漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「昌ショウ」 <さかんに声をだす> と 「唱ショウ」

2020年11月25日 | 漢字の音符
 ショウ・さかん  日部 

 春秋戦国の金文は「日(ひ)+口中に一を入れた形(声を出す)」の会意。太陽が昇る日の出を拝んで口から声を出すかたちで、唱ショウ(となえる)の原字。しかし、この字は仮借カシャ(当て字)され、金文から繁昌(さかん)の意味で用いられている。おそらく、大勢が日の出を拝んで声をそろえることから、勢いが盛んの意で用いられたのであろう。字形は篆文で「口中の一」⇒曰(いう・いわく)になり、現代字は日が二つ重なった昌になった。意味は金文を引き継ぎ、さかん・さかえる意。※昌の字は活字で日を重ねるが、書道では曰を重ねることが多い。
意味 (1)さかん(昌ん)。勢いが盛ん。さかえる。「昌運ショウウン」(国がさかえる運命。盛んな時世)「昌平ショウヘイ」(国が盛んで世が太平)「昌盛ショウセイ」(さかんなこと。昌も盛も、さかんの意)「繁昌ハンジョウ」(にぎわいさかえる) (2)よい。美しい。「昌言ショウゲン」(道理にかなったよい言葉)

イメージ 
 「さかん・勢いがよい」(昌・菖・猖・椙)
 「さかんに声をだす」(唱・娼・倡)
音の変化  ショウ:昌・唱・娼・倡・菖・猖  すぎ:椙

勢いがよい
 ショウ  艸部
会意 「艸(草)+昌(勢いがよい)」の会意形声。勢いよくまっすぐ伸びる草。
意味 (1)しょうぶ(菖蒲)。サトイモ科の多年草、葉は長い剣状で芳香があり端午の節句に菖蒲湯とする。花は穂状で目立たない。「菖蒲湯ショウブユ」 (2)あやめ(菖蒲)。アヤメ科の多年草。剣状の葉を持つところは菖蒲と似ているがきれいな花をつける。
 ショウ・くるう  犭部
解字 「犭(いぬ)+昌(勢いがよい)」の会意形声。犬がはげしく暴れまわる状態をいう。
意味 くるう(猖う)。たけり狂う。あばれまわる。「猖狂ショウキョウ」(はげしく狂う)「猖獗ショウケツ」(猛威をふるう)
 <国字> すぎ  木部
解字 「木(き)+昌(勢いがよい)」の会意形声。勢いよくまっすぐのびる木(昌んな木)。
意味 すぎ(椙)。すぎの木。「椙山すぎやま」(姓)「椙杜すぎもり」(姓)

さかんに声をだす
 ショウ・となえる  口部
解字 「口(くち)+昌(さかんに声をだす)」の会意形声。昌に盛んに声をだすイメージがあり、口をつけてその意を強めた。うたう、となえる、先頭に立って言う意を表わす。
意味 (1)うたう。吟ずる。「独唱ドクショウ」「校歌斉唱コウカセイショウ」(そろって歌う) (2)声をたててよむ。高くさけぶ。「復唱フクショウ」「万歳三唱バンザイサンショウ」 (3)となえる(唱える)。言い始める。先頭に立っていう。「提唱テイショウ」「唱和ショウワ」(ひとりが唱え、他の者がそれに和する)
 ショウ・あそびめ  女部
解字 「女(おんな)+昌(さかんに声をだす=唱)」 の会意形声。声を出し歌い舞って客を喜ばせる女。
意味 うたいめ。あそびめ。遊女。「娼妓ショウギ」(遊女)「娼家ショウカ」(遊女屋)
 ショウ・わざおぎ  イ部
解字 「イ(人)+昌(さかんに声をだす=唱)」 の会意形声。声を出し歌い舞って客を喜ばせる人。俳優や楽人を意味するが、同音の唱・娼に通じて用いられることもある。
意味 (1)わざおぎ(倡)。俳優。楽人。「倡優ショウユウ」(役者) (2)うたいめ。「倡妓ショウギ」(=娼妓) (3)となえる。一番はじめに言い出す。「倡道ショウドウ」(先にとなえる)「倡和ショウワ」(ある者が先にとなえ、他の者がそれに和する)
<紫色は常用漢字>


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音符「専セン」<糸をよる紡錘車をまわす>「団ダン」「転テン」「伝デン」

2020年11月22日 | 漢字の音符
[專] セン・もっぱら  寸部

解字 叀センは糸をよる紡錘車(つむ)の形。專は「寸(手)+叀(紡錘車)」の会意形声で、紡錘車を手でくるくる回しながら糸をつむぐ(よる)こと。糸が常にひとつの中心をめぐることから、「もっぱら」の意を表わす。新字体は旧字の專⇒専に変化した。
 紡錘車   出土紡錘車
     紡錘車による糸紡ぎの方法<YouTube> 

意味 (1)もっぱら(専ら)。いちずに。「専門センモン」「専攻センコウ」(専門に研究する分野)(2)一人占めする。「専売センバイ」「専有センユウ」「専決センケツ」(3)ほしいままにする。「専制センセイ」「専横センオウ」(身勝手にふるまう)

イメージ 
 「紡錘車(つむ)」
(専・塼・磚・甎)
 紡錘車は「まるい」(団・摶・蓴)
 紡錘車は「まわる」(伝・転・囀)
音の変化  セン:専・塼・甎  ジュン:蓴  タン:磚・摶  ダン:団  テン:転・囀  デン:伝

紡錘車
 セン・タン・かわら  土部 
解字 「土(つち)+專(紡錘車)」 の会意形声。土焼きの紡錘車の意。転じてまるいかわらの意で使われる。
意味 (1)いとくり。「紡塼ボウセン」(糸ぐるま。紡錘車)(2)まるく平らなかわら。かわら。「塼塔セントウ」(かわらで築いた塔)(3)まどか。まるい。
 タン・セン  石部
解字 「石+專(紡錘車)」の会意形声。石製の紡錘車の意。転じて、円くて平らな敷き石や煉瓦をいう。
意味 (1)かわら。まるい敷き石や煉瓦。(2)まるく平らなさま。「磚茶タンチャ」(茶葉を蒸して円盤状,円錐状,碗状などに押し固めて乾燥したもの)
 セン・かわら  瓦部
解字 「瓦(かわら)+專(=塼。かわら)」の会意形声。まるく平らに焼いた瓦。
意味 しきがわら。かわら。まるく平らに焼いて敷き石にするかわら。のち、形をとわず敷石にするかわらをいう。「甎匠センショウ」(かわらを作る人)「甎全センゼン」(敷きがわらのようにつまらぬものとなって身を全うする)

まるい
[團] ダン・トン・まるい  囗部  
解字 旧字は團で「囗(かこむ)+專(まるい)」 の会意。まるく囲む意。新字体は旧字の專⇒ 寸に略された団になった。
意味 (1)まるい(団い)。「団扇うちわ」「団子だんご」(2)まどか。おだやか。「団欒ダンラン」(3)集まる。かたまり。「集団シュウダン」「布団フトン」「団塊ダンカイ
 タン・セン  扌部
解字 「扌(て)+專(まるい)」の会意形声。手でまるめること。まるい形にする意。
意味 (1)まるめる。まるい。「摶飯タンハン」(握り飯)「摶土タンド」(土をまるめる)「摶沙タンサ」(砂をまるめる、すなわち元に戻りやすいこと) (2)(専センに通じ)もっぱら。「摶一センイツ」(一つの事にだけ心を集中する)
 ジュン  艸部 
 じゅんさい
解字 「艸(草)+專(まるい)」 の会意形声。平らで丸い葉が水面に浮かぶスイレン科の水草をいう。
意味 ぬなわ。じゅんさい(蓴菜)。スイレン科の多年生水草。池沼に自生。葉はほぼ円形で水面に浮く。若芽・若葉は食用として珍重される。

まわる
[傳] デン・つたえる・つたわる・つたう  イ部
解字 旧字は傳で「イ(人)+專(まわる)」 の会意。人から人へ回るように伝わること。新字体は旧字の專⇒云に変化した伝になった。
意味 (1)つたえる(伝える)。つたわる(伝わる)。「伝言デンゴン」「伝統デントウ」(2)ひろめる。「伝播デンパ」「喧伝ケンデン」(世間に言いはやし伝える)(3)いいつたえ。「伝記デンキ
[轉] テン・ころがる・ころげる・ころがす・ころぶ  車部
解字 旧字は轉で「車(くるま)+專(まわる)」 の会意。車がまわる意。新字体は旧字の專⇒云に変化した転になった。
意味 (1)ころがる(転がる)。まわる。「自転ジテン」「転回テンカイ」(2)ころぶ(転ぶ)。ひっくり返る。「転倒テントウ」「逆転ギャクテン」(3)うつる。「転居テンキョ」「移転イテン
 テン・さえずる  口部
解字 「口(くち)+轉(ころがす)」 の会意形声。口の中で声をころがすように出す。同じ音を連続して出す。
意味 (1)さえずる(囀る)。鳥がしきりに鳴き続ける。(2)しらべ。うたう。調子。声の移り変わる調子。(3)よくしゃべる。
<紫色は常用漢字>

参考 博の右上にはなぜ点があり、専にはないのか?
    音符「恵ケイ」(叀セン+心)へ

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音符「虒シ」<虎の皮をはぎとる>と「逓テイ」

2020年11月19日 | 漢字の音符
 シ・チ  虎部

解字 金文は、「くの字形(ひく)+虎(とら)」の会意。虎の皮をひっぱって剥ぐ形[字統を参考にした]。金文は人名および地名にもちいられている。篆文は[説文解字]が「委虒イシ 虎の角あるものなり」とし、伝説上の動物の名とした。字形は、くの字形⇒𠂆に変化した虒になった。
意味 (1)「委虒イシ」(伝説上の動物の名。虎ににており、角を持つ)。(2)「虒祁シキ」とは、宮殿の名。春秋時代、晋の平公が築いたとされる。なお、虒シ・チは[字統・逓テイ]の解字で皮を「はぎとる」イメージがある。

イメージ 
 皮を「はぎとる」(虒・褫)
 「はぎとった虎の皮」(逓)
 「チの音」(篪)

音の変化  シ:虒  チ:褫・篪  テイ:逓

はぎとる
 チ・うばう  衣部
解字 「衣(ころも)+虒(はぎとる)」 の会意形声。衣をはぎとること。
意味 うばう(褫う)。はぐ。衣服をぬがせ奪い取る。官職をはぎとる。「褫奪チダツ」(衣服・官職・権利などを奪い取る)「褫気チキ」(気をうばわれる。たまげる)

はぎとった虎の皮
[遞] テイ  辶部
解字 旧字のは、「辶(ゆく)+虒(はぎとった虎の皮)」 の会意形声。はいだ虎の皮をもってゆくこと。虎の皮を持って交易する意で、物が順次伝わってゆく意味となる。新字体は、旧字の虎の部分が「二+巾」に変わった逓になった。
意味 (1)次々と伝え送る。「逓信テイシン」(郵便や電信などで順次取り次いで伝える)「逓送テイソウ」(荷物や郵便を順次、駅から駅へと送ること)「駅逓エキテイ」(宿駅から宿駅へと荷物などを送ること。うまつなぎ。) (2)しだいに。だんだん。「逓減テイゲン」「逓増テイゾウ
覚え方 野()から野()へふたつ()のきん()を伝えゆく() 信省

チの音
 チ  竹部
 ちのふえ(湖北省博物館所蔵)
解字 「竹(=籥ヤクの略体。竹笛)+虒(チ)」 の形声。チという名の竹笛。籥ヤクは、穴が三つまたは六つある短い笛なのに対し、篪は長い横笛で低音部を担当する。
意味 ちのふえ。横笛の一種。八つまたは七つの穴で、分類百科辞典の[爾雅ジガ]に、長さは一尺四寸、小は一尺二寸とある。「吹篪スイチ」(ちのふえを吹く)「壎篪ケンチ」(ケンは土を焼いて作った紡錘形の笛。チと音色がよく調和するところから、兄弟の仲が良いことのたとえ)
 写真は戦国初期の曽侯乙墓から出土した2本の篪チ。指をあてる穴が5つあり、上端に吹く穴が見える。長さは約30センチ。
<紫色は常用漢字>  

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音符「肙ケン」<まるく細長い虫>と「絹ケン」「羂ケン」「鵑ケン」「捐エン」

2020年11月16日 | 漢字の音符
 エン・ケン  月部にく         

解字 「口(まるい)+月(からだ)」の会意。まるくて細長い芋虫の形を表わし、蜎の原字。「まるく細長い虫」のイメージを持つ。
意味 (1)小さく細長い虫。(2)うごく。(3)ぼうふら

イメージ  
 「まるく細長い虫」
(蜎・絹・羂・捐)
 「細長い・ちいさい」(娟・鵑・狷)
音の変化  ケン:絹・羂・娟・鵑・狷  エン:蜎・捐  

まるく細長い虫
 エン・ケン  虫部
解字 「虫(むし)+肙(まるく細長い虫)」の会意形声。虫をつけてもとの意味を強めた。いもむしがくねるさまをいう。ボウフラの意もある。また、娟ケンと通じ、美しい意でも使われる。
意味 (1)いもむしのはうさま。屈曲する。「蜎蜎エンエン」(いもむしの動くさま) (2)ぼうふら。蚊の幼虫。 (3)美しい。「蟬蜎センケン」(あでやかで美しい=嬋娟)
 ケン・きぬ  糸部
解字 「糸(いと)+肙(まるく細長い虫=かいこ)」の会意形声。肙はここでは蚕。絹は蚕が作った繭まゆからできる絹糸をいう。
意味 きぬ(絹)。きぬいと(絹糸)。また、絹糸の織物。「絹織物きぬおりもの」「絹布ケンプ」「絹本ケンポン」(絹の布に書いた文字や絵画)「人絹ジンケン」(人造絹糸の略)
 ケン  罒部よこめ
解字 「罒=网(あみ)+絹(絹糸)」の会意形声。絹糸で編んだ網。
意味 (1)わな。あみ。「羂索ケンサク・ケンザク」(①羂はあみ、索はつなの意で、網をつないで張った獲物を捕らえるわな。②[仏]衆生を救うために用いる五色の糸をより合わせてつくった縄。衆生救済の象徴とされ、不動明王・千手観音・不空羂索観音などがこれを持つ) (2)くくる。つなぐ。
 エン・すてる  扌部
解字 「扌(て)+肙(まるく細長い虫)」の会意形声。肙はここで芋虫やボウフラなどの役立たない虫のこと。これらの虫を手ですてること。
意味 (1)すてる(捐てる)。「捐棄エンキ」(すてる。捐も棄も、すてる意)「捐身エンシン」(身をすてる)「捐命エンメイ」(命をすてる) (2)さしだす。寄付する。「義捐金ギエンキン」(慈善・災害救助などのため寄付したお金。義援金とも書く) (3)清朝末期の税金の一種。「戸捐コエン」(家屋税)「房捐ボウエン」(家屋税)

細長い・ちいさい
 ケン・エン・うつくしい  女部
解字 「女(おんな)+肙(細長い)」の会意形声。すらっとした美しい女。
意味 うつくしい。しなやか。「娟秀ケンシュウ」(しなやかですぐれる)「娟雅ケンガ」(しなやかでみやびな美しさ)「嬋娟センケン」(あでやかで美しい)
 ケン  鳥部
 ホトトギス
解字 「鳥(とり)+肙(細長い)」の形声。細長くすらっとした鳥のホトトギス。
意味 「杜鵑トケン」とはホトトギスの意。中国・戦国時代の蜀の杜宇(望帝)が不品行により帝位を逐われ、魂が化してこの鳥になったという伝説から杜鵑トケンという。「杜鵑花トケンカ」(サツキツツジの別称・ホトトギスが鳴く頃に咲く花の意。
 ケン  犭部
解字 「犭(いぬ)+肙(ちいさい)」の会意形声。犭(いぬ)は、ここで犬のような人の意で評価の低い人物をさす。狷ケンは、心の小さく狭い人を意味し、頑固・片意地などの意となる。
意味 (1)心が狭い。気が短い。「狷急ケンキュウ」(度量が狭く気が短い)「狷狭ケンキョウ」(度量が狭い)「狭狷キョウケン」(理想に走りかたくなななこと[論語・子路]) (2)がんこ(頑固)。片意地な。「狷介ケンカイ」(かたく自己をまもり協調性にとぼしい。介は、かたい意)「狷介孤高ケンカイココウ」(かたく自己の意思を守り、他人と和合しない)「狷介固陋ケンカイコロウ」(かたく自己の意思を守り、新しいものを受け入れないこと)
<紫色は常用漢字>



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音符「前ゼン」<まえ・切りそろえる>と「煎セン」「箭セン」「揃える」

2020年11月13日 | 漢字の音符
 ゼン・セン・まえ  刂部

解字 甲骨文は、「あし(止)+凡(中空の器。ここでは、たらい)+行(ゆく)」の形。凡(たらい)に足をつけて洗い清めたのち、出発する(行く)形で、「まえにすすむ」意味を表わす。金文と篆文第一字は「行」を省き、凡⇒舟形(=たらい)になった歬ゼンの形。この字が「前」の原字で「まえ」の意味で使われた。篆文第二字で「歬ゼン+刂(刀)」が出現し、刀を加えた「前」の字ができた。この字は、洗った足の爪を刀で切りそろえる意であるが、従来通り「まえ」の意で使われたため、切りそろえる意は、新たに剪センが作られた。現代字は上部が止⇒䒑に簡略化された「前」になった。この字の月は「舟月ふなづき」であり、舟(盤。たらい)を表わす。凡と舟の類似性については、音符「凡ハン」を参照。
 「前」の意味は、本来の、前にすすむ意から、身体の正面の「前」になる他、時間のあとさき(前後)の「前」の意となる。
意味 (1)すすむ。 (2)(うしろに対する)まえ(前)。「前進ゼンシン」「前衛ゼンエイ」(前方の護衛) (3)(時間的に)まえ(前)。過去。「前例ゼンレイ」「前科ゼンカ」 (4)(順序としての)まえ(前)。「前座ゼンザ」 (5)それ以前にまず。あらかじめ。「前納ゼンノウ」 (6)[国]まえ(前)。①立派な状態。「男前おとこまえ」「腕前うでまえ」②わりあて。「五人前ごにんまえ

イメージ 
 「まえ」
(前・彅)
  爪を切りそろえる意から「切りそろえる」(剪・箭・翦)
  切りそろえる意から「そろえる」(煎・揃)
音の変化  ゼン:前  セン:剪・箭・翦・煎・揃  なぎ:彅

まえ
<国字> なぎ  弓部
解字 「弓(ゆみ)+前(まえ)+刀(かたな)」の会意。弓を持つ源義家(八幡太郎)の前を刀で草を薙ぎ払ったという伝承に基いて出来たといわれる字。秋田県仙北市にある田沢湖地区の草彅姓をもつ旧家に伝わる伝承によると、「源義家がこの地に来られた時、草彅家の先祖が義家(弓の名手)を案内して山道を越えた。先祖はをもつ義家のを歩きで草を薙ぎはらいながら案内して山道を越えることができた。そこで源義家から草という姓を賜った」(NHK日本人のおなまえ2018.3.15放送)
意味 なぎ(彅)。薙ぎ、とも書く。姓に用いられる字。「草彅くさなぎ

切りそろえる
 セン・きる 刀部  
解字 「刀(かたな)+前の旧字(切りそろえる)」の会意形声。前は、もともと刀で端をきりそろえる意だが、前が「まえ」の意で使われたので、刀をつけて元の意味を表した。そのため、この字には刀(刂)が二つある。
意味 (1)きる(剪る)。たつ。はさみや鎌で端をきりそろえる。「剪定センテイ」(植え木の刈り込み)「剪紙センシ」(きり紙)「剪裁センサイ」(①布などを裁ちきる。②文章を手入れする) (2)はさみ。「剪刀セントウ」(はさみ)
 セン・や  竹部
解字 「竹(たけ)+前の旧字(切りそろえる)」の会意形声。長さを切りそろえた竹の矢。
意味 や(箭)。やだけ。しのだけ。「弓箭キュウセン」(弓と矢、転じて武器・武芸一般)「箭羽センウ」(矢の羽)「箭頭セントウ」(やじり)
 セン・きる  羽部
解字 「羽(はね)+前の旧字(きりそろえる)」の会意形声。羽を切りそろえること。矢羽根を作る作業と思われる。転じて、ほろぼす意ともなる。また、剪センに通じ、はさみの意味もある。
意味 (1)きる(翦る)。切りそろえる。「翦落センラク」(髪を切って僧侶になる)「翦裁センサイ」(草木をきりそろえる。文章に手を入れて直す)「翦草除根センソウジョコン」(草をきり根を除く。問題を根本から解決する) (2)ほろぼす。「翦夷センイ」(ほろぼし平らげる)「翦伐センバツ」(討伐する) (3)(剪と通じ)はさみ。「翦刀セントウ

そろえる
 セン・いる  灬部    
解字 「灬(火)+前の旧字(そろえる)」の会意形声。火力の熱を物に均等に当るように熱すること。また、煮つめることを言う。
意味 (1)いる(煎る)。鍋で食品の水気がなくなるまで、まんべんなく熱すること。「煎り豆」「煎り胡麻」「煎餅センベイ」(薄くのばした焼菓子) (2)せんじる(煎じる)。にる。につめる。「煎じ薬せんじぐすり」「煎茶センチャ」(茶葉を湯で煎じる。また、それに使う茶葉)
 セン・そろう・そろえる  扌部
解字 「扌(手)+前の旧字(そろえる)」の会意形声。本来はハサミなどで切りそろえる意であるが、日本では手で物をそろえる、ならべる、整える等の意に使う。
意味 (1)きる。たつ。きりそろえる。 (2)[国]そろう(揃う)。そろえる(揃える)。ならべる。整える。準備ができる。「耳を揃える」(小判の縁(耳)を揃えることから、金額を不足なくとり揃える) (3)[国]そろい(揃い)。「力作揃い」
<紫色は常用漢字>

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音符「幺ヨウ」<①糸たば、②糸のさき>と「幼ヨウ」「幽ユウ」「幻ゲン」「後ゴ」

2020年11月10日 | 漢字の音符
 ヨウ  幺部いとがしら        

 毛糸の糸束(イギリスの販売広告から)
解字 甲骨文から篆文まで糸束(いとたば)を描いた象形。糸束は糸を枠に巻き取ってからはずし、保存の為ねじった形。隷書レイショ(漢代)で糸束のふたつの丸印に隙間ができた形になり現代字は幺になった。なお幺の意味は糸束でなく、糸たばの先の細い糸から、ちいさい・ほそい・かすかの意を表わす。幺は部首となるが、音符となるとき、「糸・糸たば」「かすか・わずか」のイメージをもつ。
意味 (1)ちいさい。「幺微ヨウビ」(ちいさい。価値のないつまらないこと)(2)おさない。(=幼)。「幺弱ヨウジャク」(おさなくかよわい)
参考 幺は部首「幺いとがしら」になる。漢字の左辺に付き、ちいさい・かすか・および糸束の意を表す。おもな字は、このページに収録している「幼ヨウ」「幽ユウ」「幻ゲン」のほか「幾イク」の4字である。

イメージ
 「かすか・わずか」
(幺・幼・窈・黝・幽・後)
 「糸・糸たば」(幻・拗)
音の変化  ヨウ:幺・幼・窈・拗  ユウ:黝・幽  ゲン:幻  ゴ:後

かすか・わずか
 ヨウ・おさない  幺部
解字 「力(ちから)+幺(かすか・わずか)」の会意形声。力がかすかで弱いこと。力の弱いおさない子の意。
意味 おさない(幼い)。年がすくない。じゅうぶんではない。「幼少ヨウショウ」「幼児ヨウジ」「幼稚ヨウチ」「幼虫ヨウチュウ」「幼魚ヨウギョ
 ヨウ   穴部
解字 「穴(横穴)+幼(=幺。かすか。わずか)」の会意形声。横穴の奥が薄暗いさま。
意味 (1)奥深い。薄暗い。ひそかな。かすかな。「窈然ヨウゼン」(奥深いさま) (2)奥ゆかしい。しとやか。「窈窕ヨウチョウ」(美しくたおやか)
 ユウ・あおぐろ  黑部
解字 「黑(くろ)+幼(=幺。かすか)」の会意形声。幼は幺に通じ、かすかの意。かすかな黑の意で、青みがかった黒色をいう。発音はヨウ⇒ユウに変化した。
意味 (1)あおぐろ(黝)。青みがかった黒。「黝然ユウゼン」(青黒いさま。樹木が茂ってうすぐらいさま)「黝黝ユウユウ」(青黒いさま。樹木が茂ってうすぐらいさま) (2)くろい。「黝堊ユウアク」(建物の黒塗りと白塗りの部分。堊は白塗りの土)
 ユウ  幺部
解字 「山(やま)+幺二つ(かすかな)」の会意形声。山の奥深くの光りのかすかな所。この字の山は、もと火にしたがう字だが、篆文から山になった。山の解字の方が意味をつかみやすい。
意味 (1)かすか(幽か)。くらい(幽い)。奥深い。「幽玄ユウゲン」(奥深く味わいに富む)「幽谷ユウコク」 (2)あの世。死後の世界。「幽界ユウカイ」「幽霊ユウレイ」(①死んだ人の魂。②実際には無いのにあるように見せかける。幽霊会員) (3)かくれる。ひそむ。とじこめる。「幽囚ユウシュウ」「幽閉ユウヘイ
 ゴ・コウ・のち・うしろ・あと・おくれる   彳部

解字 甲骨文第一字は「幺(わずか)+夂(下向きの足⇒もどる)」の会意。夂は下向きの足で、ここでは(上に行った足が)もどる意。これに幺(わずか)がついて、わずかにもどる意となり甲骨文では時間的な先後の「のちに」の意で使われる。甲骨文第二字は、進行を表す彳テキが付いて意味を強めたかたち。金文以下現代字まで彳が付いた「後」となっている。金文では「後人コウジン」(子孫)「後嗣コウシ」(後代の子孫)の意味などもある。先に対する「のち」の他、集団や列のうしろ・おくれる意ともなる。
意味 (1)のち(後)。あと(後)。「後悔コウカイ」「後日ゴジツ」 (2)後の世代。「後世コウセイ」(後の世。後の子孫)「後代コウダイ」(後の時代) (3)うしろ(後)。うしろのほう。おくれる(後れる)。「後援コウエン」「背後ハイゴ」「後継者コウケイシャ」 

糸・糸たば
 ゲン・まぼろし  幺部

解字 金文は幺(糸たば)が逆さになった形を意味する象形。糸たばの先端が下にたれさがり逆さの形を意味する。篆文は機織りの道具のひ(予=杼。解字の右端)が逆さになった形。糸たばや杼が逆さになっていると、一瞬、正常なかたちと錯覚するので、まぼろし・まどわす意となる。現代字は金文の形が変化した幻になった。
意味 (1)まぼろし(幻)。「幻影ゲンエイ」「幻覚ゲンカク」 (2)まどわす。たぶらかす。「幻惑ゲンワク」「幻術ゲンジュツ」「幻聴ゲンチョウ
 ヨウ・オウ・ねじる・ねじける・すねる・こじれる  扌部
解字 「扌(手)+幼(ヨウ)」の会意形声。幼(ヨウ)はここで幺(ヨウ・糸たば)の意。拗は手で糸たばをねじること。人に移して、すねる・ひねくれる意ともなる。
意味 (1)ねじる。(拗る)。ねじれる(拗れる)。こじれる(拗れる)。「拗音ヨウオン」(キャ・キョなど、仮名を小さく添える音) (2)すねる(拗ねる)。ねじける(拗ける)。ひねくれる。「執拗シツヨウ」(しつこい)
<紫色は常用漢字>

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音符「牙ガ」<きば>と「芽ガ」「雅ガ」「邪ジャ」

2020年11月04日 | 漢字の音符
ガ・ゲ・きば  牙部         


 上下の牙がくいちがってつくライオンの牙
解字 金文は、ケモノのきばの上下がまじわる形の象形で、きばの意をあらわす。篆文はその変形。現代字は牙になった。牙は4画だが、新字体の組み合わせ漢字(芽・邪・雅)では「芽」の下部のように5画になる。
意味 (1)きば(牙)。「象牙ゾウゲ」「犬牙ケンガ」(犬の牙) (2)(犬の牙が入れ違っていることから)くいちがい。いれちがい。「犬牙相制ケンガソウセイ」(両国の領土を犬牙のように入りこませて互いに牽制させる) (3)は・歯。「歯牙シガ」(歯と牙。また、歯)「歯牙にもかけない」(問題にしないで無視する)
参考 牙は部首「牙きば」になる。しかし、牙が部首となる漢字は、漢検1級字(約6300字)を収録する[漢検漢字辞典]では部首の牙のみで、他の字はない。実質的な1字部首である。

イメージ 
 「きば」
(牙・芽・穿・谺)
  牙が「ちぐはぐにかみあう」(邪・訝)
 「形声字」(鴉・雅・冴)
音の変化  ガ:牙・芽・雅  カ:谺  ゲン:訝  ゴ:冴  ジャ:邪  セン:穿  ア:鴉

き ば
 ガ・め  艸部
解字 「艸(くさ)+牙(きば)」の会意形声。きばの形のように出てくる草の芽。
意味 (1)め(芽)。草木の芽。「発芽ハツガ」「麦芽バクガ」 (2)きざし。めばえ。「萌芽ホウガ
穿 セン・うがつ・ほじる・はく  穴部
解字 「穴(あな)+牙(きば)」の会意。牙のようなとがったもので穴をうがつこと。
意味 (1)うがつ(穿つ)。ほる。ほじる(穿る)。「穿孔センコウ」(孔をあける。また、その穴) (2)つらぬく。「貫穿カンセン」(つらぬきうがつ) (3)(腰から下の衣服を、つらぬくように) はく(穿く)。着る。「スカートを穿く」「スラックスを穿く」「袴はかまを穿く」
※ 履物をはく場合は「履く」を使う。「靴を履く」「スリッパを履く」「草鞋わらじを履く」
 カ・こだま  谷部
解字 「谷(たに)+牙(きば)」の会意形声。牙が食い込んだような深い谷。日本では深い谷に反響するこだまの意味でもちいる。
意味 (1)谷の深く空虚なさま。「谽谺カンカ」(谷の深く空虚なさま) (2)[国]こだま(谺)。やまびこ。深い谷で声を発したとき反響する音。

ちぐはぐにかみあう・くいちがう
 ジャ・よこしま  おおざと部  
解字 「阝(邑:むら・まち)+牙(くいちがう)」の会意形声。くいちがう(正道からはずれた)ことが行なわれている所。
意味 (1)よこしま(邪)。正しくない。「邪道ジャドウ」「邪悪ジャアク」 (2)人に害を及ぼすもの。「邪気ジャキ」「風邪フウジャ・かぜ
 ガ・ゲン・いぶかる・いぶかしい  言部
解字 「言(ことば)+牙(くいちがう)」の会意形声。相手の言葉が食い違うので、いぶかること。なお、言葉で相手をむかえる意もある。
意味 (1)いぶかる(訝る)。うたがう。あやしむ。「怪訝ケゲン」(不思議で合点のゆかないさま) (2)むかえる。「訝賓ガヒン」(客をむかえねぎらう)

形声字
 ア・からす  鳥部
解字 「鳥+牙(ア)」の形声。アは鳥の鳴き声で、アーアーと鳴くカラス。牙はガgaの音からgが脱落しアaとなった。
意味 (1)からす(鴉)。カラス科の鳥の総称。「寒鴉カンア」(冬のカラス)「乱鴉ランア」(乱れ飛ぶカラス) (2)くろ。黒い色のたとえ。「鴉片アヘン」(ケシの実からとれる麻薬。黒い色の麻薬の意。=阿片)
 ガ・ア・みやび  隹部 
解字 「隹(とり)+牙(ガ・ア)」の形声。ガーガー・アーアーとなく隹(とり)でカラスの意。鴉と同じ成り立ちの字。しかし、雅の発音で中国最古の詩集である「詩経」の三部門のひとつ「雅」に仮借カシャ(当て字)された。詩経の「雅」は朝廷での会合や宴会の時に用いる詩が中心であり、周王朝の開国伝説を述べた叙事詩が多く、その内容から転じて「正しい」意となったと思われる(私見)。さらに上品・由緒正しい意となり、日本では雅楽(正しい楽舞の意)が奈良・平安時代から、宮廷や寺院や神社において盛んに演奏された。その音楽から雅(みやび)やかの訓ができた。
意味 (1)みやび(雅)。みやびやか(雅やか)。おくゆかしい。「雅趣ガシュ」(みやびなおもむき)「優雅ユウガ」「雅俗ガゾク」(風雅と世俗) (2)正しい。正当な。「雅言ガゲン」(①正しい言葉。②みやびな言葉)「雅厚ガコウ」(心が正しく厚い) (3)つねに。もとより。「雅意ガイ」(常の志)「雅辞ガジ」(平素のことば) (4)古典語を解説した言葉集。「爾雅ジガ」(漢代以前の中国古代の字書。類義語や訓詁を集めたもの)「広雅コウガ」(漢代の学者の訓詁により「爾雅」を増補したもの)
 ゴ・コ・さえる  冫部
解字 「冫(こおる)+牙(ゴ)」の形声。冴は同音の冱(こおる)の俗字。日本では、澄み切った氷のように、さえる意で使う。
意味 (1)こおる。冱と同字。(2)[国]さえる(冴える)。光や音が澄む。頭のはたらきが鋭い。
<紫色は常用漢字>

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紛らわしい漢字 「戊ボ」「戍ジュ」「戌ジュツ」

2020年11月01日 | 紛らわしい漢字 
 ・戍ジュ・戌ジュツは似ている。戊のなかに点があるのが戍ジュ、一があるのが戌ジュツである。この3つの文字は、戈(オノ型ほこ)がもとになっている字だが、古代文字から成り立ちをさぐると、それぞれの違いが明瞭になる。

 ボ・ボウ・モ・つちのえ  戈部

解字 戈(オノ型ほこ)の刃先が広い武器の象形。しかし本来の意味でなく、甲骨文字から十干の五番目に当てられている。
意味 (1)つちのえ(戊)。五行(木・火・土・金・水)のひとつである土(戊ボと己キが所属する)の兄(え)の意味で、十干(甲コウ・乙オツ・丙ヘイ・丁テイ・戊・己・庚コウ・辛シン・壬ジン・癸)の五番目。なお、土の弟(と)は六番目の己(つちのと)。「戊辰戦争ボシンセンソウ」(1868年の戊辰(つちのえたつ)の年から新政府軍と幕府側との間で行なわれた戦争) (2)ほこ。
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 「仮借(当て字)」(戊)
 「同音代替」(茂)
音の変化  ボ:戊  モ・ボウ:茂
同音代替
 モ・ボウ・しげる  艸部
解字 「艸(草)+戊(ボウ・モ)」の形声。ボウは冒ボウ・モウ(おおう)に通じ、草がおおう意。
意味 (1)しげる(茂る)。草がしげる。「繁茂ハンモ」「茂生モセイ」 (2)すぐれて立派なこと。「茂才モサイ


 ジュ・シュ・ス・まもる  戈部

解字 甲骨文字から篆文まで「人+戈(オノ型ほこ)」の会意。人が武器の戈を背負っている形。武器を背負う兵士の意から、甲骨文字では軍隊の意味で使われた。金文は守る意味が強い守衛の意味となり、以後、国境をまもる意が中心となった。現代字は人と戈が連続した戍となり、戊の中に点があるかのような字形になった。
意味 まもる(戍る)。武器を持って国境をまもる。「戍卒ジュソツ」(国境をまもる兵士)「戍楼ジュロウ」(国境守備隊の見張りやぐら)「衛戍エイジュ」(軍隊が永く一つの土地に駐屯する)「戍徭ジュヨウ」(国境をまもる兵役=徭役)


 ジュツ・シュツ・いぬ  戈部

解字 甲骨文字・金文ともにマサカリ型の大きな刃の部分を中心に描いた象形。篆文になりマサカリの下の刃が独立して一になり、現代字の戌になった。戌は大きな刃なので、これで「相手を圧倒する」イメージを持つ。元の意味に関係なく、十二支の11番目「いぬ」に仮借カシャ(当て字)された。
意味 いぬ(戌)。十二支の第十一。時刻では午後8時、およびその前後の2時間。方角では西北西、動物では犬に当てる。「戌亥いぬい」(方角で北西)「戊戌ボジュツ」(つちのえいぬ。干支のひとつ)
イメージ 
 「いぬ(仮借)」(戌)
 大きな刃で相手を「圧倒する」(威・滅)
音の変化  ジュツ:戌  イ:威  メツ:滅
圧倒する
 イ・おどす  女部  
解字 「女(おんな)+戌(圧倒する)」 の会意。女を刃物で圧倒する形で、おどす意。
意味 (1)おどす(威す)。おびやかす。「威圧イアツ」「威嚇イカク」 (2)いかめしい。「威厳イゲン」「威風イフウ」「権威ケンイ
 メツ・ほろびる・ほろぼす  氵部
解字 「氵(水)+火+戌(圧倒する)」 の会意。水をかけて火を圧倒する意。転じて、きえる・ほろびる意となる。
意味 (1)きえる。火や明かりが消える。「点滅テンメツ」 (2)ほろびる(滅びる)。ほろぼす(滅ぼす)。「滅亡メツボウ」「絶滅ゼツメツ」「滅菌メッキン」 (3)死ぬ。「入滅ニュウメツ
<紫色は常用漢字>

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