漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符 「至シ」 <いたりてとまる> と 「致チ」 <いたらせる>

2016年08月29日 | 漢字の音符
 シ・いたる  至部
 
解字 「矢が下方に進むさま+ 一 印(めざす線)」の会意。矢が目標線まで届くさま。現代字は、「矢の先と一印」が土に変化した至になった。矢が「届く・至る」意。至を音符に含む字は、「いたりとどまる」の他、「ぴったりつく」イメージを持つ。
意味 (1)いたる(至る)。とどく。「冬至トウジ」「夏至ゲシ」「必至ヒッシ」(必ずいたる)「開戦は必至だ」(2)このうえもない。きわめて。「至言シゲン」「至近シキン」「至急シキュウ

イメージ  「いたりとどまる」 (至・室・鰘・窒・膣) 
        いたりて「ぴったりつく」 (桎・蛭・姪)
音の変化  シ:至  シツ:室・桎・蛭  チツ:窒・膣  テツ:姪  むろあじ:鰘

いたりとどまる
 シツ・むろ  宀部  
解字 「宀(やね)+至(いたりとどまる)」 の会意形声。人が屋根の下にいたりとどまること。大きな屋根の場合は宮殿などの建物、普通の屋根の場合は、いえ・住宅の意となり、さらに、転じて宮殿や家などの部屋をいう。現在は部屋の意味が主流になった。日本では、周囲を壁でかこんだ「むろ」の意味もある。
意味 (1)へや。「教室キョウシツ」「温室オンシツ」 (2)大きな家。宮殿。大きな家にすむ一族。「宮室キュウシツ」(宮殿)「皇室コウシツ」(天皇を中心とする一族)「王室オウシツ」(国王一家) (3)いえ。「室家シッカ」(いえ。家族) (4)(妻がすむ部屋から)つま。夫人。「正室セイシツ」(⇔側室ソクシツ)「令室レイシツ」(他人の妻の尊敬語) (5)[国]むろ(室)。周囲を壁でかこんだ部屋。山腹などの岩屋。「氷室ヒムロ」(氷を夏まで貯蔵する部屋)
<国字> むろあじ  魚部
解字 「魚(さかな)+室(むろ)」の会意。室津(兵庫県の瀬戸内の漁港)で多く漁獲される魚から名付けられたと言われる。
意味 むろあじ(鰘)。室鯵とも書く。アジ科の魚。マアジより少し大形。開き(干物)として賞味される。
 チツ・ふさがる  穴部  
解字 「穴(あな)+至(いたりとどまる)」 の会意形声。穴の奥で行きづまって先に進めないこと。
意味 (1)ふさがる(窒がる)。ふさぐ。「窒息チッソク」 (2)元素の名。「窒素チッソ」(空気の8割を占める気体元素。窒素だけでは窒息してしまうので付けられた)
 チツ  月部にく
解字 「月(からだ)+窒(行きづまった穴)」の会意形声。女性の性器のこと。
意味 ちつ(膣)。女性の性器。子宮から体外に通じる管。

ぴったりつく
 シツ・あしかせ  木部
解字 「木(き)+至(ぴったりつく)」 の会意形声。身体にぴたりとくいこむ木製の足かせ。
意味 (1)あしかせ(桎)。足枷とも書く。罪人の足にはめる刑具。手にはめる刑具を梏コクという。「桎梏シッコク」(①足かせと手かせ②自由を束縛するもの) (2)あしかせをはめる。
 シツ・テツ ひる  虫部
解字 「虫(むし)+至(ぴったりつく)」 の会意形声。人の皮膚にぴったりと付いて血を吸うヒル。
意味 ひる(蛭)。他の動物に吸いついて血を吸うヒル類の総称。「肝蛭カンテツ」(山羊・牛などの草食獣と人の肝臓に寄生する吸虫)「蛭子ひるこ」(①日本神話でイザナギ・イザナミの間に生まれた子。3歳になっても脚が立たず海に流されたと伝える。②七福神の一人=恵比寿)
 テツ・めい  女部
解字 「女(おんな)+至(ぴったりつく)」 の会意形声。ぴったりとつきそう女。もと、諸侯に嫁ぐ婦人には親戚の女がつきそう習慣があり、この女を意味した。のち自分の兄弟姉妹の娘の意に変化した。
意味 めい(姪)。兄弟姉妹の娘。「姪孫テッソン」(兄弟姉妹の孫)


           チ <いたらせる>
 チ・いたす  至部            

解字 金文は 「人(ひと)+至(いたりとどまる)」 の会意で、人をいたらせること。自動詞の至(いたる)に対して、他動詞(いたらせる)として用いる。篆文で、人⇒夂(あし)になり、さらに現代字で攵ボク(=攴。うつ・たたく)に変化した致になった。現代字を文字どおりに解釈すると、たたいて至らせるとなる。
意味 (1)いたす(致す)。いたらせる。「致死チシ」(死にいたらせる)「致命傷チメイショウ」(命を終わりにいたらせる傷) (2)いたす(致す)。まねきよせる。「「誘致ユウチ」(誘いよせる) (3)きわめる。行きつく。「合致ガッチ」 (4)気持ちのいたるところ。おもむき。「風致フウチ」(自然のおもむき)「雅致ガチ」(風雅なおもむき)

イメージ   「いたらせる」 (致・緻)
音の変化  チ:致・緻

いたらせる
 チ・こまかい  糸部  
解字 「糸(いと)+致(いたらせる)」 の会意形声。糸と糸の間を隙間なくつめて織ること。
意味 こまかい(緻かい)。目がつまって隙間がない。きめがこまかい。「緻密チミツ」「精緻セイチ
<紫色は常用漢字>

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音符 「監カン」 <水かがみを見る>

2016年08月27日 | 漢字の音符
 カン・みる  皿部            

解字 甲骨文は、水の入った皿をのぞきこむ人(見)の形。金文と篆文は、「臣(下を見る目)+人(ひと)+一(水をはった)+皿(さら)」 の会意。人が水を張った皿(水盤)の上に、おおいかぶさるようにして下を見て顔を映し見ること。水鏡、および鏡を見る意となる。転じて、見張る意となり、さらに見張る意から監房(ろうや)の意となる。監を音符に含む字は、「かがみ・よく見る」「見張りをする」、水を張ってある水盤である「うつわ」のイメージを持つ。
意味 (1)みる(監る)。みはる。とりしまる。「監視カンシ」「監督カントク」 (2)ろうや。「監房カンボウ」「収監シュウカン

イメージ  「かがみ・よく見る」(監・鑑・覧)
       「見張りをする」(艦・檻)
       水かがみの「うつわ」(濫・籃・藍・塩)
音の変化  カン:監・鑑・艦・檻  ラン:覧・濫・籃・藍  エン:塩

かがみ・よく見る
 カン・かがみ・かんがみる  金部
 
解字 「金(金属)+監(かがみ)」 の会意形声。青銅製の水かがみ。監(水かがみ)に金をつけ水盤が青銅であることを示した字。また、かがみに自分を映してよく見る意から、かんがみる・見分ける意ともなる。なお、同じ意味をもつ鏡キョウは、「金(金属)+竟(さかいめ)」で、金属の表面をみがいた境目で姿を映すかがみの意。
意味 (1)かがみ(鑑)。手本。「明鑑メイカン」(曇りのないかがみ) (2)かんがみる(鑑みる)。見分ける。照らし合わせて見る。「鑑査カンサ」(優劣を目利きする)「鑑定カンテイ」「鑑賞カンショウ
[覽] ラン・みる  見部
解字 旧字はで 「見(みる)+監(かがみ)」 の会意。監の原義である水かがみを見る意。水かがみは下を向いて見るので、高い所から下を見る意となる。新字体は旧字から皿を略した。
意味 (1)みる(覧る)。広くながめる。「展覧テンラン」「天覧テンラン」(天子が見る)「遊覧ユウラン」 (2)全体を見通せるようまとめたもの。「便覧ビンラン」「要覧ヨウラン

見張りをする
 カン・いくさぶね  舟部
解字 「舟(ふね)+監(見張りをする)」 の会意形声。敵を監視する舟が原義。転じて、軍艦の意となる。
意味 いくさぶね(艦)。戦闘用の船。「軍艦グンカン」「艦隊カンタイ
 カン・おり  木部
解字 「木(き)+監(見張りをする)」 の会意形声。木の枠にとじこめて監視するおり。
意味 おり(檻)。猛獣や罪人などを入れておく丈夫なかこい。「檻車カンシャ」(罪人などを運ぶ、おりのついた車)「檻猿カンエン」(檻に入れられた猿。自由がきかない例え)

うつわ 
 ラン・みだれる・みだりに  氵部
解字 「氵(水)+監(うつわ)」 の会意形声。うつわを越えて水があふれること。
意味 (1)水があふれる。ひろがる。「氾濫ハンラン」 (2)みだれる(濫れる)。みだりに(濫りに)。「濫獲ランカク」「濫用ランヨウ」「粗製濫造ソセイランゾウ
 ラン・かご  竹部
解字 「竹(たけ)+監(うつわ)」の会意形声。竹で作ったうつわ(竹かご)。
意味 かご(籃)。竹などを編んで作ったかご。「魚籃ギョラン」(魚をいれるびく)「籃輿ランヨ」(竹作りの駕籠かご)「揺籃ヨウラン・ゆりかご
 ラン・あい  艸部
解字 「艸(くさ)+監(うつわ)」 の会意形声。うつわの中(藍がめ)で染める草。あい染めの草。
意味 (1)あい(藍)。あいぐさ。タデ科の一年草。葉を発酵させて染料とする。「出藍シュツラン」(藍草で染めた藍色は、もとの藍草より青い) (2)あいいろ。「藍綬ランジュ」(勲章をさげる藍色のひも) (3)梵語の音訳語「伽藍ガラン」(僧園)
[鹽] エン・しお  土部
 海水をうつわで煮つめて作る塩
解字 旧字は、 「鹵(岩塩を袋に入れた形の象形:しお)+監(うつわ)」 の会意形声。うつわの中に塩田で濃くした海水を入れて煮つめて作る塩。新字体は、から臣を取り、さらに鹵⇒口に略したものに、土(塩を含んだ塩田の土)を加えたもの。もと、天然の岩塩を鹵、海水から作る塩を鹽エンと区別 していた。
意味 (1)しお(塩)。「塩田エンデン」「食塩ショクエン」 (2)塩素。「塩酸エンサン

<紫色は常用漢字>

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音符 「疋ヒツ」 <あ し>

2016年08月22日 | 漢字の音符
 ショ・ソ・ヒキ・ヒツ・ひき  疋部ひき

解字 甲骨文と篆文は足と同形で、脚の下半部の象形。中国で匹(ひき)の俗字として用いられたため、匹の意味で使われる。現代字は上部がフに変化した疋になった。疋は部首となる。
意味 (1)ひき(疋)。匹(ひき)。布の長さの単位。動物を数える語。昔の金銭の単位。 (2)ひき(疋)。匹(ひき)。対になる。二つが並ぶ。 (3)あし(足)。

イメージ   匹の意の 「相対する・ペアになる」 (疋・婿)
        本来の意味である 「あし・あるく」 (旋・楚・礎・疎)
音の変化  ソ・ショ:疋  ソ:楚・礎・疎  セイ:婿  セン:旋   
  
相対する
婿 セイ・むこ  女部
解字 「女(おんな)+胥(相対する人・ペア)」 の会意形声。胥ショは「月(からだ)+疋(相対する)」の会意形声で、相対する人・相方をいう。婿は、女の相方の意で、娘と結ばれてペアをなした相手の男をいう。
意味 むこ(婿)。「婿入り」「花婿はなむこ」「女婿ジョセイ」(むすめむこ)

あし・あるく
 セン・めぐる 方部
解字 「旗の略体+疋(あし・あるく)」 の会意。旗の周りをあるくこと。また、旗を持ってあるくこと。
意味 (1)めぐる(旋る)。ぐるぐるまわる。「旋回センカイ」「旋転センテン」 (2)相手との間を行き来する。とりもつ。「斡旋アッセン」(人と人のあいだをとりもつ)「周旋シュウセン」(土地・家屋の売買、雇用などで人と人のあいだをとりもつ)(3)かえる。「凱旋ガイセン」(戦いに勝ってかえる)
 ソ・ショ・いばら  木部

解字 古代文字は、「林(はやし)+足(あしであるく)」の会意形声で、林の中をあるく形。これらの林は、低木でトゲのあるイバラや、同じく低木のニンジンボクとされる。また、イバラや低木が生い茂る地方を意味する「楚」の国名ともなった。楷書から下部が足⇒疋に変化した。
意味 (1)いばら(楚)。うばら。いばらのトゲ。「苦楚クソ」(いばらのトゲが痛く苦しい) (2)にんじんぼく。クマツヅラ科の落葉低木。(ニンジンボクが紫の小さな花を咲かせることから)すっきりした。清らかで美しい。「清楚セイソ」「楚楚ソソ」(清らで美しい)(3)(にんじんぼくの)むち。しもと。すわえ。(4)そ(楚)。中国の国の名前。長江中流域を領有した春秋戦国時代の国など。長江下流一体の地域。「四面楚歌シメンソカ
 ソ・いしずえ  石部
解字 「石(いし)+楚(=疋。あし)」の会意形声。ここで楚は疋ソ・ショ(足)の意。建物を支える足(=はしら)の土台石をいう。楚と礎は発音が同じだが意味の関連はない。
意味 (1)間隔をあけて並べた建物の土台石。いしずえ(礎)。「礎石ソセキ」 (2)物事のもとい。「基礎キソ
 ソ・うとい・うとむ・おろそか  疋部

解字 隷書は、「束(たばねる・くくる)+足ソク(あし)」の会意形声。足がくくられた状態で、うまくすすめないこと。出歩くのが間遠になり相手とのコミュニケーションが不足することから、うとい意となり、さらに転じて、おろそか・まばらの意となる。現代字は足⇒疋の変形字になった疎に変化した。踈は異体字。
意味 (1)うとい(疎い)。うとむ(疎む)。親しくない。よく知らない。遠ざける。「疎遠ソエン」「疎外ソガイ」(うとんじて、よそよそしくする)「疎覚(うろおぼ)え」(はっきりと覚えていない) (2)おろそか(疎か)。粗末に扱う。「疎忽ソコツ」(かるはずみ。ぶしつけ) (3)まばら(疎ら)。あらい。「疎密ソミツ」(まばらなことと、すきまのないこと)「過疎カソ」(まばらすぎること)⇔過密。(4)(疏:とおる、に通じ)とおる。とおす。「疎通ソツウ」(とどこおりなく通じる)「意思疎通イシソツウ
<紫色は常用漢字>

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音符 「之シ」 <足が前にすすむ> と 「乏ボウ」

2016年08月11日 | 漢字の音符
 シ・これ・の・ゆく   ノ部

解字 甲骨文字は足(止)が一線から出て進む形の指事。左右の足をかたどった2種がある。足が前に進むことを示す。金文は止に近い形に変化したが、篆文で地上から草がのびるような形になったため、草がのびる意に解され、草冠をつけた芝の字ができた。現代字は、まったく姿を変えた「之」に変身し、本来の意味でなく指示・強める意の「これ・この」、また、主格や修飾の「の」に仮借カシャ(当て字)される。
※「之」の字形変化は多様で、「寺」で上部の土になり、「先」で上部の「ノ+土」になる。
意味 (1)これ(之)。この。 (2)の(之)。 (3)ゆく(之く)。

イメージ  「仮借カシャ (之) 
       「進みゆく」 (芝) 
音の変化  シ:之・芝  

進みゆく
 シ・しば  艸部
解字 「艸(くさ)+之(進みゆく⇒長くのびる)」 の会意形声。之の篆文は、地上から草がのびる意に解釈され、寿命をのばすという霊草のマンネンタケ(霊芝)の意味になった。日本では、すくすくのびる草である芝の意となる。
意味 (1)マンネンタケ。「霊芝レイシ」(延命の霊薬として薬用酒などに使われるキノコ)(2)[国]しば(芝)。すくすく伸びる草。「芝生しばふ」「芝居しばい」(桟敷席と舞台との間の芝生に設けた庶民の見物席。転じて興業物)



           ボウ <身動きがとれない>
 ボウ・とぼしい  ノ部

解字 金文は「ノ印+止の古型(あし・すすむ)」の会意。すすむ止(あし)がノ印でさえぎられ、動きがとれないさま。篆文は、下部の止の古型(すすむ)が左右反転した形。現代字は「ノ+之」のかたちに変化した。之もすすむ意であり、ノによって身動きできない意は変わらない。
意味 とぼしい(乏しい)。力や金がなくて動きがとれないさま。たりない。まずしい。「貧乏ビンボウ」「耐乏タイボウ」「窮乏キュウボウ
覚え方 「ノ印+之(進みゆく)」のかたちで、之(進みゆく)にノ印をつけて、「進む」とは逆の「動きが取れない」意を表わした。

イメージ 「とぼしい」 (乏・貶)
      「同音代替」 (泛)
音の変化  ボウ:乏  ハン:泛  ヘン:貶  

とぼしい
 ヘン・おとす・おとしめる・けなす  貝部
解字 「貝(財貨)+乏(とぼしい)」の会意形声。財貨が乏しくなって減ること。転じて、値打ちがおちる。人の値打ちを下げる行為をいう。
意味 (1)おとす(貶とす)。低く評価する。官位を下げる。「貶斥ヘンセキ」(官位を下げてしりぞける) (2)おとしめる(貶める)。さげすむ。けなす(貶す)。「褒貶ホウヘン」(褒めることと貶すこと)「毀誉褒貶キヨホウヘン」(ほめたりけなしたりすること。誉褒ヨホウは、ほめる、毀貶キヘンは、けなす)

同音代替
 ハン・ホウ・うかぶ  氵部
解字 「氵(水)+乏(ハン)」 の形声。ハンは汎ハン(うかぶ・ひろい)に通じ、うかぶ、ひろい意となり、汎とほぼ同じ用法で使われる。
意味 (1)うかぶ(泛ぶ)。「泛舟ハンシュウ」(水に浮かんだ舟。=汎舟) (2)ひろい。あまねく。「泛論ハンロン」(全体にわたって論ずる。=汎論)「泛愛ハンアイ」(広く愛する。=汎愛)
<紫色は常用漢字>

<参考音符>
 ジ・シ・てら  寸部

解字 金文第一字は、「之(すすむ)+又(手)」の会意形声。之は、足が下の線から出る形で、前に進むことを示す。又は手で、手にものを持つ意。金文第二字は又⇒寸になっており、この寸は手の意。之と寸が合わさった寺は、手に文書などを持ち、足で前にすすむ「使い」を表し、宮中などで働く事務系の下級役人の意。転じて、役人が働く場所である役所や朝廷などを表す。現代字は上部が土に変化した寺になった。この字を見ると我々はすぐ寺(てら)を思い浮かべるが、この意は仏教伝来以降、渡来した僧侶を外国使節の応接・対応を司る役所(鴻臚寺コウロジ)にしばらく住まわせたことから出た。
意味 (1)役所。朝廷。官庁。「寺人ジジン」(宮中の小臣) (2)てら(寺)。「寺院ジイン」「仏寺ブツジ」 (3)はべる(=侍)。
イメージ  「下級の役人」 (寺・侍・等・待・峙・痔)
       寸の意味である「手にもつ」 (持)
       之の意味である「すすむ」 (時・蒔・詩)
       「同音代替」 (特)
音の変化  ジ:寺・侍・峙・痔・持・時  シ:蒔・詩  
        タイ:待  トウ:等  トク:特
音符「寺ジ」

 セン・さき  儿部にんにょう

解字 甲骨文は、「足が下線から出発するかたち(之)+人」 の会意。人の上に出発する足を加えて、先にゆく人を表す。甲骨文字では王が臣下に命じて先に行かせることを占うことがおおいという[甲骨文字小字典]。他の人より先に行く意が原義で、また、時間のあとさきの意味にも用いる。現代字は上が「ノ+土」の形に、下が人⇒儿になった「先」に変化した。
意味 (1)さき(先)。さきのほう。「先頭セントウ」「先導センドウ」 (2)さきにゆく。さきだつ。さきんじる。「先着センチャク」「先駆者センクシャ」 (3)時間的にはやい。以前。「先日センジツ」「先代センダイ
イメージ  「さき」 (先・洗・跣・筅・銑)
音の変化  先・洗・跣・筅・銑
音符「先セン」

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音符 「尭ギョウ」 <陶工がつみかさねた土器>

2016年08月08日 | 漢字の音符
尭[堯] ギョウ  土部

解字 甲骨文は、ひざまずいた人の上に土のかたまりが二つある形。篆文第一字(古文)は、二人の人がそれぞれ土を上にのせている形で、土を運んで細工をする陶工を表していると思われる。ここから、古代の聖王のひとりが、陶唐という姓で陶器作りの祖であるという伝説と結びついてこの字が聖王「堯ギョウ」を表す字として使われたものと考えられる。
 篆文から、「垚(土三つ。うずたかい)+兀(ひと)」の堯に変化した。垚は陶工(兀)がつくった器をうず高く積んで乾燥させたり、焼くために窯に積んでいるさまと思われる。中国では、新石器文化期に窯の使用を開始しており、これにより高火度・長時間焼成が可能となり、より硬質のやきものが生産されるようになった。窯はかなり広いため、成形した器をそのまま積み上げたり、貴重なものは匣鉢(さや)に入れてから積み上げて焼成した。堯は、うずたかく積み上げることから、たかい意となる。また伝説上の聖王である堯に当てられる。新字体は旧字の垚⇒卉に変化した尭となる。
意味 (1)たかい(尭い)。気高い。「尭尭ギョウギョウ」(高いさま) (2)中国古代伝説上の王の名。治水に舜シュンを起用しのちに彼に位を譲った。「尭舜ギョウシュン」(尭と舜は古代の聖王で、徳をもって天下を治めた古代の理想的帝王として並び称される)

イメージ  陶工が成形したのち乾燥させたり、焼くために窯にいれた「つみかさねた器」、うず高く器を積んださまから「ゆたか」のイメージがある。
   「つみかさねた器」 (尭・焼・暁・橈・撓・遶・蟯・繞)
   「ゆたか」 (饒・驍)
   「同音代替」 (僥)
音の変化  ギョウ:尭・暁・僥・驍・蟯  ショウ:焼  ジョウ:遶・繞・饒
        トウ:橈・撓 
 
つみかさねた器
 ショウ・やく・やける  火部
解字 旧字は燒で、「火(ひ)+堯(つみかさねた器)」 の会意形声。窯の中につみかさねた器を火で焼くこと。新字体は、焼に変化。
意味 (1)やく(焼く)。やける。もえる。「燃焼ネンショウ」「焼香ショウコウ」(香をたくこと)「焼却ショウキャク」(焼いて処分する) (2)[国]あれこれと手を尽くす。「世話を焼く」
 ギョウ・あかつき  日部
解字 旧字は曉で、「日(ひ)+堯(=焼の略体。窯で焼成する)」 の会意形声。穴窯に器をかさねて置き、焼くこと。焼成は最初にむらす行程があり、次に本格的に焚き込む。夜を徹して行われるので、焼く作業が続き夜明けを迎えること。また、空が明るくなるので、物事に明るい意ともなる。新字体は暁に変化。
意味 (1)あかつき(暁)。夜明け。「暁天ギョウテン」(夜明けの空)「早暁ソウギョウ」「暁星ギョウセイ」(夜明けの星) (2)さとる(暁る)。よく知っている。「通暁ツウギョウ」(すみずみまで知っている) (3)[国]あかつき。物事が実現したその時。「完成の暁には」
 トウ・ドウ・たわむ  木部
 成形した陶器の乾燥(沖縄)   橈骨トウコツ
解字 「木(木の板)+堯(かさねた器)」 の会意形声。成形が終わった器を長い板にいくつも並べて乾燥させているさまで、板が重みでたわむ意となる。
意味 (1)たわむ(橈む)。たわめる。まげる。「橈骨トウコツ」(手首の関節から肘の関節まで伸びている、ゆるやかにたわんだ骨。二本の骨で構成され、一本を橈骨、他方を尺骨という)(2)船のかじ。かい。
 トウ・ドウ・たわむ  扌部
解字 「扌(て)+堯(=橈。たわむ)」 の会意形声。ここで堯は橈(たわむ)の略体。扌(て)のついた撓は、手でたわめること。たわむ・たわめる意となる。
意味 (1)たわむ(撓む)。たわめる(撓める)。しなう(撓う)。「撓屈トウクツ」(身体をたわめて屈する)「不撓不屈フトウフクツ」(困難にあっても、ひるまずくじけない)(2)[国]たわわ(撓わ)。枝などがしなうさま。「枝も撓わに実る」
 ジョウ・ニョウ・めぐる  辶部しんにょう
解字 「辶(ゆく)+堯(つみかさねた器)」の会意形声。乾燥させたり、窯入れした積み重ねた器の間を次の準備のためまわり歩くこと。
意味 めぐる(遶る)。かこむ。
 ギョウ  虫部  
解字 「虫(むし)+堯(=遶。めぐる)」 の形声。お腹のなかをめぐる寄生虫。
意味 人の腸に寄生する虫。「蟯虫ギョウチュウ」「蟯虫検査ギョウチュウケンサ
 ジョウ・ニョウ・まとう  糸部
解字 「糸(いと)+堯(=遶。めぐる)」の形声。糸がめぐってまつわること。
意味 (1)めぐる(繞る)。めぐらす。(2)まとう(繞う)。まつわる。(3)ニョウ(繞)。漢字の部首で、左側から下部へめぐる字形の部分の総称。「之繞シンニョウ」(シニョウの変化した音。左側から下部へめぐる形が「之」の字に似ていることから「之繞」(シニョウ)の名がつき、なまって「シンニョウ」、さらになまって「シンニュウ」ともいう。

ゆたか
 ジョウ  食部
解字 「食の旧字(たべる)+堯(ゆたか)」 の会意形声。食べ物が豊かにあること。転じて、ゆたか・おおい意となる。
意味 ゆたか(饒か)。おおい。充分にある。「豊饒ホウジョウ」(ゆたか。豊も饒も、ゆたかの意)「饒舌ジョウゼツ」(ゆたかな舌で、おしゃべりの意)
 ギョウ  馬部
解字 「馬(うま)+堯(ゆたか)」 の会意形声。体格の豊かな強い馬。人に移して言う。
意味 つよい。いさましい。「驍将ギョウショウ」(強く勇ましい大将)「驍名ギョウメイ」(強いという評判)「驍雄ギョウユウ」(勇ましく強いこと。また、その人)

同音代替
 ギョウ・キョウ・もとめる  イ部    
解字 「イ(ひと)+堯(ギョウ・キョウ)」 の形声。ギョウ・キョウは徼ギョウ・キョウ(得られそうもないことを得たいと願う)に通じ、人が滅多に実現できないようなことを願う意となる。
意味 (1)もとめる(僥める)。ねがう。「僥冀ギョウキ」(こい願う。僥も冀も、ねがう意。=徼冀キョウキ・ギョウキ) (2)「僥倖ギョウコウ」とは、倖コウ(思いがけない幸せ)を願うこと。=徼幸キョウコウ・ギョウコウ。また、実現した思いがけない幸せをいう。
覚え方 「イ(ひと)+堯ギョウ(古代の聖王)」 の会意形声。(ひと)が古代の聖王であるが出現することを、(もと)める。
<紫色は常用漢字>

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※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。


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