる。蒋は新字体に準じた許容字体。
意味 (1)周代の国名。「蔣州サイシュウ」(隋代の州の名。昔の蔣国の地。現在の河南省にあった) (2)姓のひとつ。「蔣介石ショウカイセキ」(中国の政治家。国民党指導者として抗日戦を遂行。第二次大戦後、国共内戦で敗れ台湾に退いた) (3)まこも(蒋)。真菰とも書く。イネ科の大型多年草。
 ショウ・ソウ  金部 qiāng
解字 「金(金属)+將(ショウ)」の形成。金属や鈴や玉などの鳴る音を鏘ショウという。
意味 (1)金属や鈴や玉などの鳴る音。「鏘鏘ショウショウ」(①金属や鈴や玉などの鳴る澄んだ音。②鳳凰が声を合わせて鳴く声)「鏘然ショウゼン」(①金属や鈴や玉などがさわやかに鳴る音。②小川のさらさら流れる音) (2)「鏘鳳ショウホウ」(夫唱婦随して夫婦の仲の良いこと)
<紫色は常用漢字>

  バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。



コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音符 「尞リョウ」<かがり火がもえる> と 「僚リョウ」 「寮リョウ」「瞭リョウ」「療リョウ」「燎リョウ」「鐐リョウ」「繚リョウ」「潦ロウ」

2024年02月16日 | 漢字の音符
  増訂しました。
 リョウ  小部 liáo

解字 甲骨文は「交差した木が燃えて炎が出ているさま+火」の会意。かがり火の意。燎の原字。金文の字形もこれを踏襲し、篆文で中央に日が入り、現代字の尞になった。篆文で日が加わり[説文解字]は「柴サイ(柴を焼く)して天を祭る也(なり)」とし天を祭る意味があるとする。
意味 たきび。かがり火(=燎)。ひまつり。
覚え方 (ダイ)(そ)(ひ)(ショウ)でリョウ

イメージ
 「かがりび」
(僚・寮・燎・鐐・繚)
  かがり火で「天を祭る」(遼) 
  かがり火は「あかるい」(瞭)
 「形声字」(療・潦)
音の変化  リョウ:燎・僚・寮・遼・鐐・繚・瞭・療  ロウ:潦

かがりび
 リョウ・かがりび  火部 liáo・liǎo
解字 「火(ひ)+尞(かがり火)」の会意形声。火をつけて、かがり火の意味を確認した字。尞の古代文字(甲骨・金文・篆文)には下に火が描かれていることから、燎には火が二つあることになり、燎の原字であることがわかる。また、やく・もえる意となる。
意味 (1)かがりび(燎)。夜中の警護などに周囲を照らすために焚く火。「燎火リョウカ」(かがり火)「庭燎テイリョウ」(庭でたくかがり火。にわび) (2)やく。もえる。焼き払う。「燎原リョウゲン」(野原をやく)
 リョウ  イ部 liáo
解字 「イ(人)+尞(かがり火)」の形声。かがり火を囲む人々。一緒につらなる仲間の人々。
意味 (1)ともがら。とも。同じ仕事のなかま。「僚友リョウリュウ」「同僚ドウリョウ」 (2)つかさ(僚)。役人。「官僚カンリョウ」「幕僚バクリョウ」(軍の陣営会議メンバー。長官に直属する参謀将校)
 リョウ  宀部 liáo
解字 「宀(いえ)+尞(=僚。ともがら)」の会意形声。ともがらが一緒に住む家。
意味 (1)宿舎。寄宿舎。「学生寮ガクセイリョウ」「寮生リョウセイ」(寄宿舎で生活する生徒) (2)役所。「図書寮ズショリョウ」(典籍の書写や国史の撰修なをする役所)「左馬寮サマリョウ」(律令制で馬の飼養・調習などを司った役所。左右の馬寮があった) (3)下屋敷。あずまや。「茶寮チャリョウ
 リョウ  金部 liào
解字 「金(金属)+尞(=燎。かがり火)」の形声。尞はここで庭燎テイリョウの意で祭場で焚く篝火。明るく燃えて炎は白くみえる。金(金属)を加えた鐐は白びかりする銀をいう。[説文解字]は「白金也(なり)。金に従い尞の聲(声)」とする。
意味 (1)しろびかりする銀。しろがね。ひらがね。良質の銀。「鐐金リョウキン」(白銀)「南鐐ナンリョウ」(良質の銀。南の中国から輸入された銀の意)「南鐐二朱銀ニシュギン」(江戸時代の貨幣。江戸初期に発行された良質の二朱銀を指す)「南鐐釜ナンリョウかま」(茶道具の銀製釜) (2)あしかせ。罪人の足にはめる鎖。「鉄鐐テツリョウ」(あしかせ)
 リョウ  糸部 liáo
解字 「糸(いと)+尞(=燎。かがり火)」の形声。糸がみだれまつわるさま。かがり火の炎が乱れるさまを糸に例えた。
意味 まつわる。まとう。糸がまつわりつくさま。「繚乱リョウラン」(①まつわり乱れる。②花の咲き乱れるさま)「百花繚乱ヒャッカリョウラン」(いろんな花の咲き乱れるさま)

天を祭る
 リョウ・はるか  辶部 liáo
解字 「辶(ゆく)+尞(天を祭る)」の会意形成。かがり火を焚いて、はるか遠い天を祭ることから、天に辶(ゆく)意で、遠い意味となる[新漢語林]。[説文解字]は「遠い也(なり)。辵(辶)に従い尞リョウの聲(声)」とする。
意味 (1)はるか(遼か)。遠くはなれている。遠くまで続く。「遼遠リョウエン」(はるかに遠い) (2)中国の王朝名。契丹族が中国東北部を中心に建てた国(916年~1125年)。「遼史リョウシ」( 遼代の正史) (3)地名。「遼河リョウガ」(中国東北部南部を流れる大河)「遼東半島リョウトウハントウ」(遼河の河口東岸に位置する半島)

あかるい
 リョウ・あきらか  目部 liǎo・liào  
解字 「目(め)+尞(たき火であかるい)」の会意形声。明るいのでよく見えること。
意味 あきらか(瞭か)。よく見える。「明瞭メイリョウ」「一目瞭然イチモクリョウゼン

形声字
 リョウ・いやす  疒部 liáo
解字 「疒(やまい)+尞(リョウ)」の形声。リョウは療の異体字である𤻲[疒+樂]リョウに通じる。リョウは、「疒(やまい)+樂(楽)(ラク→リョウ)」で、病を楽にして、いやす意。
意味 いやす(療す)。なおす。「療治リョウジ」(病気をなおすこと。治療)「医療イリョウ」(医術で病気をなおす)「療養リョウヨウ」(治療し養生する)
 ロウ・リョウ・にわたみず  氵部 liáo・lǎo・lào
解字 「氵(みず)+尞(ロウ)」の形声。[説文解字]は「雨水の大いなる皃ボウ(さま)也(なり)」とし、大水やたまり水を潦ロウという。
意味 (1)おおあめ。ながあめ。また、大水。「潦潦ロウロウ」(雨水の流れるさま)「雨潦ウロウ」「旱潦カンロウ」(旱魃と大水)「霖潦リンロウ」(大雨が降り続く。ながあめで道が流れのようになる) (2)にわたずみ(潦)。雨水のたまり水。「潦水ロウスイ」(にわたみず。たまりみず)「潦水ロウスイ庭に溢れる」(読史余論より)「庭潦テイロウ」 (3)ひたす。つかれる。「潦倒ロウトウ」(うらぶれたさま)
<紫色は常用漢字>

  バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音符「青セイ」<あお>と「晴セイ」「清セイ」「静セイ」「精セイ」「請セイ」「情ジョウ」

2024年02月14日 | 漢字の音符
  改定しました。
[靑] セイ・ショウ・あお・あおい  青部 qīng

解字 金文は「生(セイ・ショウ)+ 鉱物を掘る井戸の形(中の横線は採取する鉱物)」の形声。[簡明金文詞典]では「青伊」という人名に用いられている。篆文は「生(セイ・ショウ)+丹(井戸穴から掘り出す赤い顔料)」の形声。[説文解字]は「(五行の)東方の色なり。木は(赤色の)火を生じる。生と丹から構成される」と五行説にからめて説明するが、意味不明である。しかし戦国時代末期の[荀子·勧学篇]は「靑出之藍而靑於藍」(青は藍(あい)より出(い)でて藍(あい)より青し」と青と藍を比較して青の色を説明している。字形は隷書(漢代)から下部が月になり旧字の靑は生⇒龶に変化した靑になり、新字体は、靑⇒青に変化する。
 青の字源には諸説あり、発音は生(セイ・ショウ)が受け持つことは一致しているが、主な説は、①丹は赤色の丹(に)でなく青丹(あおに)の色である。②生(セイ・ショウ)は地面から草が芽生える形であり、青は草の色も表す亦声(発音も意味も兼ねる)などがある。しかし字源を確定することは難しく両方の意味が含まれていると思われ、現在の青には以下の意味がある。
意味 
(1)あお(青)。あおい(青い)。①晴れた空の色。「青天セイテン」 ②緑色。「青山セイザン」(緑色の山)「踏青トウセイ」(春に芽吹いた草を踏んで散歩する) ③黒みがかった青。黒い色。「玄青ゲンセイ」(濃い黒色)「青衣セイイ」(黒い服,粗末な服)「青馬あお」(黒味がかった毛色の馬) (3)若い。「青年セイネン」「青春セイシュン」(年の若い時代) (4)地名。「青森県あおもりケン」「青島あおしま」(5)姓。「青山あおやま」「青木あおき

イメージ  
  原義である「あお」(青・晴・睛・錆・鯖・菁)
 「形声字」(清・猜・蜻)
 「きよらか(清)」(静・瀞・精・靖) 
 「まじりけのない(精)」(情・請)

音の変化   セイ:青・晴・睛・鯖・清・菁・静・瀞・精・靖・請・蜻  サイ:猜  ショウ:錆  ジョウ:情 
 
あお
 セイ・はれる・はらす  日部 qíng
解字 「日(ひ)+青(あお)」 の会意形声。青い空がひろがり太陽(日)が輝く晴(はれ)た日。青天は空が青い意。晴天は雲が少なく太陽(日)が見え、空が晴れている意。
意味 (1)はれ(晴)。空がはれる。「晴天セイテン」「快晴カイセイ」「晴耕雨読セイコウウドク」 (2)[国]はれ(晴れ)。表向き。人前。はれやか。「晴れ着」 (3)[国]はらす(晴らす)。心の中がさっぱりする。「気を晴らす」
 ショウ・セイ・さび・さびる  金部 qīng
解字 「金(銅)+靑(あおい=みどり)」 の会意形声。銅にできたみどり色のさび。銅のさびは緑青といい緑色顔料となる。
意味 (1)さび(錆)。さびる(錆びる)。金属のさび。鉄のさび。「錆色さびいろ」(鉄さびのような赤褐色)「錆声さびごえ」(枯れて渋みのある声)
 セイ・さば  魚部 qīng
解字 「魚(さかな)+靑(あおぐろい)」の会意形声。背部にあおぐろい紋様のある魚。背の青黒いのは表層近くを遊泳する魚種に広く見られる保護色で、サバもその仲間である。
意味 さば(鯖)。日本近海に生息するサバ科の魚。背部が青緑色(ふかい藍色)で、青魚、青花魚ともよばれる。「鯖寿司さばずし」「鯖雲さばぐも」(うろこ雲)「鯖をよむ」(鯖を数える際、急いでよみ数をごまかす)
 セイ・ひとみ  目部 jīng
解字 「目(め)+靑(あおぐろい・くろい)」の形声。目のなかの中心にある青黒い部分で瞳(ひとみ)をいう。瞳の色は人種によってちがうが、東洋人は黒が多い。日本では、目の黒い部分(くろめ)をいう。瞳孔。543年の字書[玉篇]は「目の珠子(たま)也」とする。
意味 ひとみ(睛)。くろめ。「点睛テンセイ」(ひとみを描きいれる)「画竜点睛ガリョウテンセイ」(画いた竜に睛(ひとみ)を入れたら、たちまち雲にのって昇天した故事から、最後の大事な仕上げをいう)「眼睛ガンセイ」(ひとみ。くろめ)
 セイ・ショウ・あおな  艸部 jīng
解字 「艸(くさ)+靑(あおい)」の会意形声。あおい草で青菜をいう。
意味 (1)あおな(菁)。かぶ。かぶら。「蕪菁ブセイ・かぶ・かぶら」(アブラナ科の根菜)。なお、菁だけで「かぶ」と読むこともある。(2)草木がしげる。「菁菁セイセイ」(草木があおあおと茂るさま)「菁莪セイガ」(菁は青々としげる、莪はつのよもぎ。転じて多くの人材を育て楽しむこと)

形声字
 セイ・ショウ・きよい・きよまる・きよめる  氵部 qīng
解字 「氵(水)+青(セイ・ショウ)」 の形声。セイ・ショウは井セイ・ショウ(井戸)に通じ、井戸の水の意。井戸水は澄んでおり、きよらかの意となる。[説文解字]は「朖(あきら)か也(なり)。澂(す)みたる水之(の)皃(さま)」とする。
意味 (1)きよい(清い)。きよらか。すむ(清む)。「清流セイリュウ」「清潔セイケツ」 (2)きよめる(清める)。「清掃セイソウ」 (3)すがすがしい。「清涼セイリョウ」 (4)整理する。始末する。「清算セイサン」「粛清シュクセイ
 サイ・そねむ  犭部 cāi
解字 「犭(いぬ)+靑(サイ)」 の形声。サイは豺サイ(やまいぬ)に通じる。野生の犬は、いつも警戒していることから、人に移して疑い深い意に使う。
意味 (1)うたがう。「猜疑サイギ」(うたがう。猜も疑も、うたがう意) (2)そねむ(猜む)。ねたむ。「猜忌サイキ」(そねみ、きらうこと)「猜怨サイエン」(そねみうらむ)
 セイ・ショウ  虫部 qīng
解字 「虫(むし)+靑(セイ)」の形声。セイは静セイ(しずか)に通じ、音もなく静かに飛び、空中で静止(ホバリング)することもできる虫。トンボの羽音は人間にとって聞き取りにくい周波数の音で構成されているため大きな音はせず、離れたところでは羽音が聞こえない。(近くで聞けばわずかな羽音が聞こえる)
意味 (1)「蜻蛉セイレイ」(とんぼ)に使われる。トンボ目の昆虫の総称。2対の翅で、よく飛ぶ虫。「蜻蛉返りとんぼがえり」(トンボが急に向きを後ろにかえる動き。宙返り)「蜻蛉魚とんぼうお」(トビウオの別称) (2)「蜻蛉かげろう」(トンボに似ているが、からだが細く小さい昆虫。成虫は産卵後数時間で死ぬので、はかないことのたとえで使われる。蜉蝣とも書く。)
 セン・セイ・うつくしい  イ部 qiàn・qìng
解字 「イ(ひと)+靑(セン・セイ)」の形声。[説文解字]は「男子之美稱(称)」とし、字(あざな・別名)としたり、姓のあとに添える。また、請セイに通じ、やとう意がある。
意味 (1)男子の美称。「魏倩ギセン」(魏どの) (2)うつくしい(倩しい)。うるわしい。「倩粧センショウ」(美しいよそおい)「倩倩センセン」(うるわしいさま)「倩眄センベン」(口元と目元が美しい)(2)(請セイに通じ)やとう。「倩人セイジン」(人をやとう)「倩雇セイコ」(雇われる) (3)[国]つらつら(倩)

きよらか(清) 
 セイ・ジョウ・しずか・しずまる  青部 jìng
解字 「争(あらそう)+青(=清。きよらか)」 の会意形声。争いがきよめられて、しずかなこと。
意味 (1)しずか(静か)。ひっそりした。「静寂セイジャク」「静脈ジョウミャク」 (2)しずめる。しずまる。「静止セイシ
 セイ・ジョウ・とろ  氵部 jìng
解字 「氵(水)+靜(しずか)」 の会意形声。川の流れが静かな所。流れが静かだと深い。
意味 (1)とろ(瀞)。川の流れがゆるやかで水の深い所。「瀞峡どろきょう」(熊野川水系の北山川にある峡谷)「長瀞町ながとろまち」(埼玉県秩父郡にある町。町内に長瀞渓谷(ながとろけいこく)がある) (2)きよい。きよらか
 セイ・ショウ・くわしい  米部 jīng
解字 「米(こめ)+青(=清。きよらか)」 の会意形声。神に供える清らかな米の意で、まじりけのない・よりぬきの意となる。のちに、「くわしい」「こころ」の意味が加わった。
意味 (1)米を白くする。しらげる(精げる)。「精米セイマイ」(2)まじりけのない。よりぬきの。「精鋭セイエイ」「精子セイシ」 (3)くわしい(精しい)。こまかい。「精通セイツウ」「精密セイミツ」(4)こころ。気力。「精神セイシン」「精進ショウジン」 (5)もののけ。「妖精ヨウセイ」「精霊セイレイ
 セイ・やすい・やすんじる  立部
解字 「立(位置に立つ)+青(=清。きよらか)」 の会意形声。きよらかな所に立つこと。
意味 (1)やすい(靖い)。やすらか。やすんじる(靖んじる)。「靖国神社やすくにじんじゃ

まじりけのない(精) 
 ジョウ・セイ・なさけ  忄部 qíng
解字 「忄(心)+青(=精。まじりけのない)」 の会意形声。まじりけのない純粋な心。 
意味 (1)こころ。きもち。「情熱ジョウネツ」「感情カンジョウ」 (2)なさけ(情け)。思いやり。「友情ユウジョウ」 (3)ありさま。ようす。「情景ジョウケイ」「情報ジョウホウ」 (4)異性間の愛。「愛情アイジョウ」「情事ジョウジ
 セイ・シン・こう・うける  言部 qǐng
解字 「言(ことば)+青(=精。まじりけのない)」 の会意形声。まじりけのない心で言うこと。心をこめて言う意で、日本では頼む・求める意。中国では、頼む他に招待する意(請客)もある。
意味 (1)こう(請う)。ねがう。「要請ヨウセイ」「請願セイガン」「普請フシン」(あまねく請うて寺院建築の仕事に従事してもらう。転じて、建築・土木工事) (2)[国]うける(請ける)。ひきうける。「請負うけおい」「下請したうけ
<紫色は常用漢字>

   バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音符 「宿シュク」 <やどる> 「縮シュク」と「弼ヒツ」 <たすける>

2024年02月12日 | 漢字の音符
宿 シュク・やど・やどる・やどす  宀部 sù・xiǔ・xiù

解字 甲骨文・金文は、「宀(家屋)+イ(人)+敷物」の会意。家屋で人が敷物の上でやどる形。敷物の形は篆文から変化し、現代字で「百」になった。宿は、家屋の中で人がやどること。転じて、中にやどす・前からやどしている等の意となる。
意味 (1)やどる(宿る)。泊まる。「宿泊シュクハク」「合宿ガッシュク」 (2)やど(宿)。やどや。「宿舎シュクシャ」「宿坊シュクボウ」 (3)やどす(宿す)。とどめる。「宿痾シュクア」(以前からわずらい治らない病気) (4)かねてからの。前世からの。「宿命シュクメイ」「宿望シュクボウ」 (5)年を経ている。経験豊かな。「宿老シュクロウ」 (6)しゅく(宿)。馬継ぎ場。「宿駅シュクエキ」「宿場シュクバ
覚え方 やね()の下に、ひと()が、ひゃく()にん宿泊する。

イメージ
 「やどる」
(宿) 
 大勢の人が宿で身をちぢめて寝ることから(覚え方)
 「ちぢめる」(縮・蹜)
音の変化  シュク:宿・縮・蹜

ちぢめる
 シュク・ちぢむ・ちぢまる・ちぢめる  糸部 suō・sù
解字 「糸(いと)+宿(ちぢめる)」の会意形声。糸や、糸で織った布や衣服が、ちぢんで小さくなること。普通の状態から短くなったり、小さくなることをいう。
意味 (1)ちぢむ(縮む)。ちぢまる(縮まる)。「縮小ショクショウ」「縮尺シュクシャク」「圧縮アッシュク」 (2)ちぢこまる(縮こまる)「恐縮キョウシュク」「縮慄シュクリツ」(ちぢこまりおそれる)
 シュク  足部 sù
解字 「足(あし)+宿(ちぢめる)」の会意形声。歩幅を縮めてあること。小股であること。また、足がすくむこと。
意味 (1)こきざみに歩く。「蹜蹜シュクシュク」(小刻みにあるく)(2)ちぢこまる。足がすくむ。「蜷蹜ケンシュク」(まがってちぢこまる。蜷ケンは巻貝で、ここではまがる意) 

形声字
 シュク・スク  艸部 xù
解字 「艸(くさ)+宿(シュク)」の形声。シュクはシュク(良馬の古称)に通じ、良馬の食べる草の意。「苜蓿モクショク」(うまごやし)として用いられる。苜モク・ボクは「艸(くさ)+目(モク)」の形声。モクは睦モク・ボク(むつむ・したしい)に通じる。「苜蓿モクショク」は良馬がむつむ草で、馬の好む草の意。うまごやし(苜蓿)をいう。
苜蓿(うまごやし)
意味 (1)うまごやし(苜蓿)。豆科ウマゴヤシ属の一・二年生草本。三枚の複葉が互生する。卵形あるいはハート形の小葉をつける。一つ一つは黃色蝶形の総状花をつける。飼料や肥料等に用いる。(2)クローバーの俗称。しろつめぐさ。

     ヒツ <たすける>
 ヒツ・たすける・すけ  弓部 bì

解字 金文は、「弓弓+敷物」の会意。弓二つは、一本の弓に、弓の型を当ててしっかり固定し、弓の曲がりを矯正している形。それに敷物(むしろ)がついた弼は、敷物の上で弓を、ためる(矯正する)作業を表す。篆文は敷物が変形し、現代字は百になって弓のあいだに入った形。意味は、君主の政治が曲がるのを正す意から、君主の政治をたすける意となる。
意味 (1)ためる。矯正する。 (2)たすける(弼ける)。たすけ。「輔弼ホヒツ」(天子の政治をたすけること。また、その役) (3)[国]すけ(弼)。律令制の弾正台(警察)の次官。大弼ダイヒツとも言う。 (4)人名。「井伊直弼いいなおすけ」(幕府大老・彦根藩主。幕末、桜田門外で暗殺された)
<紫色は常用漢字>
  
   バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。



コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音符「巫フ」<みこ>と「誣フ」「筮ゼイ」「噬ゼイ」「覡ゲキ」「霝レイ」と「霊レイ」「櫺レイ」

2024年02月10日 | 漢字の音符
  増訂しました。
 フ・ブ・みこ  工部 wū

解字 甲骨文と金文は呪具である工2つを組み合わせた形。古文(春秋戦国時代の文字)は、工の両側に「人+口」を向きあわせて配し、下に両手をつけている。「人+口」は召で招く意と思われ、呪具を両手でもち神を招いている形か。篆文で工の両側に人が向き合う形になり、現代字は「人+工+人」の巫になった。工をもち、神を招く巫女を表す。(なお、呪具の工は、ノミの形の象形である工具の工とは別物と考えられる。)
意味 みこ(巫)。巫女とも書く。かんなぎ(巫)。神に仕える女性。男のみこは覡ゲキという。「巫祝フシュク」(神職。巫も祝も、神に仕える者の意)「巫術フジュツ」(みこの行なう霊的な術)「巫医フイ」(祈祷で治療する人)  

イメージ   
 「みこ」
(巫・筮・噬・誣)   
 「神に祈る」(覡)
音の変化  フ:巫・誣  ゼイ:筮・噬  ゲキ:覡
 

みこ
 ゼイ・めどき・うらなう  竹部  shì
解字 「竹(竹の細い棒)+巫(みこ)」の会意。みこが占いで用いる細い竹の棒。
意味 めどき(筮)。うらなう(筮う)。占いに用いる竹の細い棒。ふつう50本を一組として使う。「筮竹ゼイチク」「筮卜ゼイボク」(筮による占い)
 ゼイ・セイ・かむ  口部  shì
解字 「口(くち)+筮(ゼイ)」の形声。[説文解字]は「啗(くう・くらう)也。喙(くちばし)也。口に従い筮ゼイの聲(声)」とし、くう・くちばし(でかむ)意とする。発音字典の[玉篇]は「齧噬ゲツゼイ(かむ・かじる)也(なり)」とする。白川静[字通]は「筮ゼイはおそらく齧(か)む音の擬声音として用いた」としている。
意味 (1)かむ(噬む)。かみつく。「齧噬ゲツゼイ」(かじる。齧も噬も、かむ意)「噬臍ゼイセイ」(ほぞ(へそ)をかむ。後悔する)(2)くう。くらう。「呑噬ドンゼイ」(①のむこととかむこと。②他国を侵略してその領土を奪うこと)「露国の極東呑噬ドンゼイ」(ロシアの極東侵略。「高橋是清自伝」より)「搏噬ハクゼイ」(つかみ捕らえて食らう)
 フ・ブ・しいる  言部  wū
解字 「言(いう)+巫(みこ)」の会意形声。みこが神のお告げをまげて言うこと。
意味 しいる(誣いる)。事実をまげて言う。こじつける。「誣告ブコク」(事実をいつわって告げる)「誣告罪ブコクザイ」(虚偽の申告をする罪)「誣言フゲン・ブゲン」(事実をまげて言う)

神にいのる
 ゲキ  見部 xí
解字 「見(みる)+巫(神にいのる)」の会意。神に祈って神を見ることのできる人。特に男性のミコに用いられる。 
意味 かんなぎ(覡)。ミコ。特に男性のミコ。「巫覡フゲキ」(かんなぎの総称。巫は女の、覡は男のかんなぎ)


    
     レイ <雨乞いする>
 レイ・リョウ  雨部 líng

解字 甲骨文字は「雨(あめ)+二つの口(うつわ)」の会意。口サイは器(うつわ)であり器で雨をうけることを表す。甲骨文字は地名またはその長の意。「霝妃」という人名がある[甲骨文字字典]。金文以降は口が三つになった霝だが、金文の意味は不明。篆文(説文解字)は「雨零ウレイ(水滴がおちる)也(なり)」とする。この字は下に巫(みこ)がついてミコが雨乞いの儀礼を行なう意となるので、雨を器で受けるという行為は雨乞いの意味がある思われる。
意味 雨が降ること。しずく。雨乞い。

イメージ   
 「雨乞い」
(霝・)  
 「形成字」(櫺)  
音の変化  レイ:霝・霊・孁・櫺 

雨乞い
 
[靈] レイ・リョウ・たま  雨部 líng
解字 旧字はで、「巫(みこ)+霝レイ(あまごい)」 の会意形声。霝レイは、天に雨乞いする形。はミコが雨乞いの儀礼を行なうこと。雨乞いのみでなく神霊の降下を求めるときにも同じ形式で行なわれるので、のち、その神霊をいい、およそ神霊にかかることをみな霊という[字統]。新字体は旧字の、口口口 ⇒ 一 、巫 ⇒ 亚 に変化した霊になった。
意味 (1)たま(霊)。神のみたま。また、死者のたましい。「神霊シンレイ」「亡霊ボウレイ」 (2)ふしぎな。神聖な。人知で計り知れない。「霊感レイカン」「霊泉レイセン」「霊妙レイミョウ」(人知こえて優れていること)「霊長類レイチョウルイ」(妙な力を持ち万物のとなる動物の種類。サルやヒトの仲間)
 レイ・リョウ・め  女部  líng
解字 「女(おんな)+霝レイ(あまごい)」 の会意形声。霝レイは、天に雨乞いする形。これに女がついたは、雨乞いする女で、巫女のこと。
意味 (1)巫女。(2)女子の名。「大日孁おおひるめ」(日孁ひるめは、日の女(巫女)。太陽神の巫女から太陽の女神をいう。日本書紀第五段本文では「伊弉諾いざなぎみこと・伊弉冉いざなみみことのあいだに生まれた。」また、五段の一書では「伊弉諾尊が、左手で白銅鏡(ますみのかがみ)を持ったときに大日孁貴が生れた」とある)「大日孁貴おおひるめのむち」(貴むちは尊称で「天照大神あまてらすおおみかみ」の別名) 

形成字

 レイ・リョウ  木部  líng
櫺子窓(連子窓)
解字 「木(き)+霝(レイ)」の形声。レイは囹レイ(牢獄)に通じる。木のついた櫺レイは、牢獄の窓に囚人が逃げないようタテにつけた木の格子をいう。転じて格子のはいった手すりにも用いる。
意味 (1)れんじ(櫺)。欄干(手すり)や窓に一定の間隔でとりつけた格子。「櫺子レイシ」(れんじ=連子)「櫺子窓れんじまど=連子窓」「櫺軒レイケン」(れんじの手すり)「櫺檻レイカン」(れんじのてすり)「櫺牀レイショウ」(れんじの手すりのあるベッド)
<紫色は常用漢字>    

 バックナンバーの検索方法 ※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする