漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「氏シ」<前かがみになった人>と「紙シ」「舐シ」「祇ギ」

2022年12月29日 | 漢字の音符
 この字の起源については、匙(さじ)の象形とする説や、ナイフとする説がある。私はナイフ説だったが、落合氏の「昏コンの一部から派生した」とする説[漢字字形史字典]に共感を覚えるので、この説で解説したい。
 シ・うじ  氏部

上段が昏コン、下段が氏
解字 上段・昏コンの甲骨文字第1字は、「人が前かがみになった形+日(太陽)」で、太陽が人のかがんだ形よりも低い位置にあり、日暮れの頃を表す。第2字は人の腕の先に横線(手)をつけた形で、これが後の氏にあたる[甲骨文字辞典]。篆文から第2字が変化した「氏+日」の昏になった。音符「昏コン」を参照。
 一方、下段の氏は甲骨文字では単独の形はない。カッコ内は昏から日を省いた形を参考のため掲載した。金文で人の腕の手が肥点になり、篆文で肥点⇒横線になり、現代字で氏となった。氏は人が前屈みになった状態であり、金文に「示(祭壇=神)+氏(前屈みになった人)」の祇(祭祀の意)があることから、祭祀の執行者である代表者の呼称⇒氏族全体の意味、という形で「うじ(氏)」の意が成立したものと思われる。
意味 (1)うじ(氏)。みょう字。姓。同じ血族の集団。「氏族シゾク」「氏名シメイ」 (2)神社の共同体の仲間。「氏子うじこ」 (3)姓名の下に添える敬称。「山田氏やまだシ

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 「氏族」(氏・祇)
 「形声字」(紙・舐)
音の変化  シ:氏・紙・舐  ギ:祇

氏族 
 ギ  示部
解字 「示(祭壇=神)+氏(氏族)」の会意形声。氏族が信仰する神の意。土地の神、さらに天の神に対して国つ神の意となる。
意味 (1)くにつかみ(祇)。土地の神。「天神地祇テンジンチギ」(天つ神と国つ神。すべての神=神祇ジンギ)「大山祇神おおやまつみのかみ」(記紀神話に登場する山の神) (2)梵語の音訳字。「祇園ギオン」(①昔、釈迦の為に建てられた寺。②京都の八坂神社及びその付近)「祇園祭ギオンまつり」(京都・八坂神社の祭礼)

形声字
 シ・かみ  糸部
解字 「糸(いと状のもの)+氏(シ)」 の形声。後漢の「説文解字」は「絮ジョ一苫セン也。从糸氏聲」とする。「絮の一苫なり」とは「絮(古いわた)を水中に溶かして苫セン(稲わら・茅かやなどを簾すだれのよう編んだもので、ここでは簀の意)で一度漉したもの(今の紙漉き)」であり、「从糸氏聲」とは「糸に从(したが)い氏の声、つまり糸のたぐいのシという発音の字」という意味である。氏は発音を表しているだけ。糸と氏という単純な構成で「かみ(紙)」を表した。
 後漢書は「蔡倫サイリンは樹皮を用い、麻くずや敝布ヘイフ(ぼろ布)・魚網を以て紙と為す。元興元年(105年)之を(皇帝に)奏上する。是(これ)自(よ)り用い従わ不(ざる)莫(な)し。天下咸(みな)蔡侯紙と称する。」と宦官の蔡倫が、「蔡侯紙」(蔡侯が作った紙)と呼ばれた実用的な紙の製造普及に多大な貢献をした人物と称賛している。
意味 かみ(紙)。「和紙ワシ」「洋紙ヨウシ」「紙幣シヘイ」「紙背シハイ」(紙のうら)「紙幅シフク」(紙のはば。定められた原稿用紙の分量)
 シ・なめる・ねぶる  舌部
解字 「舌(した)+氏(シ)」 の形声。シは異体字の䑛シ(なめる)に通じ、なめる意。䑛シは「舌(した)+氐テイ(ふれる)」 の会意。氐テイは人が身をかがめて地面に手をふれる意。そこに舌(した)がついた䑛シは、舌でふれる⇒なめる意となる。䑛は会意で発音はシとなる。氐テイの音符に砥シ・祗シがある。※味わう意の「なめる」は、「嘗める」を使う。
意味 なめる(舐める)。ねぶる(舐る)。「舐筆シヒツ」(筆をなめる)「舐シトク」(親牛が子牛をなめる。トクは子牛)「舐之愛」(親牛が子牛をなめるように親が子を深くかわいがりすぎること)
<紫色は常用漢字>     
           
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音符「習シュウ」<何度もくりかえす> と 「褶シュウ」「摺ショウ」

2022年12月27日 | 漢字の音符
 シュウ・ならう  羽部    

解字 甲骨文字は「羽+日」であるが、のち日⇒曰(いわく)⇒白に変った字。ひな鳥が日中(晴天時)に羽を動かして飛ぶ練習をする意と解釈し、のちに日から白に変ったとすると解字できる。篆文の[説文解字]は「羽+白」になっているが「數(数を)飛ぶ也。羽に从(したが)い白に从(したが)う」として鳥が何度も飛ぶ形とする。また「礼記の月令」(戦国末)は「鷹たか乃(の)学習」としており、この字はひな鳥が飛ぶことを習うという意味とする。字形の「羽+白」からシュウの音を導くには会意として覚えるほかなさそうだ。

コウノトリのひな 巣の上で羽ばたき巣立ち準備(徳島新聞動画より)
意味 (1)ならう(習う)。まねる。まなぶ。「学習ガクシュウ」「練習レンシュウ」「習字シュウジ」 (2)慣れ親しむ。「習熟シュウジュク」 (3)ならい。ならわし。「習慣シュウカン

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 「何度もくりかえす」
(習・褶・摺)
 「形声字」(慴)
音の変化  シュウ:習・褶  ショウ:摺・慴

何度もくりかえす
 シュウ・チョウ・ひだ  衤部
解字 「衤(衣)+旧字の習(何度もくりかえす)」の会意形声。着物の布地を細かく何度も折りたたんだ折り目。
意味 (1)ひだ(褶)。はかまや衣服に細かく折りたたんである細長い折り目。しわ。「褶曲シュウキョク」(波状に曲がった地層) (2)はかま。「袴褶コシュウ」(騎馬用のはかま、袴も褶もはかまの意) (3)着物を重ねて着る。あわせ。裏のついた着物。
 ショウ・たたむ・する  扌部
解字 「扌(手)+旧字の習(何度もくりかえす)」の会意形声。紙や布を手で何度も手をくりかえし折ること。折りたたむ意となる。日本では、する・こする意でも用いる。
意味 (1)たたむ(摺む)。紙や布を折りたたむ。「奏摺ソウショウ」(上奏する折りたたみ文書)「摺扇ショウセン」(折りたたみ式の扇子) (2)[国]する(摺る)。こする。「摺衣すりぎぬ」(草木の汁を摺りつけて文様を染めた着物)「摺鉦すりがね」(ばちでこするように音を出す金属性の打楽器)「摺本ショウホン」(①折り本。②すりホン。木版・石板などで摺った本)「手摺てすり」(つかんでから手で摺るようにつたう横木)

形声字
 ショウ・おそれる  忄部
解字 「忄(こころ)+旧字の習(シュウ⇒ショウ)」の形声。ショウは同音の「懾ショウ」(おそれる)に通じ、おそれること。
意味 おそれる(慴れる)「慴悸ショウキ」(おそれどきどきする)「慴伏ショウフク」(おそれひれふす)「慴服ショウフク」(おそれしたがう)「懾慴ショウショウ」(懾も慴も、おそれる意)
<紫色は常用漢字>

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音符「呂リ ョ・ロ」<つらなる>と「侶リョ」「閭リョ」「宮キュウ」

2022年12月24日 | 漢字の音符
   増補改訂しました。
 リョ・ロ 口部

解字 ある物がかさなったり、つらなる形の象形。甲骨文は金の延べ棒を積んだ形の象形字(金の原字)と同じ形だという[甲骨文字辞典]。金文は国名・地名・人名に使われている。後漢の[説文解字]は、背骨の連なる形とする。宮の字では建物が連なる意であり、同じものが連なるイメージがある。つらなる意から音楽の音階に仮借カシャ(当て字)され、中国・日本の音楽の十二律(音階)のうち偶数番目に当る六つの音をいう。
意味 (1)音楽の音階で陰の音律をいう。「律呂リツリョ」(律の音と呂の音。楽律) (2)言葉の調子。「呂律ロレツ」(言葉の調子)「呂律ロレツがまわらない」(舌の動きが悪くなること)「語呂ゴロ」(言葉を発したときの続きぐあい) (3)外国地名の表記。「呂宋ルソン」(フィリピンの主要島。Luzonの当て字)

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 「つらなる」
(呂・侶・宮・閭・櫚・筥・梠・絽)
音の変化  リョ:呂・侶・閭・梠  ロ:櫚・絽  キュウ:宮  キョ:筥 
 
つらなる
 リョ・とも イ部
解字 「人(ひと)+呂(つらなる)」の会意形声。同列につらなる人。
意味 とも(侶)。ともがら。つれ。「伴侶ハンリョ」(なかま・つれ)「僧侶ソウリョ」(出家して僧門に帰した人、またその集団)
 キュウ・グウ・ク・みや  宀部
解字 「宀(たてもの)+呂(つらなる)」の会意形声。独立した部屋がつらなる王宮。
意味 (1)みや(宮)。神を祭るところ。「神宮ジングウ」「宮司グウジ」 (2)天子・天皇や皇族の住むところ。「王宮オウキュウ」「宮殿キュウデン」 (3)皇族。皇室。皇居。「中宮チュウグウ」「宮内クナイ
 リョ  門部
解字 「門(もん)+呂(家がつらなる)」の会意形声。家がつらなる村里の門。転じて、村里を表す。「周代の制度で25家を里とし、里の入口には必ず門があり、その門を閭リョといった」(大修館漢語新辞典)
意味 (1)さと。むらざと。「閭巷リョコウ」(村里の通り。村里)「閭里リョリ」(村里) (2)村里の門。「閭門リョモン」(村里の門)
 ロ・リョ  木部
解字 「木(き)+閭(=呂。つらなる)」の会意形声。上へ上へと積み重なるように(つらなって)成長する木。
意味 (1)「棕櫚シュロ」に使われる字。棕櫚シュロとは、ヤシ科の常緑高木。幹は太く直立し,上方に多数の葉をつけ、上へ上へと積み重なるように(つらなって)成長する木。 (2)「花櫚カリン」に使われる字。花櫚とは、マメ科の高木。東南アジアに分布し材は花櫚材として細工物・建具などに使用する。 
 キョ・はこ  竹部
① ② 
『五経図匯』に描かれた筥
「さいたま市岩槻人形博物館」の犬筥
解字 「竹(たけ)+呂(つらなる)」の会意形声。縦につらなるように重なる竹の籠。
意味 はこ(筥)。(1)竹製のかさねばこが原義。まるい竹製のかご。「筐筥キョウキョ」(竹製のはこ。筐は四角いはこ、筥はまるいはこ) (2)ふたのあるはこ。「犬筥いぬばこ」(犬のかたちをした雌雄一対のはこ)
 リョ・ロ・ひさし  木部

浄土寺八幡宮拝殿のひさし(寺社建築文化財の探訪<TIAS>より)
解字 「木(き)+呂(つらなる)」の会意形声。屋根の棟木(むなぎ)から軒桁(のきげた)まで勾配をつけてわたした垂木(たるき)の端が、軒先でそろって見えるさまで、ひさしをいう。
意味 (1)ひさし(梠)。のき(梠)。「屋梠オクリョ・オクロ」(屋根のひさし)「梁梠リョウリョ・リョウロ」(はりとひさし。梁は柱に水平に架ける材) (2)姓。「興梠こおろぎ・こうろき他」(宮崎県の高千穂や熊本県の阿蘇に多い姓)
 ロ・リョ  糸部
解字 「糸(いと)+呂(つらなる)」の会意形声。原義は糸で縫って布をつらねること。すなわち縫い綴(つづ)る・縫合する意。日本ではこの意で使われることなく、織り目の透いた薄い絹織物をいう。
から絽 
 羅の意味は鳥網だが、日本では目の粗い絹織物の意で用いた。『日本国語大辞典』によると、「羅衣 ロノコロモ」(文明本節用集・室町中)「羅 ロ」(撮壌集1454年)「羅ロ 羅ノ衣」(運歩色集1548年)の表記があり、中世の日本では羅を「ロ」と発音してこの絹織物を表現していた。羅ラの発音は中古音(隋・唐)であり、中国ではその後「lo(ろ)」に変化しており(現在はluóるお)、中世の日本では羅を「ロ」と発音する中国音が使われたと考えられる。その後、「綸子もあり絽(ロ)もあり」(浮世風呂1809-13年)のように羅に代わり同音の絽が使われるようになった。
意味 (1)ぬいつづる。つくろう。 (2)からみ織りの一種。織り目の透いた薄い絹織物。通気性が高いので、夏物の着物などに使われる。「生絽きろ」(生糸の絽織り)「練り絽ねりろ」(練り糸の絽織り)「絽縮緬ろちりめん」(縮緬糸の絽織り)「絽刺ろざし」(絽織りの布地に絹糸で刺繍をする。また、その刺繍をしたもの)「絽羽織ろばおり」(絽織りの短い上着) (3)縞織物の布。
<紫色は常用漢字>

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音符「角カク」<つの> と「桷カク」「斛コク」「槲かしわ」「鵤いかる」

2022年12月21日 | 漢字の音符
  増補改訂しました。
 カク・かど・つの  角部

解字 獣のツノの形の象形。角(つの)や角(かど)の意のほか、角で格闘することから、きそう意もある。
意味 (1)つの(角)。「角笛つのぶえ」「触角ショッカク」 (2)かど。かどばったところ。「角度カクド」「角材カクザイ」「三角形サンカクケイ」 (3)すみ(角)。すみっこ。 (4)あげまき。つのまき。髪を左右に分け、つのに似た形に結ぶ。「総角あげまき=角髪つのがみ」 (5)くらべる。きそう。「角力すもう」「角逐カクチク」(角は競う、逐は追い払うで、互いに競争すること)「角牛カクギュウ」(闘牛)
参考 角は部首「角つ の」になる。漢字の左辺や下部に付き、角(つの)の意を表す。常用漢字は3字で、角のほか、触[觸]ショク・ふれる(旧字は「角+音符「蜀ショク」)、解カイ・とく(角+刀+牛の会意)がある。その他に、觜シ・くちばし(角+音符「此シ」)、觴ショウ・さかずき(角+音符「傷の省ショウ」)など。

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 「つの」
(角・鵤) 
  角張る意から「四角い」(桷・斛・槲)
 「形声字」(确・埆)
音の変化  カク:角・桷・确・埆  コク:斛・槲  いかる:鵤

つの
[国字] いかる  鳥部

イカル(ウィキペディアより)
解字 「角(つの)+鳥(とり)」の会意。角のような嘴(くちばし)を持つ鳥。
意味 イカル(鵤)。スズメ目アトリ科の鳥類。太くて大きい黄色い嘴を持ち、木の実や草の種子を採食する。

四角い
 カク・たるき  木部
解字 「木(き)+角(四角い)」の会意形声。四角な木材の意、棟(むね)から軒(のき)にわたす角材の垂木にあてる。
意味 (1)たるき(桷)。屋根板を支えるために棟から軒にわたす角材。丸木の垂木を椽テンという。「朱桷シュカク」(朱色のたるき)「椽桷テンカク」(たるき。椽も桷も、たるきの意) (2)[国]ずみ(桷)。ひめかいどう。こりんご。バラ科の落葉小高木。
 コク・ゴク  斗部
 四角い斛    後漢の円い斛
解字 「斗(ます)+角(四角い)」の会意形声。四角いますの意。容量の単位を表すのに用いる。
意味 (1)容量の単位。一斗の十倍。石コク。一斗はいまの日本で約18リットル。1石は180リットル。日本で10斗の意味に石を用いるが、石をコクと読むのは斛コクの字音を借りたもの[大修館漢語新辞典]。「斗斛之禄トコクノロク」(一斗一石の俸禄。わずかな俸禄の意。=斗升之禄)「万斛バンコク」(はなはだ多い分量) (2)ます。量器の総称。四角いますだけでなく、円いますにも言う。 (3)草花の名。「石斛セッコク」(ラン科の常緑多年草。デンドロビウム)
 コク・かしわ  木部
 円い斛(ます)の上に実が乗った形のカシワ
解字 「木(き)+斛(まるいます)」の会意形声。実(ドングリ)がまるい斛(ます)の上に乗った形をしているカシワの木。
意味 かしわ(槲)。ブナ科の落葉高木。葉は大きく周辺が波うつのが特徴で餠などを包むのに用いる。日本では柏とも書く。
※日本語でドングリといわれるのは、ブナ科の果実の内、普通クヌギ・カシ・ナラ・カシワである。クヌギは「櫟・橡」、カシは「樫・橿」、ナラは「楢」と書かれるため「斛」がつく字は、かしわ(槲)になる。

形声字
 カク・かたい・そね  石部
解字 「石(いし)+角(カク)」の形声。カクは殻カク(から・表面)に通じる。表面に石が多い痩せ地をいう。また、確カクに転じて、かたい(確い)意味となる。
意味 (1)そね(确)。いそね(石根)の略。石の多い痩せ地。<新撰字鏡>(=埆カク)。「确瘠カクセキ」(石の多い痩せ地) (2)かたい(确い)。しっかりする。「确确カクカク」(かたい)「确然カクゼン」(しっかりして動かないさま)
 カク・そね  土部
解字 「土(土地)+角(=确カク)」の会意形声。埆は确の意味を土偏で表した字。
いそね(石根)の略。石の多い痩せ地をいう。
意味 やせち(埆)。そね(埆)。(=确)。いそね(石根)の略。石の多い痩せ地をいう。堅い土地。「瘠埆セキカク」(やせち)
<紫色は常用漢字>


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音符「固コ」<かためる>と「個コ」「錮コ」「涸コ」「箇カ」

2022年12月18日 | 漢字の音符
  増補改訂しました。
 コ・かためる・かたまる・かたい  囗部

解字 「囗(かこい)+古(祝詞を入れた器を盾で守る)」の会意形声。祝詞を入れた器を盾で守る形に、さらに外を囲んで、かたく守ること。守りをかためる意が原義だが、物をかためる・物がかたい意ともなる。また、最初から守っている所に囲みをつけたので、「もとより」の意となる。
意味 (1)かためる(固める)。かたまる(固まる)。かたい(固い)。「固体コタイ」「強固キョウコ」 (2)かたくな。「頑固ガンコ」 (3)もとより。はじめから。「固有コユウ

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 「かたい・かためる」
(固・錮・涸・凅・痼)
 ひとつひとつがかたく囲まれていることから「独立した」(個・箇)
音の変化  コ:固・錮・涸・凅・痼・個  カ:箇

かたい・かためる
 コ・ふさぐ  金部
解字 「金(金属)+固(かためる)」の会意形声。溶かした金属を流し込み隙間をふさいで固めること。
意味 (1)ふさぐ(錮ぐ)。 (2)とじこめる。「禁錮キンコ」「党錮トウコ」(反対する党の者をとじこめること)「党錮の獄ゴク」(後漢のとき跋扈バッコする宦官が反対党の儒学者を終身禁固にしたこと) (3)ながわずらい。「錮疾コシツ」(=痼疾コシツ
 コ・かれる  氵部
解字 「氵(水)+固(周囲をかためる)」の会意形声。水が周囲を固められて外に流れないこと。外からみると、水がかれる意となる。常用漢字でないため、枯に書き換えることがある。
意味 かれる(涸れる)。水がなくなる。「涸渇コカツ」(=枯渇)「涸旱コカン」(水がれ。ひでり)「涸轍コテツ」(水が涸れている車のわだち)「涸轍鮒魚コテツフギョ」(水の涸れた車のわだちにいる鮒ふな。危険が目の前に迫っていることのたとえ)
 コ・こおる  冫部
解字 「冫(こおる)+固(かたまる)」の会意形声。固まって氷になること。
意味 こおる(凅る)。かたくこおりつく。(=冱。凍トウ)「凅凍コトウ」(こおる)  
 コ・しこり  疒部
解字 「疒(やまい)+固(かたい・かたまる)」の会意形声。皮膚や筋肉などが固くなる症状。また、そのかたまり。
意味 (1)しこり(痼)。①筋肉などが凝って固くなること。また、そのかたまり。②物事が終わったあとに残る気まずい感じ。「後に痼しこりが残る」(2)ながわずらい。「痼疾コシツ」(なかなか治らない病気)

独立した
 コ  イ部
解字 「イ(人)+固(独立した)」の会意形声。独立した一人一人の人の意。転じて、ひとつ・ひとりの意となる。
意味 (1)ひとつ。ひとり。「個人コジン」「別個ベッコ」「個性コセイ」 (2)物を数えるのに添える語。「個数コスウ」「三個サンコ」(みっつ)
 カ・コ  竹部
解字 「竹(たけ)+固(独立した)」の会意形声。[説文解字]は、「竹枚(竹片)也(なり)」とする。独立した個々の竹片をいい、これで物を数えたりする。個と通用するが、また独立した物を指す語として用いる。
意味 (1)物を一つ一つさす語。この。これ。あの。「箇所カショ」(その物のある所。場所)「箇条カジョウ」(いくつかに分け示した一つ一つの条項)「三箇所サンカショ」「三ケ所サンカショ」(=三箇所。ケは、箇の竹かんむりの一つを取り出した略字で箇と同じ意味を表す。したがって「ケ(け)」と発音しない) (2)物を数えるのに添える語。(=個と通用する)
<紫色は常用漢字>

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音符「臤ケン」<かたい> と「賢ケン」「堅ケン」「緊キン」「腎ジン」

2022年12月15日 | 漢字の音符
  増補改訂しました。
 ケン・カン  臣部

解字 目を縦たてにした臣シンと又(て)から成る。臤を音符に含む字で最も古いのは、賢ケンである。賢ケンは甲骨文字で臤と書かれており、「臣(家臣)+又(て)」の会意。君主が家臣に手をつける形で、掌握しているかしこいすぐれた家臣の意。賢の原字。金文から貝を加えた賢となった。また、臤は君主に手をつけられた(掌握された)家臣が、かしこまって「かたくなる」イメージがある。
意味 (1)かたい。(堅と通じ) (2)かしこい。(賢と通じ)

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 「かしこい」
(賢)
 「かたくなる」(堅・樫・鰹・慳・竪・緊)
 「形声字」(腎・鏗)
音の変化  ケン:賢・堅・鰹・慳  キン:緊  コウ:鏗  ジュ:竪  ジン:腎  かし:樫

かしこい
 ケン・かしこい  貝部

解字 甲骨文は「臣(家臣)+又(て)」で、君主が家臣に手をつける形。掌握しているかしこいすぐれた家臣の意。金文から貝(財産)が付き、財政を担当する賢い家臣となった。かしこい意となる。
意味 (1)かしこい(賢い)。かしこい人。さかしい(賢しい)。「賢明ケンメイ」「賢人ケンジン」 (2)さかしら(賢しら)。利口ぶる。「賢立(かしこだ)て」(利口ぶる) (3)敬意を表す。「賢察ケンサツ」(相手の推察に対する尊敬語。お察し。)

かたくなる
 ケン・かたい  土部
解字 「土(つち)+臤(かたくなる)」の会意形声。かたく締まった土。かたい意となる。
意味 (1)かたい(堅い)。「堅固ケンゴ」 (2)しっかりしている。充実している。「堅気かたぎ」(地道でまじめ)「堅陣ケンジン」「中堅チュウケン
<国字> かし  木部
解字 「木(樹木)+堅(かたい)」 の会意形声。木質の堅い木。
意味 かし(樫)。コナラ属の常緑高木。シラカシ・アラカシなどがあり、材は堅く器具材などに使われる。
 ケン・かつお  魚部
解字 「魚(さかな)+堅(かたい)」の会意形声。身が堅くしまった魚。また、堅いかつお節の材料となる魚。なお、中国では鱧(はも)のたぐいの魚の意だったが、現在はカツオの意で用いる。
意味 かつお(鰹)。サバ科の海水魚。「鰹節かつおぶし」(煮た鰹をよく干して堅くしたもの。削って調味料にする)「鰹鳥かつおどり」(カツオの群れにむらがる鳥)
 ケン・カン・おしむ  忄部
解字 「忄(心)+堅(かたい)」の会意形声。心をかたくする。仏教用語で、ものおしみする意で使われる。日本では、意地悪い意でも使う。
意味 (1)おしむ(慳しむ)。しぶる。けちる。「慳貪ケンドン」(①けちで貪欲。②[国]無愛想。つっけんどん) (2)[国]意地がわるい。「邪慳ジャケン」(意地わるく冷たい)
 ジュ・たて  立部
解字 「立(たつ)+臤(かたくなる)」の会意形声。身体をかたくした家来が立つこと。
意味 (1)たつ(竪つ)。たてる。「竪立ジュリツ」(まっすぐ立つ) (2)たて(竪)。「竪穴たてあな」(たてに掘った穴)「竪坑たてこう」(斜坑・横坑に対し、たてに掘った坑道)「竪琴たてごと」(ハープなど、弦をたてに張った楽器)
 キン・しめる  糸部
解字 「糸(いと)+臤(かたく)」の会意形声。糸でかたく締めること。
意味 (1)かたい。きつい。「緊張キンチョウ」 (2)すきまやゆとりがない。差し迫っている。「緊迫キンパク」「喫緊キッキン」(さしせまって重要なこと) (3)しめる(緊める)。しまる。「緊縮キンシュク

形声字
 ジン  月部にく
解字 「月(=臓の略)+臤(ケン⇒ジン)」の形声。漢方の五臓(心・肝・脾・肺・腎)の一つでジンという内臓をいう。五行説で、水に属し生命エネルギーの根源となる腎精が宿るとされる。現代医学では血液からの老廃物や余分な水分のろ過及び排出(尿)を主な役割とする体の器官。なお、発音のジンは臤を構成する臣シンに由来する。
意味 (1)五臓のひとつ。「腎臓ジンゾウ」(血液を濾過して老廃物や余分な塩分を尿として体の外へ排出する器官。腰のあたりに左右対称に2個ある)「腎炎ジンエン」(腎臓の炎症)「副腎フクジン」(腎臓に接する内分泌器官。特定のホルモンを分泌する) (2)かなめ。大切なところ。「肝腎カンジン」(肝臓と腎臓、もっとも大事なこと)「心腎シンジン」(心臓と腎臓)
 コウ・うつ  金部
解字 「金(金属・硬い)+堅(ケン⇒コウ)」の形声。硬い金属や石のコーンと鳴る音の形容。
意味 (1)金属や石の鳴る音。「鏗鏗コウコウ」(①金属や石の鳴る音。②言葉が明確なさま)「鏗然コウゼン」(甲高い音の形容)「鏗錚コウソウ」(金石または琴などの音)「鏗爾コウジ」(①金石や音の形容。②琴を下に置くときコーンと鳴る音の形容[論語・先進]) (2)うつ(鏗つ)。つく。「鏗鐘コウドウ」(鐘をうつ)
<紫色は常用漢字>

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音符「追ツイ」<おう> と 「搥ツイ」「槌ツイ」「鎚ツイ」「縋ツイ」

2022年12月12日 | 漢字の音符
  改訂しました。
 ツイ・おう  辶部    

解字 金文は「彳(ゆく)+𠂤タイ(=師:軍隊)+止(あし)」のかたち。軍隊が止(あし)で敵をおって彳(ゆく)こと。篆文は「彳+止」が合体して辵チャクとなり、旧字で辶、現代字で辶(しんにょう。ゆく)となった。なお、𠂤タイがなぜ軍隊の意味になるかは「軍がたずさえる祭肉」などの諸説がある。
意味 (1)おう(追う)。おいかける。「追跡ツイセキ」「追従ツイジュウ・ツイショウ」 (2)おいはらう。「追討ツイトウ」「追放ツイホウ」 (3)たずね求める。「追求ツイキュウ」 (4)後から付け加える。「追加ツイカ」 (5)過去にさかのぼる。「追憶ツイオク」「追悼ツイトウ

イメージ 
 「おいかける」
(追・搥・槌・鎚)
 「形声字」(縋)
音の変化  ツイ:追・搥・槌・鎚・縋

追いかける
 ツイ  扌部
解字 「扌(手)+追の旧字(追う)」の形声。漁労で仕掛けた網に魚を追いこむため船べりを手にもった棒などでたたくこと。また、放牧された家畜を細い枝などでうち、囲いに追い込むこと。
意味 たたく(搥く)。うつ(搥つ)。「搥鼓ツイコ」(太鼓をうつ)「搥背ツイハイ」(背中をたたく)
 ツイ・つち  木部
解字 「木(き)+追(=搥の略体。うつ・たたく)」の会意形声。物をたたいたり、打つ木の棒。
   
①棒状の槌・中国(洗濯物をたたく) ②日本の木槌(工作用)
https://www.sohu.com/a/479774759_121119347
意味 (1)つち(槌)。木づち。物をたたく道具。「木槌きづち」「小槌こづち」 (2)うつ。木づちでうつ。「相槌あいづち」(互いに向かい合って槌を打つこと=相鎚)
 ツイ・タイ・つち  金部
解字 「金(金属)+追(=槌の略体。つち)」の会意形声。打つ部分が金属製のつち。
意味 (1)つち(鎚)。かなづち。物をたたく金属製の道具。「金槌かなづち」「鉄鎚テッツイ」 (2)うつ。かなづちで打つ。「相鎚あいづち」(互いに向かい合って鎚を打つこと=相槌) (3)はかりの重り。

形声字
 ツイ・すがる  糸部
解字 「糸(なわ)+追(ツイ)」の形声。ツイは錘ツイ・スイ(おもり)に通じ、縄に錘(おもり)をつけてぶらさげること。また、城壁から縄に錘をつけてぶらさげ、縄にすがっておりることをいう。
意味 (1)かける。たらす。つりさげる。「縋城而下=城に縋(か)け而(て)下る」 (2)[国]すがる(縋る)。つかまる。たよる。「藁わらにも縋る思い」
<紫色は常用漢字>

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音符「規キ」<コンパス>「窺キ」「槻キ」と「量リョウ」<はかる>「糧リョウ」

2022年12月10日 | 漢字の音符
  規の解字をやり直しました。
 キ・のり  見部          

解字 篆文第一字は「夫+見」、篆文第二字(六書通の古文)は「矢+見」。夫と矢は篆文でよく似ており間違いやすい字。[説文解字]は第一字で「法度ハット(法令・特に禁止のおきて)有(ある)也(なり)」とし、夫と見の会意とするが、何故この二字で法度になるのか説明がない。また中国南北朝時代の部首別字典である[玉篇]は「正圜(円)之器也」と円を描く道具(コンパス)とする。規には、この二つの意味がある。
 規と矩(「大工規矩術技能」より)
 一方、第二字の「矢+見」は異体字として䂓があるが、規矩キク(コンパスと指矩さしがね)の矩とそろえるため矢をつけて䂓矩キクとしたのではないかとされる。したがって、なぜ「夫+見」でコンパスの意になるかは不明である。各種の字典に解字の説明があるが納得できるものがない。ごろ合わせで覚えるのがいいと思う。
覚え方 おっと()が、み()るのは格外 <背の高い夫をもつ妻・衣料品売り場で>
意味 (1)ぶんまわし(規)。コンパス。「規矩キク」(規はコンパス、矩は直線や直角を描く物差しのこと。手本の意) (2)まる。円形。「半規ハンキ」(半円形。半月) (3)のり(規)。きまり。てほん。「規則キソク」「規範キハン」「規格キカク」「法規ホウキ」 (4)(規からはずれた人を)ただす。いましめる。「規正キセイ」(悪い所を正しくなおす)「箴規シンキ」(箴も規も、いましめる意)

イメージ 
 「コンパス」
(規) 
 「まるい」(窺・槻)
音の変化  キ:規・窺・槻

まるい
 キ・うかがう・のぞく  穴部
解字 「穴(あな)+規(まるい)」の会意形声。まるい穴からのぞいて様子をさぐること。
意味 うかがう(窺う)。のぞく(窺く)。「窺見キケン」(うかがい見る)「窺知キチ」(うかがい知る)「窺測キソク」(うかがいはかる。推測)「窺管キカン」(管をのぞいて天を見る。視野や見識の狭い例え)
 キ・つき  木部

槻の木(ブログ「Frank-Ken's Photo Gallery」より)
解字 「木(き)+規(まるい)」の会意形声。枝をたくさん広げ、まるい樹冠をもつ木。
意味 (1)つき(槻)。ニレ科の落葉高木。けやきの一種。 (2)けやきの古名。 (3)地名。「高槻たかつき」(大阪府にある市の名前)


   リョウ <はかる>
 リョウ・はかる  里部

解字 甲骨文は、穀物をいれる袋の上に、注ぎ口を表した形。穀物の量をはかる意味を示す。金文は口⇒日に変化。篆文以降、形が変化し、現代字は、「日+一+里」の形になった。漢字検索のための部首は里。形が大幅に変化しているので、ごろ合わせで覚えると便利。
覚え方 ひ()に、いち()ど、さと()で、って計す。
意味 (1)はかる(量る)。「計量ケイリョウ」「量器リョウキ」 (2)かさ。容積。人間のもつ力や気持ちの大きさ。「容量ヨウリョウ」「力量リキリョウ」「度量ドリョウ」 (3)ます。「度量衡ドリョウコウ」(長さと容積と重さ)

イメージ 
 「はかる」
(量・糧)
音の変化  リョウ:量・糧

はかる
 リョウ・ロウ・かて  米部
解字 「米(こめ)+量(はかる)」の会意形声。米の量をはかること。
意味 (1)かて(糧)。旅行や行軍のとき持って行く食糧。「兵糧ヒョウロウ」「糧道リョウドウ」(兵糧を運ぶ道) (2)主食になる食べ物。「食糧ショクリョウ」「糧米リョウマイ
覚え方 こめ()を、ひ()に、いち()ど、さと()で、集めて兵米(ひょうろうまい)」 [漢字川柳]を参考。
<紫色は常用漢字>

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音符「希キ」<まれ> と「稀キ」「晞キ」「唏キ」「欷キ」

2022年12月07日 | 漢字の音符
 キ・まれ・ねがう  巾部 
[漢典]より引用。
解字 秦系文字(篆文)は「爻コウ(まじわる)+巾(ぬの)」の形。爻コウは交差する形の乂を二つ重ね、糸と糸との間に隙間がある形、巾は布で、すかし織りを加えた布の意[字統]。楷書は爻の下の乂がナに変化した希になった。すかし織りはむずかしく、めったにないことから、まれ・珍しい意となる。また、同音の睎(望み見る。のぞむ)に通じ、こいねがう意もある。
意味 (1)まれ(希)。すくない。めずらしい。「希少キショウ」(まれで少ない)「古希コキ」(70歳のこと。この年齢まで生きるのは「古来希(まれ)なり」から)「希土類キドルイ」(レアアース。rare earth elements の直訳。レアメタルの中の一つの鉱種で、化学的に単元素の分離抽出がむずかしいことに由来する言葉。正式には、希土類元素という)「希代キダイ」(とても珍しい) (2)うすい(薄い)。「希薄キハク」(濃度・密度が小さい) (3)ねがう(希う)。こいねがう(希う)。「希求キキュウ」「希望キボウ

イメージ
 「まれ・まばら」(希・稀・晞)
 「形声字」(唏・欷)
 「その他」(鯑)
音の変化 キ:希・稀・晞・唏・欷  かずのこ:鯑

まれ・まばら
 キ・まれ  禾部
解字 「禾(いね)+希(まれ)」の会意形声。稲が密生せず、まばらであること。また、希に通じて、まれ・めずらしい・うすい意となる。現代表記では希に置きかえられる。
意味 (1)まばら。まばらにある。「稀星キセイ」(まばらな星)「稀少キショウ」(すくない) (2)まれ(稀)。すくない。「稀有ケウ」(=希有) (3)うすい。「稀薄キハク」(=希薄)
 キ・かわく  日部
解字 「日(日光)+希(まばら・すくない)」の会意形声。日光がまばら(少ない)の意味で、日の出や夜明けの意味だが、日の光で乾く意にも用いる。
意味 (1)かわく(晞く)。かわかす。日にさらす。「晞日キジツ」(日にさらす)「晞塊キカイ」(かわいた土=晞土キド)「晞髪キハツ」(髪をかわかす)(2)日の出や明け方。「東方未晞ビキ」(東方 未(いま)だ晞(あ)けず)

形声字
 キ・なく  口部
解字 「口(くち)+希(キ)」の形声。口をあけてキという声をだすこと。すすり泣く・なげく意となる。
意味 (1)なく(唏く)。すすりなく。「唏泣キキュウ」(なく)「唏嘘キキョ」(すすりなく) (2)なげく(唏く)。
 キ・なげく  欠部
解字 「欠ケン(口をあける)+希(キ)」の形声。口をあけてキという声をだすこと。すすり泣く・なげく意となる。「欠ケン」を参照。
意味 (1)すすり泣く。むせび泣く。「欷歔キキョ」(悲しんですすり泣く) (2)なげく(欷く)。「欷吁キク」(なげく)

その他
[国字] かずのこ  魚部
 数の子
https://www.furusato-tax.jp/product/detail/12234/5165424
解字 「魚(さかな)+希(=晞・かわかす)」の会意。メスのニシン(鰊)の腹から取り出した魚卵の塊(卵巣)を一度「天日干し」にした食品。数の子の名称は「鰊(かど)の子」から変化したとされる。数の子は、干日干しが一般的であったが、塩蔵数の子が製造され始めたのは1900年代(明治30年代以降)に入ってからだと言われている[ウィキペディア]。
意味 かずのこ(鯑)。数の子。粒の多さが子孫繁栄を連想させることから、おせち料理に加える。
<紫色は常用漢字>


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音符「屋オク」<上からかぶせる・おおう>「握アク」「渥アク」「幄アク」

2022年12月04日 | 漢字の音符
 オク・や  尸部           

解字 尸は「しかばね」および「人の坐ったかたち」の字であるが、建物を表す字では「やね」の意で使われることがある。篆文第一字は春秋・戦国時代の籀文チュウブンで、「尸(やね)+厂(片屋根)+至(いたる)」の会意。「厂(片屋根)+至(いたる)」は、「宀(たてもの)+至(いたる)」の室(へや)と同じ。それに尸(やね)が加わった屋オクは、室(へや)をおおう屋根、およびその建物を表す。篆文第二字は「尸(やね)+至(=室の略体)」で同じく屋根および家屋の意となる。屋を音符に含む字は屋根が「上からかぶせる・おおう」イメージを持つ。
意味 (1)やね(屋根)。「屋上オクジョウ」「屋台やたい」(簡単に移動できる、屋根をつけた売り台)「屋形船やかたぶね」(屋根の形をつけた船) (2)や(屋)。いえ。すまい。「家屋カオク」「屋舎オクシャ」(たてもの。家屋)「屋敷やしき」(家屋の敷地。大きな敷地をもつ家屋) (3)や(屋)。職業や商店の名につける語。「屋号やゴウ」「高島屋たかしまや」「問屋とんや」(卸し売りを扱う商店)

イメージ 
 「やね・いえ」
(屋)
 「上からかぶせる・おおう」(握・偓・齷・幄・渥)
音の変化  オク:屋  アク:握・偓・齷・幄・渥

上からかぶせる・おおう
 アク・にぎる  扌部
解字 「扌(て)+屋(上からかぶせる)」の会意形声。手を上からかぶせて握ること。
意味 (1)にぎる(握る)。つかむ。「握手アクシュ」「握力アクリョク」 (2)自分のものにする。「掌握ショウアク」「把握ハアク
 アク  イ部
解字 「イ(ひと)+屋(=握。にぎる)」の会意形声。人と手を握り、人とかかわること。偓促アクセクに用いる字。
意味 かかわる。こだわる。「偓促アクセク」(偓は人とかかわり、促は人をうながすこと。人とかかわり人をうながし、休む間なくせかせかと仕事をすること。また、小さなことにこだわること)
 アク  歯部
解字 「齒(は)+屋(アク)」の形声。偓促アクセクの、イ(ひと)⇒齒(は)に替えた齷齪アクセクに用いられる字。偓促アクセクは、人が休む間なくせかせかと仕事をする意だが、齒のついた齷齪は歯と歯の間が詰まって狭い意から転じて、事が細かくせまい。些事にこだわってこせこせするさまとなり、偓促アクセクと同じ意味で使われる。
意味 齷齪アクセクに用いる字。齷齪アクセクとは、休む間なくせかせかと仕事をすること。また、小さなことにこだわること。「齷齪と働く」「齷齪することはない」
 アク・とばり  巾部
解字 「巾(ぬの)+屋(上からかぶせる)」の会意形声。上からおおったり、周りをかこんだりする幕。 
① 
①和漢三才図会の「幄」、屋根のまわりにひきまくをつけた形 ②「日本国語大辞典」掲載図の「幄」、屋根とまわりを幕でかこう。
意味 とばり(幄)。上からおおったり周りを囲んだりする幕で、てんまく・テント・ひきまくなどをいう。「幄舎アクシャ」(柱を立てて棟を渡し、上部と周囲に幕を張った仮の建物、上図②=幄屋あくのや・あくや)「帷幄イアク」(帷をたれまく、幄をひきまくの意とし、幕を張り巡らした陣営)
 アク・あつい  氵部
解字 「氵(みず)+屋(上からおおう)」の会意形声。水が上からおおうこと。つまり雨が多く、それによってものが潤い、つやがでること。また、雨で潤う意から転じて、恩恵の大なることをいう。
意味 (1)うるおう。うるおい。つや。「渥然アクゼン」(顔色のつややかなさま)「渥美アクビ」(つやつやして美しい) (2)あつい(渥い)。てあつい。「渥恩アクオン」(手厚い恩恵。厚恩)「優渥ユウアク」(優は豊か、渥は厚いで、恩恵をあまねく受けること) (3)[国]「渥美あつみ」(地名。姓)「渥美あつみ半島」(愛知県東南端から西へ突き出る半島)
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