漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符 「戈カ」 <ほこ> と 「戍ジュ」 「戌ジュツ」

2017年04月24日 | 漢字の音符
 カ・ほこ                 

  カ ウィキペディア「青銅器」より
解字 長い柄を持つ武器であるほこの形の象形。一般に「ほこ」には「矛ム」と「戈カ」があるが、「矛」が槍と同じように穂先が柄と同じ向きにつくのに対し、「戈」は柄と直角に取り付けられ刃が柄の左右に出るのが特徴である。写真は左上が穂先、左下が柄尻、右下が全体像。
 甲骨文は戈を忠実に描いた形。第一図は柄尻が三本脚になっている。金文に至り柄尻と穂先に斜めの線が加わり、現代字の形がほぼ整った。
意味 (1)ほこ(戈)。長い柄の先端に両刃の穂先がついた武器。「戈甲カコウ」(ほことよろい) (2)いくさ。戦争。「戈船カセン」(いくさ船)

イメージ  「ほこ」 (戈・戍)
音の変化  カ:戈  ジュ:戍

ほ こ
 ジュ・まもる  戈部  

解字 「人(ひと)+戈(ほこ)」 の会意。人が武器のほこを背負っているかたち。軍隊や兵をあらわす。「戌ジュツ」とは別の字。
意味 まもる(戍)。国境や城をまもる。およびその兵。「戍卒ジュソツ」(国境や城砦を守る兵卒)「衛戍エイジュ」(衛も戍も、まもる意。軍隊が長く一つの土地に駐屯すること)



           ジュツ <大きな刃で相手を圧倒する>
 ジュツ・いぬ  戈部

解字 甲骨文字・金文ともにマサカリの大きな刃の部分を中心に描いた象形。篆文になりマサカリの下の刃が独立して一になり、現代字の戌になった。戌は大きな刃なので、これで「相手を圧倒する」イメージを持つ。元の意味に関係なく、十二支の11番目「いぬ」に仮借カシャ(当て字)された。
意味 いぬ(戌)。十二支の第十一。時刻では午後8時、およびその前後の2時間。方角では西北西、動物では犬に当てる。「戌亥いぬい」(方角で北西)

イメージ  「いぬ(仮借)」 (戌)
       大きな刃で相手を「圧倒する」 (威・縅・滅)
音の変化  ジュツ:戌  イ:威  メツ:滅  おどし:縅

圧倒する
 イ・おどす  女部  
解字 「女(おんな)+戌(圧倒する)」 の会意。女を刃物で圧倒する形で、おどす意。
意味 (1)おどす(威す)。おびやかす。「威圧イアツ」「威嚇イカク」 (2)いかめしい。「威厳イゲン」「威風イフウ」「権威ケンイ
<国字> おどし・おどす  糸部
解字 「糸+威(おどす)」 の会意。よろいのサネ(鉄や革の小片)を糸(=緒お。ひも)で通す「おどし(緒通し)」の作業、および通した糸をいう。「緒通し(おどし)」を「威し」に当てて作った国字。
意味 おどし(縅)。おどす。よろいのサネ(鉄や革の小片)を糸(緒)または細い革でつづり合わせること。「赤糸縅あかいとおどし」(あかね染めの糸で縅した)「韋縅かわおどし」(鹿の皮の紐を使って縅した)
 メツ・ほろびる・ほろぼす  氵部
解字 「氵(水)+火+戌(圧倒する)」 の会意。水をかけて火を圧倒する意。転じて、きえる・ほろびる意となる。
意味 (1)きえる。火や明かりが消える。「点滅テンメツ」 (2)ほろびる(滅びる)。ほろぼす(滅ぼす)。「滅亡メツボウ」「絶滅ゼツメツ」「滅菌メッキン」 (3)死ぬ。「入滅ニュウメツ
<紫色は常用漢字>

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音符 「臿ソウ」 <さしこむ>

2017年04月20日 | 漢字の音符
 ソウ  臼部

解字 甲骨文字は棒状のものを両手(𦥑キョク)でもって対象を刺すかたちで挿ソウの原字。上に八を描き貫かれた物体を八で表している[甲骨文字辞典]。この字では上部に向かって刺すかたちになっている。篆文は、八と棒が一体化して干になり下部は両手(𦥑キョク)⇒臼うすに変化し、下に向かって刺すかたち。現代字は干⇒千に変化した臿になった。さす・さしこむ意を表す。新字体に用いられるとき、千が日をつらぬくかたちに変化する。
意味 (1)さす。さしはさむ。 (2)すき。(=鍤)

イメージ  「さす・いれる」 (臿・挿・鍤・歃)
音の変化   ソウ:臿・挿・鍤・歃

さす・いれる
[插] ソウ・さす  扌部
解字 旧字は插で 「扌(手)+臿(さす)」 の会意形声。手でものをさしこむこと。新字体は臿が、千を日に通した形の挿に変化。
意味 さす(挿す)。さしこむ。さしはさむ。「挿花ソウカ」(花を生ける。また、花かんざし)「挿絵さしえ」「挿入ソウニュウ」「挿話ソウワ」(エピソード)
 ソウ・ショウ・すき  金部
解字 「金(金属)+臿(さす)」 の会意形声。田畑にさして耕す金属製のスキ。鍬ショウ・シュウ(すき・くわ)は、鍤シュウの同音代替字である。
意味 (1)すき(鍤)。土を掘り起こす農具の一種。 (2)はり。まち針。
 ソウ・ショウ・すする  欠部
解字 「欠(口をあける)+臿(いれる)」 の会意形声。欠ケンは口をあけた人を表す。音符「欠ケン」を参照。歃は口をあけて汁を入れる(吸う)こと。
意味 すする(歃る)。吸ってのむ。「歃血ソウケツ」(血をすすって約束を誓うこと)
<紫色は常用漢字>

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音符 「童ド ウ」 <わらべ>

2017年04月18日 | 漢字の音符
 ドウ・トウ・わらべ  立部

解字 金文第一字は、「辛(針)+目(め)+人+東トウ」。このうち 「辛(針)+目(め)+人」は、針で目の上(ひたい)に入れ墨をされた人で捕虜となった奴隷を意味する。東トウはこの字の発音を表す。金文第二字は、人がとれて、土が増えた字体。篆文は、目がとれて「辛+東+土」(辛と東は一部重複している)となった。現代字は、辛⇒立、「東+土」⇒里、に変化した童となった。童は、入れ墨をされた奴隷であり、奴隷は結髪を許されなかったので、おなじように結髪をしない「こども、わらべ」を童というようになった[字統を参考]。字形の変化が大きいので、ごろ合わせで覚えると便利。
意味 (1)わらべ(童)。わらわ。こども。「童話ドウワ」「童謡ドウヨウ」「童顔ドウガン」 (2)しもべ。召使い。罪によって、しもべとなった者。
覚え方  あの、たっ()ている、さと()の子は、わらべ(

イメージ  「わらべ」 (童・瞳・憧)
       元の意味である 「どれい・しもべ」 (僮)
       「同音代替」 (撞・鐘・艟)
音の変化 ドウ:童・瞳・僮・撞・艟  ショウ:鐘・憧

わらべ
 ドウ・ひとみ  目部
解字 「目(め)+童(わらべ)」 の会意形声。[説文新附](「説文解字」の解説書)に、「目の童子なり」とあり、目の中に童子の頭がある意。目玉の黒く丸い部分が、結髪をしていない童子の丸い頭髪を連想させるので作られた字と思われる。眸子ボウシとも言う。
意味 ひとみ(瞳)。目玉の黒い部分。光の刺激は、ここから入り眼球内を通りぬける。眸ボウとも書く。「瞳孔ドウコウ」(眼の虹彩によって囲まれた孔。ひとみ)
 ショウ・ドウ・あこがれる  忄部
解字 「忄(心)+童(わらべ)」 の会意形声。わらべの心をいう。心が動くさまをいい、憧憬という語で、あこがれる意となる。
意味 あこがれる(憧れる)。「憧憬ショウケイ・ドウケイ」(憧も憬も、あこがれる意。強く望むこと)

どれい・しもべ
 ドウ・トウ  イ部
解字 「イ(ひと)+童(どれい・しもべ)」 の会意形声。童は、もと「どれい・しもべ」の意であり、イ(ひと)をつけてその意味を表す。
意味 (1)しもべ。めしつかい。「僮僕ドウボク」(めしつかい) (2)おろか。「僮蒙ドウモウ」(おろか)「僮昏ドウコン」(おろかで道理にくらい) (3)こども。わらべ。

同音代替
 トウ・ドウ・シュ・つく  扌部  
解字 「扌(手)+童(トウ・ドウ)」の形声。トウ・ドウは動ドウ・トウ(うごく)に通じ、手で棒などを持ち、動かして物をつくこと。
意味 つく(撞く)。つきあたる。つき鳴らす。「撞鼓トウコ」(太鼓をうつ)「撞球ドウキュウ」(玉つき。ビリヤード)「撞木シュモク」(鐘などをうつT字形の棒)「撞着ドウチャク」(①つきあたる。②つきあたって、くっつく=つじつまが合わない)「自家撞着ジカドウチャク」(同じ人の言行が食い違い、つじつまが合わない)
 ショウ・シュ・かね  金部  
解字 「金(金属)+童(=撞。つく)」 の会意形声。ついて音をだす金属製のつりがね。日本ではお寺の釣鐘だが、現代中国では、時計の意でも使われる。
意味 かね(鐘)。つりがね。「鐘楼ショウロウ」(鐘つき堂)「鐘鼓ショウコ」(鐘と太鼓)「梵鐘ボンショウ」(寺院のつりがねをいう)「警鐘ケイショウ」(危急を知らせる鐘)
 ドウ・トウ  舟部
解字 「舟(ふね)+童(=撞。つく)」 の会意形声。ついてゆく船。ぶつかってゆく船で、いくさぶねをいう。
意味 いくさぶね。「艟艨ドウモウ」(軍艦。いくさぶね。=艨艟モウドウ
<紫色は常用漢字>

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音符 「華カ」 <はな>

2017年04月17日 | 漢字の音符
 カ・ケ・はな  艸部         

解字 甲骨文字は植物に花が咲いている様子を表した象形[甲骨文字辞典]。金文は花が上向きになり、左右の葉から花が出ているかたち。篆文は、金文の変形字に艸(草)を加えた形になり、現代字は華になった。この字は花の正字で、古くはすべて華の字が使われた。花の字は5世紀の頃作られたとされる。中国の国名も中華を使っている。覚えにくい字なので語呂合わせで覚えると便利。華は「はなやか・にぎやか」のイメージを持つ。
意味 (1)はな(華)。草木のはな。「華道カドウ」「散華サンゲ」(仏の供養のため華を散布すること) (2)はなやか。美しい。栄える。「栄華エイガ」「華美カビ
覚え方  くさ()の下、よこ二()たて二( | | )よこ二()たてぼう( | )でになる。 華の筆順はこちら

イメージ  「はな」 (華)
       「はなやか・にぎやか」 (嘩・譁) 
       「カの音」 (樺)
音の変化  カ:華・嘩・樺・譁

はなやか・にぎやか
 カ・かまびすしい  口部
解字 「口(いう)+華(はなやか・にぎやか)」 の会意形声。にぎやかに、また激しく言うこと。
意味 かまびすしい(嘩しい)。「嘩笑カショウ」(にぎやかに話し笑う)「喧嘩ケンカ
 カ・ゲ  言部
解字 「言(いう)+華(はなやか・にぎやか)」 の会意形声。にぎやかにまた激しく言うこと。(=嘩)
意味 かまびすしい(譁しい)。やかましい。「喧譁ケンカ」(=喧嘩)「譁笑カショウ」(=嘩笑)「譁然カゼン」(がやがやとやかましいさま)

カの音
 カ・かば  木部
解字 「木(き)+華(カ)」 の形声。カという名の樹木。寒地に自生する落葉高木の、かば・かんばをいう。樹皮がよく燃えるので、焚きつけの着火材やともし火として使われる。
意味 かば(樺)。かんば(樺)。カバノキ科の落葉高木。材は家具材や家屋の内装に使われ、樹皮は容易に燃えるので、天然の着火材としても使われる。「白樺しらかば」「樺燭カショク(=華燭)」(樺の皮を巻いて作ったともし火)
覚え方 は火に通じ、樹皮を着火材として使うである、かば(
<紫色は常用漢字>

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音符 「敖ゴウ」 <放たれて出る> と 「傲ゴウ」

2017年04月15日 | 漢字の音符
 ゴウ・あそぶ・おごる  攵部   

解字 後漢にできた[説文解字]は敖の篆文を、「出(でる)+放(はなたれる)」の会意とし、放たれて存分に出歩くことを示す形とする。放たれて出歩くことから「あそぶ」、自由に出歩き相手かまわずふるまう意から、思いあがる・おごる意が派生した。現代字は、出⇒土に変化した敖となった。現在、あそぶ意は遨ゴウが、おごる意は傲ゴウが受け持つ。形が変化しているので語呂合わせで覚えると便利。
覚え方 どかたぼく(土方攵
意味 (1)あそぶ(=遨)。なまける。 (2)おごる(=傲)。たかぶる。

イメージ  「あそぶ」 (遨)
       「おごる」 (傲)
       放たれて出る意から 「出すぎる」 (贅・熬・螯・嗷・鼇・鰲)
音の変化  ゴウ:遨・傲・熬・螯・嗷・鼇・鰲  ゼイ:贅

あそぶ
 ゴウ・あそぶ  之部
解字 「之(ゆく)+敖(あそぶ)」 の会意形声。あそびあるくこと。
意味 あそぶ(遨ぶ)。気ままにあそぶ。「遨遊ゴウユウ」(気ままにあそび楽しむ)

おごる
 ゴウ・おごる  イ部
解字 「イ(人)+敖(おごる)」 の会意形声。おごりたかぶる人。
意味 おごる(傲る)。あなどる。見下す。「傲慢ゴウマン」(おごって人をあなどる)「傲然ゴウゼン」「傲岸ゴウガン」(おごって人を見下す)
覚え方 ひと()どかた(土方)ぼく()はって慢に(人を土方と見下していたボク(攵)は傲っており傲慢だった)[漢字川柳]

出すぎる
 ゼイ  貝部
解字 「貝(財貨)+敖(出すぎる)」 の会意形声。財貨を必要以上に使うこと。
意味 むだ。よけいなもの。「贅肉ゼイニク」「贅沢ゼイタク」(必要以上にお金をかける。分を過ぎる)「贅言ゼイゲン」(むだぐち)
 ゴウ・いる  灬部
解字 「灬(火)+敖(出すぎる)」 の会意形声。強い火で熱すること。
意味 (1)いる(熬る)。こがす。水を入れずに強火で水分をとばす。「豆を熬る」 (2)水気のなくなるまで煮つめる。長時間煮る。「煎熬センゴウ」(煮詰める) (3)「熬り子いりこ」とは、雑魚を煮て干し、料理のだしにするもの(=炒り子)。にぼし。
 ゴウ 虫部
解字 「虫(カニ)+敖(出すぎる)」 の会意形声。身体の割りに出すぎているカニのはさみをいう。
意味 蟹かにのはさみ。「蟹螯カイゴウ」(蟹のはさみ)
 ゴウ・かまびすしい  口部
解字 「口(くち)+敖(出すぎる)」 の会意形声。口から声が出すぎること。
意味 かまびすしい(嗷しい)。やかましい。「嗷嗷ゴウゴウ」(大声でさわぐ)「嗷然ゴウゼン」(やかましいさま)
 ゴウ  黽部
解字 「黽(かめ)+敖(出すぎる⇒規格外)」 の会意形声。規格外に大きい亀。
意味 おおうみがめ。鰲ゴウとも書く。想像上の動物の名。海中にすみ背中に蓬莱山などの仙山(仙人の住む山)を背負っているという。「鼇峰ゴウホウ」(おおうみがめが背にのせているという海中の仙山の峰)「鼇頭ゴウトウ」(大亀の頭の意から、①中国で科挙の首席合格者。②書物の頭注(本文の上欄、またそこへの書き入れ。)
 ゴウ    魚部
解字 「魚(さかな)+敖(出すぎる⇒規格外)」 の会意形声。大きすぎる魚(カメ)。
意味 おおがめ。鼇ゴウと同じ。おおうみがめ。想像上の動物の名。海中にすみ、背中に蓬莱山等の仙山を背負っているという。
<紫色は常用漢字>

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