漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「華カ」<はな> と 「嘩カ」「樺カ」「曄ヨウ」

2023年02月27日 | 漢字の音符
 カ(クヮ)・ケ(クェ)・はな  艸部         

解字 金文は中段に描かれた木から上に花がでている形に、発音をあらわす于が下につく。篆文は上に草冠が追加され、もとの上中段の花と木の部分が一体化し、下に于が変化した亏がつく。この字形を[説文解字]は、「榮(栄え)る也」とし、発音は戶瓜切(クヮ)とするが、これは于・亏の発音が変化した音である。旧字に至り、艸冠⇒十十となり、下部に于の面影が残る。さらに新字体は旧字を簡略化した華になった。この字は説文解字が「榮える也」と言うごとく、単なる花(華)の意味にとどまらず様々な意味を持つ字となっている。
意味 (1)はな(華)。草木のはなの総称。「華道カドウ」「散華サンゲ」(仏の供養のため華を散布すること) (2)はなやか(華やか)。美しい。栄える。「栄華エイガ」「華美カビ」 (3)ひかり。かがやく。「光華コウカ」(ひかりかがやく) (4)さかえる。「栄華エイガ」(さかえる) (5)中国の自称。「中華チュウカ」「華夷カイ」(中華と文明のおよばない国)「華僑カキョウ」(中国人で国外に住む者) (6)地名。「華山カザン」(陝西省にある山。五岳のひとつ)(7)「華奢カシャ・キャシャ」とは、①カシャの発音。はなやかでぜいたく。②キャシャの発音。[国]姿がほっそりとして上品。作りが弱弱しく頑丈でない)
覚え方  くさ()の下、よこ二()たて二( | | )よこ二()たてぼう( | )でになる。 華の筆順はこちら

イメージ 
 「はな」
(華) 
 意味(3)の「かがやく」(燁・曄)
 「形声字」(嘩・譁・樺)
音の変化  カ:華・嘩・樺・譁  ヨウ:燁・曄

かがやく
 ヨウ・かがやく  火部
解字 「火(ひ)+華(かがやく)」の会意形声。火がかがやく意。
意味 かがやく(燁やく)。ひかる。「燁然ヨウゼン」(かがやくさま)「燁燁ヨウヨウ」(かがやくさま)「燁煜ヨウイク」(かがやくさま)
 ヨウ・かがやく  日部
解字 「日(太陽)+華(かがやく)」の会意形声。太陽がかがやく意。
意味 かがやく(曄やく)。「曄曄ヨウヨウ」(かがやいて盛んなさま)「曄然ヨウゼン」(かがやくさま)「曄煜ヨウイク」(かがやくさま)

形声字
 カ・かまびすしい  口部
解字 「口(いう)+華(カ)」 の形声。口からカという声をだすこと。カッカッと声を出し、にぎやか・かまびすしい意となる。
意味 かまびすしい(嘩しい)。やかましい。「嘩笑カショウ」(にぎやかに話し笑う)「喧嘩ケンカ」(けんか)「嘩然カゼン」(がやがやとやかましいさま)
 カ・ゲ  言部
解字 「言(いう)+華(カ)」 の形声。[説文解字]は「讙カン(かまびす)しい也。言に从(したが)い華の聲(声)。発音はカ(呼瓜切)とする。嘩と譁は、同じ意味となる。
意味 かまびすしい(譁しい)。やかましい。「喧譁ケンカ」(=喧嘩)「譁笑カショウ」(=嘩笑)「譁然カゼン」(=嘩然)
 カ・かば  木部
解字 「木(き)+華(カ)」 の形声。中国・南北朝期の字書[玉篇]に「木皮は以って燭(ともしび)と為すべし」とあり、皮が燭の材料になる木である「かば・かんば」をいう。樹皮がよく燃えるので、焚きつけの着火材やともし火として使われる。

白樺(ラカッポ:「桜・樺・チェリーについて」より)
意味 かば(樺)。かんば(樺)。カバノキ科の落葉高木。材は家具材や家屋の内装に使われ、樹皮は容易に燃えるので、天然の着火材としても使われる。「白樺しらかば」(カバノキ科の落葉高木。樹皮は白く、紙状に剥げる)「樺燭カショク(=華燭)」(白樺の皮に蝋ロウを塗り込み、燭火(ともしび)にした事から)「華燭(樺燭)の典テン」(樺の皮を燃やし煌煌と輝く燭のもとで行われる祭典。ガス灯や電灯が普及するまで樺燭は最も明るい灯(あか)りのひとつだった。結婚式などを祝していう語)「樺巾カキン」(樺の樹皮でつくった頭巾)
<紫色は常用漢字>

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音符「于ウ」 <曲がる> と「宇ウ」「芋ウ」「迂ウ」「汚オ」「樗チョ」

2023年02月25日 | 漢字の音符
  増補改訂正しました。
 ウ・ク・ここに・ああ  ニ部

解字 甲骨文第一字は曲がる形の象形だが、何の象形か不明。第二字は于の右側に沿って描かれた線が走る繁体の字で呼気が走る形とされる。意味は、曲がる意でなく仮借カシャ(当て字)され、対象や所在を示す助辞として用いられている。繁体は呼気が走る形であり、口から呼気がもれる感嘆や嘆息の意味となる。しかし、両者が特に区別されて用いられる訳ではない。金文も甲骨文字と同じで2種類ある。篆文で亏の形になったが、現代字は于に戻った。于を音符に含む字は「曲がる」イメージをもつ。
意味 (1)ここに(于に)。語調をととのえる語。(2)~に。~において。~より。「于役ウエキ」(①役に行くこと。②君命で他国に使いする)「于越ウエツ」(越の国において」 (3)ああ。詠嘆や歎息の声。「于嗟ウサ・ああ」(嘆息や感嘆の声) (4)姓のひとつ。于姓は黄河流域から全国に拡がった姓氏の一つ。西周初年に西周姬姓の周武王の子・邘叔ウシュクが 于邘ウウ国(河南省)を封じられ以後その子たちが于姓を名乗った。
于姓のマーク(ネットの検索画面から)
鳥が羽ばたくような形の中に繁体の于を入れ、横に立ち姿の人を描く。

イメージ
 「于の繁体(息をはく)」(吁)
 「まがる」(于・盂・迂・紆・汚・雩・樗)
 「おおきい」(宇・芋)
 「形声字」(竽)
音の変化  ウ:于・吁・宇・盂・迂・紆・雩・芋・竽  オ:汚  チョ:樗

于の繁体(息をはく)
 ウ・ク  口部
解字 「口(くち)+于(息をはく)」の会意形声。口から息をだして、嘆いたり、感動・感嘆したりする。繁体の于の代わりに口をつけて息をはく意を表した。
意味 (1)なげく声。「吁嗟ウサ」(①なげく声。②嘆息する声)(2)感嘆の声。「吁吁クク」(①感嘆の言葉。②仕事の掛け声)

まがる
 ウ  之部
解字 「辶(ゆく)+于(まがる)」の会意形声。まがって行くこと。
意味 (1)まがる。とおまわりする。「迂回ウカイ」(まわり道する)「迂遠ウエン」(遠まわし。まわりくどい)「迂曲ウキョク」(うねうねと曲がる。=紆曲) (2)うっかりする。にぶい。「迂闊ウカツ」(うっかりする)「迂鈍ウドン」(うとくてにぶい)
 ウ・まがる  糸部
解字 「糸(いと)+于(まがる)」の会意形声。糸がまがりくねる状態をいう。
意味 まがる(紆がる)。まげる。めぐる。「紆曲ウキョク」(うねうねと曲がる)「紆余ウヨ」(紆は、まがる。余は、あまる。曲がりくねってはみだす)「紆余曲折ウヨキョクセツ」(まがりくねること)
[汙] オ・けがす・けがれる・けがらわしい・よごす・よごれる・きたない  氵部

解字 正字は汙で、「氵(水)+于(=亏。まがる)」の会意形声。この于は、くぼんでまがる意で、汙は窪んだ水たまりの意。水たまりは、よどんできたなくなることから、よごれる意となる。現代字の汚は、汙の異体字であったが、新字体で正字となっている。
意味 (1)よごす(汚す)。よごれる(汚れる)。「汚染オセン」 (2)けがす(汚す)。けがれる(汚れる)。「汚職オショク」 (3)きたない(汚い)。「汚水オスイ
 ウ・はち  皿部
解字 「皿(食べ物を盛るうつわ)+于(まがる)」 の会意形声。内側が上から曲がりこんでいるうつわ。曲がりこんだ深みのある皿で、飲食物を盛る器をいう。
意味 (1)はち(盂)。わん。飲食物を盛る器。わんの形。「盂方水方ウホウ スイホウ」(容器の盂が方形ならば、そこに入れた水も方形になる)「腎盂ジンウ」(腎臓で生成された尿がまず集まる袋状の部分) (2)梵語「ullambanaウランバナ」の音訳字に用いる字。「盂蘭盆ウラボン」(「倒懸トウケン(さかさにかける)」の音訳。祖霊を死後の苦しみの世界から救済する仏教行事。日本の民間行事では祖霊祭の要素が強い)「盂蘭盆会ウラボンエ」(陰暦7月13日~15日に行なわれる死者の霊をとむらう仏教行事)
 ウ・キョ  雨部
解字 「雨(あめ)+亏(=于。まがる)」の会意形声。雨の中に曲がってかかる虹。転じて、あまごいの意となる。
意味 (1)夏の雨ごいの祭り。雨ごい。「雩祭ウサイ」(雨ごいの祭り)「雩帝ウテイ」(天を祭り雨ごいをすること)「雩禳ウジョウ」(雨ごいしはらう)(2)にじ。 
 チョ  木部 
解字 『說文解字注』は、「樗は悪木也(なり)」とし、「今之(の)臭椿シュウチン樹、是(これ)也。木に從(したが)い、雩聲(声)。発音はチョ(丑居切)とする。しかし、樗は臭椿とされるものの、この木に限定されるのでなく大木という意味がつよい。それは、雩が雨乞いの意味をもつことと関係している。日本で雨乞いの木として知られる木には「雨乞のイチョウ」(宮城県柴田町)や「雨乞いの楠(くす)」(今治市大山祇神社)などの大樹が多い。中国ネットで「祈雨樹」で検索すると、楡(にれ)・榕樹(ガジュマル)・梧(あおぎり)・橡(くぬぎ)などの大樹が出てくる。要するに樗チョとなる木は、木材などに適しないため伐採されず大きくなる。大樹となり信仰を集め、またこうした木には毛虫があつまり蚕や繭(まゆ)となり蛾となって飛び回る。「樗櫟チョレキ」という熟語もある二字は大樹を象徴する。

樗蚕チョサン(「立足植保 服務園林」より)
樗の木に付く毛虫・幼虫(上)と成虫になった蛾(下)。蛹(さなぎ)から羽化すると茶色模様の蛾になる。この虫がつく樹は写真の説明によると臭椿以外に銀杏・槐樹エンジュなど合計13種類を挙げている。
意味 (1)臭椿シュウチンの木。日本で二ワウルシ。臭椿は成長が早く、庭木、街路樹、器具材などに用いられる。根皮や樹皮を樗白皮(ちょはくひ)の名で漢方薬(解熱・止瀉・止血)とする。「樗蚕チョサン」(樗の木に付く蚕。特に成虫になった蛾をいう) (2)材木として役に立たないことから。散木。雑木。無用の木。「樗材チョザイ」(無用の木)「樗朽チョキュウ」(無用のもの)「樗櫟チョレキ」(樗の木と、くぬぎの木。いずれも役に立たない木)「樗散チョサン」(役に立たないもの。散は散木サンボク=材木として役に立たない木の意)(3)「樗牛チョギュウ」とは、樗木(役に立たない木)と斄牛リギュウ(雲のように大きな牛)で役に立たない大木の樗と、大牛である斄牛のこと。大にして無用なもの。「高山樗牛チョギュウ」(明治時代の文芸評論家。小説家。)

おおきい
[㝢] ウ・のき・いえ  宀部

解字 甲骨文字は建物の中に于がある形で[甲骨文字辞典]は、「祭祀を行う場所として記されている」とする。金文第一字は「 宀(建物)+于」の形、第二字は「宀(建物)+禹」の形。于と禹は同音であり、同じ意味で使われた。金文は、①居住(すまい。建物)、②宏大(ひろく大きい)の意味に用いられている。禹は古代中国の夏王朝を開いた伝説上の王の名で、「禹域ウイキ」といえば禹王が治めた国土の意から中国の別名とされており、これに宀(建物)が付いて、大きな建物のほか、天下・天地四方という意味が生まれたものと思われる。この字は篆文まで残ったが、以後は宇に統一された。㝢は異体字となっている。
意味 (1)のき(宇)。ひさし。やね。いえ(宇)。おおきな屋根で覆われた家。「屋宇オクウ」(いえ。家屋)「堂宇ドウフ」(堂・殿堂。また、堂ののき)「玉宇ギョクウ」(大理石の大きな建物)「廟宇ビョウウ」 (祖先や貴人の霊をまつる建物) (2)<転義> 天下・天地四方。すべての空間。「宇内ウナイ」(天下・世界)「宇宙ウチュウ」 (3)空間的な広がり。大きさ。「気宇キウ」(心のひろさ。気がまえ)(4)「器宇キウ」とは、風采・風貌のこと。「器宇軒高キウケンコウ」(堂々たる風貌)
 ウ・いも  艸部
 大きなサトイモの葉
解字 「艸(草)+于(大きい)」の会意形声。大きな草の意でサトイモの葉を指し、その地下部分(塊茎)を食用とするサトイモをいう。
意味 いも(芋)。特にサトイモ。また、ジャガイモ・サツマイモ・ヤマイモなどの総称。「里芋さといも」(畑で作るイモ。葉は大きく葉柄は太く長い)「芋茎ずいき」(サトイモの茎)「薩摩芋サツマいも」(中南米原産の芋。日本へは17世紀に中国・琉球をへて薩摩に伝わった)「焼き芋」(焼いたさつま芋)「芋粥いもがゆ」(さつま芋などを小さく切って入れた粥)「じゃが芋」(「ジャガタラいも」の略称。慶長年間にジャカルタより渡来したという。)

形声字
 ウ  竹部

解字 甲骨文字は吹き口のついた笛を描き、中に「于」を入れた字。于という名の笛を意味する。甲骨文字の時代から文字があるので、よほど知られた笛だったのだろう。墓から出土の実物は湖南省博物館に保存されている。金文は「ふえ」の意味である龠ヤクの横に于をつけた形になった。篆文は「竹+亏」の形になり現在は「竹+于」の竽となった。従ってこの字は「竹に従い于声」の形声字で、ウという竹製の管楽器の意。竹の楽器である笙ショウが何本もえているような形の管楽器)より一回り大きく音も低い。
 竽(湖南省博物館)
意味 笛の一種。笙ショウの大きなもの。後漢の[説文解字]は36管とする。前2世紀の馬王堆(マオウタイ)漢墓出土の竽は高さ78㎝で、竹の管が22本ある。管が長いため音が低い。日本の正倉院所蔵の笙・竽はともに17管で、この竽の音域は笙より1オクターブ低いものであった。[ウィキペディアによる]。
「竽笙ウショウ」(竽と笙。ふえの意)「竽瑟ウヒツ」(竽は笙より大きい、瑟は琴より大きい。ともに低音を担当する楽器)「吹竽スイウ」「鳴竽メイウ」「濫竽充数ランウジュウスウ」(濫りに竽を吹き、数に充当する。多くの竽を吹奏する場に、うまく吹けないのに数合わせで参加すること。転じて、実力の無いものが地位についていること)
<紫色は常用漢字>

   バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音符「尹イン」<手に指揮棒をもつ>「伊イ」と「君クン」「郡グン」「群グン」

2023年02月23日 | 漢字の音符
  増補改訂しました。
 イン  尸部  

解字 甲骨文字は手に棒状のものをもった形で、殷代には王の臣下の汎称だという。[甲骨文字辞典]は、「棒は道具であり、尹は道具を持って奉仕する者が字源であろう」とする。私は、尹の系列字の展開を考えるとき、この棒は現場で指揮をとる人がもつ指揮棒ではないかと思う。のち、この指揮棒をもつ人は、長官の意味となり、おさめる・ただすなどの意味も持つようになった。
意味 (1)おさめる。ただす。 (2)おさ。長官。「令尹レイイン」(周代の楚国で最高位の大臣。また、地方長官) (3)姓のひとつ。 (4)[国]かみ(尹)。古代の四等官。

イメージ 
 「指揮棒をもつ」
(尹・伊)
音の変化  イン:尹   イ:伊
指揮棒をもつ
 イ・これ・かれ  イ部
解字 「イ(人)+尹(指揮棒をもつ)」の会意形声。指揮棒をもつ人。殷の湯王を助けて世を治めた伝説上の賢人である「伊尹イイン」に使われるが、一般には、姓や地名に用いられる。また、仮借カシャ(当て字)されて、「これ」「かれ」などの意となる。
意味 (1)これ(伊)。この(伊の)。 (2)かれ(伊)。かの(伊の)。 (3)地名・姓に用いられる。「伊豆イズ」「伊藤イトウ」「伊太利イタリア」「伊国イコク」(イタリア) (4)[国]「伊達だて」(いきであること)
参考 伊の左辺イが、カタカナの「イ」となった。


    クン  <まとめる>
 クン・きみ  口部        

解字 「口(言葉を発する)+尹イン(指揮棒をもつ)」の会意。指揮棒をもち言葉を発して号令をかける統治者をいう。古くは地域の統治者を言ったが、のちに人々を治める君主の意味になった。
意味 (1)きみ(君)。人の上に立って支配する者。「君主クンシュ」 (2)きみ(君)。大名や諸侯。地方の統治者。「君侯クンコウ」(諸侯。高官や身分の高い人)「君子クンシ」(徳の高い立派な人) (3)年長者などに付ける敬称。「父君ちちぎみ」 (4)同輩や目下の者を呼ぶ時に付ける語。「諸君ショクン

イメージ 
 人々を支配し地域を「まとめる」(君・郡・群・窘・裙)
音の変化  クン:君・裙   グン:郡・群  キン:窘

まとめる
 グン・こおり  阝部おおざと
解字 「阝(邑:むら・まち)+君(まとめる)」 の会意形声。邑(むら・まち)をまとめた地域。
意味 地方行政区画のひとつ。ぐん。こおり(郡)。「郡司グンシ」「郡守グンシュ」(郡の長官)「郡部グンブ」「郡奉行こおりブギョウ」 
 グン・むれる・むれ・むら  羊部
解字 「羊(ひつじ)+君(まとまる)」 の会意形声。まとまりのある羊のあつまり。
意味 (1)むれ(群)。「大群タイグン」 (2)むらがる(群がる)。むれる(群れる)。「群衆グンシュウ」「群生グンセイ」「群臣グンシン」「群青グンジョウ」(青い鉱物の群れ(あつまり)。岩絵具の青、またその色をいう)「群青色グンジョウいろ」(あざやかな深い青色)
 キン・ゴン・くるしむ  穴部
解字 「穴(よこあな)+君(まとめる)」 の会意形声。よこ穴にまとまって入ること。[説文解字]は「迫(せま)る也(なり)」とする。よこ穴に緊急に避難することか。
意味 (1)つまる。とじこめられる。きわまる。「窮窘キュウキン」(窮も窘も、きわまる意) (2)くるしむ(窘しむ)。「窘困キンコン」(くるしむ)「窘乏キンボウ」(貧乏にくるしむ)「窘厄キンヤク」(くるしみ。災難) (3)あわただしい。急な。「窘急キンキュウ」(あわただしい)「窘歩キンポ」(急いで歩く) (4)[国]たしなめる(窘める)。
 クン・も  衤部  
解字 古い字体は帬 で「巾(ぬの)+君(まとめる)」 の会意形声。布を腰にまとめる(巻く)衣服の意で下半身をとりまくスカート状のものをいう。楷書になって巾⇒衣に変化した裙となった。
意味 (1)も(裙)。もすそ。下半身をとりまく衣服。スカート。「裙子クンシ」(僧侶が腰から下にまとう袴状の衣服。現代中国ではスカートをいう)「裙釵クンサイ」(①女性のもすそと、かんざし。②女性)「裙帯クンタイ」(もすそと、おび) (2)はだぎ。したぎ。「裙襦クンジュ」(はだぎ)
<紫色は常用漢字>

    バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。


コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音符「奄エン」<上からおおう>と「掩エン」「庵アン」「俺おれ」

2023年02月20日 | 漢字の音符
  増補改訂しました。
 エン・おおう・たちまち  大部

解字 金文は「イナズマの形(电=申シン)+大(人の正面形)」で、雷雲が人の頭上をおおう意。篆文は大が上にきた形で同じ意味を表す。たちまち・にわかの意も雷雲から由来する。奄を音符に含む字は、「おおう」「おおきい」イメージを持つ。 イナズマは、音符「申シン」を参照。
意味 (1)おおう(奄う)。「奄有エンユウ」(おおって自分のものにする) (2)(おおわれて)ふさがる。「奄奄エンエン」(息の絶え絶えであるさま=気息奄奄キソクエンエン) (3)たちまち(奄ち)。にわか。「奄然エンゼン」(にわかなさま・くらいさま)「奄忽エンコツ」(にわかなさま) (3)地名。「奄美あまみ」(鹿児島県の島)

イメージ  
 「おおう」
(奄・掩・菴・庵・淹・晻・閹)
  雷雲がおおう意から「おおきい」(俺)
音の変化  エン:奄・掩・淹・俺・閹  アン:菴・庵・晻

おおう
 エン・おおう  扌部
解字 「扌(て)+奄(おおう)」の会意形声。奄のおおう意を、手を付けて動詞化した字。
意味 (1)おおう(掩う)。おおいかくす。「掩蓋エンガイ」(おおい)「掩蔽エンベイ」(おおいかくす)「掩護エンゴ」[敵の攻撃から](味方をおおいまもる) (2)かばう。「掩護エンゴ」(かばい守る) (3)たちまち。にわか。「掩襲エンシュウ」(不意におそう)「掩撃エンゲキ」(不意打ち)
 アン・いおり  艸部
解字 「艸(草)+奄(おおう)」の会意形声。草で屋根をおおった粗末な小屋。
意味 (1)いおり(菴)。草ぶきの小屋。 (2)雅号や屋号などに添える語。「不審菴フシンアン」(表千家の茶室)
 アン・いおり  广部
解字 「广(やね)+奄(おおう)」の会意形声。菴アン(いおり)の艸⇒广に変えた字で、同じく、いおりを表す。
意味 (1)いおり(庵)。草葺きの小屋。茶室などの小さな家。「草庵ソウアン」「庵主アンシュ」 (2)人名。「沢庵タクアン」(①江戸初期の臨済宗の僧。書画・俳諧・茶に通じた。②沢庵漬けの略。干した大根を糠ぬかと塩で漬けたもの。たくわんともいう。)
 エン・ひたす・いれる  氵部
解字 「氵(みず)+奄(おおう)」の会意形声。水でおおわれることから、ひたす意となる。また、(水が)とどまる、(水でおおわれて)ひろい意。日本では、ひたす意から、茶葉に浸してお茶などを「いれる」意で使う。
意味 (1)ひたす(淹す)。つける。「淹漬エンシ」(ひたす。淹も漬も、ひたす意) (2)とどまる。ひさしい。「淹滞エンタイ」(とどこおる)「淹留エンリュウ」(ひさしくとどまる) (3)ひろい。「淹通エンツウ」(ひろくゆきわたる) (4)[国](お茶などを)いれる(淹れる)。「お茶を淹れる」「コーヒーを淹れる」
 アン・くらい  日部
解字 「日(ひ)+奄(おおう)」の会意形声。日が雲におおわれてくらいこと。暗アンの同音代替字となる。
意味 くらい(い)。日が隠れてくらい。「晻晻アンアン」(くらいさま)「アンマイ」(①くらい。暗黒。②おろか)
 エン  門部
解字 「門(もん)+奄(おおう)」の会意形声。門をおおう扉から、宮殿の門を守る役人の意。門番。門番は宮廷で罪を犯して刑罰(宮刑)を受けた男子が行ったので、宮刑(去勢される)を受けた宦官の意となる。「史記」の編纂で知られる司馬遷は漢の武帝の怒りをかい宮刑に処せられ宦官となったが執筆をつづけ史記を完成させた。
意味 (1)宮廷の門を守る門番。 (2)去勢(生殖器をとる)された男子。宦官。「閹割エンカツ」(生殖器をとる)「閹官エンカン」(宦官として宮中に仕える者。=閹宦エンカン。閹人エンジン)「閹尹エンイン」(宦官を管理する官) (3)「閹然エンゼン」とは、本心・本性をおおいかくし、人に迎合するさま。(孟子「尽心・下」)

おおきい
 エン・アン・おれ  イ部
解字 「イ(人)+奄(大きい)」の会意形声。大きな人。自称に用いる。
意味 (1)おれ(俺)。われ。自分の俗称。「俺達おれたち」「俺流おれりゅう」「俺們アンメン」(おれたち)(2)おおきい。ゆたか。
<紫色は常用漢字>

   バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音符 「堯ギョウ」<たかい> と 「暁ギョウ」「焼ショウ」「饒ジョウ」「繞ニョウ」

2023年02月17日 | 漢字の音符
  増補改訂しました。
堯[尭] ギョウ・たかい  土部

解字 甲骨文は、ひざまずいた人の上に土のかたまりが二つある形。この字形は[甲骨文字辞典]に掲載されていない。拓本以外の出典かもしれない。金文は立ち姿の人の上に土が乗っている形。この字も土に関係する字と思われるが意味は不明。楚簡は人の上に土を描いた二人を繋いだ形。郭店楚簡という戦国中期(BC300年頃)の竹簡では、中国神話に登場する君主である「堯ギョウ」の意味で用いている。篆文は土が三つになった堯になり、現在に続いている。この字形について[説文解字]は、「高也。垚が兀の上に在る。高遠なり」とする。つまり土が三つ重なった下に兀コツ(高く上が平ら)が付いた形から字義を説いている。なお、この字が神話の王である堯に用いられたのは、堯が陶唐という姓で陶器作りの祖であるという伝説と結びついているためと思われる。
堯(資料図)
尭は略体の字で人名用漢字になっており、堯の新字体に準じて用いられることもある。また新字体の焼ショウ・暁ギョウで用いられている。
意味 (1)たかい(堯い)。気高い。「堯堯ギョウギョウ」(山などの高いさま) (2)中国古代伝説上の王の名。治水に舜シュンを起用しのちに彼に位を譲った。「堯舜ギョウシュン」(堯と舜は古代の聖王で、徳をもって天下を治めた古代の理想的帝王として並び称される)「堯典ギョウテン」(書経の編の名。堯の言行を記している)「堯風舜雨ギョウフウ シュンウ」(風雨の恵みを堯舜の仁徳に例えた言葉)

イメージ  
 「たかい」(堯・嶢・焼・蕘・澆・翹)
 土がかさなる様から「おおきい・ゆたか」(饒・驍)
 「形声字」(僥・暁・橈・撓・繞・遶・蟯・僥)
音の変化  ギョウ:堯・嶢・僥・暁・澆・翹・驍・蟯  ショウ:焼  ジョウ:遶・蕘・繞・饒  トウ:橈・撓 
 
たかい
 ギョウ・けわしい  山部
解字 「山(やま)+堯(たかい)」の会意形声。高い山で、山がけわしい意となる。
意味 (1)けわしい(嶢しい)。たかい。高くそびえたつさま。「嶢闕ギョウケツ」(高い宮城の門)(2)山の名。「嶢山ギョウザン」(陝西省西安市藍田県にある山)。「嶢関ギョウカン」(藍田県にある関所の名) 
 ショウ・やく・やける  火部
解字 旧字は燒で「火(ひ)+堯(たかい)」の会意形声。火の炎が高くあがる様子で、もえる・やける意。新字体は、焼に変化。
意味 (1)やく(焼く)。やける。もえる。「燃焼ネンショウ」「焼香ショウコウ」(香をたくこと)「焼却ショウキャク」(焼いて処分する) (2)[国]あれこれと手を尽くす。「世話を焼く」
 ジョウ・たきぎ  艸部
解字 「艸(くさき)+堯(=焼の略体)」の会意形成。焼く木の材料となる草木の意で、たきぎ・かり草をいう。また、きこり・くさかりの意となる。
意味 (1)たきぎ(蕘)。しば。細いたきぎ。 (2)きこり。くさかり。「芻蕘スウジョウ」(草かりと、きこり。賤しい者)「芻蕘に詢(はか)る」(草刈りや木こりのような身分の低い者にも広く意見を聞く)
 ギョウ・キョウ・そそぐ・うすい  氵部
解字 「氵(水)+堯(たかい)」の会意形声。高いところから水をそそぐこと。水をそそぐと濃い水が薄まることから転じて、味が薄い。人情がうすい意ともなる。
意味 (1)そそぐ(澆ぐ)。そそぎめぐらす。「澆花ギョウカ」(花に水をやる)「澆漑ギョウガイ」(田に水をそそぐ) (2)うすい(澆い)。味がうすい。人情がうすい。「澆薄ギョウハク」(人情がうすい) (3)かるがるしい。「澆風ギョウフウ」(かるがるしいさま)「澆競ギョウキョウ」(軽薄に競う)
 ギョウ・キョウ  羽部
解字 「羽(はね)+堯(たかい)」の会意形声。鳥が羽をたかくあげ、つまだてること。
意味 (1)あげる(翹げる)。「翹首ギョウシュ」(首をあげて望み待つ。=翹望ギョウボウ) (2)つまだてる(翹てる)。「翹企ギョウキ」(つまだつ。待ち望む)「翹然ギョウゼン」(つまだつさま) (3)すぐれる。「翹秀ギョウシュウ」(すぐれる)「翹翹ギョウギョウ」(①才能などがすぐれるさま。②高いさま。)

おおきい・ゆたか
 ジョウ・ゆたか  食部
解字 「食の旧字(たべる)+堯(ゆたか)」の会意形声。食べ物が豊かにあること。転じて、ゆたか・おおい意となる。
意味 ゆたか(饒か)。おおい。充分にある。「豊饒ホウジョウ」(ゆたか。豊も饒も、ゆたかの意)「饒舌ジョウゼツ」(ゆたかな舌で、おしゃべりの意)
 ギョウ・キョウ・たけし  馬部
解字 「馬(うま)+堯(ゆたか)」の会意形声。体格の豊かな強い馬。人に移して言う。
意味 たけし(驍し)。つよい。いさましい。「驍将ギョウショウ」(強く勇ましい大将)「驍名ギョウメイ」(強いという評判)「驍雄ギョウユウ」(勇ましく強いこと。また、その人)

形声字
 ギョウ・キョウ・もとめる  イ部    
解字 「イ(ひと)+堯(ギョウ・キョウ)」の形声。ギョウ・キョウは徼ギョウ・キョウ(得られそうもないことを得たいと願う)に通じ、人が滅多に実現できないようなことを願う意となる。
意味 (1)もとめる(僥める)。ねがう。「僥冀ギョウキ」(こい願う。僥も冀も、ねがう意。=徼冀キョウキ・ギョウキ) (2)「僥倖ギョウコウ」とは、倖コウ(思いがけない幸せ)を願うこと。=徼幸キョウコウ・ギョウコウ。また、実現した思いがけない幸せをいう。
「連勝できたのは僥倖としか言いようがない」藤井聡太17歳の豊富すぎるボキャブラリー
文春オンライン2019/07/19
 ギョウ・キョウ・あかつき  日部
解字 旧字は曉で「日(ひ)+堯(ギョウ)」の形声。ギョウは異体字のギョウにしたがう。は「白(しろ)+堯(ギョウ)」の形声で、天が白くなってきた夜明けをいう。曉は日(太陽)の光が白くなる夜明けの意味となる。また、夜明けの明るいさまから転じて、物事にあかるい⇒さとる意になる。新字体は暁に変化。
意味 (1)あかつき(暁)。夜明け。「暁天ギョウテン」(夜明けの空)「早暁ソウギョウ」「払暁フツギョウ」(あけがた)「暁星ギョウセイ」(夜明けの星) (2)さとる(暁る)。よく知っている。「通暁ツウギョウ」(すみずみまで知っている) (3)[国]あかつき(暁)。物事が実現したその時。「完成の暁あかつきには」
 トウ・ドウ・たわむ  木部
解字 「木(き)+堯(ギョウ⇒トウ・ドウ)」の形声。[説文解字]及び「同注」は、「木を曲げる也。引伸し凡そ曲る之(の)偁ショウ(呼び名)と爲す」とし、木を曲げる・たわめる意。
   橈骨トウコツ
意味 (1)たわむ(橈む)。たわめる。まげる。「橈橈ドウドウ」(まがりたわむさま)「橈骨トウコツ」(手首の関節から肘の関節まで伸びている、ゆるやかにたわんだ骨。二本の骨で構成され、一本を橈骨、他方を尺骨という)(2)しなやか。「柔橈ジュウドウ」(しなやか。たわむ) (3)船のかじ。かい。
 トウ・ドウ・たわむ  扌部
解字 「扌(て)+堯(=橈。たわむ)」の会意形声。ここで堯は橈(たわむ)の略体。扌(て)のついた撓は、手でたわめること。たわむ・たわめる意となる。
意味 (1)たわむ(撓む)。たわめる(撓める)。「撓屈トウクツ」(身体をたわめて屈する)「不撓不屈フトウフクツ」(困難にあっても、ひるまずくじけない) (2)しなう(撓う)。(3)みだれる。みだす。「撓乱ドウラン」(みだす)「撓滑ドウカツ」(かきみだす)「撓擾ドウジョウ」(みだしさわがす) (4)[国]たわわ(撓わ)。枝などがしなうさま。「枝も撓わに実る」
 ジョウ・ニョウ・まとう・めぐる  糸部
解字 「糸(いと)+堯(ギョウ⇒ジョウ・ニョウ)」の形声。[説文解字]は「纏(まと)う也。糸に从(したが)い堯の聲(声)。発音はジョウ(而沼切)」とする。糸がまつわること。
意味 (1)まとう(繞う)。まつわる。「繞繞ジョウジョウ」(まつわりめぐる。まつわりみだれる) (2)めぐる(繞る)。「囲繞イジョウ」(囲みめぐる)「繞襲ジョウシュウ」(まわりこんで襲う) (3)[国]にょう(繞)。漢字の部首のひとつ。漢字の左側から下を占める部分。「之繞しんにょう」(辶・辶。(シニョウの変化した音。左側から下部へめぐる形が「之」の字に似ていることから「之繞」(シニョウ)の名がつき、なまって「シンニョウ」、さらになまって「シンニュウ」ともいう。)「延繞えんにょう」(廴)「走繞ソウニョウ」(超・赴・起などの走)「鬼繞キニョウ」(魅・魃などの鬼)
 ジョウ・ニョウ・めぐる  辶部しんにょう
解字 「辶(ゆく)+堯(=繞。めぐる)」の会意形声。めぐってゆくこと。意味は繞と同じ。
意味 めぐる(遶る)。めぐらす。かこむ。「纏遶テンジョウ」(まといめぐる)「遶弄ジョウロウ」(とりまいて戯れる)「遶囲ジョウイ」(めぐる)
 ギョウ・ジョウ  虫部  
解字 「虫(むし)+堯(=遶。めぐる)」の形声。お腹のなかをめぐる寄生虫。[説文解字]は「腹中の短い蟲(むし)也。虫に从(したが)い堯の聲(声)。発音はジョウ(如招切)とするが、ギョウの音もある。
意味 人の腸に寄生する虫。長さ1センチほどの白く細長い虫。「蟯虫ギョウチュウ」「蟯虫検査ギョウチュウケンサ
<紫色は常用漢字>

中国簡体字はなぜ堯[尭]ギョウyáo と書くのか。
 その理由は堯[尭]の草書体にヒントを得ての字を考案したからとされる。
下図は「書道三体字典」(本橋亀石書)の尭字欄で、左の草書体が簡体字のとよく似ている。

左から、草書・行書・楷書の尭。

 中国簡体字は堯[尭]だけでなく、堯[尭]を含む音符字もすべてに統一している。

「日中対照 早わかり簡体字字典」(石沢書店)の堯[尭]

    バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。


コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音符「制セイ」 と 「製セイ」 「掣セイ」

2023年02月15日 | 漢字の音符
  セイ <枝葉の茂る木を切りそろえる>
 セイ・おさえる  刂部りっとう

枝葉の茂る木を刀(ハサミ)で切りそろえる。

解字 篆文は「刂(刀)+未(木の枝葉)」の会意。未は木のこずえの枝葉が上にのびてゆく形の象形で、ここでは枝葉の茂る木の形。制はそれを刀で切りそろえること。木の形を整える⇒したてる意となる。転じて、おさえる・ものをコントロールする意味にもなる。字形は漢代の役人などが用いた隷書第一字で上の枝が角張り、第二字で角張りが片方だけになり、現代字で片方の角張り⇒ノ、下部が冂に変化した制になった。
意味 (1)したてる。つくる。「制作セイサク」 (2)おさえる(制える)。「制限セイゲン」「規制キセイ」 (3)おさめる。したがわせる。「制御セイギョ」 (3)とりきめる。さだめる。きまり。「制定セイテイ」「制度セイド」「税制ゼイセイ

イメージ 
 枝葉の茂る木を「切りそろえる」(制・製)
 意味(2)の「おさえる」 (掣)
音の変化   セイ:制・製・掣
 
切りそろえる   
 セイ・つくる  衣部
解字 「衣(ころも)+制(切りそろえる)」の会意形声。布を切りそろえて衣に仕立てること。
意味 つくる(製る)。こしらえる。たつ。仕立てる。「製作セイサク」「製図セイズ」「製造セイゾウ」「木製モクセイ」「縫製ホウセイ」(縫って仕立てる)

おさえる
 セイ・おさえる・ひく  手部
解字 「手(て)+制(おさえる)」の会意形声。手で相手をおさえること。制の意味の一つである「おさえる」意を、手をつけて限定した字。
意味 おさえる(掣える)。手でおさえて自由にさせない。ひく(掣く)。ひきとどめる。「掣肘セイチュウ」(肘をおさえる。相手の肘をおさえて自由にさせない)「掣肘セイチュウを加える」(相手に干渉して自由な行動を妨げること)「掣曳セイエイ」(①ひっぱる。②ひっぱって人の行動の邪魔をする)
<紫色は常用漢字>

  バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。




コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音符「敫キョウ」 <とびちる・とびでる>「徼キョウ」「激ゲキ」「檄ゲキ」「邀ヨウ」

2023年02月13日 | 漢字の音符
  追加・訂正しました。
 キョウ・ギョウ  支部

解字 「白(ハク)+放(はなつ)」の会意。ハクは拍ハク(うつ)に通じ、打ち放つこと。とびちる・放たれる、イメージがある。
意味 うつ。白い。

イメージ
 「とびちる」
(激・竅)
 「放たれる」(檄・徼・儌・邀・繳)
音の変化  ゲキ:激・檄  キョウ:徼・儌・竅  シャク:繳  ヨウ:邀

とびちる
 ゲキ・はげしい  氵部
解字 「氵(水)+敫(とびちる)」 の会意形声。水流が岩などにぶつかって飛び散るさま。水流がはげしいこと。転じて、はげしい意となる。
意味 (1)はげしい(激しい)。「激流ゲキリュウ」「激烈ゲキレツ」 (2)はげしく心が動く。「感激カンゲキ」「激怒ゲキド」 (3)はげます。ふるいたたせる。「激励ゲキレイ
 キョウ・あな  穴部
解字 「穴(あな)+敫(とびちる)」 の会意形声。飛び散った物によって穴があくこと。
意味 (1)あな(竅)。こまかい穴。「孔竅コウキョウ」(細かい穴)「瑕竅カキョウ」(きずとあな)「竅隙キョウゲキ」(穴と隙間)「竅穴キョウケツ」(穴) (2)人体のあな。「空竅クウキョウ」(①あな。②耳・目・鼻・口などの穴)「七竅シチキョウ」(人の耳・目・鼻の各二つと口)「九竅キュウキョウ」(目・耳・鼻の各二つと口、大小便の穴二つ)「竅息キョウソク」(気息。息づかい)

放たれる
 ゲキ  木部
解字 「木(木簡)+敫(放たれる)」 の会意形声。木は文書を書いた木簡で、檄とは古代の官府から地方に急いで通知する(放たれる)重要文書、いわゆる、触文(ふれぶみ)をいう。上に宛先、その下に内容が記された単独の木簡で、そのため長さは普通の木簡より長い。兵を召集する文書などに用いられたため、のち、仲間を集めたり、同意を求めて訴える文書の意となった。
意味 ふれぶみ。めしぶみ。召集や通知のため役所から各地に出した木札の文書。また、仲間を集めたり、同意を求めて訴える文書。「檄文ゲキブン」(①ふれぶみの文。②同志に行動や同意を求め訴える文書)「檄召ゲキショウ」(ふれぶみで人を集める)「檄羽ゲキウ」(急いで軍隊や同志を集めるための文書。鳥のように速く行く意から羽をつける)「檄を飛ばす」(急いで檄文を送り人々に同意を求める)
 キョウ・ギョウ・めぐる・もとめる  彳部
解字 「彳(ゆく)+敫(=檄。通知文書の略体)」の会意形声。通知文書を持ってゆくこと。また、檄文ゲキブン(ふれぶみ)で同志をもとめること。あちこちゆくので、めぐる意、国ざかいの意もある。
意味 (1)めぐる(徼る)。「徼循キョウジュン」(巡察する。見まわる)「遊徼ユウキョウ」(見まわりし治安をつかさどる。漢代の警察署長) (2)国ざかい。「徼外キョウガイ」(とりでの外。国境の外) (3)もとめる(徼める)。得られそうもないことを願う。「徼幸キョウコウ・ギョウコウ=僥倖ギョウコウ」(まぐれあたりの幸いをもとむ)「徼冀ギョウキ」(求め願う)
 キョウ・ギョウ・もとめる  イ部
解字 「イ(ひと)+敫(=徼。もとめる)」の会意形声。徼のもとめる意を、イ(ひと)に置きかえた字。人がもとめること。
意味 (1)もとめる(儌める)。檄文ゲキブン(ふれぶみ)で同志をもとめること。転じて、得られそうもないことを願う。「儌倖ギョウコウ」(思いがけない幸せ。=僥倖)
 ヨウ・むかえる  辶部
解字 「辶(ゆく)+敫(=檄。通知文書)」 の会意形声。辶(ここでは旧字のため二点しんにょう)は、普通、ゆく意となるが、ここでは「移動してきたものを待ち受ける」意。邀は、中央からの重要な通知文書(檄)を持つ使節を待ち受ける意で、むかえる・まちうけること。
意味 (1)むかえる(邀える)。まちうける。「邀賓ヨウヒン」(客をむかえる) (2)まちぶせする。「邀撃ヨウゲキ」(迎え撃つ) (3)うける。「邀賞ヨウショウ」(賞をうける)
 シャク・キョウ  糸部
解字 「糸(ひも)+敫(放たれる)」の会意形声。紐が放たれる意で、「いぐるみ(射包み)」の矢についている紐をいう。射包み(弋射ヨクシャ)とは、飛んでいる鳥を捕らえるための仕掛けで、矢に糸(紐)をつけて発射し,鳥に当たると糸がからんで飛べなくなるので捕らえる。繳は猟に使うので、絹糸をより合わせて強くしてある。
 弋射の図
意味 (1)いぐるみの紐。「繳弋シャクヨク」(弋は、いぐるみの矢、繳は、それにつける紐) (2)まとわりつく。まきつく。まとう。 (3)(からめとる意から)納付させる。「繳納キョウノウ」(税などを納付する)
<紫色は常用漢字>

    バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。



コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音符 「夢ム」<ゆめ> と 「儚ボウ」「甍ボウ」「薨コウ」

2023年02月11日 | 漢字の音符
  夢の解字を改めました。
 ム・ボウ・ゆめ  夕部

解字 甲骨文は「寝台+眉毛や手を動かす人」の会意。ベットで夢を見てうなされ眉や手を動かす人の形で、夢を見る意(このほかにも、漢字古今資料庫[夢]にはベットの上でもだえる形の甲骨文が31字収録されている)。楚(春秋時代)と篆文は寝台を省き「眉毛の変形+目+人」に夕(夜)を加えた形。旧字は眉毛の変形が、トを背中合わせにした形だったが、現代字は草冠の夢になった。なお、夢の本字は、夢に宀(建物)と爿(寝台)がついた「㝱」であるが、略体である夢を用いている。ムの発音で夢の意。ボウの発音で夢をみている夕(夜)が暗い意となる。
意味 (1)ゆめ(夢)。眠っている間にみる幻覚。「夢中ムチュウ」(①夢の中。②一つの事に心をうばわれる)「夢卜ムボク」(夢と占い)(2)幻想。空想。まぼろし。「夢幻ムゲン」(まぼろしの世界)「夢想ムソウ」(①空想。②夢の中でのお告げ)(3)ゆめみる。「夢寐ムビ」(眠って夢をみる)「夢枕ゆめまくら」(4)[国]将来に実現させたいこと。「私の夢ゆめは」 (5)「夢夢ボウボウ」とは、①暗く明らかでないさま。②(夢をみて)乱れたさま。

イメージ 
 「ゆめ」
(夢・儚・薨) 
 「形声字」(甍)
音の変化  ム:夢  ボウ:儚・甍  コウ:薨

ゆめ
 ボウ・モウ・はかない  イ部
解字 「イ(ひと)+夢(ゆめ)」の会意形声。夢をみている人。
意味 (1)ぼんやりするさま。はっきりしない。くらい。「儚儚ボウボウ」(ぼんやりする。頭がにぶいさま) (2)[国]はかない(儚い)。はかなむ。夢のようにうつろいやすい。「儚(はかな)い恋」
 コウ・みまかる  艸部
解字 「死(しぬ)+夢の略体(ゆめ)」の会意。薨は、夢の呪霊が人に死をもたらすこと。一般に貴族がよく夢をみるとされ、貴族が死ぬことをいう[字統]。
意味 みまかる(薨る)。薨コウずる。「死ぬ」の尊敬語。高貴の人の死をいう。「薨去コウキョ」(高貴の人の死)「薨隕コウイン」(死ぬ。隕は落ちる⇒死ぬ意) 
 ※天子・天皇の死は「崩ホウ」、貴族・諸侯の死は「薨コウ」という。

形声字
 ボウ・モウ・いらか  瓦部
解字 「瓦(かわら)+夢の略体(ボウ・モウ)」の形声。ボウ・モウは、蒙ボウ・モウ(おおう)に通じ、瓦がおおう屋根の意。瓦葺きの屋根や、屋根の上棟をいう。
意味 いらか(甍)。①瓦葺きの屋根。屋根瓦。「甍宇ボウウ」(①瓦葺きの屋根。②瓦屋根の背(上棟)。棟瓦むながわら。「甍いらかの波」(瓦葺きの屋根がかさなるさま)
<紫色は常用漢字>

  バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。


コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音符「自ジ」<はな> と「鼻ビ」「息ソク」「熄ソク」「臭シュウ」「嗅キュウ」

2023年02月09日 | 漢字の音符
  自ジからなる音符字の「鼻ビ」「息ソク」「臭シュウ」をまとめました。
 ジ・シ・みずから  自部

解字 甲骨文は人の鼻をかたどった象形。金文以降、形が徐々に変化し現代字は自になった。「私が」というとき鼻を指すので、自分の意に転用された。また、「自分から・ひとりでに」「~から」の意も生じた。
意味 (1)みずから(自ら)。自分で。「自立ジリツ」「自由ジユウ」 (2)おのずから。ひとりでに。「自生ジセイ」「自然シゼン」 (3)もともとから。「自明ジメイ」(明らかで疑いない) (4)~より(自り)。~から。時間や場所の起点。「自今ジコン」(今(いま)自(よ)り。以後)
参考 自は、部首「自みずから」になる。この部は非常に少なく主なものは臭シュウしかない。

イメージ 
 「はな」
(自・鼻・嚊・嬶・息・熄)
 「はなでかぐ」(臭・嗅)
音の変化  ジ:自  キュウ:嗅  シュウ:臭  ソク:息・熄  ヒ:嚊  ビ:鼻  かかあ:嬶 

はな 
  ビ・ヒ・はな  鼻部  
解字 旧字は「自(はな)+畀(ヒ)」の形声。自は、もともと鼻の象形で「はな」の意。畀は、あたえる意だが、ここでは鼻の発音を表す。しかし、もともと鼻の意であった自の発音はジ・シである。これがなぜヒの発音になったのか。はっきりわからないが、ヒの音は鼻息の音を表しているとされる。この字の音符は畀ヒだが重出した。
 新字体は、畀の丌⇒廾に変化した鼻。日本語の「はな」は、端(はな。先端)から来ている。漢字でも同じく先端の意から「はじめ」の意がある。
意味 (1)はな(鼻)。「鼻息はないき」「鼻孔ビコウ」(鼻のあな) (2)はじめ。「鼻祖ビソ」(始祖。元祖)
 ヒ  口部
解字 「口(くち)+鼻の旧字(はな)」の会意形声。口から鼻の息がでること。
意味 (1)はないき。(2)[国]かかあ。(=嬶)。
<国字> かかあ  女部
解字 「女(おんな)+鼻の旧字(=嚊の略体)」の会意。この字で鼻は、嚊ヒ・はないきの略体。嬶かかあは、鼻息のあらい女の意で、妻をたわむれ親しんでよぶ呼称。
意味 かかあ(嬶)。かか。自分の妻をたわむれ親しんで呼ぶ呼称。「嬶天下かかあデンカ」(妻が夫より権力をもち、いばっていること。⇔亭主関白)
 ソク・いき  心部
解字 「心(心臓)+自(はな)」の会意。心臓の動きにつれて、鼻からすうすうと息をすることから、呼吸の意となる。心臓が速く動けば息もはやい。普通は静かに息をすることから、やすむ意ともなる。
意味 (1)いき(息)。呼吸。「息をする」 (2)息をして生存する。「生息セイソク」(生きて住む) (3)(静かに息をすることから)やすむ。「休息キュウソク」 (4)(やすんでじっとすることから)やむ。やめる。「息災ソクサイ」(災いがやむ)「終息シュウソク」 (5)(生息することから子孫がふえる)むすこ。「子息シソク」「息子むすこ」「利息リソク」(お金から息子がうまれるように利がでる)
 ソク・やむ  火部
解字 「火(ひ)+息(息の意味④、やむ)」の会意形声。火がやむ、即ち、きえること。
意味 (1)火がきえる。きえる。「熄滅ソクメツ」(消えてなくなる) (2)やむ(熄む)。「終熄シュウソク」(事が終っておさまる。=終息)

はなでかぐ
[臭]  シュウ・くさい・におう  自部  
解字 旧字は「犬(いぬ)+自(はなでかぐ)」の会意形声。犬の鼻は嗅覚がするどいことから、におう、くさい意となる。新字体は、犬が大に変化した。
意味 (1)におう(臭う)。におい。「臭気シュウキ」※よい香りの時は「匂う」を使う。 (2)くさい(臭い)。いやなにおい。「悪臭アクシュウ」「体臭タイシュウ
 キュウ・かぐ  口部
解字 「口+臭の旧字(自+犬。におい)」 の会意形声。鼻のあな(口)から臭いを「かぐ」こと。この字は追加指定の常用漢字のため犬がそのまま残っている。犬を大と書いても可。
意味 かぐ(嗅ぐ)。においをかぐ。「嗅覚キュウカク」(かぐ機能)「嗅診キュウシン」(においを嗅いで診察する)「嗅石キュウセキ」(石を嗅ぐ。石を嗅いで、その中の金や玉を知ることができる神話の獣)
<紫色は常用漢字>

   バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。




コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音符「玄ゲン」<黒い>と「弦ゲン」「舷ゲン」「眩ゲン」「牽ケン」

2023年02月07日 | 漢字の音符
  鉉ゲンを追加しました。
 ゲン・くろ  玄部      

解字 金文は幺ヨウと同じで糸たばのかたち。金文では「玄衣ゲンイ」(赤黒い色の衣)という用法があり、すでに「黒い(赤黒い)」意味があるので、ゲンの発音を借りて黒い色を表したものと思われる。その後、篆文は糸たばの上に横線が入り、この形が元になり現代字の玄になった。意味は、くろい色、転じて、奥深い意を表す。音符になるとき、黒い意は消え、糸たばの形から「太いより糸」のイメージがある。
意味 (1)くろ(玄)。くろい色。「玄米ゲンマイ」「玄鳥ゲンチョウ」(ツバメの別称)「玄鶴ゲンカク」(ナベヅル。黒い羽毛におおわれた鶴)(2)ふかい。奥深い道理。「玄妙ゲンミョウ」「幽玄ユウゲン」(3)きた。玄は黒なので五行説で北にあたる。「玄天ゲンテン」(北方の天)(4)はるか。とおい。「玄孫やしゃご・ゲンソン」(孫の孫。ひまごの子) (5)すぐれた。「玄人くろうと」(専門家。対語は素人)

イメージ 
 仮借カシャ「くろい」(玄)
 糸たばの形から「太いより糸」(弦・舷・絃・鉉・牽)
 「形声字」(眩・衒・呟)
音の変化  ゲン:玄・弦・舷・絃・鉉・眩・衒・呟  ケン:牽

太いより糸
 ゲン・つる  弓部
解字 「弓(ゆみ)+玄(太いより糸)」の会意形声。弓に張る縒りをかけたつよい糸。
意味 (1)つる(弦)。弓に張る糸。「鳴弦メイゲン」(弓の弦を鳴らすこと) (2)楽器に張る糸。「弦楽ゲンガク」「管弦楽カンゲンガク」 (3)弓を張ったような半円形。弓張り月。「弦月ゲンゲツ」(月の明るい部分の一辺は曲がり、一辺は真っすぐで弓に弦を張ったように見える頃を云う)「上弦ジョウゲン」(朔サク(新月)より望(満月)に至る間の半月を上(かみ)の弓張(上弦)と云う。弓は右側)「下弦カゲン」(望(満月)より晦(つごもり)に至る間の半月を下(しも)の弓張(下弦)と云う。弓は左側)※なお、上弦の月は日没のころ南中し右半分がみえる。真夜中に弦を上にして沈む。下弦の月は明け方に南中し左半分がみえる。昼ごろに西の空に沈むとき弦が下になる)

三日月⇒上弦⇒満月⇒下弦(イラストブックネットより) 
 ゲン・ふなばた  舟部
解字 「舟(ふね)+玄(=弦。弓張り月)」の会意形声。弓張り月のように反っている舟べり。
意味 ふなばた。ふなべり。「舷窓ゲンソウ」「舷灯ゲントウ」「右舷ウゲン」「左舷サゲン
 ゲン・いと・つる  糸部
解字 「糸(いと)+玄(太いより糸)」の会意形声。縒りをかけた糸や、つる。
意味 (1)いと(絃)。つる。楽器に張る糸(=弦) (2)絃を張った楽器の総称。「三絃サンゲン」(=三弦)(①3本の絃を有する東アジアの絃楽器。三線(沖縄)。三味線など。②三味線の別称。③雅楽に用いる楽器である和琴・楽琵琶・楽箏の総称) (3)箏などをひく。「絃歌ゲンカ
 ゲン・ケン・つる  金部
① 
①つる(鉉)付き鍋(ヤフオク写真) ②鼎鉉とされる器具(鼎の下右の金具)
②https://zhidao.baidu.com/question/624330986828744924.html
解字 「金(金属)+玄(=弦。弦を張った弓)」の会意形声。鍋や薬缶ヤカンにつける、弦を張った形に曲がる弓形の金属製の「つる」をいう。中国では鼎かなえの両耳に通す鉤形の器具をいう(移動に用いる)。
意味 (1)つる(鉉)。鍋や、やかんにつける弓形の取っ手。「鍋鉉なべづる」(2)[中国]鼎の両耳にいれる鉤形の器具。「鼎鉉テイゲン」(鼎(かなえ)を動かすとき両耳に懸ける金具。転じて、王室の宝器である鼎を動かす大臣・宰相のこと)(3)三公(中国で最高の位の三つの官職)の類の重臣。「槐鉉カイゲン」(槐座(三公の位)の鉉(大臣。宰相))「鉉席ゲンセキ」(三公の位)「鉉台ゲンダイ」(三公の位) (3)姓のひとつ。名前。中国では三公に因んで名前にも用いられる。
 ケン・ひく  牛部            

解字 篆文は、「玄(つな)+冖(鼻輪の半分が見える形)+牛」の形。玄ゲンは、ここでは牛をひく綱。次の冖は牛の鼻輪で鼻の外に出ている半分を表す。一番下が牛。牽は、牛の鼻輪につけた綱を引っぱるかたちで、意味は牛を「牽く」。
牛を牽く(JA鶴岡 [山形県庄内のお米産地]より)
意味 (1)ひく(牽く)。ひっぱる。ひきつける。「牽引ケンイン」「牽牛ケンギュウ」(牛飼い)「牽牛花ケンギュウカ」(あさがお)「牽牛子ケンゴシ」(あさがおの種。生薬になる)「牽強付会ケンキョウフカイ」(牽強はむりにひく、付会はくっつける、あわせて無理にこじつける意)「牽制ケンセイ」(いて御する。相手の注意をひきつけ、自由に行動できないようにする) (2)つらなる。つづく。「牽連ケンレン」(ひかれつながる。ひきつづく)
参考 牽の書き方

形声字
 ゲン・くらむ・まぶしい・まばゆい  目部
解字 「目(め)+玄(ゲン)」の形声。ゲンは幻ゲン(まどわす)に通じ、目がまどわされること。
意味 (1)くらむ(眩む)。めまい。「眩暈ゲンウン」(めまい) (2)まどわす。「眩惑ゲンワク」 (3)まぶしい(眩しい)。まばゆい(眩い)。「眩耀ゲンヨウ」(まばゆいほどかがやく)
 ゲン・てらう  行部
解字 「行(おこなう)+玄(ゲン)」の形声。ゲンは幻ゲン(まどわす)に通じ、世間をまどわす行ないをいう。
意味 てらう(衒う)。たぶらかす。「衒学ゲンガク」(学問や知識を必要以上にひけらかす)
 ゲン・つぶやく  口部
解字 「口(くち)+玄(ゲン)」の形声。ゲンは幻ゲン(まどわす)に通じ、まどわすような言葉で言うこと。
意味 (1)あいまいな言葉でさそう。たぶらかす。(2)[国]つぶやく(呟く)。小さな声でひとりごとを言う。
<紫色は常用漢字>

   バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。




コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする