漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符 「於オ」と「唹オ」「淤オ」「閼ア・アツ」

2022年09月28日 | 漢字の音符
 於オは字形の変遷は、たどれるが原義は不明の字。しかし、意味は仮借カシャ(当て字)なので、その音符字は形声字と解釈すると、なんとか解ける。
 オ・ウ・おいて・おける  方部

解字 金文は、隹(とり)と人が描かれている。篆文第一字は、隹がくずれた形となり、人の下に二がついた形。第二字(六書通)は、くずれた隹⇒方に変化した於になった。字形の変遷は辿れるが意味は不明。仮借カシャ(当て字)されて、関係を表す助字、感嘆詞、接頭語として使われる。
意味 (1)おいて(於いて)。おける(於ける)。時間や場所を表す。(2)ああ。嘆息・感嘆の声。「於乎ああ」(3)接頭語として。「於転婆おてんば」(若い娘が活発に行動すること)

イメージ
 「仮借カシャ(於)
 「形声字」(閼・唹・淤)
 「会意」(鯲)
音の変化  ア・アツ:閼  オ:於・唹・淤  どじょう:鯲

形声字
 ア・アツ・エン・ふさぐ  門部
解字 「門(もん)+於(オ⇒アツ・エン)」の形声。アツ・エンという名の門。アツは遏アツ・とどめるに通じ、門でとどめる・ふさぐ意。また、匈奴王の正妻の称号を表す。アの発音は慣用音。
意味 (1)ふさぐ(閼ぐ)。ふさがる。「抑閼ヨクアツ」 (2)梵語の音訳字。「閼伽アカ」とは、arghyaアルギャの音訳で、仏にそなえる水の意。また、その容器。「閼伽水アカみず」(仏前に供える水)「閼伽井アカい」(仏前に供える水を汲む井戸) 

王昭君(匈奴王の閼氏エンシ(后妃)となった。中国の絵本の表紙より)
(3)北方の遊牧民族・匈奴キョウドの単于 (ぜんう・君主)の后妃の称号。「閼氏エンシ」(匈奴の単于の后妃の称号。匈奴部族中の特定の数氏族から選ばれた)「王昭君おうしょうくん」とは、前漢の元帝の時代、宮女の中から選ばれ匈奴の呼韓邪こかんや単于の妻となり、寧胡ねいこ閼氏えんしと号した)
 オ・ヨ  口部
解字 「口(くち)+於(オ・ヨ)」の形声。口から出すオ・ヨの声で、わらう意味になる。
意味  わらう(唹う)。わらい声。 
 オ・ヨ・どろ  氵部
解字 「氵(みず)+於(オ)」の形声。[説文解字]は「濁泥なり。於声」とし、オという名の泥とする。意味は、どろ・にごる・ふさがる意となる。
意味 (1)どろ(淤)。水の底にたまったどろ。「淤泥オデイ」「淤閼オアツ」(どろでふさがる)「淤澱オチン」(どろが沈んでかたまる) (2)ふさぐ。ふさがる。「淤塞オソク」(ふさがる)

会意字
<国字> どじょう  魚部
解字 「魚(さかな)+於(淤の略体。どろ)」の会意。淤(どろ)の中にすむ魚。
意味 (1)どじょう(鯲 )。ドジョウ科の淡水魚。鰌シュウ、鰍シュウとも書く。 (2)地名。「鯲沼町どじょうぬまちょう」(秋田市)「鯲池どじょういけ」(愛知県一宮市)

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音符「余ヨ」と「除ジョ」「徐ジョ」「叙ジョ」「斜シャ」「途ト」「塗ト」「茶チャ」

2022年09月27日 | 漢字の音符
 「余」はその字源に諸説がある。加藤常賢氏は『漢字の起源』で、「傘のような形の亭屋」とし、藤堂明保氏は『学研漢和大字典』で、「スコップで土を押し広げるさま」とし、白川静氏は『字統』で、「取っ手のある細い手術刀の形」としている。その後、落合淳思氏の『甲骨文字辞典』は、「字源については建築物の一種とする説と刃物の一種とする説があるが、甲骨文字には仮借した一人称の用法しかなく、証明は困難である」としている。中国ネットを調べると、『象形字典』(Vividict.com)が簡易な宿舎説でもあることから、今回、加藤説で解字した。
 なお、現在、『象形字典』(Vividict.com)はネットから消去されています。蜍ジョを追加しました。


 ヨ・われ  人部

解字 甲骨文は、一本の柱の上に屋根がつき、柱から支えがのびている簡単な家屋の形。簡易な休憩所や宿舎を意味する。しかし、本来の意味と関係なく「われ」「自分」の意味に仮借カシャ(当て字)された。金文から、下部にハがついた余のかたちになり、現代に続いている。
意味 われ(余)。自分。「余輩ヨハイ」(わがともがら。われら)

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 「仮借」
(余)
 「簡易な宿舎」(余[餘]・途・除・徐・斜)
 「形声字」(塗・叙・蜍)
 「その他」(荼・茶)
音の変化   ヨ:余・余[餘]  シャ:斜  ジョ:除・徐・叙・蜍   チャ:茶  ト:途・塗・荼

簡易な宿舎
[餘] ヨ・あまる・あます  人部
解字 旧字は餘で「𩙿(食べ物)+余(簡易宿舎)」 の会意形声。簡易宿舎に食べ物が多くあること。小さい宿舎なので入り切れず、あまる意となる。新字体の余は、旧字から食を略した。この結果、「われ・じぶん」の余と同じ字体となった。
意味 (1)あまる(余る)。あまり。のこり。「余力ヨリョク」「残余ザンヨ」「余韻ヨイン」 (2)ほか。それ以外の。「余技ヨギ」「余興ヨキョウ」「余罪ヨザイ
 ト・みち  之部
解字  「辶(ゆく)+余(簡易宿舎)」の会意形声。簡易宿舎に泊まりながら行くこと。宿舎がある街道の「みち・みちすじ」をいう。また、旅行をする方法・手段をいい、転じて旅行以外にも使う。
意味 (1)みち(途)。みちすじ。「途中トチュウ」「帰途キト」 (2)手段・方法。「用途ヨウト」「使途不明シトフメイ」「途方トホウ」(取るべき方法)
 ジョ・ジ・のぞく  阝部
解字 「阝(ハシゴ)+余(簡易宿舎)」 の会意形声。簡易宿舎にハシゴをかけて、屋根を掃除したり、室内の高いところのホコリをはらうこと。とりのぞく・はらう意となる。阝には、ハシゴの意と、丘の意があるが、この字ではハシゴの意。
意味 (1)のぞく(除く)。とりさる。はらう。「除去ジョキョ」「除夜ジョヤ」(旧年をとり除く日の夜。大晦日の夜) (2)数学で割り算をいう。「除法ジョホウ」「除数ジョスウ」(割る方の数)
 ジョ・おもむろ  彳部
解字 「彳(ゆく)+余(簡易宿舎)」 の会意形声。簡易宿舎に泊まったり、休んだりしながら行くこと。ゆっくりの意となる。途と字の構造が似ているが、途が、宿舎がある道筋に重点をおくのに対し、徐は、宿舎に泊まりながら、ゆっくり行く意となる。
意味 おもむろに(徐に)。ゆるやか。ゆっくりと。「徐行ジョコウ」「徐徐ジョジョ
 シャ・ななめ・はす  斗部
解字 「斗(ひしゃく)+余(=徐の略体。ゆっくり)」 の会意形声。柄杓をおろして水を(こぼれないように)ゆっくりとくむこと。すると柄杓が傾くので、斜めの意となる。発音はシャに変化。
意味 (1)くむ。くみだす。 (2)(柄杓を下して水をくむと柄がななめに傾くことから)ななめ(斜め)。はす(斜)。かたむき。はすかい。「斜面シャメン」「傾斜ケイシャ」(傾も斜も、かたむく意)「斜陽シャヨウ」(太陽が西に傾くこと。また、没落しかかること)

形声字
 ト・ぬる  土部  
解字 「氵(水)+土(つち)+余(ト)」の形声。トは度ト・ド(敷物をひろげる)、鍍ト(メッキをする)に通じる。鍍は、金属の皮膜で敷物をしくようにおおう意からメッキをすること。塗は、「氵(水)+土(つち)」(水と土を混ぜた泥)で、ひろげるようにおおう意から、ぬる意となる。
意味 (1)ぬる(塗る)。ものをぬりつける。「塗装トソウ」「糊塗コト」(塗ってとりつくろう) (2)どろ(塗)。どろにまみれる。まみれる(塗れる)。まぶす(塗す)。「塗炭トタン」(①どろと炭。きたない物の例え。②どろにまみれ、炭火に焼かれる苦しみ) (3)(途に通じ)みち。「道塗ドウト」(みち=道途)
[敍] ジョ・のべる  又部
解字 旧字は敍で「攴(手の動作)+余(ジョ)」 の形声。ジョは序ジョ(順序をつける)に通じ、手の動作で順序よく並べること。転じて、順序だてて事を行なったり、順をおって述べること。新字体は旧字の攴⇒又に変化した。敍ジョと序ジョは、上古音・中古音でも同じ発音。
意味 (1)順序をつける。官位をさずける。「叙勲ジョクン」「叙位ジョイ」 (2)のべる(叙べる)。順をおってのべる。「叙述ジョジュツ」(順序だてて述べる)「叙事ジョジ」(順をおって事実を述べ記す)「自叙伝ジジョデン
 ジョ  虫部
解字 「虫(両生類)+余(ヨ⇒ジョ)」の形声。ジョと呼ばれる虫。「蟾蜍センジョ」(ひきがえる)に用いられる。

月の中の「ひきがえる」https://m.hackhome.com/InfoView/Article_235593.html
意味 「蟾蜍センジョ」とは、①ヒキガエルをいう。いぼのたくさんある大型の蛙。②月の中にいるというヒキガエル。中国では《西王母セイオウボの秘薬を盗んだ姮娥コウガが月に逃げてヒキガエルになったという伝説(後漢書)がある》③転じて、月のこと。

その他
 ト・タ・ダ・にがな  艸部
解字 「艸(くさ)+余(ト)」の形成。トとよばれる野菜。にがい味がするので苦荼クト(苦菜)と呼ばれた。また、タ・ダの発音で梵語の音訳字に使われる。
意味 (1)にがな(荼)。苦菜。「苦荼クト」(にがな)。のげし。(2)苦しみ。「荼毒トドク」(苦しみと毒。転じて害毒をなすこと) (3)梵語の音訳。「荼毘ダビ」(火葬にする)
 チャ・サ  艸部
解字 中唐以後に使われるようになった字。もとは荼で苦菜(にがな)の意。お茶もにがいことから、当初「荼」を使用していたと思われるが、唐の陸羽が『茶経』(760年頃成立)の中で余から一画減らした「茶チャ」を使い始めてから、この字が一般に認められるようになった。
意味 (1)ちゃ(茶)の木。ちゃの若芽を製したもの。また、その飲料。「緑茶リョクチャ」「紅茶コウチャ」 (2)いろ。「茶色チャいろ」 (3)抹茶をたてる作法。「茶道チャドウ」「茶会チャカイ」「茶人チャジン
<紫色は常用漢字>

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音符「倉ソウ」<くら> と「刱ソウ」「創ソウ」「瘡ソウ」「槍ソウ」「蒼ソウ」

2022年09月24日 | 漢字の音符
 倉は「くら」の形を表した象形文字の音符だが、「くら」のイメージで使われるのは艙のみで、残りはすべて、ソウの発音からくる形声字である。刱ソウ・搶ソウを追加しました。
 ソウ・ショウ・くら  人部ひとがしら      
 
解字 穀物をしまっておく「くら」の形の象形。甲骨文・金文は上にA字形の屋根があり、その下に戸を描く。一番下の口は、くらの土台である[甲骨文字小字典]。篆文と現代字は、戸の柱が口の横まで伸びたかたち。また、怱ソウ(あわただしい)に通じ、あわてる意もある。
意味 (1)くら(倉)。物を入れておく建物。「倉庫ソウコ」「船倉センソウ」 (2)にわかに。あわてる。「倉卒ソウソツ」(あわただしいこと) (3)あおい(=蒼)。「倉海ソウカイ

イメージ 
 「くら」
(倉・艙) 
 「形声字(ソウの音)」(刱・創・瘡・愴・槍・蒼・滄)
音の変化  ソウ:倉・艙・刱・創・瘡・愴・槍・蒼・滄

く ら
 ソウ  舟部
解字 「舟(ふね)+倉(くら)」 の会意形声。船の内部のくらになっている部分。船の中央部で貨物を積む所。
意味 ふなぐら。中央部の船室。「船艙センソウ」「艙底ソウテイ」(ふなぞこ)「艙間ソウカン」(船室)

ソウの音
 ソウ・ショウ・はじめる  刀部

解字 「井(わく)+刅ソウ(両刃の刀)」 の会意形声。井は井戸枠の形で、ここでは鋳物の型枠の意。型枠の注ぎ口に溶けた金属を流し込み、固まったら型枠をはずし刅ソウ(両刃刀)で鋳物砂を突き崩して中の鋳物を取り出すこと。新しい鋳物が出来上がるので、はじめる・つくる意となる。また、鋳物砂を突くので、傷つける意ともなる。
意味 (1)はじめる(刱める)。「刱業ソウギョウ」(事業を新しく始める)(2)つくる。「刱造ソウゾウ」(新たに造ること) (3)そこなう。きずつける。
※この字を同音の倉ソウに置き換えたのが創ソウである。
 ソウ・つくる  刂部
解字 「刂(刀)+倉(ソウ)」 の形声。ソウは刱ソウ(はじめる・つくる・きずつける)に通じ、刱ソウの意味を同音の創ソウで表した。
意味 (1)はじめる(創める)。「創始ソウシ」「創業ソウギョウ」「創立ソウリツ」 「創刊ソウカン」 (2)つくる(創る)。つくりだす。「創造ソウゾウ」「独創ドクソウ」「創作ソウサク」 (3)きず(創)。きずつける。「創傷ソウショウ」(きずつく)「創痕ソウコン」(きずあと)
 ソウ・ショウ・かさ  疒部
解字 「疒(やまい)+倉(=創。きず)」 の形声。傷を負うこと。および、傷あとのかさをいう。また、かさのできる腫れものをいう。
意味 (1)きず。きりきず。「刀瘡トウソウ」 (2)かさ(瘡)。くさ。はれもの。「瘡蓋かさぶた」「疱瘡ホウソウ」(天然痘の俗称=痘瘡トウソウ
 ソウ・いたむ  忄部
解字 「忄(こころ)+倉(=創。きず)」 の形声。心がきずつくこと。かなしむ・いたむ意となる。
意味 (1)かなしむ。いたむ(愴む)。「悲愴ヒソウ」(悲しみいたむ)「悲愴交響曲ヒソウコウキョウキョク」(チャイコフスキー作曲の交響曲)「愴然ソウゼン」(いたみかなしむさま)(2)いたましい。「凄愴セイソウ」(すさまじくいたましい)
 ソウ・やり  木部
解字 「木(き)+倉(=創。きず)」 の形声。木の長柄の先に刃をつけ、突いてきずをつける「やり」をいう。
意味 やり(槍)。長い柄の先に尖った刃のついた武器。「槍術ソウジュツ」「槍鉋やりがんな」(穂先が反った形の刃に柄をつけた槍に似た古代の鉋)「槍衾やりぶすま」(槍を前に突き出して隙間なくならぶ)
 ソウ・ショウ・つく  扌部
解字 「扌(て)+倉(=槍。やり)」の形声。槍を手でつくこと。また、槍を持ってさわぐこと。
意味 (1)つく(搶く)。つきあてる。「風を搶く」(風に逆らって進む) (2)あらそう。みだれる。奪い取る。「搶攘ソウジョウ」(さわぎみだれる)「搶奪ソウダツ」(うばいとる)「搶掠ソウリャク」(かすめとる)
 ソウ・あおい  艸部
解字 「艸(くさ)+倉(ソウ)」 の形声。草の深い緑色をソウと言い、藍色と緑色を包括していう。
意味 (1)あおい(蒼い)。あお(蒼)。草のような深い緑色。こい青色。「蒼穹ソウキュウ」(あおぞら)「蒼白ソウハク」(顔色が青ざめて血色のわるいこと) (2)しげる。草木がしげる。「蒼蒼ソウソウ」(あおあおしている)「蒼茫ソウボウ」(青々とひろいさま)「蒼海ソウカイ」(=滄海)(3)草木があおあおと茂る意から、多くの人民にたとえる。「蒼氓ソウボウ」(人民。たみくさ。=蒼生)
 ソウ  氵部
解字 「氵(水)+倉(=蒼。あおい)」の形声。水や海のあおさをいう。
意味 あおい。あおうなばら。うみ。「滄海ソウカイ」(ひろびろとしたあおい海=蒼海)「滄海変じて桑田となる」(大海原が桑畑に変わる。時勢の大きな変遷のたとえ=滄桑ソウソウの変)
<紫色は常用漢字>

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音符「官カン」<おおやけの役所>と「館カン」「管カン」「棺カン」「菅カン」

2022年09月21日 | 漢字の音符
  舘カンを追加しました。
 カン・つかさ  宀部          

解字 甲骨文は「宀(建物)+𠂤タイ(軍隊の象徴)」の会意。𠂤タイは、軍隊を象徴する師の原字で、宀(建物)が付いた官は軍隊が宿泊する場所を表す[甲骨文字辞典]。金文は官吏の意味として用いられるようになった。官は軍の宿泊所からのち、国を治める役所の意になり、ここに勤務するのは官僚となった。国が乱れているときは武力を持つ軍が中枢(官)となるが、国が治まり平和が訪れると、中枢は官僚に移ることを示している。現代字は𠂤タイの上のノが取れた㠯になっている。
意味 (1)つかさ(官)。おおやけ。役人。役所。「官庁カンチョウ」「官位カンイ」「官僚カンリョウ」(行政の執行者。官吏。役人)「官舎カンシャ」 (2)(つかさどる意から)人の感覚をつかさどる目・耳・鼻・口などの部分をいう。「五官ゴカン」(目・耳・鼻・舌・皮膚をいう)「官能カンノウ」(感覚器官のはたらき)「器官キカン」(人や動物など生物体の内部で特定の機能と形を持っている部分)

イメージ 
 「おおやけの役所」
(官・館・舘) 
 「形声字」(管・菅・綰・棺)
音の変化  カン:官・館・舘・管・菅・棺  ワン:綰

おおやけの役所
 カン・やかた  食部
解字 「飠(=食。たべる)+官(おおやけの役所)」の会意形声。食事・宿泊できる官庁舎が原義。舘は館の異体字。
意味 (1)やかた(館)。やしき。「公館コウカン」「洋館ヨウカン」(2)やど。やどや。「旅館リョカン」(3)人の集まる建物。また、公共の施設。「体育館タイイクカン」「映画館エイガカン
 カン・やかた・たて・たち  舌部
解字 「舍シャ(舎の旧字。たてもの)+官(おおやけの役所)」の会意形声。平安時代に国司や郡司の邸宅を指したが、中世以降、地方土豪の武士化につれて、砦などに軍備を伴った居所を意味するようになった。山舘、平舘、沼舘など。戦国から桃山時代にかけて大名によって改修され、近世の城郭となったものが多い。江戸時代には一国一城令により、舘は城に含まれないものとなった。[ブリタニカ国際大百科事典]。館の異体字。
意味 (1)やかた(舘)。たて(舘)。たち(舘)。大きな建物や屋敷。「舘舎カンシャ」「国士舘コクシカン」(1917年に柴田徳次郎により創設された私塾の名。現在は国士舘高校と国士舘大学になっている) (2)やど。やどや。客人を招いて泊める建物。 (3)姓。「舘(たち)ひろし」「宮舘みやだて」「古舘ふるたち」 (4)地名。姓と重なるものが多い。「飯舘いいだて」「舘浦たちうら」「大舘おおだて
 
形声字
 カン・くだ  竹部
解字 「竹(たけ)+官(カン)」の形声。カンという発音の竹の笛をいう。また、竹のような細長い中空の筒状のものをいう。また、官に通じ官の働きを具体的にいう。
意味 (1)穴が六つ空いている竹の笛。また、笛の総称。管を用いて吹き鳴らす楽器。「管籥カンヤク」(ふえ。管も籥も、ふえの意)「管弦カンゲン」(管楽器と絃楽器) (2)くだ(管)。細長いつつ。つつ状のもの。「気管キカン」「血管ケッカン」 (3)つかさどる。とりしまる。官の働きを具体的にいう。「管理カンリ」「管轄カンカツ」「管制カンセイ」 (4)姓。「管仲カンチュウ」(春秋時代の斉の宰相)
 カン・すが  艸部
解字 「艸(草)+官(カン)」の形声。カンという名の草。水辺に生える多年草。茎は三角形で葉は細長い。葉を、みの・かさ・むしろ、などに用いる。
意味 (1)すげ(菅)。すが(菅)。湿地や水辺に自生するカヤツリグサ科の多年草。茎葉は細長く高さ1mほどになり笠や蓑(みの)・むしろの材料にする。「菅笠すげがさ」「菅薦すがこも」(菅で編んだむしろ) (2)かるかや。イネ科の多年草でススキに似た草。 (3)姓。「菅すが」「菅原すがはら」「菅沼すがぬま
 カン・ひつぎ  木部

木材をくりぬいた古い形式の棺。中国のネット検索画面から、原サイト不明。
解字 「木(き)+官(=管)」の会意形声。丸い木材をくりぬいて管くだ状にしたひつぎが原義。棺は、死体を布帛(ぬの)で包んでくくり、収める木の箱。
意味 ひつぎ(棺)。かんおけ。「出棺シュッカン」「棺柩カンキュウ」(棺も柩も、ひつぎの意)「棺椁カンカク」(内と外と二重になった棺。椁は外の棺)「石棺セキカン」「棺桶カンおけ」(棺に用いる桶)
 ワン・たがねる・わがねる  糸部
解字 「糸(ひも)+官(=管。くだ状のもの)」の形声。紐で管(くだ)を巻き付けるように結ぶこと。発音はカン⇒ワンに音韻変化。
意味 (1)たがねる(綰ねる)。わがねる(綰ねる)。輪の形にまげて結ぶ。「綰結ワンケツ」(輪の形に結びつける)「針金を綰(わが)ねて細工物をつくる」「綰物わげもの」(材料を綰(わが)ねて作った細工物)(2)むすぶ。つなぐ。「綰髪ワンパツ」(髪の毛を束ねてむすぶ)」
<紫色は常用漢字>

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音符「付フ」<つけ加える・つく>「附フ」「符フ」 と 「府フ」「腐フ」

2022年09月18日 | 漢字の音符
  付と府を分離しました。咐フを追加しました。
 フ・つける・つく  イ部            

解字 金文は「イ(ひと)+又(て)」 の形と、「イ(ひと)+寸」 の形の二種がある。「イ+又(て)」は、手を人につけた形で「つく・つける」意。「イ(ひと)+寸」の形は、篆文に引き継がれ現在に続いているが、中国最古の部首別字典である[説文解字]は、「物を持って人に与える」と解説し、寸を手に物をもつ形としている。もともと寸は、親指の幅、および肘(ひじ)の意だが、付の字においては、手に物をもつ意があると思われる。これによって解釈すると、手に物を持って人に「あたえる・さずける・つけ加える」意が出てくる。
 付は、これまで[説文解字]の解釈である、あたえる意で使われてきた。金文第一字の「つく・つける」意は、これまで阝(こざと)をつけた附で表されてきたが、現代表記ではすべて付を使うのが一般的になった。
意味 (1)あたえる。さずける。つけ加える。「交付コウフ」「付加フカ」 (2)つける(付ける)。つく(付く)。「付録フロク」 (3)たのむ。ゆだねる。「付託フタク

イメージ 
 「つく・つけ加える」
(付・附・鮒・拊)
 「ぴたりとつける」(符) 
 「形声字」(咐) 
音の変化  フ:付・附・拊・符・鮒・咐

つく
 フ・つく 阝部こざと  
解字 「阝(おか)+付(つけ加える)」の会意形声。阝(おか)は、ここで墳墓。元の墳墓に付け加えて、すぐ近くに造られ近親者を葬った「陪塚バイチョウ・バイづか」を意味すると思われる。この字が「つく」意で昭和初期まで用いられた。
意味 (1)つく(附く)・くっつく・つける。「附着フチャク」(=付着)「附録フロク」(=付録) (2)つきしたがう。「附随フズイ」(=付随)
 ※もと、附は「つく」、付は「与える」と使い分けたが、現代表記ではすべて付を使うのが一般的である。ただし、官庁用語・法令用語では、「附属フゾク」「附則フソク」のように用いている。
 フ・ふな  魚部
解字 「魚(さかな)+付(つく)」の会意形声。人に付く魚。人間の生活圏を流れる河川や農業用水などにも生息するため、昔から人間に親しまれた魚。日本の名称であるフナは、「ふ(鮒の音読み)+な(魚)」に由来する。
意味 ふな(鮒)。コイ科の淡水魚。湖沼や川にすむ。「寒鮒カンぶな」「鮒鮨ふなずし」(鮒をご飯で発酵させたなれずし)「小鮒こぶな釣りし かの川」
 フ・なでる  扌部
解字 「扌(て)+付(つける)」の会意形声。手を相手につけること。なでる意と、かるくたたく意がある。なでる意は、「撫でる」の撫ブ・フと同音代替の関係になる。
意味 (1)なでる(拊でる)。撫でる。「拊愛フアイ」(なでるように可愛がる)(2)うつ。かるくたたく。
ぴたりとつける
 フ・わりふ  竹部 
割符(中国歴史博物館蔵)
https://baike.baidu.com/item/%E5%89%96%E7%AC%A6/1677322(百度百科より)
解字 「竹(たけ)+付(ぴたりとつける)」の会意形声。二つに割った竹をぴたりと付けること。約束をしるした竹片や木片の中央に印をつけて二つに割り、甲乙がその片方ずつを所有し、後日二つを合わせて証拠のしるしとした。竹の節を含めると合わせる箇所がピタリと合うので「符節フセツ」ともいう。
 また、小さな竹片や木片に印をつけ、そこを二分して一方を相手に渡して符丁とし、命令を奉じた使者と命令の下達先の間で使者が本物であることを示す証として用いられた(竹使符)。のち、命令を下達する文書そのものを指すようになった。
意味 (1)わりふ(符)。割符。あいふだ。「符節フセツ」(=割符)「切符キップ」(料金支払い済みを証明する入場券や乗車券。使うとき切って分ける) (2)しるし。記号。「符丁フチョウ」「符号フゴウ」「音符オンプ」 (3)神仏の守りふだ。「護符ゴフ」(4)命令書。公文書。「太政官符ダジョウカンプ」(太政官[国政の最高機関]が出した命令書)
形声字
 フ  口部
解字 「口(くち)+付(フ)」の形声。口からフという声を出すこと。息をふく意となる。
意味 (1)いきふく。息を吹きかける。「嘔咐オウフ」(嘔も咐も、息を吹きかける意で、動物などにやさしく息をふきかけて、いつくしみ養うこと)(2)いいつける。「吩咐フンフ」(いいつける)

    <フ・くら>
 フ・くら  广部
解字 「广(たてもの)+付(つけ加える)」の会意形声。物をつけ加えて保存しておく建物。くらの意となる。「くら」は富と権力の象徴であり、役所・みやこの意ともなる。
意味 (1)くら(府)。文書や財宝をしまっておく倉。「府庫フコ」(くら) (2)つかさ。役人が事務を執る所。役所。「国府コクフ」「政府セイフ」「幕府バクフ」 (3)みやこ(府)。まち。「首府シュフ」 (4)地方行政区画の一つ。「大阪府おおさかフ」「京都府キョウトフ

イメージ
 「くら」(府・腑・腐)
 「形声字」(俯・椨)
音の変化 フ:府・俯・腑・腐  たぶ:椨

 フ・はらわた  月部にく
解字 「月(からだ)+府(くら)」の会意形声。身体のなかの府(くら)に当るところ。
意味 はらわた(腑)。体内の臓器。「臓腑ゾウフ」(はらわた)「腑抜(ふぬ)け」(意気地がないこと)「腑分(ふわ)け」(解剖)「肺腑ハイフ」(肺臓。心の奥底。急所)
 フ・くさる・くされる・くさらす  肉部  
解字 「肉(にく)+府(くら)」 の会意形声。「くら」にしまいこまれた肉がくさる意。
意味 (1)くさる(腐る)。くされる。くさらす。くさす。「腐敗フハイ」「豆腐トウフ」 (2)古い。「陳腐チンプ」(ふるくさい。ありふれる) (3)「腐心フシン」とは、心をいため悩ますこと。

形声字
 フ・うつむく  イ部

解字 「イ(ひと)+府(フ)」の形声。フは、フ・チョウ(うつむく)に通じる。俯は、人がうつむくこと。フ・チョウは俯の篆文で正字。楷書から俯になった。フ・チョウは、「兆(占いのひびわれ)+頁(あたま)」で、占いでできたひび割れを、頭を下にむけて見る形で、うつむく意。
意味 ふせる。うつむく(俯く)。うつぶす。「俯角フカク」(目の高さより下を見る時、その視線と水平面との角度)「俯瞰フカン」(高い所から見下ろすこと)
 <国字> たぶ  木部

タブノキ(森林インストラクターのブログ)
解字 「木(き)+府(フ)」の形声。タブの木を表す国字。府で、たぶの「ふ」を表した。中国では紅楠と書く木。
意味 たぶ(椨)。たぶのき。クスノキ科の常緑高木。スダジイなどともに日本の代表的な常緑広葉樹。暖地に自生し、春に黄緑色の小花を開く。照葉樹林の代表的樹種のひとつ。日本各地に巨木が残っている。いぬぐす。
<紫色は常用漢字>

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音符「咸カン」<マサカリで器のすべてを守る>と「感カン」「憾カン」「減ゲン」

2022年09月15日 | 漢字の音符
  轗カンを追加しました。
 カン・ゲン  口部

解字 甲骨文・金文は、大きな刃をもつマサカリで口サイ(神への祈りを伝える祝詞(のりと)を入れた器)を守っている形。篆文からマサカリの刃の一部が分離した戌ジュツに口がついた形になり、その形が現代字の咸カンになった。意味はマサカリで器全体を守るので、すべて・みなの意となる。なお、音符になるとき、器の周囲をすべて守ることから「封じ込める」イメージがある。 
意味 (1)みな(咸)。すべて。ことごとく。 (2)地名。「咸陽カンヨウ」(中国陝西省の秦の都があった都市。咸陽とは、山の南である陽の地にあり、しかも、川(渭水イスイ)の北である陽の地でもある、咸(みな)陽の地の意。陰陽説では山の南と川の北は陽となる。)

イメージ 
 「すべて」
(咸・喊・鹹・感・憾・撼・轗)
 マサカリで器の周囲を守り「封じこめる」(減・緘)
 「形声字」(鍼・箴)
音の変化  カン:咸・喊・感・憾・撼・轗・緘・鹹  ゲン:減  シン:鍼・箴

すべて
 カン・さけぶ  口部
解字 「口(くち)+咸(すべて)」 の会意形声。すべての者が一斉に口から声を出すこと。
意味 さけぶ(喊ぶ)。鬨(とき)の声をあげる。皆が一斉に声をあげる。「喊声カンセイ」(①大声をあげる。②大勢の人が一斉にあげる声)
 カン・しおからい・からい  鹵部  
解字 「鹵(しお)+咸(すべて)」 の会意形声。鹵は陸でとれる塩で、鹹カンは塩がすべてに効いていること。
意味 しおからい(鹹い)。からい(鹹い)。しおけ。「鹹湖カンコ」(塩分を含んだ湖)「鹹水カンスイ」(塩分を含んだ水。⇔淡水)「鹹味カンミ」(しおからい味)
 カン  心部
解字 「心(こころ)+咸(すべて)」 の会意形声。心のすべてが反応すること。
意味 (1)かんじる(感じる)。心が動く。心に受ける。「感動カンドウ」「感激カンゲキ」「感謝カンシャ」(2)知覚する。「感覚カンカク」「感触カンショク」(3)染まる。かかる。「感冒カンボウ」(風邪をひく)「感染カンセン」(病原体が身体の中に入ること)
 カン・うらむ  忄部
解字 「忄(心)+感(感動する)」 の会意形声。忄(心)をもう一つ付けて、最初の心の感動を否定する働きをさせた。
意味 (1)失望する。満足しない。残念だ。「遺憾イカン」(遺はのこる、憾は失望する。失望がのこる。とても残念だ)(2)うらむ(憾む)。「憾恨カンコン」(憾も恨も、うらむ意)
 カン・うごかす  扌部
解字 「扌(手)+感(心がうごく⇒うごく)」 の会意形声。手でゆすり動かすこと。
意味 うごかす。ゆする。ゆれうごく。「震撼シンカン」(激しい勢いでゆれ動くこと)
 カン  車部
解字 「車(くるま)+感(カン)」の形声。カンは輡カン(車が行きなやむ)に通じ、轗も行きなやむ意。輡カンは「車+臽カン(人が落とし穴に落ちた形)」で、車が穴にはまって行き悩む形。
意味 「轗軻カンカ」(①車が行き悩むさま。②物事が思い通りに運ばないさま)に用いられる字。なお、軻は、「車+可(=坷。土地がけわしい)」で、けわしい土地に車が行き悩む意。
参考 「坎坷カンカ」「輡軻カンカ」「轗軻カンカ」は、物事が思い通りに運ばないさまの意味で共通。

封じこめる
 ゲン・へる・へらす  氵部
解字 「氵(水)+咸(封じこめる)」 の会意形声。水源を封じ込めること。水源を封じ込めると、そこからの水が減る。
意味 (1)へる(減る)。へらす(減らす)。少なくする。「減少ゲンショウ」「減刑ゲンケイ」「軽減ケイゲン」(2)引き算。「減法ゲンポウ
 カン・とじる  糸部
解字 「糸(ひも)+咸(封じ込める)」 の会意形声。箱の紐を結んで中のものを封じ込めること。とじる意となる。
意味 (1)とじる(緘る)。ふさぐ。中に物をいれて封をする。「封緘紙フウカンシ」(封のとじめに貼る小さな紙片)(2)口をつぐむ。「緘口令カンコウレイ」(ある物事を他人に話すことを禁ずる命令)「緘黙カンモク」(口をとじて黙りこむ)「場面緘黙バメンカンモク」(家では話せても保育園や学校で話せない状態)

形声字   
 シン・はり  金部
解字 「金(金属)+咸(カン⇒シン)」 の形声。[説文解字]は「縫う所以(ゆえん)也。金に从(したが)い咸シンの聲(声)とする。そして「今、俗に針に作る」とし、針という俗字ができていることを述べている。[説文解字]は、縫い鍼(はり)の意としているが、鍼(はり)には砭鍼ヘンシンと呼ばれた治療用の石針があった。そして、以後は俗字としてできた針が縫い針の意味に定着し、鍼(はり)は治療用の石針から進化した金属製の治療針の意味に用いられるようになった。
意味 (1)はり(鍼)。治療用の針。「鍼灸シンキュウ」(鍼はりと灸きゅう)「鍼術シンジュツ」(鍼を身体に刺して治療する技術)「鍼師はりし」(鍼で患者の治療を行う医師)「鍼石シンセキ」(石のはり) (2)縫い針。一般的に「針」を使う。
 シン・はり・いましめる  竹部
解字 「竹(たけ)+咸(カン⇒シン)」 の形声。[説文解字]は「綴衣テイイの箴はり也。竹に从(したが)い咸シンの聲セイ」とする。また[同注]には、綴衣を「聯綴レンテン(つらねてとじる)之これ也」とし、二枚を併せて仮止めする「しつけ針」のことである。竹の針は金属の針ほど強くないので、裁縫のしつけ針にもちいたり、つついて戒める意となる。
意味 (1)はり(箴)。竹製のはりで、しつけ針(本縫いの時に布がずれないように止める針)として用いる。なお、鍼は鍼灸用の針をいう。(2)いましめる(箴める)。いましめ。竹の針でつついて注意する。「箴言シンゲン」(いましめの言葉)「箴諫シンカン」(いましめいさめる) (3)石針の意味で用いる例。「箴砭シンべン」(石針)
<紫色は常用漢字>

お知らせ
 主要な漢字をすべて音符順にならべた、『音符順 精選漢字学習字典 ネット連動版』石沢書店(2020年)発売中です。



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音符「瓜カ」<うり>と「孤コ」「弧コ」「狐コ」

2022年09月12日 | 漢字の音符
 瓜の新しい写真と觚コを追加しました。
 カ・うり  瓜部

左はカラス瓜(Kite.comの花を探して毎日ブラ散歩!)、右は甜瓜(メロン)
 
解字 金文・篆文とも、つるの間にまるい瓜の実がたれた形の象形。瓜は、つるから少し離れて一つずつ果実がなる。瓜の字はその特徴をよくとらえている。現代字は瓜になった。上と左右がつる、中央下部のムのような形がウリである。上の写真2枚は瓜の金文・篆文にそっくりである。
意味 うり(瓜)。ウリ科のつる性一年草の総称。つるに一つずつ果実がなる。「西瓜スイカ」「冬瓜トウガン・トウガ」「胡瓜きゅうり」「南瓜かぼちゃ」「糸瓜へちま」「瓜田カデン」(瓜を作っている畑)「瓜実顔うりざねがお」(瓜の種のように色白で面長な顔)
参考 瓜は部首「瓜うり」になる。漢字の右辺に付いて瓜の意味を表す。
 カ・うり <部首>
 ヒョウ・ひさご(瓜+音符「票ヒョウ」)
 コ・ひさご(瓜(うり)+音符「夸」)」 

イメージ
 「うり」
(瓜・孤・弧・狐・菰)
 「形声字」(狐・呱・觚)
音の変化  カ:瓜  コ:孤・弧・狐・菰・呱・觚

う り
 コ・みなしご・ひとり  子部
解字 「子(こども)+瓜(一つのうり)」の会意形声。瓜は一つ一つが離れて独立して実ることから、一人ぼっちの子どもの意。
意味 (1)みなしご(孤)。親をなくした子。「孤児コジ」 (2)ひとり(孤り)。ひとりぼっち。「孤独コドク」「孤立コリツ」「孤塁コルイ」(孤立したとりで)
 コ  弓部
解字 「弓(ゆみ)+瓜(うり状の)」の会意形声。瓜のような曲線をみせる弓。弓の字は弓の弦つるを外したときのかたち。弧は弓を引いたときの形を表す。(写真は古代から瓜の産地として有名な中国・敦煌瓜)
 切った敦煌瓜は弓の曲線に似ている。
意味 (1)ゆみ。木の弓。また、強い弓。「弧矢コシ」(弓と矢)「桑弧蓬矢ソウコホウシ」(桑の弓と蓬よもぎの矢。男子が生まれた時、これで天地四方を射て将来の雄飛を祈る中国の古俗) (2)弓なりに曲がった線や物。「括弧カッコ」「弧状列島コジョウレットウ」(日本列島の意味で使われることが多い)
 コ・まこも・こも  艸部
解字 「艸(くさ)+孤(=瓜。細長いうり)」の会意形声。
 マコモ筍
若芽の根元が肥大して細長い瓜のようなマコモ筍となるマコモ。タケノコのようにふくらんだ乳白色のマコモ筍は柔らかく、タケノコとウリを合わせたような淡白な味がする。正字は「艸+瓜」の苽
意味 (1)まこも(菰)。水辺に生える草。葉はムシロを編むのに用いる。実は食用になる。「菰飯コハン」(マコモの実のめし) (2)こも(菰)。むしろ。多くは、マコモの草から作る。「菰樽こもだる」(酒蔵の名などを描いた菰を巻いた樽)「菰巻き」(秋の末に松などの幹に害虫駆除の目的で菰を巻きつけること) (3)地名。「菰野町こものちょう」(三重県北西部に位置する町。町名の由来は開拓前、マコモの生い茂る原野だったことからという)

形声字
 コ・きつね  犭部けもの
きつね
解字
 「犭(いぬ)+瓜(カ⇒コ)」の形声。瓜(コ)という名の犬のような動物でキツネをいう。コは狐の鳴き声という説もある。
意味 きつね(狐)。山野にすむイヌ科の哺乳動物。尾は長くて太い。「白狐ビャッコ」「狐狸コリ」(狐とたぬき)「狐疑コギ」(事に臨んで疑いためらうこと。狐は疑い深い動物だといわれることから)
 コ  口部
解字 「口(くち)+瓜(コの音)」の形声。口から出すコの音。赤子の鳴き声に当てる。
意味 乳飲み子の泣く声。「呱呱ココ」(乳飲み子の泣き声)「片田舎で呱呱ココの声をあげた」(片田舎で誕生した)
 コ・さかずき  角部
さかずき(觚) 木簡の觚
解字 「角(つののさかずき)+瓜(コ)」の形声。コと呼ばれる角(つの)のような形のさかずき。上は角を模して円く開いたかたちをしており、中央がくぼみ、下部は四角になる。下が四角いことから、物のかどの意となり、さらに転じて全体が角棒状の木簡の意味にもなる。
意味 (1)さかずき(觚)。儀礼用のさかずき。殷周の青銅器にすぐれたものが多い。「奠觚テンコ」(儀礼のさかずき) (2)(下部が四角になることから)物のかど。「觚稜コリョウ」(屋根の高くとがりでたかど) (3)古代、文字を記した角棒状の木簡。「觚牘コトク」(木簡。また転じて、書物)
<紫色は常用漢字>

コメント (1)
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音符「昷オン」<身体のぬくみが閉じ込められる>と「温オン」「媼オウ」

2022年09月10日 | 漢字の音符
 饂ウン・韞ウン・膃オツを追加しました。
昷[𥁕] オン  皿部 

解字 篆文・楷書とも、「囚(とらえる)+皿(うつわ)」の会意。この字の原字である温オンの甲骨文字に、皿(うつわ)の中で人が沐浴する形のものがあるが、一方、これは浴ヨクの甲骨文字とする説もあり確定していない。したがって古い字形が分からないので篆文以降の字形で解字してみたい。囚シュウは人が狭い所に閉じ込められている形で囚人の意だが、篆文から見られる形であるので、ここでは人の身体のぬくもりが閉じ込められた状態と解釈する。これに皿(うつわ)がついた「囚+皿」オンは、身体のぬくもりが皿の中にとじこめられて、皿があたたかい意となる。新字体の音符に使われるとき、𥁕⇒昷に変化する。音符のイメージは、「あたたかい」「身体のぬくみが閉じ込められる」「とじこめられる」となる。
意味 あたたかい(=温)。やわらぐ。

イメージ 
 「あたたかい」
(温・饂)
 「身体のぬくみが閉じ込められる」(瘟・褞・縕・蘊)
 「とじこめられる・とじこもる」(慍・媼・膃・韞)
音の変化  オン:温・瘟  オウ:媼  オツ:膃  ウン:饂・褞・縕・蘊・慍・韞 

あたたかい
オン・ウン・あたたか・あたたかい・あたたまる・あたためる・ぬくい・ぬるい  氵部
解字 「氵(水)+昷(あたたかい)」の会意形声。あたたかい水の形で、あたたかい・あたためる意となる。
意味 (1)あたたかい(温かい)。あたためる(温める)。ぬくい(温い)・ぬるい(温い)「温泉オンセン」「温暖オンダン」「生温い(なまぬる)い」 (2)おだやか。「温和オンワ」「温厚オンコウ
 ウン  食部
解字 「𩙿(=食。たべる)+𥁕(=温。あたたかい)」の会意形声。あたたかい食べ物の意。日本で「饂飩うどん」に用いられる字。
意味 「饂飩うどん」とは、ウンドンの音略。麺類のひとつ。小麦粉をこねて薄くのばし、細く切ったもの。ゆでて、かけ汁やつけ汁で食べる。飩ドンは、まるい食べ物の意。以前は細く切らずに丸いかたまりや、太く切ったものをゆでたといわれる。現在、日本では「うどん」と表記される。「讃岐うどん(饂飩)」

身体のぬくみが閉じ込められる
 オン・えやみ  疒部
解字 「疒(やまい)+𥁕(身体のぬくみが閉じ込められる)」の会意形声。体温がとじこめられ熱が出る症状。
意味 えやみ。はやりやまい。「瘟病オンビョウ」(高熱を発して流行する病気)
 ウン・オン  衤部
解字 「衤(ころも)+𥁕(身体のぬくみが閉じ込められる)」の会意形声。体のぬくみが閉じ込められる綿入れの着物。
意味 わたいれ。どてら。ぬのこ。「褞袍オンポウ・どてら」(綿を入れた、ゆったりとした着物=縕袍)
 ウン・オン  糸部
解字 「糸(いと状のもの)+𥁕(=褞。わたいれ)」の会意形声。綿入れの上着や布団に閉じ込められた古い綿やくず麻をいう。転じて、奥深いところをいう。
意味 (1)古い綿。くず麻。「縕袍オンポウ・どてら」(古い綿を包み込んだ上着=褞袍) (2)学問・技芸などの奥深いところ。「縕奥ウンオウ」(学問・知識などの奥深いところ。奥義)
蘊[薀] ウン  艸部
解字 「艸(草)+縕(奥深い)」の会意形声。縕の意味の一つである奥深い意を、艸をつけて表した字。「艸(草)+温の旧字オン・ウン」の薀ウンも同じ意味を表す。
意味 (1)奥深い。おくそこ。「蘊奥ウンオウ」(学問・知識などの奥深いところ) (2)つむ。たくわえる。「蘊蓄ウンチク」(深く研究し蓄えた知識=薀蓄)

とじこめられる・とじこもる
 ウン・いかる  忄部
解字 「忄(心)+𥁕(とじこめられる)」の会意形声。閉じ込められた心の形で、不満などがたまり、いきどおる・うらむ意となる。
意味 (1)いかる(慍る)。いきどおる。「慍色ウンショク」(いかった顔つき) (2)うらむ(慍む)。 
 オウ・おうな  女部
解字 「女(おんな)+𥁕(とじこもる)」の会意形声。年老いて歩行がむずかしくなり家に閉じこもりがちの女。発音のオウは、オンの転音。
意味 おうな(媼)。うば(媼)。年老いた女性。老婆。「老媼ロウオウ」「村媼ソンオウ」「媼嫗オウウ」(老婆。媼も嫗も、老婆の意)
 オツ・オチ  月部にく
オットセイ(桂浜水族館)
解字 「月(にく)+𥁕(とじこもる)」の会意形声。内にこもっている脂肪肉をいう。
意味 (1)やわらかく太っている。 (2)「膃肭オツドツ」とは、肥え太ってやわらかい意。肭ドツは、内側のやわらかい肉。 (3)「膃肭臍オットセイ」とは、アシカ科の海生哺乳類。ビロード状の体毛が密生し、体内にやわらかい脂肪肉を蓄える。臍セイは、へその意味だが、ここでは陰茎を意味し漢方薬として珍重されたため、この名称がついた。のち膃肭臍オットセイはこの動物の名前となった。
 ウン・オン  韋部
解字 「韋(なめしがわ)+𥁕(とじこめる)」の会意形声。なめし革の袋に収めること。おさめる・つつむ意となる。
意味 (1)おさめる(韞める)。つつむ。「韞玉ウンギョク」(玉を包み隠す)「韞価ウンカ」(価値あるものを収めておく。才能や知識が世に知られないさま) (2)かきいろ。赤と黄色の中間の色。
<紫色は常用漢字>

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音符「咅バイ」 と「倍バイ」「培バイ」「賠バイ」「部ブ」「剖ボウ」

2022年09月07日 | 漢字の音符
  咅バイの解字を改めました。
 バイ・ハイ・ホウ  口部


  上は咅、下は不。
解字 金文は「不+口」の会意で否と同じ形。しかし、不の本来の意味は花萼を支える花托の部分とされ、ふくらむ意がある。音符「不」参照。ふくらむ意の不に口のついた否は、ふくらんだ下に口がつき、もうひとつふくらんだものがあることを表している。篆文は、この意味を明確にするため上を亠にして否と区別した。字形は隷書で上部が立となった咅となり現代字に続く。[説文解字]は「相與語、唾而不受也」と意味不明の説明だが、咅の音符字を見ると二つに分かれる意が多く、ふくらんだものが接して二つある形であることは明らかである。したがって、音符イメージは、ふくらむ意と二つにわかれる意の二つがある。

イメージ 
 ふくらむ意から「ふっくらと」(培・焙)
 「二つに分かれる」(倍・蓓・賠・陪・剖)
 「分かれる」(部・蔀)
 「形声字」(菩)

音の変化  バイ:培・倍・賠・陪  ハイ:蓓  ブ:部  ボ:菩  ホウ:焙・蔀  ボウ:剖  

ふっくらと
 バイ・つちかう  土部
解字 「土(つち)+咅(ふっくらと)」の会意形声。草木の根元に土をふっくらと重ねること。
意味 つちかう(培う)。そだてる。「栽培サイバイ」(植えて育てる)「培養バイヨウ」(養い育てる)
 ホウ・ホイ・ハイ・あぶる  火部
解字 「火(ひ)+咅(ふっくらと)」の会意形声。穀物などを火であぶって、ふっくらとふくらませること。
意味 あぶる(焙る)。ほうじる。「焙烙ホウロク」(あぶるのに使う浅い素焼の土なべ)「焙炉ホイロ」(製茶の乾燥炉)「焙煎バイセン」(あぶって煎ること)「焙茶ホウチャ」(焙じ茶)

二つに分かれる
 バイ・ハイ  イ部
解字 「イ(ひと)+咅(二つに分かれる)」の会意形声。二つに分かれて増えること。イ(ひと)が付くのは人がそうした行為をする意。また、背ハイに通じ、そむく意もある。
意味 (1)ます(増す)。多くする。「倍旧バイキュウ」(前よりさらに程度を増す) (2)二倍になる。「倍する」「倍加バイカ」「倍増バイゾウ」 (3)ある数をかける。「倍率バイリツ」「数倍スウバイ」 (4)「倍反バイハン」(そむく)
 ハイ  艸部
解字 「艸(くさ)+倍(二倍になる)」の会意形声。植物が大きくなる意。「蓓蕾ハイライ」に使われる字。
意味 「蓓蕾ハイライ」とは、花のつぼみ(蕾)が大きくなり、ほころびるさま。同じ意味を石偏で表した「碚礧(礌)ハイライ」(蕾がほころびる)という凝った語もある。
 バイ・つぐなう  貝部
解字 「貝(財貨)+咅(=倍。二倍)」の会意形声。他人に与えた損害を、損害額を二倍にして支払う意。損害額にさらに上乗せして弁償すること。
意味 つぐなう(賠う)。「賠償バイショウ」(賠も償もつぐなう意)
 バイ  阝部
解字 「阝(丘)+咅(二つに分かれる)」の会意形声。二つに分かれて寄り添うように隣り合う丘。陵墓が隣り合う陪陵バイリョウが原義と思われる。転じて、付き添う意となる。
意味 つきそう。つき従う。おともする。「陪陵バイリョウ」(天子の陵(墓)のそばに葬った近親者の墓)「陪席バイセキ」(付き従って同席する)「陪審バイシン」(審判に参与する)「陪臣バイシン」(付き従う臣下)「陪食バイショク」(貴人の食事の相伴をする)
 ボウ・さく  刂部
解字 「刂(刀)+咅(二つに分かれる)」の会意形声。刀で二つに割くこと。
意味 さく(剖く)。わける。切りひらく。「解剖カイボウ」「剖析ボウセキ」(剖いて分析する)

分かれる
 ブ・べ  阝部おおざと
解字 「阝(邑。人の住む地域)+咅(分かれる)」の会意形声。いくつかに分かれている人の住む地域。
意味 (1)集落。むれ。「部族ブゾク」(一定の地域に住み同族意識をもつ集団)(2)組織上の区分。「部署ブショ」「部員ブイン」「部隊ブタイ」(軍の一部をなす隊) (3)分ける。分けたものの一つ一つ。「部品ブヒン」「部分ブブン」「一部イチブ
 ホウ・しとみ  艸部
 しとみ(蔀)
解字 「艸(くさ)+部(分けた区画)」の会意形声。分けた区画を、すだれやむしろでさえぎること。遮蔽すること。
意味 (1)遮蔽するもの。おおい。日よけのすだれやむしろ。「蔀屋ホウオク」(①むしろを下げ回した暗く貧しい陋屋ロウオク。②しとみや。板戸を立て回して囲った仮屋) (2)[国]しとみ(蔀)。格子を取り付けた板戸。上部に蝶番(ちょうつがい)をつけ、外側に水平に釣り上げて開ける。しとみど。「蔀戸しとみど」「半蔀はじとみ」(上下二枚開きの蔀戸の上の部分) (3)暦法の単位。76年を一蔀ホウとする古代の暦法。

形声字
 ボ・ホ  艸部
解字 「艸(草)+咅(ボ)」の形声。ボという名の草の形で、梵語の音訳語に用いられる。
意味 (1)梵語の音訳語。「菩提ボダイ」(仏の悟り。死後の冥福)「菩薩ボサツ」(さとりを求めて修行する人) (2)ほとけぐさ。香草の一種。
<紫色は常用漢字>

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音符「無ム・ブ」<両手に飾りを持って舞う人> と 「舞ブ」

2022年09月04日 | 漢字の音符
 廡ブ・嘸ブを追加しました。
 ム・ブ・ない  灬部れっか

解字 甲骨文は、人が両手に飾りを持って舞うさまの象形。篆文も同じ意味を表わし、舞の原字。隷書(漢代)から形が大きく変化し現代字の無になった。もともと雨乞いの舞いを意味したが、発音のム・ブが、无(ム・ブ:亡の異体字で、ない・なしの意)に通じ、「ない」の意味に仮借カシャ(当て字)された。のち、この字に両足を外に向かって開く形の舛センを付けた舞が「まい」の字となった[字統]。
意味 (1)ない(無い)。存在しない。「無言ムゴン」「無休ムキュウ」「無事ブジ」 (2)打ち消 しを表わす助字。「無罪ムザイ」「無名ムメイ

イメージ 
 「ない(仮借)」
(無・憮・蕪・廡・嘸)
 「まう」(舞) 
 「形声字」(撫)
音の変化  ム・ブ:無  ブ:憮・蕪・廡・嘸・舞・撫

ない  
 ブ  忄部
解字 「忄(心)+無(ない)」の会意形声。心がない状態。むなしい気持ちをいう。
意味 がっかりする。「憮然ブゼン」(がっかりするさま)
 ブ・かぶ  艸部
解字 「艸(草)+無(ない)」の会意形声。艸(草)が他のものを無くすこと。すなわち雑草が生い茂り地面をかくすこと。草が茂って、あれる意となる。日本では、漢語で蕪菁ブセイが、かぶらであることから、かぶらに当てる。
意味 (1)あれる。雑草が生い茂る。「蕪穢ブアイ・ブワイ」(土地があれて雑草が生い茂る)「荒蕪コウブ」(土地が荒れて雑草が茂る)「荒蕪地コウブチ」(野放しの状態で自然と荒れ地になった土地) (2)みだれる。「蕪雑ブザツ」(雑然としていること) (3)[国]かぶら(蕪)。かぶ(蕪)。根が球状になる野菜。根と葉を食用とする。蕪菁ブセイとも書く。 (4)人名。「与謝蕪村ヨサブソン」(江戸期の俳人)
 ブ・のき  广部
解字 「广(やね)+無(ない)」の会意形声。屋根の下に建築物の部分がないところ、即ち、ひさし・のきをいう。
意味 (1)のき(廡)。ひさし(廡)。「廡下ブカ」(のきした) (2)堂の下の廊下。「両廡リョウブ」(本堂の両脇の廊下)
 ブ・さぞ  口部
解字 「口(くち)+無(ない)」の会意形声。口から何も言葉がないこと。日本では、人が何も言わないさまを見て、推測する気持ちをあらわす。
意味 (1)何も言わない。また、そのさま。「嘸然ブゼン」(物を言わず考え込む。=憮然) (2)[日本]さぞ(嘸)。さぞや(嘸や)。さぞかし(嘸かし)。さだめし。もっともだろうよ。下に推量の語をともなう。「嘸さぞや辛かったことだろう」

まう
 ブ・まう・まい  舛部ます

解字 甲骨文は、無と同じく人が両手に飾りを持って舞うさまの象形。この字が「ない」の意味に仮借カシャ(当て字)されたため、篆文以降、下部に左右の足が開くかたちの舛センを付けて「舞う」意を表わした。現代字は「舛(左右の足が開く)+無の略体(まう)」の会意形声。
意味 (1)まう(舞う)。まい(舞)。おどる。「舞台ブタイ」「舞踊ブヨウ」「舞姫まいひめ」 (2)ふるいたたせる。「鼓舞コブ

形声字
 ブ・フ・なでる  扌部
解字 「扌(手)+無(フ)」の形声。フは付(つける)に通じ、手を人の身体につけること、すなわち、なでる意となる。拊(なでる)と同じ。撫は慣用音。
意味 (1)なでる(撫でる)。さする。なぐさめる。「愛撫アイブ」(なでてかわいがる)「撫慰ブイ」(いたわりなぐさめる) (2)いつくしむ。「撫育ブイク」(いつくしみ育てる)(3)しずめる。おさえる。「鎮撫チンブ」(乱をしずめ民を安んじる)
 カワラナデシコ
(4)[国]「撫子なでしこ」とは、ナデシコ科の多年草。秋の七草のひとつ。子を撫でるように愛しむ花の意。
<紫色は常用漢字>

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