漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符 「丸ガン」 <まるい>

2023年03月30日 | 漢字の音符
 丸の解字を改めました。
 ガン・まる・まるい・まるめる  丶部

解字 篆文は、右向きの人(下)と左向きの人(上)がつながった形。[説文解字]は「圜エン(まるい)。傾側ケイソク(かたむき)而(しか)して轉(まわ)る者(もの)」とする。傾側の意味がよくわからないが、要するに二人が傾き合ってまわる形らしい。胡人がこのような曲芸をしていたのだろうか? 隷書(漢代)は九の中に点がはいった形になり、旧字は九の中が丶になり、現代字は丶がノと交差した丸になった。「丸い」というのは球形をいう。字の成り立ちから十分には納得できるものでないが、この字がすでに定着している。「丸い」の球形は、弾弓といわれる弓に充てる弾(たま)を表わした。
意味 (1)まるい(丸い)。球状のもの。まるめる(丸める)。「丸薬ガンヤク」「丸顔まるがお」 (2)たま(弾)。「弾丸ダンガン」「砲丸ホウガン」(大砲のたま) (3)まるい(円)。「丸太まるた」 (4)そっくり。ぜんぶ。「丸暗記まるあんき」「丸損まるぞん」 (5)名前につける言葉。「牛若丸うしわかまる」(人名)「咸臨丸かんりんまる」(船名)

  <丸の同体異字>
丸が含まれる漢字は、多くが両手を出してひざまずく人が変化した形で、丸ガン(まるい)とは異なる字です。

 シツ・シュウ・とる  土部
   
解字 「幸(手かせ)+丸(人が両手を出してひざまずいた形)」 の会意。幸は 「手かせ」 の形。丸は甲骨文で両手を出してひざまずいた形。両者を合わせた執は、坐って手を出している人の両手に手かせをはめ、しっかりと捕まえたさま。罪人をとらえるが原義。しっかりと罪人をとらえる意から、「とる・手にとる」、捕まえて放さないことから「こだわる・しつこい」意となる。
意味 (1)とる(執る)。手にとる。とり行う。「執刀シットウ」「執筆シッピツ」 (2)あつかう。つかさどる。「執事シツジ」 (3)こだわる。しつこい。「執念シュウネン」「固執コシツ・コシュウ」「執心シュウシン
執を音符に含む字  シツ:執  シ:摯・贄  チツ:蟄
音符「執シツ」を参照。

 ジュク  子部

解字 甲骨文は、「先祖を祀る建物+人が手をだす形」。先祖を祀る建物は後に享キョウとなる字で、祖先神に飲食物をたてまつって、祖先神をもてなす意を表わす。それに手を出す人がついた孰ジュクは、人が祖先神に飲食物をもてなしている形。金文は女を加え、もてなす人が女性であることを示す。篆文は「亯キョウ(先祖を祀る建物)+羊(ひつじ)+丮ケキ(人が両手を出す形)」の会意となり、人が羊の肉の料理で祖先神をもてなす形。現代字は、亯⇒享に、丮⇒丸に変化し、羊が略されたが、羊の肉を煮炊きすることから、煮る意がある。しかし、本来の意味でなく、「たれ・だれか」「いずれ・いずれか」の意に仮借カシャ(当て字)された。
意味 (1)たれ。たれか。 (2)いずれ。いずれか。 (3)にる(煮る)。にえる。
孰を音符に含む字  ジュク:孰・熟・塾
音符「孰ジュク」を参照。

 ゲイ・セイ  土部

解字 甲骨文は両手で苗木をもってひざまずく人の形で、木を植える様子を表す。金文は左辺が、木の下に土を加えた形。篆文は、「坴(土の上に木[変形字]がある形)+丮ケキ(人が両手を出した形)」の会意。ひざまずいた人が両手を出して土の上の木を手入れして育てている形。いずれも、「植物に手を加えて育てる」意となる。現代字は、篆文の右辺が、丮⇒丸に変化した。
意味 (1)うえる。草木をうえる。 (2)いきおい。
埶を音符に含む字  ゲイ:芸  セイ:勢  セツ:褻  ネツ:熱  ウン:芸
音符「埶ゲイ」を参照。

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音符「亶タン」<厚くて平ら・ゆたか>「壇ダン」「氈セン」「擅セン」

2023年03月28日 | 漢字の音符
 タン・セン  亠部

解字 上部は「亠(やね)+回(二重のかこい)」の㐭リンで、中に穀物などを入れて厚い壁で囲い、屋根をのせた形で稟リン・ヒン(こめぐら)の原字。下部に発音を表す旦タンがついた。旦は、この字の発音タン・センを表すだけで意味に関係しない。[説文解字]は「多榖也(なり)」とし穀物が多い意とする。[同注]は「本義は多榖と爲(な)すが、引伸インシン(転義)之(の)義は、厚(あつい)也、信(まこと)也、誠(まこと)也」とする。また、センの発音は専セン(もっぱら)に通じ、もっぱら・ほしいままの意味を表す。
意味 (1)ゆたか。多穀。実りが多い。 (2)あつい(亶い)。厚い。あつみがある。 (3)まことに(亶に)。まこと。「亶(まこと)に其れ然(しか)る乎(か)」(本当にそうであるなあ) (4)ほしいまま(亶)。もっぱら。(=擅)

イメージ 
 「厚い(あつみ)」
(亶・壇・氈)
 「ゆたか」(檀)
 「形声字」(擅・羶)
音の変化   タン・ダン:亶・壇・檀   セン:氈・擅・羶

厚い(あつみ)
 ダン・タン  土部
解字 「土(つち)+亶(厚い)」の会意形声。土を厚く盛り、平らにした台。土にかかわらず高い台をいう。
意味 (1)他より一段高くした台。「祭壇サイダン」「壇上ダンジョウ」「基壇キダン」「壇場ダンジョウ」(祭礼を行なうために土を盛り平らにした場所) (2)(同じ壇に乗っている)専門家の集団。「画壇ガダン」「文壇ブンダン
 セン  毛部
解字 「毛(け)+亶(厚い)」の会意形声。厚い毛織りの敷物。
意味 もうせん(毛氈)。毛織の敷物。「緋毛氈ヒモウセン」(赤い色の毛氈)「毛氈苔モウセンごけ」(赤い腺毛があり緋毛氈を敷いたように生える苔)

ゆたか
 ダン・タン・まゆみ  木部
解字 「木(き)+亶(ゆたか)」の会意形声。香りのゆたかな木。日本では、まゆみに当てる。
意味 (1)びゃくだん科の香りのゆたかな常緑樹。仏像・細工物などの材料となる。「白檀ビャクダン」「黒檀コクタン」「紫檀シタン」 (2)[国]まゆみ(檀)。ニシキギ科の落葉低木。昔、この材で弓を作った。真弓とも書く。「檀弓ダンキュウ」(まゆみで作った弓。まゆみの木)「檀紙ダンシ」(まゆみの樹皮を材料とした和紙) (3)梵語の音訳字。「檀那ダンナ」(danaの音訳で布施の意)「檀家ダンカ」(一定の寺院に属し布施をする俗家)「檀林ダンリン」(寺の学問所・寺院)

形声字
 セン  扌部
解字 「扌(手)+亶(セン)」の形声。センは専セン(ひとりじめする)に通じ、手で独り占めする意。
意味 ほしいままにする。ひとりじめする。「独擅場ドクセンジョウ」(ひとり舞台。誤って独壇場ドクダンジョウともいい、この語が通用している)「擅権センケン」(権力をほしいままにする=専権)「擅断センダン」(=専断)
 セン・なまぐさい  羊部

解字 甲骨文字は羊が三匹集まる形。甲骨文字辞典は「羊を多く並べた形であり祭祀儀礼を表現したもの」とする。金文は羊が二匹となり、篆文第一字は羊が三匹となった。[説文解字]は「羊、臭(にお)う也(なり)」とし、羊の生肉がにおう意とする。第二字は「羊と亶センに从(したが)う」とし、同じ意味で亶センは発音を表した形声字。
意味 (1)なまぐさい(羶い)。羊のなま肉。「葷羶クンセン」(においの強い野菜と、生ぐさい肉)「羶血クンケツ」(生臭い血)「腥羶セイセン」(腥も羶も、生臭い意) (2)「羶行センコウ」とは、人にしたわれる言行。ありが羊の肉にしたい寄ってくるのを例えた言葉。
<紫色は常用漢字>

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音符「夸コ」<人がまたをひろげた形>と「誇コ」「胯コ」「跨コ」「刳コ」

2023年03月26日 | 漢字の音符
 コ  大部

解字 甲骨文と金文は、「大(ひと)+于(まがる)」の会意。于にまがる意がある。篆文から于⇒亏に変化した夸になった。大の形の人が、脚(あし)を広げて曲げたかたちで跨(またぐ・またがる)の原字。夸の単独字では人をまたいで、①ほこる(=誇る)、②おごりたかぶる、意味となる。
意味 (1)ほこる。大げさに言う。「夸言コゲン」「夸詐コサ」(ほらをふいてだます) (2)おごる。たかぶる。「夸者コシャ」 (3)またがる。(=跨)

イメージ 
 人を「またぐ」(夸・誇)
 「またぐ・またがる」(胯・袴・跨)
 またを開いた形から「まがる」(刳・瓠)
音の変化  コ:夸・誇・胯・袴・跨・刳・瓠

人をまたぐ
 コ・ほこる  言部
解字 「言(いう)+夸(人をまたぐ)」の会意形声。相手をまたいで言うこと。優越感を感じて言うことから、ほこる意となる。
意味 (1)ほこる(誇る)。自慢する。「誇示コジ」「誇張コチョウ」 (2)おおげさ。「誇誕コタン」(おおげさででたらめ)

またぐ・またがる
 コ・またぐ・またがる  足部
解字 「足(あし)+夸(またぐ)」の会意形声。足でまたぐこと。
意味 (1)またぐ(跨ぐ)。またがる(跨る)。のりこえる。「跨年コネン」(年をこえる。年末から年初にわたる)「跨越コエツ」(またぎこえる)「跨鶴コカク」(①鶴にまたがり空をとぶ。②仙人となる。③逝去する)「跨線橋コセンキョウ」(鉄道線路の上をまたぐ橋) (2)また。またぐら。(=胯)「跨下コカ」(またの下)
 コ・また  月部にく
解字 「月(からだ)+夸(またぐ)」の会意形声。月(からだ)のまたぐ部分である「また」を表す。
意味 また(胯)。またぐら。股とも書く。脚のつけねの内側。「胯下コカ」(またの下)「胯間コカン」(またの間)
 コ・はかま  衣部
解字 「衣(ころも)+夸(=胯。また)」の会意形声。胯の部分をおおう衣。
意味 はかま(袴)。腰から下をおおう衣服。「袴褶コシュウ」(騎馬用のはかま)「袴着はかまぎ」(男子に袴を着せる儀式)「洋袴ズボン

まがる
 コ・えぐる・くる  刂部
解字 「刂(かたな)+夸(まがる)」の会意形声。刀でまるく(曲線に)えぐること。
意味 えぐる(刳る)。くる(刳る)。くりぬく。「刳り舟」「刳刀コトウ」(やりがんな)「襟刳(えりぐ)り」(洋服の仕立てで首回りに準じて、刳りあけた襟回りの線。ネックライン)
 コ・ひさご・ふくべ  瓜部

ひさごのひ杓(「谷中松野屋」のHPより)
解字 「瓜(うり科の植物)+夸(=刳。くりぬく)」の会意形声。中身を刳りぬいて容器とする瓜である、ひさご(瓠)をいう。成熟したひさごを半分に割って中身を刳りぬき、ひ杓などにしたもの。瓜の外形を保ったヒョウタンは、瓜の口に穴をあけ水に漬け、中身が腐ってから取り出してつくる。
意味 ひさご(瓠)。ふくべ(瓠)。瓢ヒョウ・匏ホウとも書く。「瓠瓢コヒョウ」(瓠も瓢も、ひさごの意) (1)ヒョウタン・ユウガオなど、ウリ科の一年草。「瓠瓜コカ」 (2)ヒョウタンの果実の中をとり除き乾燥させたもの。酒や水の容器として使う。「瓠尊コソン」(ひさご形の酒つぼ)
<紫色は常用漢字>

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音符「爯ショウ」 <ひもで結ぶ> と 「称ショウ」「偁ショウ」

2023年03月24日 | 漢字の音符
爯[尓] ショウ  爪部

解字 「手のかたち+冉ゼン(結んだひも)」で、ひもを使って縛る様子を表す[甲骨文字辞典]。意味は、「①紐を用いて物を作ること。「爯柵ショウさく」(防御用の柵を結んで作る)「爯玉ショウギョク」(ひもで玉飾りを作る)②行動を起こすこと。などの用法が見られる」という。篆文から「爫(上からの手)+冉ゼン」となり、現代字の爯ショウとなった。新字体で使われるとき、爯 ⇒ 尓に変化する。
意味 (1)ひもを用いてしばる。むすぶ。(2)行動を起こす。

イメージ 
 「ひもでむすぶ」
(爯・称・偁)
音の変化  ショウ:爯・称・偁

ひもでむすぶ
[稱] ショウ・となえる・たたえる  禾部
解字 旧字は稱で 「禾(収穫した穀物)+爯(ひもでむすぶ)」 の会意形声。収穫した稲モミを袋にいれ、ひもで結び天秤ばかりに吊るして重さをはかること。[説文解字]は「銓(はか)る也。禾に从(したが)い爯の聲(声)。発音は處陵切(ショウ)とする。また、はかった重さをとなえ(称え)て、その出来栄えをほめること。新字体は、稱⇒称に変化する。
意味 (1)はかる。重さをはかる。つりあう。「称量ショウリョウ」(称も量も、はかる意。重さをはかること)「対称タイショウ」(重さが互いにつりあっていること。互いが同じこと) (2)いう。となえる(称える)。「名称メイショウ」「称号ショウゴウ」(呼び名。名称) (3)たたえる(称える)。ほめる。「称賛ショウサン」「称美ショウビ」(美を称える)
 ショウ・あげる  イ部

解字 甲骨文・金文は、人がひもで結んだ物を手でもちあげている形で、もちあげる意。字形は篆文から「人+爯」に分離し、現代字は「イ+爯」の偁ショウになった。意味は「もちあげる」のほか、同音の稱ショウの意味のうち、①ほめる、②いう、の意味を受け継ぎ、人をほめる、人がとなえる・いう意となり、おおくの意味が称に準じる。
意味 (1)あげる(偁る)。かかげる。 (2)ほめる。たたえる。「偁賛ショウサン」 (3)いう。その名をいう。「之(これ)を偁(い)う」 
<紫色は常用漢字>

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解字「后コウ」<きみ・きさき> と 「垢コウ」「詬コウ」「逅コウ」

2023年03月22日 | 漢字の音符
  后の解字を改めました。
 コウ・ゴ・きさき・のち  口部 hòu

解字 金文は「人の変形+口(くち)」で、命令を発する人の形。王である「きみ」の意味を表す。また、代々の直系の王をいうことから、次の王を生む后(きさき)の意ともなり、現在ではこの意味が主流となった。字形は篆文を経て現代字は后となった。また、同音の後コウ・ゴ(のち)に通じ、のち・あとの意もある。
意味 (1)[往時の用法]きみ(后)。皇君。天子。「后王コウオウ」(天子。君主) (2)きさき(后)。天皇の妻。「皇后コウゴウ」「后妃コウヒ」(きさき。后も妃も、きさきの意)「皇太后コウタイゴウ」(先帝の皇后) (3)地の神。「后土コウド」 (4)のち(后)。あと。「午后ゴゴ

イメージ 
 「きみ・きさき」
(后)
 「形声字」(垢・詬・逅)
音の変化  コウ:后・垢・詬・逅

形声字
 コウ・ク・あか  土部 gòu
解字 「土(つち)+后(コウ)」の形声。コウは厚コウ(あつい)に通じ、厚くつもった土ぼこりの意。ひろく、あか・よごれを表す。なお、[説文解字]は「濁る也(なり)」とあり、発音字典の[正韻]は「塵滓ジンシ(ちりとかす)也(なり)」とする。また、よごれることから、体面をけがす意ともなる。
意味 (1)あか(垢)。土ぼこりや、ちりのたまったもの。よごれ。ほこり・ちり。「垢脂コウシ」(汗やあぶらのよごれ)「歯垢シコウ」(歯のあか) (2)けがれ。「垢離コリ」(水を浴びて心身のけがれをとり去る)「無垢ムク」(けがれのない。うぶな) (3)はじ。はずかしめ。「垢辱コウジョク」(はずかしめ)
 コウ  言部 gòu
解字 「言(ことば)+后(=垢。はずかしめ)」の形声。言葉ではずかしめること。
意味 はずかしめる(詬める)。ののしる。はじ(詬)。「詬罵コウバ」(ののしりはずかしめる)「詬恥コウチ」(詬も恥も、はじの意)
 コウ  辶部 hòu
解字 「辶(ゆく)+后(コウ)」の形声。コウは遘コウ(あう・であう)に通じ、あうこと。
意味 あう。めぐりあう。「邂逅カイコウ」(思いがけなく出会うこと)
<紫色は常用漢字>

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音符「宗シュウ」<先祖をまつる建物>と「崇スウ」「踪ソウ」「綜ソウ」

2023年03月19日 | 漢字の音符
  増補改訂しました。
 シュウ・ソウ・むね  宀部                

解字 「宀(たてもの)+示(祭壇)」の会意。祭壇を設けた廟(みたまや)を表し、祖先をまつる建物の意。また、祖先や祖先を祀る一族および一族の長の意味を表わす。
意味 (1)みたまや。祖先をまつる廟屋ビョウオク。「宗廟ソウビョウ」(祖先をまつる所) (2)もと。祖先。「宗主ソウシュ」(大本として仰ぎ尊ぶ首長)「宗家ソウケ」(宗主たる家) (3)むね(宗)。おもだったもの。おさ。第一人者。「宗匠ソウショウ」「詩宗シソウ」(詩の大家。すぐれた詩人。詩伯) (4)仏教の流派。「真言宗シンゴンシュウ」 (5)「宗教シュウキョウ」(religionの訳。神または超越的絶対者に対する信仰・行事・その体系。原始宗教、民族宗教、世界的宗教などがある)

イメージ 
 「先祖をまつる所」(宗)
 祖先をまつる一族の「おさ・おさめる」(綜)
 祖先から代々続く意から「まっすぐ続く・まっすぐ」(踪・崇・棕・淙)
 「形声字」(粽)
音の変化  シュウ:宗  シュ:棕  スウ:崇  ソウ:綜・踪・粽

おさ・おさめる
 ソウ・すべる  糸部
解字 「糸(いと)+宗(おさめる)」の会意形声。糸をまとめてコントロールすること。
意味 (1)すべる(綜べる)。何本もの糸をまとめる。すべあつめる。「綜合ソウゴウ」(個々のものを一つにまとめる。=総合)「綜覧ソウラン」(全体に目を通す。=総覧)「錯綜サクソウ」(まとめることが乱れる。いりみだれる) (2)へ。おさ(筬)。機を織るとき縦糸を一斉にコントロールして上げ下げする道具。「綜絖ソウコウ」(縦糸を上下させて、横糸を通す杼の道をつくるための道具)

まっすぐ続く・まっすぐ
 ソウ・あと  足部   
解字 「足(あし)+宗(まっすぐ続く)」の会意形声。まっすぐ続く足跡。
意味 (1)あと(踪)。まっすぐ続くあしあと。「踪跡ソウセキ」 (2)ゆくえ。ありか。「失踪シッソウ
 スウ・たかい・あがめる  山部  
解字 「山(やま)+宗(まっすぐ)」の形声。山がまっすぐ高くそびえているさま。
意味 (1)たかい(崇い)。けだかい。「崇山スウザン」(たかい山)「崇高スウコウ」(けだかく偉大)「崇位スウイ」(高い位) (2)たっとぶ(崇ぶ)。あがめる(崇める)。「崇拝スウハイ」「尊崇ソンスウ」(とうとびあがめる)
 シュ・ソウ  木部
解字 「木(き)+宗(まっすぐ)」の会意形声。まっすぐ高く伸びる棕櫚の木。
意味 「棕櫚シュロ」(まっすぐな幹をしたヤシ科の常緑高木)に使われる字。
 ソウ  氵部
解字 「氵(みず)+宗(つづく)」の会意形声。つづく水の流れ。
意味 (1)水の流れるさま。「淙然ソウゼン」(水の流れるさま)「淙淙ソウソウ」(水の流れるさま) (2)水の流れる音。「淙琤ソウソウ」(水の流れる音)「淙潺ソウセン」(水のさらさら流れる音) (3)そそぐ。流れ込む。

形声字
 ソウ・ちまき  米部

日本の粽(京菓子店のHPより)

中国の粽(横浜中華街の店のHP)
解字 [説文解字]は糉ソウで「蘆あし葉に裹(つつ)む米也なり。米に从(したが)い㚇ソウ聲(声)」とする。蘆(芦)の葉に米を包んで蒸した「ちまき」で、発音が㚇ソウ。㚇は、「鳥が飛ぶとき足を収める也」などの説明があるが意味がよく分からない字。音符となるときソウの発音を表す。楷書から、㚇ソウ⇒宗ソウに変化した粽ソウになった。日本ではチガヤの葉で巻いたので、ちまきの名がつく。日本も中国も現在、ほとんどがササの葉で巻いて作る。
意味 ちまき(粽)。もち米やうるち米の粉でつくった餠などをチガヤやササの葉で巻いて細長い円錐形にし蒸したり茹でて加熱した食品。その葉を剥いて食べる。中国では米と一緒に、味付けした肉などを加えることが多い。巻き方は中国では三角形と細長いものと二種類ある。端午の節句にちまきを食べる習慣がある。「粽笹ちまきざさ」(粽を包むのに用いる笹)「粽子ソウシ」(ちまき)
<紫色は常用漢字>


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音符「昆コン」<なかま> と「混コン」「焜コン」「棍コン」「崑コン」

2023年03月16日 | 漢字の音符
  増補改訂しました。
 コン・なかま  日部

解字 金文は、日に動物の足のようなものが二つ付いた形。意味は「昆疕コンヒ」という西周晚期の国名に用いられている。この字を昆虫の象形とする説[字統]がある。私は当初、この説にとびついて解字したが、昆には様々な意味があり、昆虫の象形字を出発点として展開するのは難しいことが分かった。従って金文は解字不能である。次の篆文になると「日+比(右向きの人が二人)」の昆となり、[説文解字]は「同ドウ也(なり)。日に从(したが)い比に从(したが)う。(発音は)古渾切(コン)」とする。同は、同(おな)じ意でなく、ここでは会同(寄り集まる)、同朋(なかま)などの「あつまる」「ともに」の意味である。この意味は「日(ひ)+比(人が二人)」と解釈し、太陽のもとで並んでいる人々⇒あつまる・ともに、と解釈したものとおもわれる。また、「ともに」から転じて、ともに居る「兄弟」の意味になった。「昆蟲(虫)コンチュウ」は群れをなす蟲(子虫)の意で、昆に昆虫の意味はない。
意味 (1)なかま(昆)。むれ。非常に多い。「昆虫コンチュウ」(①群れをなす子虫。②節足動物の一つ。頭・胸・腹が分かれ胸に羽や足をもつ)「昆布コンブ」(まとまって多く生える布のような海藻) (2)あに(昆)。兄弟。「昆弟コンテイ」(兄と弟)「昆季コンキ」(①兄と末の弟。②兄弟) (3)子孫。後代。よつぎ。「昆後コンゴ」(あとつぎ。子孫。=後昆ゴコン) (4)地名。「昆明コンメイ」(雲南省にある地名)

イメージ 
 「あつまる・ともに」(昆・混・焜・鯤・棍) 
 「形声字」(崑)
音の変化 コン:昆・混・焜・鯤・棍・崑

あつまる・ともに
 コン・まじる・まざる・まぜる・こむ  氵部
解字 「氵(みず)+昆(あつまる)」の会意形声。水流があつまること。こみあう。いりまじる意となる。水流に関係なく用いる。
意味 (1)こみあう。こむ(混む)。入り乱れる。「混雑コンザツ」「混乱コンラン」 (2)まじる(混じる)。まざる(混ざる)。まぜる(混ぜる)。「混合コンゴウ」「混入コンニュウ」「混迷コンメイ
 コン・はらご  魚部
解字 「魚(さかな)+昆(あつまる)」の会意形声。魚の腹にあつまっている卵をいう。また、想像上の大魚の意味で使う。
意味 (1)はらご(鯤)。魚のたまご。また、孵化したばかりの稚魚。「鯤鮞コンジ」(はららご。はらご) (2)北海にすむという想像上の大魚の名。「鯤鵬コンホウ」(想像上の大魚と大鳥)
 コン・かがやく  火部
解字 「火(ひ)+昆(あつまる)」の会意形声。火があつまる形で、かがやく・ひかる意。日本では、焜炉コンロの意で使われる。
意味 (1)かがやく(焜く)。ひかる。「焜輝コンヨウ」(てりかがやく。焜も輝も、かがやく意) (2)[国]「焜炉コンロ」(本来は運搬可能な小型の調理用の炉。現在は調理用加熱器の類をいう)「電気焜炉コンロ」「ガス焜炉コンロ
 コン  王部
解字 「王(たま)+昆(=焜。かがやく)」の会意形声。かがやく玉の意。美しい宝石をいう。
意味 (1)「琨玉コンギョク」(美しい玉)「琨玉秋霜コンギョク シュウソウ」(美しい玉と秋の霜。人格が気高く節操がある) (2)「琨珸コンゴ」(西海の島にあるという山の名。また、そこに産する石。)
 コン・つえ   木部

木棍(木のつえ)中国の商品販売サイトより
解字 「木(き)+昆(ともに)」の形声。人が手に持ち、ともに携える木の棒。杖(つえ)や、護身用の棒、および攻撃用の棒をいう。また、この棒を持ち悪事をはたらくごろつきをいう。
意味 (1)つえ(棍)。木の棒。「木棍ボッコン」(木のつえ)「棍棒コンボウ」(①先が太い棒。木の棒。②[国]体操競技で使うとっくり形の木の棒)「棍術コンジュツ」(木の棒を武器とする武術) (2)わるもの。ごろつき。「棍徒コント」「賭棍トコン」(賭博トバクをするごろつき)

形声字
 コン   山部
解字 「山(やま)+昆(コン)」の形声。コンという名の山。

崑崙山脈(「History of World」より)
意味 (1)「崑崙コンロン」という山の名に使われる字。古代に西方にあると想像された高山。崑山コンサン・崑丘コンキュウとも。天の仙人が地上に降りて住む山で、仙女の西王母がいるとされた。「崑崙八仙コンロンハッセン」(崑崙山にいる八人の仙女の舞の意で、雅楽の一つ)「崑玉コンギョク」(①崑崙山から産する玉。②すぐれた詩文) (2)「崑崙山脈」の略。チベット高原の北を東西に走る山脈。
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音符「其キ」<箕のかたち>と「期キ」「旗キ」「棋キ」「欺ギ」「碁ゴ」

2023年03月14日 | 漢字の音符
 増補改訂しました。
 キ・その・それ  ハ部

解字 甲骨文・金文は、収穫した穀物を中にいれ、あおってカラなどを取りのぞく道具である箕(み)を描いた象形。篆文は、箕を台の上にのせた形を描く。しかし、本来の意味でなく仮借カシャ(当て字)されて、やや遠い所の物をさす語や助字となった。
意味 (1)その(其の)。それ(其れ)。人や物をさす語。「其処そこ」 (2)それ。語気を強めたり、語調を整える助字。

イメージ 
 「その(仮借)」
(其・期)
 「箕のかたち・四角い」(箕・萁・基・棋・碁・旗・倛・欺・斯)
 「形声字」(麒・騏・祺)  
音の変化  キ:其・期・箕・萁・基・棋・旗・倛・麒・騏・祺  ギ:欺  ゴ:碁  シ:斯

その
 キ・ゴ  月部
解字 「月(月日)+其(その)」の会意形声。ある指定された、その月日。
意味 (1)とき。おり。決められた時。「時期ジキ」「任期ニンキ」「期末キマツ」「期月キゲツ」(①かねて決めた期限の月。②1カ月) (2)ねがう。あてにする。「期待キタイ」「所期ショキ

箕のかたち・四角い
 キ・み  竹部
 竹の箕
解字 「竹(たけ)+其(箕のかたち)」の会意形声。其は箕のかたちの象形。そこに竹をつけて竹製の箕を表す。
意味 み(箕)。穀物を中にいれ、あおってカラなどを取りのぞく道具。また、ちりとり。「箕箒キソウ・キシュウ」(ちりとりとほうき。掃除をすること)「唐箕とうみ」(木製の機械式になった箕。中国から伝わったので唐の字がつく)
 キ・まめがら  艸部
解字 「艸(植物)+其(=箕み)」の会意形声。実った大豆の茎を引き抜き、ゴザの上で棒でたたいて実を出し、これを集めて箕であおって豆を選別する。萁は豆の実を取り去った残りの茎をいう。[説文解字]は「豆の茎なり」とする。

大豆の収穫(神流町インターネット放送局)
意味 (1)まめがら(萁)。豆の実をとったあとの茎。カマドの燃料として利用した。「豆萁トウキ」(豆の茎)「萁稈キカン」(豆の茎)「豆を煮るに萁(まめがら)を焼く」(豆を兄、萁(まめがら)を弟に例え、兄弟の関係が不仲である例え)(2)おぎ(荻)に似た草の一種。箙えびらを編む材料にした。
 キ・もと・もとい  土部
解字 「土(つち)+其(四角い)」の会意形声。四角い土の壇。この上にお堂などの建物が建つので、転じて物事のもとになるもの。
意味 もとづく(基づく)。もとい(基)。「基本キホン」「基礎キソ」「基準キジュン
[棊] キ  木部
解字 「木(き)+其(四角い)」の会意形声。囲碁及び将棋で使う四角い木の盤。棊は異体字。
意味 囲碁・将棋。また、碁盤・将棋盤や碁石・駒。「棋士キシ」「棋局キキョク」(①碁盤。また将棋盤。②囲碁・将棋の局面)「棋譜キフ」(囲碁・将棋の手順の記録)「棋客キカク」(囲碁・将棋をする人。棋士)
 ゴ  石部
解字 「石(いし)+其(=棋。四角い木の盤)」の会意形声。四角い木の盤に碁石をおく遊戯。発音のゴは呉音。
意味 ご(碁)。「碁盤ゴバン」「囲碁イゴ」「碁石ゴイシ」「持碁ジゴ」(引き分けとなった碁)「碁笥ゴけ」(碁石を入れる円い器)
 キ・はた  方部
解字 「方𠂉(はた)+其(四角い)」の会意形声。旗から其をとった形は、旗のゆらめくさまを描いた象形。そこに其(四角い)をつけた旗は四角いはたの意。旗については「斿ユウ」を参照。
意味 はた(旗)。はたじるし。「旗手キシュ」「校旗コウキ」「旗艦キカン」(司令官が乗っている軍艦)
 キ  イ部
解字 「イ(ひと)+其(四角い)」の会意形声。四角い面をかぶった人。旧暦・年末の厄払いにかぶり、悪鬼を退散させるのに用いる四角い面。
意味 四角い大きな面。「蒙倛モウキ」(おにやらいをする時かぶる面。四目の者を方相、両目の者を倛という)
 ギ・あざむく  欠部
解字 「欠ケン(口をあけて立つ人)+其(=倛)」の会意形声。其は倛(鬼やらいの四角い面)の略体。欺は、面をかぶってしゃべり相手をあざむくこと。
意味 あざむく(欺く)。だます。「欺瞞ギマン」「詐欺サギ
 シ・これ・この・ここ・かく・かかる  斤部
解字 「斤(おの)+其(=棋。四角い木の盤)」の会意。木の盤の上で、斤で物をきる意だが、仮借カシャ(当て字)され、「これ・この」など、ものを指示する代名詞に使う。
意味 (1)これ(斯)。この(斯の)。ここ。「斯界シカイ」(この社会。この分野)「斯学シガク」(この分野の学問)「斯道シドウ」(この道。この分野) (2)かく。かように。「斯様かよう」 (3)音訳字。「瓦斯ガス」(gasの音訳。斯の発音は現代中国音)
音符「斯シ」で斯の音符字をまとめています。

形声字
 キ  鹿部
解字 「鹿(しか)+其(キ)」の形声。キは冀(すぐれた能力をもつ)に通じ、すぐれた能力をもつ鹿の意で、鹿に似た聖獣をいう。冀キを参照。
意味 麒麟キリンに使われる字。「麒麟キリン」(①鹿に似てさらに大きく、顔は龍に似、牛の尾と馬の蹄をもち、雄は頭に角をもつとも言われる中国の伝説上の聖獣。 ②キリン科の哺乳動物。首とあしが非常に長い。 ③「麒麟児キリンジ」とは、将来が楽しみとされるすぐれた才能をもつ少年。)
 キ  馬部
解字 「馬(うま)+基(キ)」の形声。キは冀(すぐれた能力をもつ)に通じ、すぐれた能力をもつ馬をいう。
意味 (1)すぐれた馬。駿馬。「騏驥キキ」(①すぐれて早く走る馬。騏驥ともに駿馬の意。②賢人)(2)青黒い毛色の馬。
 キ・さいわい  示部
解字 「示(神)+其(=基。もと)」の会意形声。古い字は其⇒基になっており、神が基(もと)にいる意。[説文解字]は「吉なり」とする。
意味 (1)さいわい(祺)。吉祥。「祺祥キショウ」(①さいわい。②清の同治帝の代に公布されながら、施行されなかった元号。1861年。)(2)心がおちついてやすらか。「祺然キゼン」(やすらかなさま) (3)手紙の文末に付ける語。「文祺ブンキ」「祺安キアン
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音符「用ヨウ」<版築工事の足場と型枠>と「庸ヨウ」「傭ヨウ」「墉ヨウ」

2023年03月12日 | 漢字の音符
 用は牧場の柵や垣根などの象形とする説が多い。しかし、「用いる」という意味は幅広く原義を確かめるのはむずかしい。私は、ここで庸ヨウの中で使われている「用」に注目し、これを「版築工事の足場と型枠の象形」と考えてみた。
 ヨウ・もちいる  用部

解字 土を打ち固めて壁を築く版築ハンチク工法の足場の象形。タテの線が足場の棒、斜めの筋かいも入る。横をつらぬく二線で型枠の板を表わす。ここに土を入れて杵で突き固める。板幅の高さまで突き固めると、型枠の板を上にあげて壁を高くしてゆく。城壁や土壁を造るのに使うので「用いる」意となる。
意味 (1)もちいる(用いる)。つかう。「用意ヨウイ」「使用シヨウ」 (2)はたらき。ききめ。「作用サヨウ」「効用コウヨウ」 (3)する仕事。「用件ヨウケン」「所用ショヨウ

イメージ 
 「版築工事の足場と型枠」
(用・庸・墉)
 版築工事は「人をもちいる(庸)」(傭)
 庸の意味(4)「労役」(慵)
音の変化  ヨウ:用・庸・墉・傭・慵

版築工事の足場と型枠
 ヨウ・もちいる  广部 
版築の図(新浪網より)
 
②版築の作業(四川省麻辣社区 )
③版築作業でキネをつく人(同上)

解字 篆文は「両手でキネをつく形+用(版築の足場と型枠)」の会意。版築工事の型枠の中でキネを両手で持ち、運ばれてきた土を搗き固めて城壁や土壁をつくること。城壁や土壁をつくるのは人を使う仕事なので、人をもちいる、やとう意などとなる。篆文の次に現われた隷書レイショで、キネの上部と左の手の一部が合体して广(まだれ)に変化し庸のかたちになった。
意味 (1)もちいる(庸いる)。やとう。「登庸トウヨウ」 (2)(土を均等に搗くことから)かたよらない。「中庸チュウヨウ」(かたよらず常に変わらない) (3)(土固めは誰でもできる仕事の意から)世間なみ。普通。「凡庸ボンヨウ」(平凡。平凡な人) (4)律令制の税金のひとつ。労役をいう。「租庸調ソヨウチョウ」(租は田からの収穫物、庸は労役、調は絹や布などの産物)
 ヨウ  土部
解字 「土(つち)+庸(城壁や土壁をつくる)」の会意形声。庸は、もともと城壁や土壁をつくる形であるが、やとう・かたよらない等の意となったため、土をつけて本来の意味を表した。
意味 (1)かき。城の垣かき。「城ジョウヨウ」(城壁)「ヨウイ」(垣で囲む) (2)城。 (3)かべ。

人をもちいる
 ヨウ・やとう  イ部
解字 「イ(ひと)+庸(人をもちいる)」の会意形声。庸には人をもちいる意があり、イ(ひと)をつけて人をやとう意となる。
意味 やとう(傭う)。やとわれる。「傭兵ヨウヘイ」(やとい兵)「傭船ヨウセン」(船と船員をやとう)「傭役ヨウエキ」(やとってつかう)

労役
 ヨウ・ショウ・ものうい  忄部
解字 「忄(こころ)+庸(労役)」の会意形声。庸には労役の意味があり労役に出る心の意。強制される労役に心が物憂いさま。
意味 ものうい(慵い)。おっくうなさま。「慵懶ヨウラン」(慵も懶も、ものういさま)「慵惰ヨウダ」(おっくうでおこたる)
<紫色は常用漢字>

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音符「从ジュウ」<したがう>と「従ジュウ」「縦ジュウ」「蹤ショウ」「樅もみ」「聳ショウ」

2023年03月10日 | 漢字の音符
  増補改訂しました。
 ジュウ・ショウ  人部    

解字 「人+人」の会意。人が前後にならぶ形。前の人に従ってゆくことから、したがう意となる。
意味 したがう。従の原字。

    ジュウ <つきしたがう>
[從] ジュウ・ショウ・ジュ・したがう・したがえる  彳部

解字 甲骨文第一字は、从ジュウで前の人に後ろの人がつき従う形。これが「従」の原点である。甲骨文第二字は、そこに路上を示す彳がつき、金文になると、さらに止(あし)が付いて文字として完成した。したがう・したがって行く意を表わす。篆文は彳と止が一体となったが、旧字は彳と止が離れて金文の形にもどっている。また、人が付き従って歩くときはタテの列になることから、タテの意もある。新字体は、旧字の從⇒従に変化した。簡略にしたのだろうが、この文字の原点である从ジュウが消えたのは残念なことである。
意味 (1)したがう(従う)。したがえる(従える)。つきしたがう。「従属ジュウゾク」「追従ツイジュウ」 (2)たずさわる。「従事ジュウジ」 (3)しもべ。したがう人。「従者ジュウシャ」「主従シュジュウ」 (4)たて。(=縦)。南北。「合従ガッショウ」(縦に国が連合する)「合従連衡ガッショウレンコウ」(縦や横に連合する。外交のかけひき) (5)(従ってゆくので)まかせる。のんびりする。「従容ショウヨウ」(ゆったりとおちつく) (6)~より。~から。


イメージ 
 「つきしたがう」
(従・蹤・慫)
 人が付き従って歩く時はタテの列になる「タテ」(縦・樅・聳)
音の変化  ジュウ:従・縦  ショウ:蹤・慫・樅・聳

したがう
 ショウ・あと  足部
解字 「足(あし)+從(つきしたがう)」の会意形声。先人につきしたがい、後を足でついてゆくこと。足あとの意と、したがう意とある。
意味 (1)あと(蹤)。足あと。人の行ないのあと。「蹤跡ショウセキ」(①あしあと。②人のあとをつける)「先蹤センショウ」(先人の事跡。先例) (2)したがう。つく。「追蹤ツイショウ」(①追跡する。②過ぎたことを思い出す)
 ショウ・すすめる  心部
解字 「心(こころ)+從(つきしたがう)」の会意形声。付き従って相手の心にはたらきかけること。さそい勧めること。
意味 すすめる(慫める)。「慫慂ショウヨウ」(慫も慂も、すすめる意。傍(かたわ)らから誘いすすめること)

タテ
 ジュウ・たて  糸部
解字 旧字は縱で「糸(いと)+從(タテ)」の会意形声。機織りのタテ糸を表す。新字体は縦に変化する。織機のタテ糸は常に横糸を交差させて織ることから、縦横が自由自在であり、転じて思うまま心のままの意となる。
意味 (1)たて(縦)。上下または南北の方向。「縦貫ジュウカン」「縦走ジュウソウ」 (2)ほしいまま(縦)。きまま。「操縦ソウジュウ」(思いのままにあやつる。特に飛行機の運転をいう)「縦覧ジュウラン」(自由に見る)(3)仮定の助字。よしんば(縦んば)。
 ショウ・もみ  木部
解字 「木(樹木)+從(タテにまっすぐ)」の会意形声。タテにまっすぐ伸びる木。
意味 もみ(樅)。マツ科の常緑高木。円錐形の美しい樹形をしているためクリスマスツリーに用いる。
 ショウ・そびえる・そばだつ・そびやかす  耳部
解字 「耳(みみ)+從(タテに)」の会意形声。動物が、垂れていた耳をまっすぐ立てて耳をそばだてること。転じて高くそびえる意となる。また、動物が耳を立て危険を察知して、おそれる意となる。
意味 (1)そばだてる(聳てる)。耳をたてる。(2)そびえる(聳える)。そばだつ(聳つ)。そびやかす(聳やかす)。「聳峙ショウジ」(山など高くそびえ立つ)「聳立ショウリツ」(高くそびえたつ) (3)おそれる。「聳動ショウドウ」(恐れおののく)
<紫色は常用漢字>

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