漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「斉セイ」<そろう・そろえる> と「済サイ」「斎サイ」「剤ザイ」「臍へそ」

2023年05月30日 | 漢字の音符
 なぜ「さいとう」には色々な漢字があるの? 追加しました。
[齊]セイ・サイ・ととのえる・ひとしい  斉部 

解字 甲骨文は四角いうちわのような形が3つ並んだかたち。意味は地名だが、字源には諸説ある。金文は中央の四角が大きくなり三つとも下線が長く伸びた形で、意味は人名・国名。篆文にいたり、中央の上が亠(なべぶた)になり左右のうちわ形が横の二線で固定された。隷書(漢代)にいたり左右のうちわ形の外側が伸びて旧字で上部が「亠+刀+Y+氏の横線がない形」になった。この字形の解字を[説文解字]は「禾麥(むぎ)が穗を吐き上(うえ)平也(なり)」とし麦の穂が実った形とするが、この解字は疑問。白川静[字統]は、「髪の上に三本の髪飾りを挿して立てた形。祭祀に奉仕する婦人の髪飾りで、きちんとそろう・ととのう意味を表わす」とするが、斎サイの字には当てはまる。字源は確定できないが、いずれにしても、そろう・ととのう、という音符義がある。新字体に用いられるとき、旧字の齊 ⇒ 斉に簡略化される。
意味 (1)そろう(斉う)。そろえる。「斉唱セイショウ」(そろって唱える。そろって歌う) (2)ととのえる(斉える)。ととのう。「斉一セイイツ」(ととのいそろう) (3)ひとしい(斉しい)。「斉民セイミン」(①一般の人民。②民を平等にすること) (4)ものいみする(=斎)。「斉舎サイシャ」(ものいみする小屋) (5)国の名。「斉サイ」(①戦国七雄のひとつ。今の山東省の一帯。②山東省の別称)

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 斉の意味(1)の「そろう・そろえる」(斉・儕・擠・薺)
 意味(2)「ととのえる」(剤・斎・齏・霽)
 意味(3)の「ひとしい」(臍)
 「その他」(済)
音の変化  セイ:斉・擠・薺・臍・齏・霽  サイ:済・斎・儕  ザイ:剤

そろう・そろえる
 サイ・セイ・ともがら  イ部
解字 「イ(ひと)+齊(そろう)」の会意形声。人がそろう意で、なかま・ともがらの意。
意味 (1)ともがら(儕)。同列の仲間。ともだち。「儕輩サイハイ」(同輩)「儕類サイルイ・セイルイ」(同輩)「吾儕わがセイ」(わたしたち) (2)ともに。いっしょに。「儕居サイキョ
 セイ・サイ・おす  扌部
解字 「扌(て)+齊(=儕の略体:ともがら)」の会意形声。仲間・ともがらが手で押し合うこと。
意味 (1)おす(す)。おしあう。「擁擠ヨウセイ」(おしあいへしあいする。混雑する) (2)おしのける。おとす。「排擠ハイセイ」(おしだす)「擠抑セイヨク」(おしのけておさえつける)「擠陥セイカン」(人を罪におとしいれる)
 セイ・ザイ・なずな  艸部

なずな(ブログ「風に吹かれて」より)
解字 「艸(草)+齊(そろう)」の会意形声。なずなは、別名ペンペン草、シャミセン草というが、これは花が咲いたあと次々に三味線のバチの形の実ができるからで、この実が次々と花穂の下にそろってならぶナズナ。
意味 なずな()。ナズナとは、アブラナ科ナズナ属の越年草。花穂の先で咲いた花は、三味線のバチ形の実になる。先端で次々と花穂がのびるので、実が下方にきれいにそろって並ぶ。田畑や荒れ地、道端など至るところに生える。「なずな打つ」(七草粥をつくる時、まな板に薺をふくむ7種の菜を載せ、囃子言葉を唱えながら包丁の背で打ち大きな音をひびかせること)
 セイ・シ・もたらす  貝部
解字 「貝(財貨)+齊(そろえる・そろう)」の会意形声。財貨がそろうこと。財貨・たからの意と、財貨がもたらされる意となる。
意味 (1)もたらす(す)。もたらされる(される)。持ってゆく。持ってくる。「齎酒セイシュ」(酒を持参する)「齎貨セイカ」(財貨をもたらす) (2)たから。財貨。「齎財シザイ」(財産)

ととのえる
[劑]ザイ・セイ  刂部
解字 旧字はで「刂(刀)+齊(ととのえる)」の会意形声。もと、漢方薬の材料とする草の根や木の皮を刀で切りそろえて調合すること。新字体は剤に変化。
意味 (1)ととのえる。調合する。まぜる。「配剤ハイザイ」(①適切に配分すること。②薬の配合)「溶剤ヨウザイ」(物質を溶かすのに用いる液体) (2)調合した薬。「錠剤ジョウザイ」「薬剤ヤクザイ」「調剤チョウザイ」(薬剤を調合すること)
[齋]サイ・いつく  斉部

解字 金文から楚簡まで、四角いうちわのような形が3つ並んだかたちの下に「示(神にささげる物をおく台)」をつけている。白川静[字統]は、「髪の上に三本の髪飾りを挿して立てた形。祭祀に奉仕する婦人の髪飾りで、下に「示」をつけて祭卓の前に奉仕する斎女の意を示す」とする。篆文で両側のうちわ形(白川説の髪飾り)の線が下に伸びて旧字でとなった。この字は齊の略体に示を加えた形で神の前で心身をととのえる意。意味は①神につかえる、②神祭りのために心身を清める意。齋が正字だが、日本では簡略化された斎が、新字体として常用漢字となっている。
なぜ「さいとう」には色々な漢字があるの? チコちゃんに叱られる

 齋は、齋宮サイグウ(伊勢神宮に奉仕した皇女の住む宮)の齋で、その頭かしらだった藤原姓の人が齋藤と名乗ったのが最初。藤原氏の勢力が増すにつれて齋藤姓も増えていった。令和5年の戸籍をもとにした調査で齋の字は59種類(萩本勝紀氏調査)あり、その理由は明治8年に公布された「平民苗字必称義務令」で、すべての国民が苗字を名乗らなければならなくなったから。萩本氏によると、苗字を登録する方法は非常に簡単で苗字を書いた紙を役所に提出するだけ。ところが当時の庶民は漢字の読み書きが苦手で、さらに苗字で呼び合う習慣も無かったので提出される書類はかなり間違いが多かった。役所は多種多様な間違った齋をそのまま受け付けたので、多様な齋の字が登録された。(23年5月26日放送のNHK「チコちゃんに叱られる」より)
意味 (1)ものいみ。心身を清める。「斎戒沐浴サイカイモクヨク」(行動を慎み、身を洗い清める) (2)いつく(斎く)。いつき(斎)。神につかえる。「斎串いぐし」(麻・麻苧などをかけて神に供える榊や笹。もとは、木の枝や薄い板・細い角材を串状につくったもの。 神を招くときの依代で、神への供物、また災いを除ける祓いの道具などとして用いられた。玉串。)「奉斎ホウサイ」(神仏を慎んでまつる。身を清めてまつる)「斎場サイジョウ」(神をまつる為に清められた場所) (3)へや。「書斎ショサイ」(心身を清め書物に向かい、また書き物をする部屋)
 セイ・サイ・なます  斉部
解字 「韭(にら。細い)+齊(ととのえる)」の会意形声。野菜を細く切りそろえて味をつけ、ととのえたあえものをいう。
意味 (1)なます()。あえる。膾カイとも書く。「(あつもの)に懲りて(なます)を吹く」「あえもの」 (2)塩漬けの野菜。「セイエン」(塩漬けの野菜料理。粗末な食事)
 セイ・サイ・はれる  雨部
解字 「雨(あめ)+齊(ととのう)」の会意形声。雨が止んで天気がととのうこと。雨後に晴れる意となる。
意味 (1)はれる(れる)。雨があがる。雲や霧がはれる。「セイゲツ」(雨後の月)「セイジツ」(晴れた日) (2)怒りがとける。おさまる。「セイイ」(機嫌をなおす)

ひとしい
 セイ・サイ・へそ  月部にく
解字 「月(からだ)+齊(ひとしい)」の会意形声。身体の中央にあるへそ。へそから身体の左右の各部分への長さは等しい。
意味 へそ()。ほぞ()。「臍下丹田セイカタンデン」(へその下の丹田とよばれる下腹部。ここに力をこめると健康と勇気を得るという)「臍帯サイタイ」(へそのお=臍の緒。胎盤と胎児をつないでいるもの)「臍帯血サイタイケツ」(臍の緒を通じて母親の胎盤から胎児に送られる血。赤ちゃんが生まれた後は捨てられていたが、造血細胞が含まれることがわかり、白血病などの患者への移植医療に広く用いられる)

その他
[濟]サイ・すむ・すます  氵部
解字 旧字はで「氵(川)+齊(サイ)」の形声。サイという名の川をいう。新字体は済に変化。済水(さいすい)は、中国河南省済源市の西北に源を発し、古くは他の大河と交わらず海に流れており、江水(揚子江)、河水(黄河)、淮水ワイスイとともに「華夏四瀆シトク」(瀆は水源を発して直接海に注ぐ川)と称された。済水の水源地は、済源市の済瀆廟サイトクビョウである。黄河が流れを変えた為、今日の黄河下流は当時の済水の河道である(ウィキペディアを参照した)。のち、この川を「わたる」「船でわたる」意味ができ、さらに船で渡るため人々が助かる意から、たすかる・すくう意ができた。中国の古典で「経世済民ケイセイサイミン」とは、世の中を経(おさ)めて民を済(すく)う意。明治の日本で「経世済民」を短くした経済がeconomyの翻訳語に当てられて意味が変化した。また、日本で済を「済(す)む」という訓にしたため、決済などの意味が派生した。
意味 (1)川の名。「済水サイスイ」(中国河南省済源市区西北に源を発し黄河に注ぐ川) (2)すくう(済う)。たすける。「救済キュウサイ」「済世サイセイ」(世の中を困難からすくう)「共済キョウサイ」(共にすくう)「済民サイミン」 (3)すむ(済む)。「決済ケッサイ」(売買取引を済ませる) (4)なす。なしとげる。「済美セイビ・サイビ」(美徳をなしとげる) (5)「経済ケイザイ」(economyの翻訳語。社会が生産活動を調整するシステム、及びその活動) (6)[参考]中国の用法の一例。「同舟共済ドウシユウキョウサイ」(同じ船に乗って一緒に川を渡る)
<紫色は常用漢字>


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音符「玉ギョク」<宝石> と「国コク」「宝ホウ」「弄ロウ」

2023年05月28日 | 漢字の音符
 ギョク・たま  玉部

  上が玉、下が王
解字 上段の玉の甲骨文字は、三つの玉(宝石)を紐で貫きとおした形の象形。短い横線が玉で、タテ線が紐。古代中国で礼服着用の時などに腰飾りにした。玉は古代人の信仰の対象であり、のち、多く礼器(祭祀や賓客の接待に用いる器)として用いられた。金文から上下の線がとれ、王の形になった。篆文は下段の王と似ているが、王は上の二本の横画を接近して書き、玉は等間隔に書いて区別 していた。隷書(漢代の役人が主に用いた字体)や楷書になって、点を加えて玉とし、王と区別 した。
 王は戉エツ(=鉞。まさかり)の象形

春秋期の青銅鉞(中国オークションネットから)
https://auction.artron.net/paimai-art5068000360/
 一方、王は大きな戉エツ(=鉞。まさかり)の刃部を下にして置く形の象形。王位を示す儀式の器として玉座の前におかれた。武器(武力)によって天下を征服した者のこと。篆文では玉と区別するため上の横画を接近させていたが、隷書で玉に点が付いたため、以前の玉の形である王と入れ替わったかたちになった。
意味 (1)美しい石。ぎょく。宝石。「宝玉ホウギョク」(宝として大事にしている玉)「玉石ギョクセキ」(すぐれたものと劣ったもの) (2)たま(玉)。美しい。「玉露ギョクロ」(玉のように美しい露) (3)天子や天皇につける美称。「玉座ギョクザ」「玉音ギョクオン」 (4)たま。真珠。
参考 
(1)玉は部首「玉たま」になる。漢字の下部に付いて玉(貴石)の意味を表す。
主なものは常用漢字の3字である。
 ギョク・たま(部首)
 ヘキ・たま(玉+音符「辟ヘキ」)
 ジ・しるし(玉+音符「爾ジ」)
(2)玉は漢字の左辺に付いたとき王の形になり部首「王たまへん・おうへん」となる。主な字は以下のとおり。
常用漢字 12字
 おうへん・たまへん(部首)
  ※単独字の「王(=王様)」以外はすべて玉の意味になる。
 カン・めぐる(玉+音符「睘カン」)
 ガン(玉+音符「元ゲン」)
 キュウ・たま(玉+音符「求キュウ」)
 キン・こと(王の形を含む会意)
 ゲン・あらわれる(玉+音符「見ケン」)
 シュ・たま(玉+音符「朱シュ」)
 チン・めずらしい(玉+音符「㐱シン」)
 ハン・わける(二玉+刂の会意)
 (玉+音符「离リ」)
 リ・ことわり(玉+音符「里リ」)
 (玉+音符「留リュウ」)
常用漢字以外
 (玉+音符「加カ」)
 (玉+音符「虎コ」)
 (玉+音符「胡コ」)
 ズイ(玉+音符「耑タン」)
 レイ(玉+音符「令レイ」)など

イメージ  
 「美しい石・たま」(玉・宝・弄・哢)
 「天子(玉座)」(国)
 「形声字」(掴)
音の変化  ギョク:玉  カク:掴  コク:国  ホウ:宝  ロウ:弄・哢

美しい石・たま
[寶] ホウ・たから  宀部
解字 新字体は、「宀(いえ)+玉(玉)」の会意。家の中に貴重な玉がある意。旧字体は、「宀(いえ)+王(玉)+缶(かめ)+貝(財貨)」で、家のなかに玉と貝(財貨)と、それらを入れる缶(かめ)がある形。
意味 (1)たから(宝)。貴重な品物。「宝石ホウセキ」「宝庫ホウコ」 (2)天子・仏などにつける敬称。「宝算ホウザン」(天皇の年令)
 ロウ・もてあそぶ  廾部

解字 金文・篆文は、「玉(たま)+両手」の会意。両手で玉をもてあそぶ形。両手は現代字で廾となった。
意味 (1)もてあそぶ(弄ぶ)。いじる。いらう。「玩弄ガンロウ」(玩も弄も、もてあそぶ意)「翻弄ホンロウ」(思うままにもてあそぶ)「弄舌ロウゼツ」(むやみにしゃべる) (2)あなどる。なぶる。「愚弄グロウ」(ばかにしてあなどる)「嘲弄チョウロウ」(あざけりなぶる)
 ロウ・さえずる  口部
解字 「口(くち)+弄(もてあそぶ)」の会意形声。口の中と「のど」で玉を転がすように音をだす鳥の声。さえずる意で用いる。
意味 さえずる(哢る)。「哢吭ロウコウ」(哢ロウは、さえずる、吭コウは、のど・のどぶえ。鳥のさえずり鳴くこと)「鳥哢チョウロウ

天子(玉座) 
[國] コク・くに  囗部
解字 新字体は、「囗(かこい・領域)+玉(天子・玉座)」の会意。玉座についている天子が治める領域の意。旧字体は、「囗(かこい)+或ワク(区切られた地域を武器で守る)」の会意で、武器で守られた大きな囲い(=くに)の意。
意味 (1)くに(国)。一つの政府に属する社会。「国民コクミン」「国家コッカ」 (2)日本。「国学コクガク」「国字コクジ」 (3)昔の行政区画の一つ「国司コクシ」「国府コクフ

形声字
掴[摑] カク・つかむ  扌部
解字 正字は、「扌(て)+國(カク)」の形声。中国で古く「打つ」意で使われた字。日本では攫カク(つかむ)に通じ、「つかむ」意で用いられる。「扌+国」の掴カクは新字体に準じた字で、現在この字が通用している。
意味 (1)うつ。(2)[国]つかむ(掴む)。つかむ(摑む)。にぎる。「腕を掴む」「大金を掴む」
覚え方 自らの、て()で、くに()を、(つか)む。
<紫色は常用漢字>

参考音符
 オウ・きみ  王部       

解字 大きな戉エツ(まさかり)の刃部を下にして置く形の象形。王位を示す儀式の器として玉座の前におかれた。武器(武力)によって天下を征服した者のこと[字統]。
意味 (1)きみ(王)。君主。「王朝オウチョウ」「国王コクオウ」 (2)最も力のある者。第一人者。「王者オウジャ」「王座オウザ
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 「王」(王)
 「ゆく・すすむ(止+王)」(往・旺・狂・誑・逛・汪)
 「形声字」(枉)
音の変化  オウ:王・往・旺・汪・枉  キョウ:狂・誑・逛
音符「王オウ」へ

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音符 「化カ」<かえる・かわる>と「花カ」「貨カ」「靴カ」「囮カ」

2023年05月26日 | 漢字の音符
 カ・ケ・ばける・ばかす  ヒ部          

解字 左は立った人、右は逆さになった人を合わせた会意。立った形から逆さへと姿を変えることを示す。部首は逆さになった人を示すヒ。化を音符に含む字は、「かわる・かえる」イメージを持つ。
意味 (1)ばける(化ける)。ばかす(化かす)。かわる。かえる。「化身ケシン」「変化ヘンカ」 (2)影響を及ぼす。「感化カンカ」「教化キョウカ」 (3)異なる物質が結合して新しい物質になる。「化合カゴウ

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 「かわる・かえる」
(化・花・糀・椛・錵・貨・靴・訛・囮)
音の変化  カ:化・花・貨・靴・訛・囮  こうじ:糀  にえ:錵  もみじ:椛

かわる・かえる
 カ・はな  艸部
解字 「艸(くさ)+化(かわる)」 の会意形声。草の先が姿を変えてできる花。(正字は華(はな)で、花は中国で5世紀頃にできた新字。華の発音「カ」を同音の化に替えた字だが、「艸(くさ)が化ける」と解字すると覚えやすい)
意味 (1)はな(花)。草木の花。「花弁カベン」「花粉カフン」 (2)花の形。はなやか。「花押カオウ」(自分の名を図案化し筆で書いた印)「花燭カショク」(はなやかなともし火)
<国字> こうじ  米部
解字 「米(こめ)+花(はな)」 の会意。蒸した米に小さな花が咲いたように生えるカビ。
意味 こうじ(糀)。麹とも書く。米・麦・大豆などを蒸し、コウジカビを繁殖させたもの。「米糀こめこうじ」(米で作った麹。清酒・味噌などの発酵に用いる)
<国字> もみじ  木部
解字 「木(き)+花(はな)」の会意。木の葉が赤や黄色い花のように色づく、もみじの意。
意味 (1)もみじ(椛)。紅葉・黄葉とも書く。 (2)かば(椛)。樺かばの異体字。樺の旁の華を花にしたもの。「椛島かばしま」(姓)
<国字> にえ  金部
解字 「金(金属=刀)+花(はな模様)」の会意。刀の刃にあらわれるもよう。沸(にえ)とも書く。

沸(錵)のついた刃文(「日本刀の形態研究 第三章」より)
意味 にえ(錵)。日本刀の刃と地肌の境目にある銀砂をふりかけたような模様をいう。
 カ・たから 貝部
解字 「貝(かい)+化(かわる)」 の会意形声。小型できれいな貝は貴重品として用いられ、一部は通貨としても使われた。こうした貴重な貝に化(かわる)をつけて、貨幣となった貝や財貨を表す。
意味 (1)たから(貨)。価値のあるもの。「財貨ザイカ」(財も貨も、価値あるものの意) (2)おかね。「通貨ツウカ」「貨幣カヘイ」「金貨キンカ」 (2)しなもの。商品。「貨物カモツ」「雑貨ザッカ
 カ・くつ  革部
解字 「革(かわ)+化(かわる)」 の形声。革が加工され元の姿をかえてできた靴。
意味 くつ(靴)。革で作った靴。「軍靴グンカ」「靴下くつした」「長靴ながぐつ
 カ・あやまる・なまり・なまる  言部
解字 「言(ことば)+化(かわる)」 の会意形声。言葉が地方により変わること。また、間違って変わる意ともなる。
意味 (1)なまり(訛)。なまる(訛る)。方言。「訛言カゲン」(なまった言葉。方言)「訛語カゴ」(なまり) (2)まちがえる。あやまる(訛る)。「訛伝カデン」(間違った言い伝え)「訛誤カゴ」(あやまり)「訛謬カビュウ」(あやまり)
 カ・おとり  囗部くにがまえ
解字 「囗(かこい)+化(ばける。本物そっくりに姿をかえる)」 の会意形声。本物そっくりに作ったものを囲いの中にいれること。これでおびき寄せて捕らえる。
意味 (1)おとり(囮)。鳥獣をおびき寄せて捕らえる同類のもの。 (2)おとり(囮)。人を誘いだすために使う物や人。「囮捜査おとりソウサ
<紫色は常用漢字>

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音符「備ビ」<えびらを背負う> と 「糒ビ」「鞴フク」「憊ハイ」

2023年05月24日 | 漢字の音符
[僃(正字) ビ・ヒ・そなえる・そなわる  イ部           
  
解字 甲骨文は人が矢を二本いれた入れ物(えびら)を背負う形。弓に用いる矢を背負い、敵に備える形。金文は人の横が「矢羽+用の古字」に変化し、篆文は矢羽の部分が大きく変化し、楷書の第一字はとなり、これが正字となっている。続く第二字のは俗字であるが、この字が現在用いられている。意味は、矢をいれた「えびら」を背負い、戦に「そなえる」意。常用字の備は、筆記体と活字体では書体の違いがあります。
意味 (1)そなえる(備える)。そなえ。「準備ジュンビ」「備品ビヒン」「備蓄ビチク」 (2)そなわる(備わる)。そろっている。「完備カンビ」「具備グビ」(十分な備え)「設備セツビ」(設けた備え) (3)つぶさに(備に)。みな。「農事備収」(農事を備(つぶさ)に収(おさめ)る[礼記・月令])
覚え方 ひと()は21(廾一)の()よう()にえる。

イメージ 
 「そなえる」
(備・糒) 
 もとの意味に含まれる「えびら」(鞴) 
 「その他」(憊)
音の変化  ビ:備・糒  フク:鞴  ハイ:憊

そなえる
 ビ・ほしいい  米部
解字 「米(こめ)+備の略体(そなえる)」の会意形声。兵糧米として備蓄する米。
意味 ほしいい(糒)。米を蒸して乾燥させたもの。水に浸せばすぐ食べられる。「糒糧ビリョウ」(ほしいいの兵糧)「糒脯ビホ」(ほしいいと、ほし肉)「糒醪ビロウ」(ほしいいと、どぶろく)

えびら
 フク・ヒ・ホ・ふいご  革部
解字 「革(かわ)+備の略体(えびら)」の会意形声。革製のえびら(矢をいれるもの)。我が国では、ふいごの意に使う。
意味 (1)えびら。矢入れ。「鞴靫ホサイ・フクサイ」(えびら)(2)[国]ふいご(鞴)。ふいごう。風を送り火をおこす革製のふくろ。金属の精錬や加工に必要な火を起こすのに古代から用いられたのは鹿皮を袋状にした「鞴袋ふきかわ」で十分な火力を生むことができなかったので木製の「箱鞴はこふいご」が発達した。「鞴祭ふいごまつり」(鍛冶屋や鋳物師が旧暦11月8日に行なう祭。たたら祭)「踏鞴たたら」(足で踏んで空気を送るふいご)

箱型の鞴(ふいご)「歓喜天霊験記」(日本国語大辞典のふいご[鞴・吹子・吹革]より)

その他
 ハイ・つかれる  心部

解字 篆文第一字は「忄(こころ)+備(ハイ)」の形声。[説文解字]は「つかれる也(なり)」とし疲れる意。「或(あるい)は 疒(やまいだれ)に从(したが)う」とする。篆文第二字は[同注]にある 疒にしたがう字。疒(やまいだれ)はベッドに人が横たわる姿であり、ハイの音でベッドに横たわるほど疲れる意味になる。現代字は心が備の下についたハイとなった。
意味 つかれる(憊れる)。力も尽きる程くたびれる。「困憊コンパイ」(疲れはてること)「疲労困憊ヒロウコンパイ」「倦憊ケンパイ」(あきてつかれる)「衰憊スイハイ」(衰えつかれる)
<紫色は常用漢字>

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音符「剌ラツ」<とびちる> と 「溂ラツ」「喇ラツ」「辣ラツ」

2023年05月22日 | 漢字の音符
 ラツ・もとる  刂部          

解字 甲骨文と金文は、束ソク(たばねる)の字の口(たばねた縄)の近くに刀を描いて、縄を切る形。篆文は束と刀が対等に並ぶ形になり、現代字は刀⇒刂になった剌ラツになった。束はものをしっかり束ねている形。そこに刀が付き、「まとまっていたものが切り離される」「統制がとれない・そむく」意となる。
意味 (1)もとる(剌る)。たがう。そむく。「乖剌カイラツ」(乖も剌も、もとる意)「剌謬ラツビュウ」(そむきことなる) (2)勢いよくとびはねるさま。「溌剌ハツラツ」(=溌溂)
注意 「」(さす)と間違いやすいので注意。

イメージ 
 まとまっていたものが「とびちる」(剌・溂・喇)
 飛び散る様子から「はげしい」(辣)
音の変化  ラツ:剌・溂・喇・辣

とびちる
 ラツ  氵部
解字 「氵(水)+剌(とびちる)」の会意形声。水のしぶきがとびちるさま。勢いのよいさま。
意味 勢いのよいさま。「溌溂ハツラツ」(魚が勢いよくはねるさま。生き生きと元気なさま=溌剌)
 ラツ  口部
解字 「口(くち)+剌(とびちる)」の会意形声。口から勢いよく言葉が出ること。
意味 (1)おしゃべり。はやくち。 (2)音が勢いよく出る。「喇叭ラッパ」(金管楽器の総称。金属管の一端に吹き口をつけ、他端が広く開いたもの)「軍隊喇叭グンタイラッパ」(軍隊の起床や行進で使われた喇叭)

はげしい
 ラツ  辛部
解字 「辛(はり・からい)+剌の略体(はげしい)」の会意形声。辛は針の形で、針が舌をさすような辛さの意。辣は、はげしいからさを表わす。また、物事がきびしい意。
意味 (1)からい。ぴりっとからい。「辣油ラーユ」(からい調味料。ラの発音は現代中国音) (2)きびしい。はげしい。むごい。「辣腕ラツワン」(うできき。すご腕)「辛辣シンラツ」(手厳しい)
覚え方 らばで向かおう、腕家ラツワンカには辛シンラツに (「漢字川柳」を参考)
<紫色は常用漢字>

<関連音符>
頼[賴] ライ・たのむ・たのもしい・たよる  頁部おおがい       

解字 篆文・旧字とも、「束+刀(刂)+貝」の形。「束+刀(刂)」は剌ラツ(勢いよくとびはねる)であり、賴ライはこれに貝(財貨)を加えて、財貨の勢いがよい、即ち「もうけ」の意となる。そこから、「たのもしい・たよりとなる」意味となり、また「たよる・たのむ」意も生じた。
 新字体は、旧字・賴の右辺⇒頁に変化した。したがって、部首は頁になる。「刀+貝」⇒「頁(あたま)」となるこの変化は、まったく意味のない変化であるばかりでなく、伝統ある「頁おおがい」という部首をけがす悪い変化である。画数も同じであり変える必要はなかった。
意味 (1)たのもしい(頼もしい)。たよりになる。「信頼シンライ」 (2)たのむ(頼む)。たよる(頼る)。「依頼イライ」「無頼ブライ」(頼るべきところがない)

イメージ 
 「勢いがよい」 (頼・瀬・獺・籟) 
 「ライの音」 (癩)
音の変化  ライ:頼・瀬・籟・癩  ダツ:獺
音符「頼ライ」へ

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音符「去キョ」 <さる> と 「却キャク」「脚キャク」 「法ホウ」

2023年05月20日 | 漢字の音符
  改訂しました。
 キョ・コ・さる  ム部

解字 甲骨文は「大(人の正面形)+口サイ(器物)」 の会意。落合氏は[漢字字形史字典]で、「甲骨文字では[ゆく]の字義で使用されており、大は人の正面形、口は器物の形としても使われるので、人が器物を踏み越えることから転じて[ゆく]の意味になったとみるべきであろう」とする。金文も同じ形だが、意味は、①離れ去る。②除き去る、の意味に変化した。字形は篆文で、口⇒U、になり、現代字で、大⇒土。U⇒ムに変化した去になった。部首はム。
意味 (1)さる(去る)。たちさる。「去来キョライ」(去ることと来ること。ゆきき)「過去カコ」 (2)のぞく。とりさる。「撤去テッキョ」「去勢キョセイ」 (3)死ぬ。「死去シキョ」「逝去セイキョ

イメージ 
 「さる」(去・却・脚・法・劫・怯)
 「形声字」(琺)
音の変化  キョ:去  キョウ:劫・怯  キャク:却・脚  ホウ:法・琺

さる
 キャク・しりぞく  卩部ふしづくり
解字 「卩(ひざまずく)+去(さる)」 の会意。卩セツは人がひざまずく形、それに去(さる)がついた却は、ひざまずいた形で前を向いたまま、うしろへ去ること。しりぞく意となる。セツについては、音符「卩セツ」を参照。 
意味 (1)しりぞく(却く)。さがる。「退却タイキャク」「却行キャッコウ」 (2)しりぞける(却ける)。「却下キャッカ」 (3)かえす。「返却ヘンキャク」 (4)かえって(却って)。予想に反して。
 キャク・キャ・あし  月部にく
解字 「月(からだ)+却(ひざをまげてしりぞく)」 の会意形声。却はひざを曲げたまま後ろへしりぞく形。月(からだ)を付けた脚は、曲げたひざの部分を中心に、その上下のあしの部分をいう。
意味 (1)あし(脚)。すね。「脚力キャクリョク」 (2)支えとなるもの。「橋脚キョウキャク」「三脚サンキャク」 (3)あしば。立場。「失脚シッキャク」 (4)脚あしのついている物を数える語。「机四脚」
 ホウ・ハッ・ホッ・のり  氵部
解字 「氵(水)+去(さる)」の会意。もとの字はホウで「氵(水)+廌タイ+去(さる)」の会意。廌タイは、鹿と馬を合わせた聖獣で、正義を行なうとされる。ホウは、タイが悪者の非をとがめて水(海)に流し去ること。すなわち、聖獣による神判に敗れた人を海に追放する刑罰。刑罰を示すことで、のり・きまりの意味を表わす。現代字は、から廌を省いた法となった。
意味 (1)のり(法)。きまり。おきて。「法律ホウリツ」「憲法ケンポウ」 (2)しきたり。「作法サホウ」 (3)やりかた。てだて。「方法ホウホウ」「兵法ヘイホウ」 (4)仏の教え。「仏法ブッポウ」「法会ホウエ
 キョウ・ゴウ・コウ  力部
解字 「力(ちから)+去(さる)」 の会意形声。力でおどして去らせること。おどす・おびやかす意となる。また、梵語のkalpaカルパ(極めて長い時間の単位)の音訳字「劫波」に使われた字で、劫コウ一字で同じ意味(極めて長い時間の単位)を表す。
意味 (1)おびやかす(劫かす)。おどす。「劫奪キョウダツ」(おどして奪う)「劫略ゴウリャク・キョウリャク」(おびやかして奪い取る)(2)[仏]きわめて長い時間。「未来永劫ミライエイゴウ」「四劫シコウ」(世界の成立から破滅にいたる四つの長い時期)「劫火コウカ・ゴウカ」(四劫の第三期の世界が壊滅する壊劫エコウ期に発生する世界を焼きつくす大火)「億劫オックウ」(オク・コウの転。億は、きわめて大きな数、劫はきわめて長い時間の意。あわせて無限の数と時間の意から、考えるだけで面倒くさくて物事をする気になれないさま) (3)こう(劫)。囲碁で一目を取り合うとき、同じ手の繰り返しとなりずっと続くこと。このため、他の手を打ってからでないと一目を取ることができない。「劫コウになる」
 キョウ・おびえる・ひるむ  忄部
解字 「忄(心)+去(=劫キョウの略体。おどす)」 の会意形声。おどされておびえること。おそれる、ひるむ意となる。
意味 おびえる(怯える)。ひるむ(怯む)。おそれる。おじける。「怯弱キョウジャク」(臆病で意気地なし)「卑怯ヒキョウ」(①勇気のないこと。②卑劣なこと)

形声字
 ホウ  王部
解字 「王(玉)+法(ホウ)」 の形声。ホウと呼ばれる玉(宝石類)。宝石のようなやきものである「琺瑯ホウロウ」を表す語に用いられる。

銅胎画琺瑯方盤(「國立故宮博物院207陳列室」より)
意味 「琺瑯ホウロウ」に使われる字。琺瑯とは七宝焼きを表す言葉。金属などの器の表面に模様のくぼみをつけ、そこに種々の色のガラス質の釉(エナメル)を焼き付け花鳥・人物などの模様を表す技法。語源は中国の隋唐時代の西域の地名「拂菻フーリン」(当時の東ローマ帝国:現在のトルコ)に由来する。当時、東ローマ帝国の七宝工芸品は、拂菻嵌(フーリンカン)、佛郎嵌(フーロウカン)などと呼ばれていたが(嵌カンは模様のくぼみの意)、のち嵌を略して言い、その後、法郎(ホウロウ)に王へんを付けた「琺瑯ホウロウ」という名で定着した。
日本の「琺瑯ホウロウ」
 日本では、金属器(主に鉄器)にうわぐすり(琺瑯釉)を塗って焼き、ガラス質に変え防錆、装飾した製品をいう。幕末に始まったとされる鋳物の琺瑯を嚆矢として、明治にかけて銅や鉄器に琺瑯釉をかけた製品が開発された。「琺瑯鍋ホウロウなべ」「琺瑯質ホウロウシツ」「琺瑯引ホウロウびき
<紫色は常用漢字>

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音符「反ハン」<石の武器で反乱をおこす>と「販ハン」「板ハン」「阪ハン」「坂ハン」「版ハン」「飯ハン」「返ヘン」

2023年05月18日 | 漢字の音符
 [甲骨文字小事典]と[甲骨文字辞典]で解字されている「厂は石の略体であり、反は石の武器をもちいた反乱」という説に共感を覚えたので、解字をやり直しました。(2016年11月21日 )
 さらに増補改訂しました。

 ハン・ホン・タン・そる・そらす  又部 

解字 甲骨文第一字は石の原字に又(手)を加えた形。石はもと三角形の石製打楽器(石磬セキケイ)を象ったもので三角形をしていた。第二字は「厂(石の略体)+又(手)」のかたち。甲骨文字で、反する・反乱を起こす意味で使われており、石を武器として手にもった形であろう[甲骨文字小事典]。金文から現代字まで第二字の反が続いている。意味は、そむく・さからうという本来の意味にくわえ、転じて、はねかえる・そるなどの意となった。
意味 (1)そむく。さからう。「反抗ハンコウ」「反旗ハンキ」「謀反ムホン」 (2)かえる(反る)。かえす(反す)。はねかえる。「反射ハンシャ」「反発ハンパツ」 (3)そる(反る)。そらす(反らす)。まがる。「反曲ハンキョク」(そりかえる)「反宇ハンウ」(軒のそり) (4)くりかえす。「反復ハンプク」 (5)正反対の。反対側。逆の。「反面ハンメン」「反比例ハンピレイ」 (6)たん(反)。単位の名。土地の面積・距離・布の長さ。「反物タンもの

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 「そむく・さからう」
(反・叛)
  意味(2)の「はねかえる」(返・販・板・鈑)
  意味(3)の「そる」(阪・坂) 
  意味(5)の「反対側の」(版)
  「形声字」(飯)
音の変化  ハン:反・販・叛・坂・阪・板・鈑・版・飯  ヘン:返

そむく・さからう
 ハン・ホン  又部
解字 「半の旧字(分かれる)+反(そむく・さからう)」の会意形声。半は半分にすることから分かれる意。叛は(主君と)分かれてそむくこと。
意味 そむく(叛く)。さからう。手向かう。「謀叛ムホン」(国家・主君にそむくこと)「叛意ハンイ」(主君などにそむこうとする気持ち)

はねかえる
 ヘン・かえす・かえる  辶部
解字 「辶(こちらにくる)+反(はねかえる)」の会意形声。辶は、通常は「ゆく」意だが、ここでは「くる」意。返は、はねかえってくること。
意味 かえる(返る)。かえす(返す)。もとへもどす。「返還ヘンカン」「返済ヘンサイ
 ハン・ひさぐ  貝部
解字 「貝(財貨)+反(はね返る)」の会意形声。お金(貝)を受け取り、その対価に見合う品物を返すこと。物をうる、あきなう意となる。
意味 ひさぐ(販ぐ)。うる。あきなう。商売。「販売ハンバイ」「販路ハンロ」「販女ひさぎめ
 ハン・バン・いた  木部
解字 「木(き)+反(はねかえる)」の会意形声。押すとはねかえる木の薄い板。
意味 (1)いた(板)。「板葺(いたぶ)き」「板書バンショ」 (2)板状のもの。「石板セキバン」「銅板ドウバン」 (3)はんぎ(版木)。「板行ハンコウ(=版行)」「板本ハンポン」(版木で印刷した本。=版本)
 ハン  金部
解字 「金(きん)+反(=板の略)」の会意形声。金の板、すなわち金ののべ板。また、板金の意。
意味 (1)金や銀の延べ板。 (2)いたがね。「鈑金バンキン」(①黄金や銀の延べ板、②板金バンキン。薄い金属板、またこの板を加工すること)

そる(反る) 
 ハン・さか  阝部
解字 「阝(おか)+反(そる)」の会意形声。反ったおかの意で、険しい丘が原義。日本で「さか」と訓じ、傾斜のある土地をいう。阪は地名が多い。
意味 (1)けわしい。「阪岸ハンガン」(切り立つような岸)「阪険ハンケン」(けわしい所) (2)さか(阪)。地名に使うことが多い。「大阪おおさか」(江戸時代は大坂と書かれたが、明治以降、大阪に統一された)「阪神ハンシン」(大阪と神戸)「京阪ケイハン」(京都と大阪) 
 ハン・さか  土部
解字 「土(つち)+反(=阪。さか)」の会意形声。 阪(さか)の阝⇒土に変えた字で、宋代の辞書である集韻シュウインなどに至ってみえる後起の字。土地の「さか」に用いる。
意味 (1)さか(坂)。傾斜している道。「坂道さかみち」「急坂キュウハン」「坂東バンドウ」(箱根の坂より東。関東地方) (2)つつみ(堤)。土手。

反対側の
 ハン・ふだ  片部 
解字 「片(片方の板)+反(反対側の)」の会意形声。片方の板と反対側の板をいい、土を突き固めて城壁などをつくるとき、両側に固定する型枠の板をいう。のち、字を彫って印刷に使う板の意になるが、これは反対側に刷る紙を置く板の意。
意味 (1)型枠の板。「版築ハンチク」(型枠の板に土をいれて築(つ)く。) (2)文字などを彫り込んだ印刷用の板。「木版モクハン」「版木ハンギ」 (3)印刷して刊行する。「出版シュッパン」 (4)ふだ(版)。氏名などを書く木のふだ。名簿。戸籍簿。「版籍ハンセキ」(版も籍も戸籍の意、戸籍に載っている人民および人民が耕作している土地)「版図ハント」(版籍と地図。また、一国の領土)

形声字
 ハン・めし・いい  食部
解字 「食(たべる)+反(ハン)」の形声。[説文解字]は、「食らう也(な)り。食に从(したが)い反の聲(声)」とする。反ハンは発音を表すが、反には反復する意味もあり、口で歯の動きをくりかえして食べること。すなわち、食事・食事をする意。日本では米が主食なので、ごはんの意味ともなる。
意味 (1)くらう。食事。食事をする。「飯台ハンダイ」(ちゃぶだい。食卓)「飯店ハンテン」(食堂) (2)ごはん。めし(飯)。いい(飯)。まま(飯)。穀物を煮炊きしたもので、多くは米のご飯をさす。「飯米ハンマイ」(飯に炊く米)「飯櫃めしびつ」(飯を入れる木製の器。おひつ)「飯櫃いびつ」(めしびつが楕円形をしていることから、ゆがんだかたち。歪とも書く)「飯事ままごと」(料理や家庭生活のまねをする遊び) (3)食べさせる。養う。「飯牛ハンニュウ」(牛に餌をやる) (4)口に含ませる。「飯玉ハンギョク」(死者の口に玉を含ませる。=飯珠ハンジュ
<紫色は常用漢字>

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音符「帝テイ」<神をまつる三本脚の祭卓>と「締テイ」「諦テイ」「蹄テイ」「啼テイ」

2023年05月16日 | 漢字の音符
  増補改訂しました。
 テイ・みかど  巾部

「漢字演変字典1000例」の帝(東方出版中心・中国)より

解字 甲骨文字は三本脚をH印でしばった形の祭卓(神を祭る机)の形。意味は、①神名。上帝とも呼ばれる。②祭祀名、③先王の別称、に使用される(甲骨文字辞典)。金文から祭卓に供物(-印)をのせた形。意味は、①祖先の王の称、②君主の代称、③諸神の主宰者、などとして用いられた。のち、天下を治める「きみ」の意に用いる。
意味 (1)天の神。あまつかみ。「天帝テンテイ」「上帝ジョウテイ」 (2)みかど(帝)。天子。天皇。「帝王テイオウ」「皇帝コウテイ」「帝都テイト」(天子のいる都)「帝国テイコク」(①皇帝の統治する国家。②大日本帝国の略)

イメージ 
 「神を祀る祭卓」
(帝) 
 祭卓の脚部を「むすぶ」(締)
 「形声字」(蹄・諦・啼・蒂)
 「その他」(啻)
音の変化  テイ:帝・締・蹄・諦・啼・蒂  シ:啻

むすぶ
 テイ・むすぶ・しめる  糸部
解字 「糸(ひも)+帝(むすぶ)」 の会意形声。糸(ひも)でしっかりと結ぶこと。むすぶ、転じて条約などをとりきめる意となる。日本では、ゆるみのないようにしめる意で用いる。
意味 (1)むすぶ(締ぶ)。とりきめる。「締結テイケツ」「締約テイヤク」 (2)しめる(締める)。しまる(締まる)。しめくくる。「帯を締める」「締め込み」(力士のふんどし)「ネジを締める」「心を引き締める」「締め切り」

形声字
 テイ・ひづめ  足部
解字 「足(あし)+帝(テイ)」の形声。後漢の字書[釋名シャクミョウ]は「蹄、底テイ(そこ)也(なり)」とし、馬や牛の足の底(そこ)、すなわち地面にふれる部分をいい、足の角質部分(爪)をいう。また、締テイ(しめる)に通じ、兔などの足を締めて捕る「わな」をいう。
意味 (1)ひづめ(蹄)。牛・馬・羊などの足の端に発達している硬い爪。「有蹄類ユウテイルイ」(ひづめのある動物)「蹄鉄テイテツ」(ひづめの底につける鉄具)「口蹄疫コウテイエキ」(口の中や蹄の付け根などの柔らかい部位に水泡が発生する伝染病) (2)わな(蹄)。兔を捕るわな。まるく締めたわな。「蹄筌テイセン」(兔わなと、魚をとるわな)
 テイ・タイ・あきらめる・つまびらか  言部
解字 「言(いう)+帝(テイ)」 の会意形声。テイは逓テイ(つぎつぎと伝える)に通じ、言葉でつぎつぎと詳しく伝えること。つまびらかにする意となる。仏教用語では、まこと・真理をいう。日本では、真理を悟る意から「あきらめる」意となった。
意味 (1)つまびらか(諦らか)。あきらか。「諦思テイシ」(つまびらかにして思う) (2)[仏]まこと。真理。また、それをさとること。「要諦ヨウテイ」(①肝要なさとり。②[国]肝心な点。大切なところ。) (2)[国]あきらめる(諦める)。「諦観テイカン」(①全体を見通し見きわめる。②[国]あきらめ悟る。③[仏]真理をさとる)
 テイ・なく  口部  
解字 「口(口から出す声)+帝(テイ)」の形声。テイは逓テイ(旧字はテイ。つぎつぎと伝える)に通じ、鳥や獸などがつぎつぎと続けて鳴く意。また、人が涙を流して泣く意にも用いる。この字は篆文(説文解字)がなく、テイ(なく。さけぶ)が同字とされる。
意味 (1)なく(啼く)。鳥や獣などが鳴く。「啼鳥テイチョウ」 (2)人が涙を流して泣く。「啼泣テイキュウ」「啼哭テイコク
 テイ・タイ・へた  艸部
解字 「艸(植物)+帝(テイ・タイ)」の形声。テイ・タイは蔕テイ・タイ(へた)に通じる。蒂は蔕の異体字で、蔕の下部を音符・帝に替えた字。
柿のへた
意味 (1)へた(蒂)。ほぞ(蒂)。果実が枝または茎につくところ。「果蒂カテイ」(果物のへた)「柿蒂シテイ」(柿のへた。しゃっくり止めの漢方薬になる)「柿蒂湯シテイトウ」(しゃっくり止めの漢方薬)
 シ・ただ  口部
参考 啇[啻]

解字 金文・篆文は啻テイ・タイ・シで、「帝テイ+口サイ(祝詞を入れた器。祭祀を象徴する)」の会意。帝は、神をまつるときに供物を載せる祭卓を描いた象形で、そこに神祭りを意味する口サイのついた啻テイ・タイ・シは、帝をまつる意となり、「帝を祭ることのできる者」のイメージがある。啇テキは、啻が変形した異体字で、帝の巾と口があわさって古となり、啇の形になった。発音もテキ・チャクに変化した。音符「啇テキ」
 啇テキの原字である啻テイ・タイ・シは、のちに発音がシのみになり、意味も「帝を祭ることのできる者」の意から限定する意味の助詞「ただ・ただに」となった。
意味 ただ(啻)。ただに(啻に)。数量、行為などが、ある範囲に限定されることを示す。「不啻~」(啻ただ~のみならず(不))「何啻~」(何(なん)ぞ啻(ただ)に~のみならんや」
<紫色は常用漢字>

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音符「乙オツ」<まがる>と「軋アツ」「札サツ」「紮サツ」

2023年05月14日 | 漢字の音符
 オツ・イツ・きのと・おと  乙部

解字 甲骨文字の字源は不明[甲骨文字辞典]。[説文解字]は「春に草木の芽が、かがまるように生え出す形」とするが疑問。[字統]は「おそらく獣骨や魚骨を用いた骨べらの形」とするが一つの説である。乙は字形から見て曲がったものを表している。しかし、この字は甲骨文字の時代から仮借カシャ(当て字)され、十干ジッカン(順位をもつ十種類の漢字)の第二位に当てている。甲骨文字が使われた殷インでは、10個の太陽が存在してそれが毎日交代で上り、10日で一巡りすると考えられており、十干はそれぞれの太陽につけられた名前とされている。乙は乚の形にも変化する。漢字のイメージは「まがる」とした。
意味 (1)きのと(乙)。十干の第二位。五行では木に当てる(五行との関連は下図を参照)。 (2)二番目。甲の次。「乙種オツシュ」 (3)かがまる。まがる。(4)[国]おつ(乙)。粋なこと。「乙な味」 (5)[国]おと(乙)。すえ。愛らしい。「乙子おとご」(末子)「乙女おとめ」(少女。むすめ)「乙姫おとひめ」(①(姉妹の)妹の姫。年若い姫。②竜宮に住む姫)
 十干とは、甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸の10の要素の順列。これを五行(木・火・土・金・水)に配列し、おのおのに兄(え)と弟(と)を当てて訓読みする。以下を参照。

十干の読み方(オンライン無料塾「ターンナップ」より)

イメージ  
 「仮借カシャ(当て字)」
(乙)
 字形から「まがる」(軋・札・紮)
音の変化  オツ:乙  アツ:軋  サツ:札・紮  

まがる
 アツ・きしる・きしむ  車部

解字 篆文は「車(くるま)+乙(まがる)」の会意形声。車がまがるとき出す、きしむ音、擦れ合ってでる音をいう。楷書から、乙⇒乚に変化した軋になった。
意味 きしむ(軋む)。きしる(軋る)。擦れ合って出る音。「軋轢アツレキ」(すれあう。転じて、人との仲が悪くなること。轢も、きしる・もめる意)「歯軋(はぎし)り」
 サツ・ふだ   木部

解字 「木(き)+乙オツ⇒乚サツ(まがる)」の会意形声。乚サツは乙の変形字であり「まがる」意、反っている木片の形で薄い木の札、薄いことから転じて、のちに紙の札、書き物、日本では紙幣の意味でも使われる。
意味 (1)ふだ(札)。薄い木や紙のふだ。「簡札カンサツ」(文字を書きしるす木や竹の札)「高札コウサツ」(2)紙の書きもの。書きつけ。「書札ショサツ」(書物) (3)証拠となる文書。「鑑札カンサツ」(許可証。鑑定書) (4)[国]おさつ。紙幣。「札束サツたば」 (5)[国]ふだ(札)。いれふだ。「入札ニュウサツ」 「落札ラクサツ」 (5)[国]乗車券。「改札カイサツ」(駅で乗車券などの改(あらた)めを行なうこと。改札口。)
 サツ・からげる  糸部
解字 「糸(ひも)+札(ふだ)」の会意形声。ふだの束を紐でくくること。
意味 (1)たばねる。からげる(紮げる)。くくる。「結紮ケッサツ」([医]血管をしばって血行を止めること) (2)とどまる。軍隊がとどまる。「駐紮チュウサツ」(軍隊が駐屯すること)
<紫色は常用漢字>

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音符「軍グン」<兵車がまるく包囲する>「運ウン」「揮キ」「輝キ」

2023年05月12日 | 漢字の音符
  改訂しました。
 グン・クン・いくさ  車部           

解字 金文・篆文は、「車(兵車)+勹(まるく取り囲む)」の会意。軍隊の兵車が敵をまるく包囲する形で、陣形から「いくさ」の意味を表わす。現代字は、勹 → 冖に変化した。
意味 (1)いくさ(軍)。たたかい。「軍事グンジ」「軍旗グンキ」「軍議グンギ」 (2)つわもの。兵士の集団。「軍隊グンタイ」「将軍ショウグン」 (3)中国古代の兵制。周代では一軍は1万2500人。「三軍サングン」(①周代の上・中・下軍、計3万7500人、②陸・海・空軍の総称) (4)スポーツのチーム。「巨人軍キョジングン」「二軍ニグン」(正規のチームの予備のチーム)

イメージ 
 「軍隊」
(軍・運) 
  兵車がまるく包囲する意から「まるい・まるく」(揮・暈・褌)
 「形声字」(暉・輝・葷・皹)
音の変化  グン:軍  クン:葷・皹  ウン:運・暈  キ:揮・暉・輝  コン:褌・渾

軍隊
 ウン・はこぶ  辶部 しんにょう
解字 「辶(ゆく)+軍(軍隊)」の会意形声。軍隊がいくさのため行くこと。各地を転戦するので、めぐる・まわる意に、移動の際、必要な物資をはこぶ意となる。
意味 (1)めぐる(運る)。まわる。「運行ウンコウ」「運動ウンドウ」 (2)はこぶ(運ぶ)。うつす。「運送ウンソウ」「運搬ウンパン」 (3)うごかす。する。推し進める。「運営ウンエイ」「運筆ウンピツ」 (4)めぐり(運)。めぐりあわせ。「運命ウンメイ

まるい・まるく
 キ・ふるう  扌部
解字 「扌(手)+軍(まるく)」の会意形声。手をぐるぐるとまわすような動作。
意味 (1)ふりまわす。ふるう(揮う)。「発揮ハッキ」 (2)とびちる。まきちらす。「揮発キハツ」 (3)さしずする。「指揮シキ
 ウン・かさ・ぼかす・くま  日部
解字 「日(太陽)+軍(まるい)」の会意形声。太陽の周りに現れる光の輪。月の輪にもいう。
日暈ニチウン(GOO辞書より)
意味 (1)かさ(暈)。太陽や月のまわりにうすく現れる光の輪。「日暈ニチウン」(太陽のかさ)「月暈ゲツウン」(月のかさ) (2)めまい。「眩暈ゲンウン」(めまい) (3)[国]ぼかす(暈す)。ぼかし(暈し)。色の濃淡の境目をはっきりさせない。あいまいにする。 (4)[国]くま(暈)。(=隈)。色と色が接する所。光と陰の接する所。「暈取(くまど)り」(①ぼかしを加える。②歌舞伎などで顔に太い線の彩色をほどこすこと)
 コン・ふんどし  衣部
解字 「衤(ころも)+軍(まるい)」の会意形声。腰のあたりをまるくおおう下ばかま。
意味 (1)したばかま。ももひき。 (2)[国]ふんどし(褌)。まわし。したおび。「褌祝へこいわい」(九州地方の成年式。男の子はふんどし、女の子は腰巻を初めてつけて祝う。=兵児祝)

形声字
 キ・ひかり・かがやく  日部
解字 「日(太陽)+軍(キ)」の形声。[説文解字]は、「光也(なり)。日に从(したが)い軍の聲(声)。発音は許歸切(キ)」とする。日(太陽)の光をキ(軍)の発音で表した。
意味 (1)ひかり(暉)。日のひかり。「春暉シュンキ」(春の日のひかり)「夕暉ユウキ」(夕日のひかり) (2)かがやく(暉く)。「暉暉キキ」(日のかがやくさま)
[煇] キ・かがやく  車部
解字 正字(篆文)は煇で「火(ひ)+軍(キ)」の形声。キは暉(かがやく)に通じ、火がかがやく意。楷書から火⇒光に変わった輝になった。光と軍は、どちらも部首でないので、車が部首になっている。
意味 かがやく(輝く)。かがやき(輝き)。てる(輝る)「光輝コウキ」(光りかがやく)「星輝セイキ」(星のひかり)「輝映キエイ」(てりはえる)
 クン  艸部
解字 「艸(草)+軍(クン)」の形声。艸(草)は野菜の意。軍クンは熏クン(くゆらす)に通じる、臭いをくゆらす草の意で、においのつよいニラ・ネギなどの野菜をいう。さらに、生臭いもの(肉など)をいう。なお、熏クンに艸(くさ)をつけた薫クンは、かおる(薫る)。かおり(薫)の意味になるが、軍に艸をつけた葷クンは、においの強い意味に使い分けて用いる。
意味 においの強い野菜。ニンニク・ニラ・ネギなど。「葷菜クンサイ」「葷酒クンシュ」(においの強い野菜と酒。また、なまぐさいものと酒)「葷辛クンシン」(においの強い野菜と辛い野菜)「葷腥クンセイ」(なまぐさいもの。腥はなまぐさい肉の意)「五葷ゴクン」(仏教の思想に基づき、精進料理では避けるべきと考えられている食材。五葷は時代や地域によって異なるが、主にネギ属のネギ、ラッキョウ、ニンニク、タマネギ、ニラなどをいう)「不許葷酒入山門」(葷酒、山門に入るを許さず。多く禅宗寺院の入口に建つ石碑の文字)

不許葷酒入山門の石碑(高知市の真如寺「じゃらんnet」より)
 クン・ひび・あかぎれ  皮部
解字 「皮(ひふ)+軍(クン)」の形声。クンは、亀キ・クン(かめ)に通じ、亀の甲羅のような亀裂のある皮膚をいう。亀の発音は、①キ(guī )②キュウ(qiū)③クン・コン・キン(jūn)の3系統の発音があり(カッコ内は現代中国語発音)、現代中国語では亀の発音は(guī )、亀裂の発音は(jūnliè)で、皹裂(jūnliè)と同じである。
意味 ひび(皹)。あかぎれ(皸)。寒さのため手足の皮膚にひびがはいること。「皹裂クンレツ」(あかぎれができる)
 コン・すべて  氵部
解字 「氵(水)+軍(グン⇒コン)」の形声。水の状態をコン(軍)という発音で表す文字だが、多様な意味がある。[説文解字]は「混流の聲(ひびき)也」とし、水が混じり会って流れる音とする。また、「溷(にごり)て流れる聲(ひびき)也」と濁流の意ともする。また、入り混じってひとつになる。すべて。などの意味がある。
意味 (1)水がわき出て流れるさま。勢いがよい。さかん。「渾渾コンコン」「雄渾ユウコン」(雄大で勢いがよい) (2)(まじる意から)「渾沌コントン」(物事の区別がはっきりしないさま) (3)(入りまじって)ひとつになる。「渾然コンゼン」(異なったものが一体となる)「渾一コンイツ」 (4)(ひとつになることから)すべて(渾て)。まったく。「渾身コンシン」(からだ全体)「渾天コンテン」(すべての宇宙)「渾天儀コンテンギ」(地球儀の宇宙版。天球儀)
<紫色は常用漢字>

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