漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

第8回漢字音符研究会のお知らせ

2018年04月28日 | 漢字音符研究会
              第8回漢字音符研究会のお知らせ
日 時  2018年5月12日(土)10時30分~12時
会 場  喫茶ほっとはあと 京都市中京区西大路御池北西角  
        地下鉄東西線「西大路御池」下車すぐ http://www.kyoto-hotheart.jp/cafe/shops/oike/
講 師  山本康喬氏  『漢字音符字典』著者・漢字教育士

テーマ  漢字を学ぶ順序はこれで良いのか
        ~小学校の学年別配当漢字の逆順現象を考える~


 小学校の学年別配当漢字は、学習指導要領の付録「学年別漢字配当表」によって定められている。例えば小学1年では以下の80字が配当されている。
一 右 雨 円 王 音 下 火 貝 学 気 九 休 玉 金 空 月 犬 見 五 口 左 三 山 子 四 糸 字 耳 七 車 手 十 出 女 小 上 森 人 水 正 生 青 夕 石 赤 千 川 先 早 草 足 大 男 竹 中 虫 天 田 土 二 日 入 年 白 八 百 文 木 本 名 目 立 力 林 六

 いずれも基本的な漢字ばかりだが気になるのは、赤色にした花・校コウ・村ソン・町チョウの4字である。これらの漢字の音符は、化・交コウ・寸スン・丁チョウで、これらも基本漢字だが、化は3年、交は2年、寸は6年、丁は3年に配当されている。特に花・校コウ・町チョウの発音は化・交コウ・丁チョウの発音そのものであり、これらの漢字はもっと早く教えたほうが、花・校・町の発音を覚えるのに役立つのではないか。

 こうした漢字は学年別の「逆順配当」と呼ばれているが、さらに小学2年では、何(可:5年)・記(己:6年)・近キン(斤キン:中学)・紙(氏:4年)・室シツ(至:6年)・週シュウ(周シュウ:4年)・電デン(申シン:3年)・活カツ(舌カツ・ゼツ:2年[ゼツ])・点テン(占セン:中学)・線セン(泉セン:6年)・組(且:中学)・頭トウ(豆トウ:3年)・妹マイ(未:4年)・友ユウ(又ユウ:中学)・野(予:3年)の15字ある(カッコ内は音符)。そして小学校6年間の逆順配当字の合計は実に79字になる。

 逆順配当は部分的には多くの指導者が気付き、その問題であることを指摘していたが、初めてまとめて論じられたのは平成27年4月に発行された、明治書院刊の「日本語学」誌の臨時増刊号「漢字の指導法」においてであった。ただ、その存在の全貌を体系的に指摘したのは、平成28年8月に立命館大学主催の漢字教育士研修会において漢字教育士の山本康喬が音符による漢字分類の方法に基づきリストアップしたのが最初であり、79字もの逆順があることが明確になったのです。

 今回の研究会では、小学校の逆順配当字の一覧を紹介したうえで、こうした現象をどう考えたら良いのか。字形の基本字は真っ先に教えるべきか。それとも良く使われる基本字を配当漢字にすべきか。また逆順配当になった漢字をどう教えたらよいか。これらについて考えます。小学校の先生方の参加を期待します。

参 加 費  300円(資料代を含む) ※飲み物は各自、別途注文してください。
参加申込  コピー資料作成の都合がありますので、事前に下記へお申し込みください。
          メールでお申込の方          
       電話でのお申込みも可能です。  Tel. 072-627-0271(石沢)




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紛らわしい漢字 「辛シン」 と 「幸コウ」

2018年04月20日 | 紛らわしい漢字 
 辛と幸は似ている。上が 亠(なべぶた)が辛シン、上が土なのが幸コウである。わずかな違いだが意味は大違い。辛シンは先のするどい刃物の象形で、幸は「夭ヨウ+屰ギャク(=逆)」の会意字である。


   シン <先のするどい刃物>
 シン・からい  辛部

解字 甲骨・金文とも、先のするどい刃物の象形で下が刃先。上が∇形と、その上に短い一が付く形があったが、篆文で短い一形になり、さらに下部にも一がついた。現代字は「立+十」の辛になった。意味は甲骨文字から十干の8番目の「かのと」となる。さらに先のするどいことから転じて、からい・つらい意となる。
意味 (1)からい(辛い)。「辛党からとう」「唐辛子トウからし」 (2)つらい(辛い)。苦しい。「辛酸シンサン」「辛抱シンボウ」(つらい仕事も包みこんでしのぶ) (3)かのと(辛)。十干(甲コウ・乙オツ・丙ヘイ・丁テイ・戊・己・庚コウ・辛シン・壬ジン・癸)の8番目。「辛亥革命シンガイカクメイ」(辛亥の年の1911年、中国で起こった革命) (4)かろうじて。「辛勝シンショウ
覚え方 つトウ(子(立つ唐辛子トウガラシ

イメージ  「刃物」(辛・宰)
音の変化  シン:辛  サイ:宰

刃物
 サイ・つかさどる  宀部
解字 「宀(廟 のたてもの)+辛(刃物)」の会意。祖先を祭る廟ビョウで刃物を用いて肉を切り、神にささげて祭事を取り仕切ること[字統]。
意味 (1)仕事をとりしきる。つ かさどる(宰る)。「主宰シュサイ」「宰領サイリョウ」(管理監督する) (2)つかさ。取り仕切る人。「宰相サイショウ


    コウ <夭ヨウ+屰ギャクの会意字>
 コウ・さいわい・さち・しあわせ  干部  

解字 篆文(説文解字)は、「夭(=夭折ヨウセツ。わかじに)+屰ギャク(さかさ)」の会意。意味は夭折ヨウセツ(若くして死ぬこと)の反対(屰=逆)で、長生きすること。疫病や戦争で多くの人が亡くなる古代において人が長生きすることは「運がよかった」「さいわい(幸運)だった」という意。さらに転じて、しあわせ(幸福)の意味ともなる。字形は隷書レイショ(漢代)で、「犬+羊」や「大+羊」「土+羊」などの字が乱立するなか、楷書に至って幸の字が定着してきた。従って幸の字の意味は、篆文の「夭+屰ギャク」から意味がでてくる。
意味 (1)さいわい(幸い)。思いがけない幸運。(=倖)「僥幸ギョウコウ」 (2)さいわいに(幸いに)。「幸便コウビン」(ちょうどよいついで) (3)さち(幸)。しあわせ(幸せ)。「幸福コウフク」「幸甚コウジン」(非常な幸せ) (4)みゆき(幸)。天子のお出まし。「行幸ギョウコウ」「巡幸ジュンコウ」 

イメージ 
 「思いがけないしあわせ」(幸・倖) 
音の変化  コウ:幸・倖  

思いがけないしあわせ
 コウ・さいわい イ部
解字 「イ(ひと)+幸(思いがけない幸せ)」の会意形声。幸の原義は、思いがけない幸せの意。イ(人)を付けて原義を表した。
意味 (1)さいわい(倖い)。思いがけないしあわせ。「僥倖ギョウコウ」(偶然の幸運)「倖利コウリ」(思いがけない利益)「射倖心シャコウシン」(偶然の利益を得ようとする欲心。=射幸心) (3)気に入る。分をこえて愛される人。「倖臣コウシン」(お気に入りの家来)
<紫色は常用漢字>

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音符「天テン」<てん>と「蚕サン」「添テン」

2018年04月14日 | 漢字の音符
 テン・あめ・あま  大部

解字 甲骨文は大の字形の人のうえに□をつけ本来は人の頭を表した字。頭部の意味もあったが、転じて、頭上にひろがる空間(天空)を表す意味となり後にこれが主流となった。金文は頭が〇印に、篆文は一になり、これが現在に続いている。意味は、頭上の空間である「そら(天空)」、また、天の神を表す。
意味 (1)あめ(天)。あま(天)。そら。「天空テンクウ」「天地テンチ」 (2)そらもよう。「天気テンキ」 (3)自然の力。「天災テンサイ」 (4)万物を支配するもの。神。「天主テンシュ」「天子テンシ」 (5)生まれつき。「天才テンサイ
参考 天の横画は上と下の、どちらが長い?
 古筆の「天」(「新書道字典」二玄社より)
 日本で天の字は上が長いとされ小学校では上を長く書くよう指導している。しかし、古筆の名蹟では、ほとんどの字で上が短い。例えば、書聖とよばれる東晋の王義之の天は、上図の中央の3字だが、いずれも上が短い。その左右の別の書家の字も同様である。日本でも明治初年から昭和35年頃までの教科書は上が短かった。http://d.hatena.ne.jp/higonosuke/20130312
ところが、それ以後、活字の教科書体に合わせて上を長く書くよう指導するようになったようだ。伝統的に上が短い天が使われていた(現在の中国も上が短い)のだから、上を短く書いても正解である。

イメージ 
 「てん(天)」
(天・昊・蚕・忝) 
 「同音代替」(添) 
 「その他」(俣)
音の変化  テン:天・忝・添  サン:蚕  コウ:昊  また:俣

てん
 コウ  日部
解字 「日(太陽)+天(てん)」の会意。太陽が高くかがやいている天(そら)。
意味 そら。おおぞら。「昊天コウテン」(広く大きい空。夏の空)「蒼昊ソウコウ」(あおぞら)
 サン・かいこ  虫部
解字 「虫(むし)+天(てん)」 の会意。天がさずけた大切な虫。古字はサンで、「虫虫(たくさんのむし)+朁サン(=兓シン。はいりこむ)」 の会意形声。桑の葉の間に入りこんでいるたくさんの虫の意で、蚕を表す。のち、⇒蚕に簡略化された。
意味 (1)かいこ(蚕)。桑の葉を食べ脱皮を重ねて繭(まゆ)をつくる虫。この繭から絹糸ができる。「蚕糸サンシ」「蚕食サンショク」(蚕が桑の葉を食べるように他の領域を侵してゆくこと)「養蚕ヨウサン」 (2)「蚕豆そらまめ」とは、マメ科の二年生作物。莢(さや)の形が蚕に似ているから言う。また、若い莢が空に向いて付くので空豆ともいう。
 テン・かたじけない  心部  

解字 篆文は「心(こころ)+天(てん)」 の会意形声。天(神)の恩恵に対し、おそれ多くおもう心。現代字は天が夭に変化した。
意味 (1)かたじけない(忝い)。もったいない。 (2)はずかしめる。

同音代替
 テン・そえる・そう  氵部
解字 「氵(みず)+忝(テン)」の形声。テンは貼テン(不足を補う)に通じ、水の不足を補う形だが、水にかかわらず、おぎなう・つけくわえる意となる。日本では、つきそう意でも使う。
意味 (1)そえる(添える)。つけくわえる。「添加テンカ」「添付テンプ」「添削テンサク」(書き加えたり削ったりして直す) (2)[国]そう(添う)。つきそう。「添乗テンジョウ」(付き添って乗る)

その他
<国字> また  イ部
解字 「イ(人)+口+天」の会意。成り立ちは不明。国字には珍しくわかりにくい成り立ちの字。漢字字典に、「俟(まつ)の字形を変えて、また、と読ませた」と解説するが、この意味もよくわからない。
意味 (1)また(俣)。川筋や道のわかれめ。「二俣ふたまた」(元が一つで先が二つに分かれるところ)「川俣かわまた」(川の流れが分かれるところ) (2)地名。「水俣みなまた」(熊本県の地名)
覚え方 (ひと)入で進路をにまかす二の道
<紫色は常用漢字>


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「壺コ・つぼ」 と 「壱[壹]イチ・イツ」「懿イ」「饐イ」「噎エツ」

2018年04月09日 | 漢字の音符
壺[壷] コ・つぼ  士部     

解字 甲骨文から篆文まで、蓋(ふた)のついた酒壺の象形。現代字の上部の士はフタを表し、その下はふくらんだつぼの本体を表す。酒壺だけでなく広く「つぼ」の意味を表す。壷は異体字で、壺と同じく使われている。
意味 (1)つぼ(壺)。口がすぼんだ容器。酒つぼ。「壺中コチュウ」(つぼの中)「壺觴コショウ」(酒つぼとさかずき) (2)深くくぼんだところ。「滝壺たきつぼ」 (3)お灸や指圧で効き目があるところ。「壺を押す」


    壱[壹] イチ・イツ <みちる気をとじこめる>
[壹] イチ・イツ・ひとつ   士部

解字 篆文は、壺の中に吉(とじこめる意)を書いて、中に満ちる気をとじこめている形。壺の中のものが発酵して中にみちる状態をいう。旧字は壹に作り、壺の上部と豆(たかつき)が合わさった形をしている。イチ・イツの発音から、数字の一に仮借カシャ(当て字)された。新字体の壱は、旧字の豆がヒに変化した。
意味 (1)ひとつ(壱つ)。(2)もっぱら。ひとたび。みな。ひとえに。「壱意イチイ」(その事だけに心を注ぐ)「壱食イツショク」(会食)(3)地名。「壱岐いき」(もと壱岐国。現在、長崎県壱岐市。九州と朝鮮半島との間に対馬とともに飛び石状にある島)
※金銭の証書などでは、間違いを防ぐために「一」の代わりに「壱」を用いる。

イメージ 
 壺の中に気が「みちる」(壱・懿)
 壺の中に気を「とじこめる」(饐・噎)
音の変化  イチ:壱  イ:懿・饐  エツ:噎

みちる
 イ・よい  心部
解字 「次(吐息をもらす)+心(こころ)+壹(みちる)」の会意形声。壺の中にみちる香気に感動して心からため息をもらすこと。よい。りっぱな意となる。次はため息をもらす形、音符「次ジ」を参照。
意味 (1)よい(懿い)。立派な。「懿徳イトク」(すぐれた徳)「懿風イフウ」(立派な風習)「懿績イセキ」(立派な功績) (2)人名。「司馬 懿シバ イ」(後漢末期から三国 時代曹魏にかけての武将・政治家)

とじこめる
 イ・エツ・すえる  食部
解字 「𩙿(食べ物)+壹(とじこめる)」の会意形声。食べ物を壺のなかに閉じ込めた結果、食べ物がくさること。日本語の「すえる」はご飯がすっぱくなることから。
意味 (1)すえる(饐える)。食べ物がくさること。「冷や飯も饐(す)える頃」 (2)むせぶ。(=噎)
 エツ・イツ・むせぶ  口部
解字 「口(くち)+壹(とじこめる)」の会意形声。口から入った食べ物が、のどでつまって、むせぶこと。
意味 (1)むせぶ(噎ぶ)。=咽(むせ)ぶ。「噎噎エツエツ」(むせぶ)「噎嘔エツオウ」(むせて口の物を吐く)「煙噎エンエツ」(けむりにむせぶ)
<紫色は常用漢字>


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特殊化した部首 「癶はつがしら」 <両足をそろえて出発する>

2018年04月06日 | 特殊化した部首
癶 ハツ・ハチ  癶部    

解字 甲骨文字は左右の両足(止)をそろえた形。両足をそろえて出発する意となる。金文・篆文は原型を残しているが、隷書レイショ(漢代の役人が主に使用)から大きく変化し、現代字は癶の形になった。癶は部首の「はつがしら」となり、発・登などの字で用いられる。
意味 ゆく。

参考 癶ハツは部首「癶 はつがしら」となる。漢字の上部につき「両足をそろえて立ち出発する」意味を表す。この部に属する字は少ないが、主な字に、発ハツ・はなつ・たつ[發](癶+弓+殳)、登トウ・のぼる(癶+音符「豆トウ」)、癸キ・みずのと(「癶+矢」の変形字)があり、いずれも音符となる。
参考 音符「発ハツ」へ
    音符「登トウ」へ
    音符「癸キ」へ
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特殊化した部首 「疒やまいだれ」<ベッドの上で発汗して寝る人>

2018年04月05日 | 特殊化した部首
 ダク・やまい 疒部  

解字 甲骨文第1字は、爿ショウ(ベッド)の上に汗を出している人があおむけに横たわっている形で、タテに描かれている。高熱で発汗している人と思われる。第2字は汗のない形。いずれも人が病床にある形で、意味はやまい(病)。病む。金文から疒ダクの単独字はなくなり、「やまいだれ」として他の字と結びつく形になる。金文・篆文・隷書は、疾シツ(やまい)から矢を除いた形を掲載した。金文は爿ショウがかなり変形し、横たわる人は横の線になった。篆文の爿ショウは甲骨文を引き継いでいるが横たわる人は線のままである。隷書(漢代の役人が主に使用した文字)にいたり、人の横線が 亠(なべぶた)になり、爿ショウの形も第2字で、ほぼ現代字と同じ形になった。
意味 やまい(疒)。やむ。ただし、現在は病 ビョウがその意味をあらわし、単独では部首「疒やまいだれ」となる。

参考 部首「疒やまいだれ」は、漢字の「たれ(垂)」(上部から左下に垂れる位置)に置かれ、病気および心や身体の状態を表す。常用漢字では15字、約14,300字を収録する『新漢語林』では、172字が収録されている。
常用漢字は以下のとおり。
 疫エキ(疒+音符「殳シュ」)、疲ヒ・つかれる(疒+音符「皮ヒ」)、疾シツ・やまい・はやい(疒+音符「矢シ」)、病ビョウ(疒+音符「丙ヘイ」、症ショウ(疒+音符「正セイ」)、痕コン・あと(疒+音符「艮コン」)、痘トウ(疒+音符「豆トウ」)、痛ツウ・いたい(疒+音符「甬ヨウ」)、下痢(疒+音符「利リ」)、痩ソウ・やせる(疒+音符「叟ソウ」)、痴チ・おろか(疒+音符「知チ」)、瘍ヨウ(疒+音符「昜ヨウ」)、療リョウ・いやす(疒+音符「尞リョウ」)、癒ユ・いえる(疒+音符「愈ユ」)、癖ヘキ・くせ(疒+音符「辟ヘキ」)
※各文字の詳細は、それぞれの音符を検索してください。



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音符「本ホン」 と 「末マツ」<本末>

2018年04月01日 | 漢字の音符
     ホン <おおもととなる>
 ホン・もと  木部    

解字 木の下部の太い部分に肥点(金文)や一印(篆文)をつけて木の根元を示す指事文字。木のふとい根もとの意味を表す。
意味 (1)もと(本)。物事のおおもと。はじまり。もともと。「本源ホンゲン」「本能ホンノウ」 (2)もとで。元金。「資本シホン」 (3)正しい。正式の。「本名ホンミョウ」 (4)この。当の。自分。わが。「本件ホンケン」「本人ホンニン」 (5)書物。文書。学問のもとになるものが書物であることから。「本箱ホンバコ」「原本ゲンポン

イメージ
 「おおもととなる・根もと」
(本・体・笨)
  「その他」(鉢)
音の変化  ホン:本・笨  タイ:体  ハツ・ハチ:鉢

おおもととなる・根もと
 タイ・テイ・からだ  イ部
解字 「イ(人)+本(おおもととなる)」の会意。人のおおもととなる身体の意。もとの字は體タイであるが、古くから體の代わりとして用いられた。
意味 (1)からだ(体)。「体格タイカク」「身体シンタイ」 (2)形のあるもの。まとまり。「物体ブッタイ」「体積タイセキ」「体制タイセイ」 (3)おおもと。もとになるもの。「実体ジッタイ」「正体ショウタイ」 (4)ようす。「体裁テイサイ」(外からみた様子) (5)身につける。身をもってする。「体験タイケン」「体得タイトク」 (6)仏像などを数える語。
 ホン・あらい  竹部
解字 「竹(たけ)+本(根もと)」の会意形声。竹の根もと。竹は一年で10~20mも成長するが中空で木と比べると根もとはしっかりしていない意から、人に移して、あらい・粗雑・おろかの意味になる。
意味 (1)あらい(笨い)。粗雑。粗末。「粗笨ソホン」(あらくて雑なこと。粗も笨も、あらい意)「笨拙ホンセツ」(粗末でつたない) (2)おろか。のろま。「笨貨ホンカ」(愚かな人)「笨漢ホンカン」(のろま・愚かな男)

その他
 ハツ・ハチ  金部


解字 篆文は盋ハツで、「皿(うつわ)+犮(ハツ)」の形声。ハツという名のうつわを言い、梵語でpatra(ハッタラ=仏寺で使う食器)の音訳語のハッを表す語として使われた。また、盋に代わり鉢も、patra(鉢多羅ハッタラ)として用いられ、この語が主流になったので、鉢の字で僧侶の食器を表した。したがって鉢は盋と同字とされている。なぜ、盋の代わりに鉢が当てられたかは不明。現在の鉢は本ホンの発音を受け継いでいないことから「金+本」の会意である。金が付くが必ずしも金属の器ではない。日本では、植木鉢や、あたまの意でも使う。
覚え方 浄財のおかね()の、もと()は、托タクハツで  <浄財を集める僧侶>
意味 (1)僧侶の食器。「托鉢タクハツ」(修行僧が米や銭を手に持つ鉢で受けること)「鉢盂ハツウ」(僧侶の食器) (2)はち。深く大きい皿。「乳鉢ニュウバチ」 (3)[国]うえきばち。「植木鉢」 (4)[国]あたま。頭蓋骨。「鉢巻ハチまき」「鉢合わせ」


    マツ <木の最も遠い部分>
 マツ・バツ・すえ  木部

解字 木の上部に肥点(金文)や、一印(篆文)を加えて、木の最も遠い部分を示した指事文字。「本」が木の下部に一を加えたのに対応した文字[字統]。物の末端、行くすえ、終り、重要でないこと等の意となる。
意味 (1)すえ(末)。物のさき。「末端マッタン」「末子バッシ・マッシ」 (2)行く先。将来。「行く末(すえ)」 (3)子孫。「末代マツダイ」 (4)終り。はて。「年末ネンマツ」「週末シュウマツ」 (5)しも。ひくい。「末席マッセキ」「末座マツザ」 (6)こまかい。こな。「粉末フンマツ

イメージ 
 「木の末端」
(末)
  意味の(6)の「こまかい・こな」(抹・沫・秣)
 「マツの音」(茉)
音の変化  マツ:末・抹・沫・秣・茉

こまかい・こな
 マツ  扌部
解字 「扌(手)+末(こまかい・こな)」の会意形声。手でこすって粉にする。また、粉をこすりつけること。
意味 (1)する。こする。粉にする。なする。「抹茶マッチャ」(臼で挽いて粉末にした茶)「抹香マッコウ」(粉末の香)「一抹イチマツ」(ひとなすり)(2)ぬりつぶす。消す。「抹消マッショウ」(ぬりけす)「抹殺マッサツ」(こすり消してなくす)
 マツ・あわ  氵部
解字 「氵(水)+末(こまかい)」の会意形声。水のこまかなしぶきや泡。
意味 (1)あわ(沫)。「泡沫ホウマツ」(あわ。うたかた) (2)しぶき。「飛沫ヒマツ
 マツ・まぐさ  禾部
解字 「禾(こくもつ)+末(こまかい)」の会意形成。穀物の砕けた細かいものの意で、牛馬のエサにする穀物の飼料が原義。のち、わらや草を含めた牛馬のエサをいう。
意味 (1)まぐさ(秣)。かいば。牛馬の飼料となる砕けた穀物やわらや草。「蒭秣スウマイ」(どちらもまぐさの意。蒭は、草のえさ、秣は穀物系のえさ)「糧秣リョウマツ」(軍隊で、兵隊と馬の食糧)(2)まぐさかう。「秣馬マツバ」(馬にまぐさをあたえる)

マツの音
 マツ  艸部
解字 「艸(草木)+末(マツ)」の形声。モクセイ科ソケイ属の植物(ジャスミン)のサンスクリット名・mallikaマリカー(茉莉花)に当てる語。
意味 「茉莉花マツリカ」とは、モクセイ科の常緑小低木。ジャスミンの一種。花は芳香があり中国では乾燥させてお茶にする。「茉莉マツリ」(=茉莉花)「茉莉花茶マツリカチャ」(ジャスミンティー)
<紫色は常用漢字>

  バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。



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