漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符 「廾キョウ」 <両手> と 「共キョウ」

2017年05月27日 | 漢字の音符
 キョウ  廾部にじゅうあし     

解字 左右の手をならべた形。手にものを載せてささげる意味につかう。部首になる。
意味 両手でささげる。
参考 キョウは両手をつかう意で部首「廾にじゅうあし」になる。廾部は常用漢字で3字、約14,600字を収録する『新漢語林』では20字が収録されている。主な字は以下のとおり。
ヘイ(廾+音符「敝ヘイ」)・弄ロウ(玉+廾の会意)・弁ベン(ム+廾の会意)


            キョウ <両手でささげる>
 キョウ・とも  ハ部           

解字 甲骨文と金文は両手に貴重なものを持ち、神にささげている形で、供キョウ(そなえる)の原字。篆文第一字は手を四つ描き、篆文第二字で上の両手が廿の形に変化した。多くの手をそろえることから、ともに、の意を表わす。現代字は共に変化した。意味は、「ともに・いっしょに」だが、甲骨・金文の「ささげる」意は音符のイメージに出てくる。漢字検索のための部首は「ハ」。
意味 ともに(共に)。いっしょに。「共同キョウドウ」「共学キョウガク」「共鳴キョウメイ」「共倒(ともだお)れ」「共食(ともぐ)い」

イメージ  「ともに・いっしょに」 (共・洪・哄・鬨・巷・港)
       両手でものを 「そなえる・ささげる」 (供・恭・拱)
音の変化  キョウ:共・供・恭・拱  コウ:洪・哄・鬨・巷・港

ともに・いっしょに
 コウ  氵部
解字 「氵(水)+共(いっしょに)」 の会意形声。水がいっせいに出ること。
意味 (1)おおみず。「洪水コウズイ」「洪積世コウセキセイ」(洪水の堆積物に覆われた時代の意。実際は洪水でなく氷河に覆われた時代) (2)おおきい。すぐれた。「洪恩コウオン」(大きな恩)
 コウ  口部
解字 「口(くち)+共(いっしょに)」 の会意形声。大勢の人がいっしょに口から声を出すこと。
意味 どよめく。どよめき。「哄笑コウショウ」(どよめいて笑う。大声で笑う)
 コウ・とき  鬥部
解字 「鬥トウ(たたかい)+共(いっしょに)」 の会意形声。鬥トウは戦いの意。鬨は、戦いのとき一斉に声を出すこと。
意味 とき(鬨)。ときの声。戦場などで士気を高めるために一斉にあげる声。「勝鬨かちどき」(勝利して一斉に出す歓声)「鬨頭ときがしら」(ときの声を最初に出す大将)
 コウ・ちまた  己部

解字 篆文は 「邑ユウ(まち)+共(いっしょに)」 の会意形声。まちの人々が一緒にくらすこと。また発音のコウが行コウに通じ、まちなかを行く道の意ともなる。現代字は、篆文の邑ユウ⇒巳に変化した巷になった。意味は、町のなか・世間、および町中の道。
意味 ちまた(巷)。①町の中の道。②町の中。世間。「巷ちまたの声」「巷間コウカン」(町の中。世上)「巷説コウセツ」(ちまたのうわさ=巷談)
 コウ・みなと  氵部
解字 旧字は、「氵(川)+巷(町の道)」 の会意形声。町の道が川と接するところ。町の道から人や荷物が川船に乗りかえるところをいう。のち、海に面した港が発達した。新字体は巷の下部が己に変化。
意味 (1)みなと(港)。船の発着所。「出港シュッコウ」「母港ボコウ」「漁港ギョコウ」 2)飛行機の発着所。「空港クウコウ

そなえる・ささげる
 キョウ・ク・とも・そなえる  イ部
解字 「イ(人)+共(そなえる)」 の会意形声。人が物をおそなえする、さしだす意。
意味 (1)そなえる(供える)。神仏にそなえる。「供物クモツ」 (2)すすめる。さし出す。「供出キョウシュツ」 (3)事情をのべる。「供述キョウジュツ」「自供ジキョウ」 (4)とも(供)。仕える。ともにする。「供奉グブ」(行幸などの行列に加わる。奉仕すること)
 キョウ・うやうやしい  㣺(心)部
解字 「㣺(心)+共(ささげる)」 の会意形声。目上の人にものをささげる時のかしこまった気持ち。
意味 うやうやしい(恭しい)。かしこまる。つつしむ。「恭順キュウジュン」(つつしんで従う)「恭賀キョウガ」(うやうやしく祝う)「恭孝キョウコウ」(つつしんで父母に仕える)
 キョウ・こまぬく・こまねく  扌部
 拱手キョウシュ(百度より)
解字 「扌(手)+共(ささげる⇒両手をだした形)」の会意形声。ささげた両手を胸もとで合わせ拝礼をすること。日本では、腕組みをする意となる。
意味 こまぬく(拱く)。こまねく(拱く)。(1)両手を胸の前に重ねあわせて敬礼する。「拱手キョウシュ」(中国で敬礼の一つ)(2)[国]腕組みをして何もしない。「手を拱(こまね)く」「拱手傍観キョウシュボウカン」(腕を組んで見ているだけで何もしない)  
<紫色は常用漢字>

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音符 「氒ケツ」 <丸刃の彫刻刀> と 「舌カツ」 「刮カツ」 「活 カツ」

2017年05月24日 | 漢字の音符
                   ケツ <丸刃の彫刻刀> 
 ケツ  氏部
      
解字 金文第1字は彫刻刀などの、先の丸い刃に柄がついた形の象形。第2字は柄に横線が入ったかたち。篆文は丸刃⇒氏、横線の入った柄⇒十に変化し、現代字で氒ケツとなった。意味は彫刻刀で「ほる」。また、仮借(当て字)で、「その」の意がある。
意味 (1)ほる。 (2)その。



                カツ <小刀で穴をあける>
 カツ          

解字 篆文は、「氏+口コウ」だが、カツの発音は氏と口から出てこない。そこで私は氏を氒ケツ(丸刃の彫刻刀)の略体と考えた。すると、「氒ケツ(丸刃の彫刻刀)+口(あな)」の会意形声(ケツ⇒カツに転音)となり、彫刻刀で穴をあける形となる。意味は、小刀でけずって穴をあけること。他の字と会意や形声文字を作るとき「舌」の形になるが、この字が単独で使われることはない。舌(ゼツ・した)とは別字。舌カツを音符に含む字は、小刀で「けずる」。あけた穴が「まるい」、あけた穴の中を「すらすら通る」イメージを持つ。

イメージ  小刀で 「けずる」 (刮・筈)
       けずった穴が 「まるい」 (括)
       あけた穴を 「すらすら通る」 (活・話・憩)
音の変化  カツ:括・刮・筈・活  ケイ:憩  ワ:話

けずる
 カツ・けずる・こそげる  刂部
解字 「刂(かたな)+舌(けずる)」 の会意形声。舌カツは、刀でけずるかたち。そこに刂(刀)をつけて、けずる意を強めた字。
意味 (1)けずる(刮る)。こそげる(刮げる)。けずり除く。かきとる。そぐ。「刮刷カツサツ」(けずり取る。こすり取る。=刮削カツサク) (2)こする。「刮目カツモク」(目をこすってよく見る)
 カツ・やはず・はず  竹部
解字 「竹(竹の矢)+舌(=刮。けずる)」 の会意形声。矢の矢羽側にある弦をうけるけずり込みをいう。また、弓の両端の弦をかける所もいう。
意味 (1)はず(筈)。やはず(筈)。矢筈とも書く。矢の先にある弦を受ける切り込み。 (2)[国]ゆはず(弓筈)。弓の両端の弦をかける所。 (3)[国](筈と弦はいつも合うことから)当然そうなること。道理。「そんな筈はない」「手筈てはず」(前もって決める手順)

まるい
 カツ・くくる  扌部
解字 「扌(て)+舌(まるく)」 の会意形声。手でまるく束ねること。
意味 くくる(括る)。まとめる。くびる。くびれる(括れる)。「一括イッカツ」「包括ホウカツ」「括弧カッコ」(弧状のもので括る)

すらすら通る
 カツ・いきる  氵部
解字 「氵(水)+舌(すらすら通る)」 の会意形声。水が穴からすらすら通ること。転じて、いきいきとしていること。
意味 (1)勢いよく動く。いきいきとしている。「活気カッキ」「活発カッパツ」 (2)いきる(活きる)。いかす(活かす)。「活用カツヨウ」「生活セイカツ
 カツ・ひろい  門部
解字 「門(もん)+活(勢いよく通る)」 の会意形声。門が広くて通りやすいこと。転じて、人の心にも言う。
意味 (1)ひろい(闊い)。「闊葉樹カツヨウジュ」(広く平たい葉を付ける樹木=広葉樹) (2)心がひろい。のびのびと。「闊達カッタツ」(心が広く物事にこだわらない)「闊歩カッポ」(大またで堂々と歩く) (3)(気が大きすぎて)うっかりする。注意がたりない。おろそか。「迂闊ウカツ」(うっかりする)
 ワ・カ(ク)・カイ(クイ)・はなす・はなし  言部
解字 「言(ことば)+舌(すらすら通る)」 の会意形声。言葉がすらすらと続くこと。発音のワは、カ(ク)からクが取れた形の唐音。
意味 (1)はなす(話す)。語る。「会話カイワ」「講話コウワ」 (2)はなし(話)。ものがたり。「実話ジツワ」「民話ミンワ
 ケイ・いこい・いこう  心部
解字 「息(いき)+舌(すらすら通る)」 の会意形声。息がつまる状態から、呼吸がなめらかに通るようになること。おちつくこと。
意味 いこう(憩う)。くつろぐ。いこい(憩い)。「休憩キュウケイ」「小憩ショウケイ
<紫色は常用漢字>

<参考音符>
 ゼツ・した  舌部
解字 口の中から舌が出ている形の象形。舌カツとは同形異義の別字。
意味 (1)した(舌)。べろ。したの形をしたもの。「舌根ゼッコン」(舌のねもと) (2)いう。しゃべる。ことば。「舌禍ゼッカ」(自分の口から起こる災い)「毒舌ドクゼツ」(意地の悪い言葉)
イメージ   「した」 (舌・甜・恬・銛)
音の変化  ゼツ:舌  セン;銛  テン:甜・恬
音符「舌ゼツ」へ

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音符「鬥トウ」 <二人がたたかう>

2017年05月21日 | 漢字の音符
 トウ・たたかう  鬥たたかいがまえ        

解字 甲骨文は髪を振り乱した二人の人が手を出し合って闘うさま。篆文は向き合う二人(略体)の間に二つの手を入れたかたち。現代字は、向かい合う人⇒タテの二線、二つの手⇒王王に変化した鬥になった。意味は二人の人が、たたかうこと。
意味 たたかう(鬥う)。向かい合ってたたかう。あらそう。
参考 トウは部首「鬥たたかいがまえ」となる。文字の構えとなり、たたかう意味を表す。主な字は以下のとおり。鬨コウ・とき(鬥+音符「共キョウ」、キュウ・くじ(鬥+音符「龜キ・キュウ」)

イメージ 「たたかう」 (鬥・鬧・鬪)
音の変化  トウ:鬥・鬪  ドウ:鬧

 ドウ・さわぐ・さわがしい  鬥たたかいがまえ
解字 「市(いちば)+鬥(たたかう・あらそう)」の会意形声。市場で人々があらそって買い物をする様子。鬥は部首になり、また音符となっている。閙ドウは鬥を門に変えた異体字。
意味 さわぐ(鬧ぐ)。さわがしい(鬧がしい)。さわがす。「鬧熱ドウネツ」(さわがしくにぎやかで活気があること)「鬧事ドウジ」(騒動。事件を起こす)
鬪[闘] トウ・たたかう  鬥たたかいがまえ
解字 「鬥(たたかう・あらそう)+豆(トウ)+寸」 の形声。鬥は二人がたたかう意。「豆(トウ)+寸」は、たかつきを持つ形だが発音だけ表わし、意味は鬥トウ(二人がたたかう姿)が示している。鬥は部首になり、また豆とともに音符ともなっている。新字体は、旧字の鬥⇒門に変わった闘になった。新字体は音符「豆トウ」に収録している。
意味 (1)たたかう(鬪う)。あらそう。「鬪争トウソウ」(=闘争)「鬪志トウシ」(=闘志) (2)たたかわせる。「鬪犬トウケン」(=闘犬)「鬪牛トウギュウ」(=闘牛)

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漢字の分類(象形、指事、会意、形声、仮借)と音符  山本康喬

2017年05月19日 | 漢字音符研究会
第3回音符研究会 2017年5月13日    

テーマ  漢字の分類(象形、指事、会意、形声、仮借)と音符 
              ~音符は六書のどこから来ているのか~
講 師   山本康喬  『漢字音符字典』著者・漢字教育士

 私は漢字を音符で分類して、漢字の持つ問題点 すなわちその習得が大変困難である事を 解決する方法を開発したいと考えて活動しています。まず、漢字そのものを分類するものとして六書があります。その六書について実態を解明します。

1、六書とは
 紀元100年に許慎が「説文解字」を著し、そのなかで漢字が作られた方法を説き、六書を初めて紹介しました。
それは 象形 指事 会意 形声 転注 仮借です。それぞれの定義は後でのべますが、まず常用漢字(2136字)を六書で分類してみます。

   常用漢字(2136字)の六書別一覧
 六 書    字数    比率      備    考
 象 形   265字  12・4%  日 月 山 川 田 木 鳥 魚 九 など
 指 事    10字   0・5%  一 二 三 八 十 百 上 下 本 末 など
 会 意   530字  24・6%  解 安 定 家 官 など
 形 声  1312字  61・4%  江 河 など (字数がアップすると比率アップ)
 仮 借    13字   0・6%  四 五 六 七 我 今 昔 東 西 不 無 など 
 転 注 ?  なし          定義がハッキリせず不明
 国 字     6字   0・3%  込 峠 栃 匂 畑 枠
 合 計  2136字   100%

 最初に作られた漢字が象形文字です。目に見えるものの形をヒントに作られました。また、指事文字も少し遅れてですが同時に作られました。抽象的な概念を表す工夫をしました。次に作られたのが、二つ以上の字を組み合わせて作られた会意と形声字です。
 会意文字は二つ以上の字形を組み合わせ、その意味のまとまりから新たな意味を表した字です。牛と角に刀で解く、解剖するという意味を表します。この方法により多くの意味を表す字が工夫されました。会意文字は特に制約や規則は有りません。自由に組み合わせたらよいのです。その字の音も任意に決められました。音を決める方法や根拠は全く不明なので、音を推測する手がかりすらなく、学習する上で最も厄介です。解は会意文字の代表です。カイという音は牛、角、刀のどの音とも異なるので、兎に角憶えるのみです。

 形声文字は字形と音を表す音符と、字の意味の範疇を表す意符(部首)とを組み合わせて作られました。字が作られるはるか以前から身の回りのものは、呼び名がありました。この呼び名を表す音を持つ音符と部首を組み合わせると、誰にもわかりやすく、しかも呼び名をそのまま発音とする文字が出来ました。合理的な方法で作られたので、以後の漢字の主流となりました。
 形声文字は音符の音を用います。また字形も音符の字形が遺伝子のごとく引き継がれます。一つの音符から生まれた形声文字は、学習し記憶するのに便利であり、脳内に漢字を記憶し保持しておくのに基本の体系をなすので、多数の漢字を整理して記憶する手段として有用です。 常用漢字では形声文字が全体の61%、会意文字が26%を占めています。

 次に字を作る方法の一つに仮借があります。目に見えない抽象的な概念を表す方法として、既にある文字を借り、字形と音は同じですが、意味は抽象的な概念を表す字としました。形と音を他の字から借用するので仮借と名付けています。どういう字が仮借なのか、備考欄の字を憶えて下さい。
 その他に、わが国で作られた国字があります。訓のみで音はありません。これも数少ないので憶えてください。音は無いので音符で分類する方法では枠外の字です。転注は未だ何を表すのか不明の方法です。
 
2、音符と意符
 六書とは別に、漢字の働きを表す言葉に音符と意符(部首)というのがあります。皆さんは漢字を憶える際に部首を学びますので、大抵の漢字の部首は知っていますね。しかし、漢字の世界では意符という言葉がより正確に表現できるので用いられますが、大部分は部首と同じと思って下さい。

 音符という言葉は最近、私の「漢字音符字典」で用いましたので、少しは知られるようになりました。少し昔は音記号や声符とか、「声は」などと呼ばれ、学者先生により呼び方が違うことがありました。最近では大部分の先生が音符と呼んでいます。また数年前ぐらいから中学の国語教科書で音符の説明が載っています。しかし、ほとんどの大人は音符について学んでいません。馴染みがない言葉ですが、漢字を学ぶには今後非常に有用になるので要注意です。
 ここで1級対象漢字6445字(JIS第1、第2水準)の六書分類を見てみましょう。字数の( )内は常用漢字です。

    1級対象漢字6445字の六書別一覧
  六 書    字 数          比率  
  象 形   463字( 265字)  7・2%
  指 事    11字(  10字)  0・2%
  会 意   866字( 530字) 13・4%
  形 声  4934字(1312字) 76・5%
  仮 借    15字(  13字)  0・2%
  国 字   156字(   6字)  2・4%
  合 計  6445字(2136字)  100%

 字数を約3倍まで広げて六書別の字数を見てみると、象形文字は1・75倍で字数はあまり増加していません。象形文字はあまり作られておらず、その増加には限界があります。また、会意文字も1・6倍であり、象形文字と同じようにあまり増加していません。指事文字・仮借に至っては1~2字の増加にとどまり、ほとんど変わりません。
 一方形声文字は3・8倍となり、文字数の増加の割合(3倍)より更に多くなり、比率も76%を超えました。1万字以上の辞書で見てみると、形声字が80%を超えています。形声文字は意符と音符の組み合わせで作られるので、形声文字が3・8倍にもなったということは、音符の数が急増していることにほかなりません。
 なお、ここで注目すべきは国字の増加で26倍です。国字は日本で作られた字ですので音を持ちませから六書の範囲外になっていますが、ほとんどは会意の原理で作られていますので、国訓をもつ会意文字といえます。

3、音符とは何か、どこから来たか
 そこで、形声文字の増加を支えている音符とは何なのか、どこから来るのか考えてみましょう。 
 私の「漢字音符字典」で会意文字の見本といわれる 解 の字を引いてみましょう。

<音符> 解カイ・とく
 <形声文字> 廨カイ・役所  懈カイ・ケ・怠る  邂カイ・あう  蟹カイ・かに

 会意文字である解は、4個の形声文字において立派に音符として機能しています。会意文字が音符になったのです。
 また 連 の字も会意文字ですが、
<音符> 連レン・つらなる
 <形声文字> 蓮レン・はす  漣レン・さざなみ  縺レン・もつれ  鏈レン・くさ

 同様に会意文字の連は、4個の形声文字において音符の役割を果しています。

 このようにどんな字も、また文字要素であっても別の形声文字で音符としての働きをしている限り、音符になり得るのです。音符を持たない字から音符そのものに変身したのです。会意字として生まれた字が、音符という新たな機能を担った字に転換したのです。非表音字が表音文字に転化したともいえます。
 ここで1級対象漢字6445字を収録している「漢字音符字典」において音符となっている字の六書を調べました。

    漢字音符字典(6445字)の六書別音符数
  六 書    字数     比率   音符数 
  象 形   463字   7・2%   437字   
  指 事    11字   0・2%     7字 
  会 意   866字  13・4%   516字   
  形 声  4934字  76・5%   207字  
  仮 借    15字   0・2%    10字  
  国 字   156字   2・4%     0   
  合 計  6445字   100%  1177字  

 調べてみますと象形文字の内437字、会意文字の内516字が、見事に音符に変身しているのです。一つの音符を持たない字が音符そのものに変身して、新たな形声文字の誕生に貢献しているのです。漢字音符字典の1177字ほどの音符の内953字程は象形と会意字でした。象形文字は大部分が音符に転換しています。会意文字は60%ほどが音符に転換しています。音符を含んでいる形声文字も、さらにその一部が音符に転換しています。

 解や連は会意文字であると同時に音符なのです。音符かどうかを確かめるには、他の同じ音の漢字において音符の役割を果たしているかどうかです。一つでも形声文字があれば音符です。一般に一つの音符はせいぜい10数個程度の形声文字を作ります。同じ音の字はそう沢山は存在できないのです。

4、音符にならない字の扱い
 以上の分析により、六書分類された字のうち多くが音符となっていることが明らかになりました。では、音符と無関係な字とは、どんな字なのでしょうか?以下は「漢字音符字典」(1級対象漢字6445字)の音符以外の字を六書別に表にしたものです。

   漢字音符字典(1級対象漢字6445字)の音符以外の字(六書別)
  六 書    字数    比率    音符字   音符以外の字 
  象 形   463字   7・2%   437字     26字
  指 事    11字   0・2%     7字      4字
  会 意   866字  13・4%   516字    350字
  形 声  4934字  76・5%   207字   4727字
  仮 借    15字   0・2%    10字      5字
  国 字   156字   2・4%     0      156字
  合 計  6445字   100%  1177字   5268字(541)

 音符以外の字は、象形文字で26字、指事文字4字、会意文字350字、仮借文字5字、国字156字の合計541字あります。音符以外の字とは、音符と結びつきのない言わば孤独な字です。これらの541字は全体の8.3%になります。(なお、音符以外の字のうち形声文字は4727字ありますが、この字にはすでに音符が含まれていますので省きます。)
 私の「漢字音符字典」では、このうち会意文字については音符と字形が同じものは、便宜的にその音符に含めています。例えば、災サイは「巛(川)+火」の会意字ですが、音符「川セン」に含めています。これにより音符「川セン」には異質の発音であるサイが含まれています。
 同じように会意文字の原理からなる国字は、参考のためその字形を含む音符に含めています。例えば、音符「入ニュウ」には、込こ(む)・叺かます・魞えり・鳰にお、などです。あくまでも参考ですから色の薄いグレーの字にしています。(ただし、常用漢字は赤、準1級字は黒です)

 こうした処理により、音符と無関係の字は37字となり巻末に1級対象漢字として50音別に排列しています。また、国字は各音符にグレーの文字(ただし、常用漢字は赤、準1級字は黒)で挿入していますが、巻末に1級対象国字として107字を訓読みの50音順に排列しています。
 これらの方法は純粋な音符の視点から外れますが、音符と結びつきのない字を、できるだけ音符と関連づけることにより漢字の習得を容易にしたいと思うからです。将来的に、こうした字については音符グループのなかで、六書の所属を個別に明示したいと考えています。

5、終わりに~会意字と形声字の見分けについて
 本文の中で常用漢字および1級対象漢字(JIS第1、第2水準)の六書ごとの一覧表を掲載しました。この表を作成するにあたり最も厄介だったのは会意字と形声字の区分です。未だに、一部の字でその明確な区別がつきません。辞書別に相違がありどちらが真実なのかの判定がつかないからです。判断がつきにくい字については各辞書を参考にしたうえで独自に決めさせていただきました。極端に言えば学者先生の数だけ相違があり、いちいち対応しきれないと感じたからです。したがって一覧表の六書ごとの数字は必ずしも確定されたものでなく、今後、変動する可能性があることをお断りしておきます。
 これからも少しでも両者の正確な区別に努めますが、漢字を勉強する多くの方々にとって、ほんの一部の会意と形声の区別がそれほど重要だとは思いません。それより、漢字の習得が困難であるという問題を音符による学習で克服できる可能性を大事にしてゆきたいのです。   



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音符 「風フウ」 < か ぜ >

2017年05月16日 | 漢字の音符
フウ・フ・かぜ・かざ  風部

解字 甲骨文字は頭に冠飾りをつけた瑞鳥の「おおとり(鳳)」を描き、その横に音を表す凡(ハン・ボン=フウ・ホウ)を付けた字。「おおとり」は風の神ともいわれ、この鳥が羽ばたいて「風」を起こすと考えられたため、風の意に用いた。篆文は「凡(=鳳)+虫」で、鳳の中の鳥が虫に変った形。これは、風を利用して空を飛ぶ虫を付けて「かぜ」を表した字。これで鳳(おおとり)の字は本来の霊鳥としての意に専用されるようになった。風は部首にもなる。
意味 (1)かぜ(風)。ゆれ動く空気のながれ。「風雲フウウン」「風上かざかみ」 (2)社会全体にゆきわたるもの。「風習フウシュウ」 (3)おもむき。「風格フウカク」「風情フゼイ」 (4)けしき。「風景フウケイ
参考 風は部首「風かぜ」になる。常用漢字は部首の風だけだが、偏や旁などとなり風に関する字を作る。主な字は以下のとおり。
 颯サツ(風+音符「立リツ」)・飄ヒョウ(風+音符「票ヒョウ」)・颱タイ(風+音符「台タイ」)
 颪おろし(「下+風」の会意:国字)

イメージ  「かぜ」(風・楓・瘋・颪・凧) 
       「空気のながれ」(嵐)
音の変化  フウ:風・楓・瘋  ラン:嵐  おろし:颪  たこ:凧  

か ぜ
 フウ・かえで  木部

解字 「木(き)+風(かぜ)」 の会意形声。種子(写真)が風によって運ばれる木。
意味 かえで(楓)。もみじ・紅葉(楓の別称)。カエデ科の落葉高木。種子は二枚の翼をもった果実をつける。「楓葉フウヨウ」(紅葉した楓の葉)「霜楓ソウフウ」(霜にあたって紅葉した楓)
 フウ  疒部
解字 「疒(やまい)+風(かぜ)」 の会意形声。風が原因で起こるとされた病気。
意味 (1)頭痛。 (2)精神病。狂人。「瘋癲フウテン」(定職を持たず、ぶらぶらしている人。精神状態が正常でない人)
<国字> おろし  風部
解字 「下(おりる)+風(かぜ)」の会意。下りる風の意で、山から吹き下ろす風のこと。
意味 おろし(颪)。山から吹きおろす風。「赤城颪あかぎおろし」(群馬県中央部(赤城山)から東南部で、冬季に北から吹く乾燥した冷たい強風)「六甲颪ろっこうおろし」(神戸市北部の六甲山地から冬に吹き下ろす乾燥した冷たい風)
<国字> たこ  几部
解字 「几(風の略体)+巾(絹の布)」の会意の国字。中国では凧を風箏フウソウというが、古くは紙鳶シエン・紙老鴟シロウシ・風鳶フウエン・鳳巾ホウキンなどとも書かれた。日本へもこれらの字が伝わり、江戸期には訓読みで「いかのぼり」と呼ばれていた。凧の字のもとになったのは鳳巾ホウキンと考えられる。鳳ホウには風の意味もあるので鳳巾は風巾であり、文字からいうと風に揚げる絹布製の凧になる(実際に絹布の凧があったかは不明)。この二字を合わせた凧の国字が江戸後期に生まれ、江戸で一般的な呼び名だった「たこ」の名がついた。
意味 たこ(凧)。細竹の骨組みに紙など貼り、糸をつけて空中に放ち、引きながら風の揚力で飛揚させる玩具。凧を安定させるためつける尻尾とよばれる細長い紙が、イカの足に似ているので関西でイカノボリ(また、略してイカ)と呼ばれたが、関東では蛸の足になぞらえてタコと呼び、この名が定着した。「凧揚(たこあ)げ」(凧を揚げること。また、子供の正月の遊び)

空気のながれ
 ラン・あらし  山部
解字 「山(やま)+風(空気のながれ)」 の会意。山中の空気の動きをいう。山の風はみだれることが多いことからラン(乱)の発音になった。
意味 (1)山の清らかな風や空気。山にたちこめる気。もや。「嵐気ランキ」(山中に立つもや)「青嵐セイラン」(青葉を吹きわたる風) (2)山の風。つむじ風。あらし(嵐)。暴風雨。「春嵐はるあらし」(春先に吹く強い風) (3)激しく揺れ動くことの例え。「倒産の嵐」
<紫色は常用漢字>

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