漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符 「帚ソウ」 <ほうき> 「掃ソウ」 「婦フ」 「帰キ」

2015年07月26日 | 漢字の音符
 ソウ・シュウ  巾部

解字 甲骨文・金文は、立て掛けたほうきを描いた象形。真ん中のH印は、ほうき草などを結わえた形。下部が結わえた持ち手のはみ出た部分。上部がほうきの本体を表わす。篆文は、ほうきの本体が「ヨの出た形」に変化した。箒(ほうき)の原字。新字体では帚の上部がヨとなる。なお、甲骨文字では、箒で掃除をするのは女性の仕事であることから、夫人(婦人)の象徴として使われることが多いという[甲骨文字小字典]。

中国農村のほうき草による帚作り(古文字「帚」のH印にあたる持ち手を結わえている。この後、持ち手を少し残して切断する。甲骨・金文のH印の下部は、結わえた持ち手のはみ出た部分)
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1572059885029306&wfr=spider&for=pc
意味 ほうき(帚)。ははき。「帚木ははきぎ」(ホウキグサの別称。源氏物語の巻名)

イメージ 
 「ほうき」
(帚・箒・掃・婦・帰)
音の変化  ソウ:帚・箒・掃  フ:婦  キ:帰

ほうき
 ソウ・シュウ・ほうき  竹部
解字 「竹(たけ)+帚(ほうき)」の会意形声。竹のほうき。また、材質にかかわらず、ほうき一般を表す。
意味 ほうき(箒)。たけぼうき。チリを掃除する道具。「箒草ほうきぐさ」(アカザ科の一年草。茎を干してほうきにする)「箒星ほうきぼし」(長く白い箒のような尾を引く星。彗星の別名)「箕箒キシュウ・キソウ」(ちりとりと箒。掃除すること)
 ソウ・はく  扌部
解字 旧字は、「扌(手)+帚(ほうき)」の会意形声。ほうきを持ってはくこと。新字体は上がヨに変化した掃。
意味 はく(掃く)。はらいきよめる。「清掃セイソウ」「掃除ソウジ
 フ・おんな  女部
解字 旧字は、「女(おんな)+帚(ほうき)」の会意。ほうきを持って家の中を掃除する女性。新字体は上がヨに変化した婦。
意味 (1)おんな(婦)。成人した女性。「婦人フジン」「妊婦ニンプ」 (2)つま。よめ。「夫婦フウフ」「主婦シュフ」「寡婦カフ
[歸] キ・かえる・かえす  巾部

解字 甲骨文・金文は「師の左辺(神に供える肉)+帚(=婦。つま)」の会意。師の左辺は軍が持ちはこび陣中で神に供える肉で従軍の象徴。人が軍務を終え無事に妻のもとへ帰ること。篆文では、そこに止(あし)を加え、歩いて帰る意を明確にした。新字体は旧字・歸の左辺を「リ」に簡略化した。
意味 (1)かえる(帰る)。もどる。かえす(帰す)。「帰還キカン」「帰宅キタク」 (2)あるべき所におさまる。おちつく。「帰依キエ」(すぐれた者に服従しすがる)「帰属キゾク」「帰結キケツ」 (3)とつぐ。「之子于帰シシウキ」(之(こ)の子、于(ゆ)き帰(とつ)ぐ。[詩経・桃夭])「帰嫁キカ」(とつぐ。嫁にゆく)
覚え方 元の字と形が変わっているので「りよわきん」(リヨワ巾)でる、と覚える。
<紫色は常用漢字>

<関連音符>
 シン・おかす  イ部
解字 篆文は、「イ(人)+帚(ほうき)+又(て)」 の会意。音符「侵シン」を参照。

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音符「因イン」<下地の上にかさなる>と「姻イン」「咽イン」「恩オン」

2015年07月19日 | 漢字の音符
 イン・よる・ちなむ  囗部      

解字 「囗(敷物)+大(ひと)」の会意。敷物を下に敷いて、その上に人が大の字に寝ていることを示す[字統]。下地をふまえて、その上にのること。今の自分があるのは、育った下地があるから。もと、因る意となる。
意味 (1)もと。事の起こり。よる(因る)。「原因ゲンイン」「因縁インネン」 (2)たよる。もとのままに従う。「因習インシュウ」 (3)ちなむ(因む)。ゆかりをもつ。

イメージ  
 敷物の上に寝ることから「下地の上にかさなる」(因・姻・恩)
 原義の「敷物に人が寝る」(茵)
 「形声字」(咽・烟)
音の変化  イン:因・姻・咽・茵  エン:烟  オン:恩

下地の上にかさなる
 イン  女部
解字 「女(おんな)+因(下地の上にかさなる)」の会意形声。結婚によって夫の育った下地の上に他の姓の女が重なること。
意味 (1)とつぐ。嫁に行く。よめいり。「婚姻コンイン」 (2)結婚によってできた親類。「姻戚インセキ」「姻族インゾク
 オン  心部  
解字 「心(こころ)+因(下地の上にかさなる)」の会意。自分が今までいろんな人たちの下地の上に、生きてきたことに感謝するこころ。
意味 めぐみ。いつくしみ。「恩義オンギ」「恩恵オンケイ」「恩賜オンシ」(天皇からいただく)

敷物に人が寝る
 イン・しとね  艸部
解字 「艸(草)+因(敷物に人が寝る)」の会意形声。因は、敷物に大の字の人が寝ている形。艸(くさ)をつけて草製の敷物を表す。
意味 しとね(茵)。しきもの。座ったり寝たりするとき敷くもの。「茵席インセキ」(しきもの。茵も席も、しきものの意)「茵蓐インジョク」(しとね。ふとん)

形声字
 イン・エツ・エン・のど・むせぶ  口部
解字 「口(くち)+因(イン)」の形声。[説文解字]は「嗌のどなり、口に従い因インの声」とし、インという名の「のど」をいう。口からのんだものが通るのど。のど・のむ意と、のむときのどにつまる(むせぶ)意とある。つまる発音はエツとなる。
意味 (1)のど(咽)。「咽喉インコウ」(のど。口の奧から食道の入り口までを咽頭といい、そこから気管に入る部分を喉頭という) (2)のむ(咽む)。のみ下す。「咽下エンカ」 (3)むせぶ(咽ぶ)。むせる(咽る)。息がつまる。感情がこみあげて声がつまる。「嗚咽オエツ」(のどをつまらせながら泣く。むせびなき) 
 エン・イン  火部
解字 「火(ひ)+因(エン)」の形声。エンは煙エン(けむり)に通じ、けむりの意。
意味 (1)けむり(烟)。煙の異体字。現代中国では、煙の代わりに烟を使う。 (2)けむりのような。「烟水エンスイ」(煙のような蒸気。水蒸気の立ち込めた水面)「烟水茫々エンスイボウボウ」(茫々は遠くまでひろがる意)
<紫色は常用漢字>

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