漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「我ガ」<のこぎり歯の戈(ほこ)>と「餓ガ」「俄ガ」「峨ガ」「娥ガ」「蛾ガ」「鵝ガ」

2023年09月30日 | 漢字の音符
  増補しました。
 ガ・われ・わ   戈部ほこづくり        

解字 のこぎり歯のある戈(ほこ)の象形。のこぎりとして使用したと思われる。しかし、この字は、のこぎりの意では使われず、発音が同じだった「われ」の意味の一人称代名詞に仮借カシャ(当て字)された。我を音符に含む字は、のこぎりの意味を残し刃が「ぎざぎざした」イメージを持つ。
意味 われ(我)。わが(我が)。自分。「我流ガリュウ」「自我ジガ」「忘我ボウガ」「我田引水ガデンインスイ

イメージ 
 「のこぎり」
(我・俄)
 刃が「ぎざぎざした」(餓・峨・蛾)
 「形声字」(娥・鵝・哦)
音の変化  ガ:我・俄・餓・峨・娥・蛾・鵝・哦

のこぎり
 ガ・にわか  イ部

解字 甲骨文字は大(ひと)の片足をノコギリ状のものを手にもち切り取るさま。刑罰の一つである足きりの刑を表している。この字は後に「月(からだ)+刂(刀)」からなる刖ゲツ(あしきり。あしきりの刑)になった。篆文は「イ(ひと)+我(のこぎり)」に変化した俄になった。意味は足きりの刑を受けた人が歩行の際、身体をにわかに傾けることから転じて、にわか・たちまちの意となったとされる。(「字源(中国)」を参考にした)
意味 (1)にわか(俄か)。たちまち。ほどなく。「俄雨にわかあめ」「俄然ガゼン」(にわかに。突然)「俄頃ガケイ」(少しの間。たちまち) (2)しばらく。「俄刻ガコク」(しばらくの間) (3)「俄羅斯オロス」(ロシアの音訳字。オロスは中国語発音) (4)[国]「俄狂言にわかキョウゲン」の略。素人が行なった即興の滑稽寸劇。

ぎざぎざした
 ガ・うえる  食部
 
断食するブッダ像(ラホール博物館所蔵)
解字 「食(たべる)+我(ぎざぎざした)」の会意形声。食物が不足して、胸板がぎざぎざと骨ばること。
意味 うえる(餓える)。うえ(餓え)。「飢餓キガ」「餓死ガシ
 ガ・けわしい  山部
解字 「山(やま)+我(ぎざぎざとした)」の会意形声。ぎざぎざしてけわしい山。ぎざぎざしたなかで最も高い山をいう。
意味 (1)けわしい山。けわしく高い山。「嵯峨サガ」(①高低があって不ぞろいのさま ②山の高くけわしいさま)「峨眉山ガビサン」(中国四川省にある高く美しい山) (2)地名。「嵯峨野さがの」(京都市西郊の山麓一帯の地名。風光明媚で観光地として知られる。山容はなだらかでけわしくない。)
 ガ・ギ  虫部

カイコ蛾の触角(「Tenki.jp トピックス」より)
解字 「虫(こんちゅう)+我(ぎざぎざした)」の会意形声。蚕(かいこ)が蛹(さなぎ)から羽化して蝶に似た虫になったものを蛾と言う。この虫の触角がぎざぎざした櫛のような眉(まゆ)に見えることから眉の意味ともなる。発音字典の[玉篇]は「蚕蛾サンガ也(なり)」とする。また元代の[韻會]は「蛾は黃蝶に似て而(しかして)小さく,其の眉(まゆ)の句曲コウキョク(まがる)は畫(えがき)たるが如し」とあり、この虫の眉のような触角を強調している。のち、蚕蛾かいこガのみでなく蝶以外の昆虫の総称となった。
意味 (1)が(蛾)。①カイコガ科の昆虫の名。「蚕蛾かいこガ」②蝶を除くチョウ目の総称。「蛾の火に赴(おもむ)くが如し」「誘蛾灯ユウガトウ」 (2)蛾の触角のような美しい眉毛まゆげ。「蛾眉ガビ」(くっきりと目立つ眉。美人のこと)「青蛾セイガ」(まゆずみで描いたみどりの眉。転じて、美人) (3)ギの発音。義に通じ「虫+義」で、あり(蟻)の意。羽のあるアリをいう。「蛾術ギジュツ」(こつこつ学んで大成するたとえ)

形声字
 ガ・みめよい  女部
解字 「女(おんな)+我(ガ)」の形声。ガという名の女。甲骨文字では自然神のひとつの名、および女性の名として用いられた[甲骨文字辞典]。のち、月に住むという神話の女の名となり、美しい意ともなる。
意味 (1)美しい。みめよい(娥い)。「娥娥ガガ」(女性の美しいさま)「娥眉ガビ」(美しい眉まゆ。=蛾眉) (2)神話の女神。「常娥ジョウガ」(月に住むという女神の名) (3)月の別名(常娥が月に住むことから)。「娥影ガエイ」(つきかげ)
鵝[鵞] ガ・がちょう  鳥部
解字 「鳥+我(ガ)」の形声。ガーガーと鳴く鳥。がちょう。鵞とも書く。
意味 がちょう。カモ科の水鳥。「鵝鳥ガチョウ」「鵝毛ガモウ
 ガ・うたう  口部
解字 「口(くち)+我(ガ)」の形声。口からガの音を出すこと。うたう・うなる意で使う。
意味 うたう(哦う)。うなる。「吟哦ギンガ」(詩歌をうたう)「哦誦ガショウ」(声高く節をつけて読む)
 ガ・つのよもぎ・きつねあざみ  艸部
解字 「艸(くさ)+我(ガ)」の形声。ガという名の草。「つのよもぎ」をいう。よもぎの一種。湿地に生え若葉を食用とする。 また、「きつねあざみ」をいう。アザミ(キク科の多年草)の一種。
意味 (1)「莪蒿ガコウ・つのよもぎ」(湿地に生え若葉を食用とする) (2)「菁莪セイガ」(菁はしげるさま、莪はあざみ)多くの人材を育てること。詩経・小雅「菁菁者莪 序」)(3)「莪朮ガジュツ」(ショウガ科ウコン属の多年草。別名を紫ウコンともいう。根茎が生薬となる)
<紫色は常用漢字>

    バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。


コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音符「南ナン」<苗族がもちいる銅鼓> と「楠ナン」「喃ナン」「遖あっぱれ」 

2023年09月28日 | 漢字の音符
 増補しました。
 ナン・ナ・みなみ  十部

 ②
①苗族の銅鼓、②銅鼓の内側は空洞で上の横棒から紐で吊り下げる。(いずれもネットの検索画面から。現在なし) 
解字 青銅で作られた鼓の象形。南ナンとよばれる釣鐘形式の楽器で、古くから苗ミャオ族(中国南部からタイ北部などの山地に住む民族の中国における名称)が用いた。底がなく左右の耳輪に紐を通して掛けると甲骨文字の南の字形になる(実際の字形は銅鼓を横から描き、その上に耳輪の紐をつけている。写真②では上の紐の片方が見える。丁寧に吊るすと両方に紐を張ったと思われる)。字形は篆文から大きく変化し現代字は南になった。苗族は甲骨文字を使用した殷インの南方に住むことから、「みなみ」の意に仮借カシャ(当て字)された[字統]。
意味 (1)みなみ(南)。「南国ナンゴク」「南極ナンキョク」「南蛮ナンバン」(南の野蛮な人)「南瓜かぼちゃ」 (2)梵語の音訳字として。「南無ナム」(仏を拝するとき唱える語)

イメージ 
 「みなみ」
(南・楠・遖) 
 「苗族の銅鼓」(喃)
音の変化  ナン:南・楠・喃  あっぱれ:遖

みなみ
 ナン・くすのき  木部
解字 「木+南(あたたかい南)」の会意形声。南方の暖かいところに生える木。
意味 (1)くす(楠)。くすのき(楠)。(=樟ショウ)。クスノキ科の常緑高木。暖地に育ち、よい香りがする。幹や根・葉から樟脳がとれる。材は堅く建築材・船材として用いられる。 (2)姓。「楠くすのき」「楠木くすのき」「楠本くすもと
[国字] あっぱれ  辶部
解字 「辶(ゆく)+南(みなみ)」の会意。天晴(あっぱれ)に当てた国字。南は太陽の光を受けて明るく輝くことから、南に辶(ゆく)で、「天晴れ」に当てた。
意味 あっぱれ(遖)。①立派で見事なさま。②ほめるときに言うことば。

苗族の銅鼓
 ナン  口部
解字 「口(くち)+南(苗族の銅鼓)」の会意形声。苗族の銅鼓を打ち鳴らす音のように、口からぺらぺらとしゃべること。
意味 (1)しゃべる。ぺらぺらしゃべる。くどくどしゃべる。「喃喃ナンナン」(つまらないことをしゃべり続けること)「喋喋喃喃チョウチョウナンナン」(男女が楽しげに語り合うさま)「喃語ナンゴ」(男女がむつまじくささやき語る) (2)もうし。もし。人に呼びかける声。
<紫色は常用漢字>





コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音符「蒙モウ」<おおう・おおわれる>と「朦モウ」「濛モウ」「曚モウ」「矇モウ」「艨モウ」「檬モウ」

2023年09月26日 | 漢字の音符
 モウ・ボウ・おおう・くらい・こうむる  艸部

解字 甲骨文字は兜(かぶと)をかぶった人の姿で意味は地名。敵対勢力であり「蒙方」ともよばれる[甲骨文字辞典]。金文は上が山二つになり、下部は複雑化した。篆文は上が艸になり、下部はかぶとが冂の中に一、人⇒豕に置き換わり、現代字は蒙となった。初形から大幅に変化しており、ごろ合わせで覚えるしかない。意味は兜をかぶる形から派生した「おおう」⇒「くらい」⇒「こうむる」意などとなる。
覚え方 くさは(艹ワ)いちぶた(一豕)で、モウ。 ※豕は豚の原字。
意味 (1)おおう(蒙う)。(2)くらい(蒙い)。無知。「啓蒙ケイモウ」(無知を啓発する。教え導く)「蒙昧モウマイ」(無知で道理にくらいこと。蒙も昧も、くらい意)「無知蒙昧ムチモウマイ」(3)(無知なことから)こども。「童蒙ドウモウ」(幼少で道理にくらい者。子供)(4)こうむる(蒙る)。「恩を蒙る」(5)「蒙古モウコ」とは、9世紀ごろからモンゴル高原に進出した遊牧民族およびその居住地域の呼称。「蒙古斑モウコハン」(幼児のお尻にある青色の斑紋。モンゴル人や日本人などのモンゴル人種群(モンゴロイド)に特徴的なのでいう)

イメージ 
 「おおう・おおわれる」
(蒙・朦・濛・曚・矇・艨)
 「形声字」(檬)
音の変化  モウ:蒙・朦・濛・曚・矇・艨・檬

おおう・おおわれる
 モウ・おぼろ  月部つき
解字 「月(つき)+蒙(おおわれる)」の会意形声。月が雲などに覆われて、ぼんやりかすんでいるさまをいう。
意味 おぼろ(朦)。月の光のぼんやりしたさま。「朦朦モウモウ」(霧・もやが立ち込めて視界が悪いこと)「朦朧モウロウ」(朦も朧も、おぼろの意。①おぼろなさま。かすんださま。②意識が確かでないさま)
 モウ  氵部
解字 「氵(みず)+蒙(おおわれる)」の会意形声。細かい水分に空が覆われること。
意味 (1)こさめ。きりさめ。「濛雨モウウ」(霧雨、小ぬか雨)(2)くらい。うすぐらい。
 ボウ・モウ・くらい  日部
解字 「日(太陽)+蒙(おおわれる)」の会意形声。太陽がおおわれてくらいこと。
意味 くらい(曚い)。ほのぐらい。「曚昧モウマイ」(はっきりしないさま。道理に暗い)「曚曨モウロウ」(薄暗いさま。心がぼんやりして確かでないさま。=朦朧モウロウ
 モウ・ボウ・めしい・くらい  目部
解字 「目(め)+蒙(おおわれる)」の会意形声。目がおおわれて見えないこと。
意味 (1)めしい(矇)。目癈(めしい)。視力を失っている。盲人。「矇瞽モウコ」(盲人の音楽官。中国古代では盲人が音楽官となることが多かった) (2)くらい(矇い)。「矇朧モウロウ」(目がぼんやりして物の区別がはっきりしない)「矇昧モウマイ」(道理にくらい)
 ボウ・モウ・いくさぶね  舟部
解字 「舟(ふね)+蒙(おおう)」の会意形声。牛皮で船体をおおって矢や石を防ぎ、細長いへさきで敵船につっこむ船。いくさぶね。
意味 いくさぶね。「艨艟モウショウ」(艨も艟も、いくさぶねの意)「艨衝モウショウ」(いくさぶね。敵船に衝突してゆく、いくさぶね)

形声字
 モウ・ボウ  木部
解字 「木(き)+蒙(モウ)」の形声。モウ(現代中国語ではモン)という名の果樹の実。ミカン科の果実とその木の名であるレモン(lemon)を表す字として用いられる。

レモン(「わかさの秘密」の写真より)
意味 (1)「檸檬ネイモウ・レモン」(レモン)に用いられる字。檸檬レモンは、東南アジア原産のミカン科の常緑低木。果実は黄色で香りが高く、酸味があり果汁として広く用いられる。「檸檬油れもんゆ」(レモンの果皮から採取した油。香りとわずかな苦味があり、清涼飲料水や菓子に加える)(2)小説の名。「檸檬レモン」(梶井基次郎の短編小説。1931年(昭和6年)武蔵野書院刊)

    バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。




コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音符「豈ガイ」<かちどきの太鼓>と「凱ガイ」「愷ガイ」「鎧ガイ」「磑ガイ」

2023年09月24日 | 漢字の音符
  増補改訂しました。
 ガイ  豆部           

解字 上方に飾りがついた軍の太鼓の象形。羽飾りをつけた太鼓で、軍が戦いに勝利して帰るときの軍隊の音楽を表す[字統]。[説文解字]は「還師(軍隊が帰る)振旅シンリョ(軍をととのえる)の樂(楽)也(なり)」とする。また、仮借カシャ(当て字)して、助字の「あに~や」に当てる。字形は篆文の上部が左に90度回転して山となって分離し、現代字は「山+豆」に変化した。
意味 (1)あに~や。どうして~か。「豈図(あにはか)らんや」(どうしてそんなことを予測しようか。思いがけないことが起こった気持ちを表す) (2)かちどき。凱旋のときに奏する音楽。(=凱) (3)たのしむ。(=愷)。「豈弟ガイテイ」(楽しみやわらぐ)

イメージ 
 「勝利の音楽」
(豈・凱・愷)
 「形声字」(鎧・磑・皚)
音の変化  ガイ:豈・凱・愷・鎧・磑・皚

勝利の音楽
 ガイ・かちどき  几部
解字 「几(机)+豈(勝利の音楽)」の会意形声。几は祭に用いられる机。凱は、祝宴のテーブル(几=机)を前に勝利の音楽を奏すること。また、その場のたのしむ雰囲気をいう。豈にも、かちどきの意味はあるが、几を付けて強調した字。
意味 (1)かちどき(凱)。戦いに勝ってあげるときの声。「凱旋ガイセン」(戦いに勝って帰る)「凱旋門ガイセンモン」(軍の凱旋を歓迎し設けた門)「凱歌ガイカ」(勝ちいくさを祝ってうたう歌) (2)やわやぐ。たのしむ。(=愷)。「凱風ガイフウ」(初夏に吹くそよ風。南風)
 ガイ・たのしむ・やわらぐ  忄部
解字 「忄(心)+豈(勝利の音楽)」の会意形声。勝利の音楽を聴いて楽しむこと。
意味 (1)たのしむ(愷しむ)。やわらぐ(愷らぐ)。「愷風ガイフウ」(やわらいだ風。南風=凱風) (2)かちいくさの音楽。(=凱)「愷楽ガイガク

形声字
 ガイ・よろい  金部
解字 「金(金属)+豈(ガイ)」の会意形声。ガイは蓋ガイ(おおう)に通じ、からだをおおう金属製のよろいをいう。
意味 よろい(鎧)。からだをおおい守る金属製の武具。よろう(鎧う)。よろいを着る。「鎧冑ガイチュウ」(よろいとかぶと)「鎧袖ガイシュウ」(よろいの袖)「鎧袖一触ガイシュウイッショク」(戦いで鎧の袖にわずかに触れただけで相手を打ち負かす)「鎧板よろいいた」(窓などに幅の狭い板を何枚も一定の傾斜を保って横に取りつけたもの。しころいた)「鎧戸よろいど」(鎧板をとりつけた戸)
 ガイ  石部
解字 「石(いし)+豈(ガイ)」の会意形声。ガイは石のすれる音の形容とされ、ゴロゴロと音をだす石臼をいう。[唐韻・集韻]などの韻書は「磨(ひきうす)也(なり)」とする。

石磨(磑)(「南陳宗親網」の石磨より)
http://www.nanchens.com/jjyd/jjyd15/jjyd15001.htm
意味 (1)石うす。ひきうす。「碾磑テンガイ」(碾も磑も、石うすの意。水力で動かす脱穀・製粉用の石うす)「磑磨ガイマ」(磑も磨もひきうすの意)「磑牛ガイギュウ」(石うすをひく牛)「磑茶ガイチャ」(石うすで茶をひく) (2)つみかさなるさま。「磑磑ガイガイ」(かたいさま。高くつみかさなるさま)
 ガイ・しろい  白部
解字 「白(しろ)+豈(ガイ)」の形声。ガイという発音で白い意味となる字。[説文解字]は「霜雪の白き也(なり)」とする。
意味 (1)しろい(皚い)。白く清らか。 (2)「皚皚ガイガイ」とは、霜や雪の白いさま。
<紫色は常用漢字>

   バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。
 


コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音符「尉イ」<火のしで押さえる>「熨イ」「慰イ」「蔚ウツ」 

2023年09月22日 | 漢字の音符
  増補しました。
 イ・じょう  寸部              


 上は尉、下は尸
解字 篆文は「尸(人の腰かけるかたち)+二(二枚の布)+火+又(て)」の会意。尸は人が椅子などに腰かけている形(音符「尸シ」を参照)だが、腰かけるだけでなく人の横たわる形を表す場合もあり、これに二がついた「尸+二」は、人の下に二枚の布を置き、いわゆる寝押しで布を伸ばすかたちと思われる。「火+又(て)」は、火(おき火や炭火)をいれた容器を手にもつ形。[説文解字]は「上より下を按(おさ)える也(なり)。又火を持ち,以て繒(きぬ)を申(伸)ばす也(なり)」とする。隷書(漢代)で篆文の「二+火」⇒示に、又⇒寸に変化した尉となり現代に続く。
 尉は、火のし(昔のアイロン)を手にもちで布に当ててシワをのばす意。熨(ひのし)の原字。ひのしで布にアイロンを当てるのも、下の物を押さえつける行為であるから、武力で民を抑えつけてシワをのばす(正しくする)意。字形が変化しているので、ごろ合わせで尉と慰を一緒に覚えるとよい(慰のごろ合わせ参照)。
意味 (1)おさえる。上から押さえて正しくする。 (2)火のし。 (3)軍隊の階級のひとつ。「尉官イカン」(軍の階級で大尉・中尉・少尉の総称)「大尉タイイ」 (4)じょう(尉)。日本で軍事・警察を職とする古代の官名。 (5)じょう(尉)。能楽で翁おきなのこと。また、その能面。「尉面じょうメン」(老翁の相を表す能面の総称)

イメージ 
 「火のし」
(尉・熨)
  火のしを当てて布を「のばす」(慰)
 「形声字」(蔚)
音の変化  イ:尉・熨・慰  ウツ:蔚

火のし
 イ・ウツ・ひのし・のす・のし  火部
解字 「火+尉(火のし)」の会意形声。尉はもともと火のしの意だったが、軍や警察の官名となったので、新たに火をつけて火のしの意を表した。その証拠に、この字には火が二つ含まれている。(示は篆文で「二+火」)

火のし(「エコを意識しながら丁寧に暮らす」より)
意味 (1)ひのし(熨)。火熨とも書く。中に炭火を入れてその熱で布のシワをのばす柄杓型の道具。 (2)のす(熨す)。おさえてのばす。「湯熨(ゆの)し」(布を湯気に当てて皺をのばす)「澡熨ソウイ」(澡(あら)って熨(の)すこと。転じて、旧弊を去ること) (3)のし(熨)。「熨斗のし」とも書く。(斗は、ひしゃくで、柄杓形の熨(ひのし)でのばす意。写真を参照)。熨斗鮑(のしあわび)の略。アワビの肉を薄く細長くのばして干したもの。長く続くようにと祝意を表す進物に添える。「熨斗袋のしぶくろ」(熨斗および水引をつけ、また印刷してある紙袋。金銭を贈るとき、入れて用いる)

のばす
 イ・なぐさめる・なぐさむ  心部
解字 「心+尉(のばす)」の会意形声。心をのびのびとさせること。
意味 なぐさめる(慰める)。なぐさむ(慰む)。いたわる。「慰安イアン」「慰問イモン」「自慰ジイ
覚え方 コノ()しめす()チョット()のこころ()が、安  「漢字川柳」(論創社)より

形声字
 ウツ・イ  艸部
解字 「艸(草)+尉(ウツ)」の形声。ウツは鬱ウツ(草木がしげる)に通じ、草がさかんにしげるさまをいう。隋代の訓詁書[博雅]は「蔚蔚ウツウツは茂る也(なり)」とする。また、[説文解字]は「牡蒿(おとこよもぎ)也(なり)」とする。
意味 (1)草木のさかんにしげるさま。「蔚然ウツゼン」(草木の生い茂るさま。盛んなこと)「蔚起ウツキ」(盛んに起きる) (2)地名「蔚山ウルサン」(韓国慶尚南道の都市。釜山プサンの北にある。文禄慶長の役で日本軍がここに城を築き、明・朝鮮軍と交戦した蔚山倭城跡がある) (3)おとこよもぎ(蔚)。「牡蒿(おとこよもぎ)」キク科の多年草。山野に広く自生する。春に若芽を食用にする。花穂および葉は生薬として用いられる。
<紫色は常用漢字>

   バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。


 
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音符「若ジャク」<神がかりになった人> と「惹ジャク」「諾ダク」「匿トク」「慝トク」「鰙わかさぎ」

2023年09月20日 | 漢字の音符
  増補改訂しました。
 ジャク・ニャク・わかい・もしくは  艸部

解字 甲骨文は髪を振り乱し手を上げ、神がかり(トランス状態)となって神意をききとる人の象形。[甲骨文字辞典]は「甲骨文字では神が承諾すること。具体的な神名を挙げずに物事がうまくいく意味で使う場合が多い」とする。金文は人の口がつき神意を言う形。意味は、①順利(うまくいく)、②各種の助辞、に用いられている[簡明金文詞典]。篆文は上が草冠、下が右の若となり形が大きく変わった。[説文解字]は「菜を擇(えら)びつむ也(なり)。艸に従い右から構成される」とするが、この解字は継承されていない。
 現在の意味は金文からある各種の助辞が中心であり、日本では同音の弱ジャク(よわい)⇒年少である⇒「若い」意味で使われる。中国では「若い」意味はない。
意味 (1)かくのごとく。ごとし(若し)。「自若ジジャク」(自らの若し。いつもの自分と変わらず動じない)「泰然自若タイゼンジジャク」(落着き払って動じない) (2)もしくは(若しくは)。もし(若し)。 (3)いくらか。すこし。「若干ジャッカン」 (4)梵語の音訳語。「般若ハンニャ」(智慧の意)(5)(国)わかい(若い)。「若年ジャクネン」「若輩ジャクハイ」 

イメージ 
 「神がかりになった人」
(若・惹・匿・慝)
 「神意をうける」(諾)
 「その他」(鰙)
音の変化  ジャク:若・惹  ダク:諾  トク:匿・慝  わかさぎ:鰙

神がかりになった人
 ジャク・ジャ・ひく  心部
解字 「心(こころ)+若(神がかりになった人)」 の会意形声。神がかりになった人の心の意。神のお告げをうけた心の状態をいい、ひきおこす意味となる。
意味 (1)ひきおこす。「惹起ジャッキ」(ひきおこす)「惹禍ジャッカ」(わざわいをひきおこす) (2)[国]ひく(惹く)。ひきつける。「人目を惹く顔立ち」「惹句ジャック」(人をひきつける文句。キャッチフレーズ)
 トク・かくれる  匸部かくしがまえ
解字 「匸(閉ざされた場所)+若(神がかりになった人)」の会意。神がかりになった人が閉ざされた場所にいること。閉ざされた場所にいるので、かくれる意となる。
意味 かくれる(匿れる)。かくまう(匿う)。かくす。「匿名トクメイ」(名前をかくす)「秘匿ヒトク」(秘密にかくす)「蔵匿ゾウトク」(人に知られないようにかくす)
 トク  心部
解字 「心(こころ)+匿(かくれる)」の会意形声。閉ざされた場所にかくれた人は、神意を聞くことができなくなり、心が悪くなること。
意味 わるい。よこしま。「邪慝ジャトク」(邪も慝も、よこしまの意)「慝淑トクシュク」(悪いことと、よいこと。悪と善)

神意をうける
 ダク  言部
解字 「言(ことば)+若(神意をうける)」 の会意形声。神意をうけて言葉をだすこと。
意味 (1)こたえる。はいと答える。「応諾オウダク」 (2)うべなう(諾う)。同意する。承知する。引き受ける。「承諾ショウダク」「快諾カイダク

その他
 ジャク・わかさぎ  魚部

わかさぎ(「茨城をたべよう・ワカサギ」より)
解字 「魚(さかな)+若(ジャク)」の形声。中国ではジャクという名のカレイ目の海水魚の名。日本ではワカサギのワカに「若」を当て魚へんをつけた字。
意味 わかさぎ(鰙)。キュウリウオ科の魚。体は細長く15センチほど。汽水・淡水にすむ。氷が張った湖での穴釣で有名。若鷺・公魚とも書く。アマサギ・サクラウオとも言う。
語源 ワカサギは若い鷺(さぎ)の意で、若いは幼い・小さい意、鷺(さぎ)は白い鳥なので「白い」意。あわせて「小さく白い(若々しく白い)」魚の意。
<紫色は常用漢字>

    バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音符「少ショウ」<すくない・小さい>と「抄ショウ」「秒ビョウ」「妙ミョウ」「砂サ」「沙サ」「省セイ」「劣レツ」

2023年09月18日 | 漢字の音符
  改訂しました。
 ショウ・すくない・すこし  小部  

解字 「小」が小さい点を三つ描いて「ちいさい」意を示すのに対し、「少」は甲骨文において、小さい点を四つ描いて、「すくない」意味を表わす。金文から篆文にかけて形が変化し、現代字では「小+ノ」になった。すくない意のほか、足りない意ともなり、また年齢が充ち足りないことから、若い意ともなる。
意味 (1)すくない(少ない)。すこし(少し)。「僅少キンショウ」 (2)足りない。欠ける。へる。「減少ゲンショウ」 (3)わかい。おさない。「少年ショウネン」「幼少ヨウショウ

イメージ 
 「すくない・すこし」
(少・抄・劣・炒・毟)
  小さいもの4点から「ちいさい」(砂・沙・鯊・莎・紗・秒・眇・渺)
  少年・少女の意から「わかい」(妙)
 「形声字」(娑・裟・省)
音の変化  ショウ:少・抄・炒  サ:砂・沙・鯊・莎・紗・娑・裟  セイ・ショウ:省  ビョウ:秒・眇・渺  ミョウ:妙  レツ:劣  むしる:毟

すくない・すこし
 ショウ・すく  扌部
解字 「扌(手)+少(すこし)」の会意形声。手で少しだけ抜きとること。
意味 (1)抜き書きする。「抄本ショウホン ⇔謄本 トウホン(全部写し取った文書)」「抄訳ショウヤク」(一部を抜き出した翻訳) (2)かすめる。かすめとる。「抄奪ショウダツ」 (3)(水に溶かした紙の原料からその一部をすくいとることから) すく(抄く)。紙をすく。「抄紙ショウシ」(紙すき)
 レツ・おとる  力部
解字 「力(ちから)+少(すくない)」の会意。力が少なく他と比べて劣ること。
意味 (1)おとる(劣る)。「劣勢レッセイ」 (2)つたない。いやしい。「愚劣グレツ」「劣情レツジョウ
 ショウ・いる・いためる  火部
解字 「火(ひ)+少(すこしの時間)」の会意形声。食材を鍋にいれて、強い火で短時間、加熱・調理すること。
解字 いる(炒る)。いためる(炒める)。少量の油を使って強火で短時間、加熱・調理する。「炒飯チャーハン」(やきめし。発音は現代中国語から)
 <国字> むしる  毛部
解字 「毛(け)+少(すくない)」の会意。頭の毛を少なくする意の国字。
意味 むしる(毟る)。つかんで引き抜く。

ちいさい
 サ・シャ・すな  石部
解字 「石(いし)+少(ちいさい)」の会意形声。ごく小さい岩石の粒。
意味 すな(砂)。「砂金サキン」「砂丘サキュウ」「砂浜すなはま
 サ・すな・よなげる  氵部  
解字 「氵(水)+少(=砂。ちいさいもの)」の会意形声。水に洗われている砂。
意味 (1)みぎわ。水辺の砂地。「沙汀サテイ」 (2)よなげる(沙げる)。水で洗って選び分ける。「沙汰サタ」(汰もよなげる意。①水でゆすって砂金などをよりわけること。②物事の是非を論じ、定めること)(3)すな(沙)。すなはら。いさご。まさご。「沙漠サバク
 サ・はぜ  魚部
解字 「魚(さかな)+沙(すな)」の会意形声。水底の沙地に棲む魚。
意味 はぜ(鯊)。沙魚(はぜ)とも書く。スズキ目ハゼ亜目の魚で、淡水・汽水・浅い海水域に棲息する。水底に接して生活する底生魚が多い。
 サ  艸部
解字 「艸(くさ)+沙(すな)」の会意形声。沙(すな)に生える植物。
意味 (1)はますげ(莎)。カヤツリグサ科の多年草。砂地に多く自生する。夏に赤褐色の花が咲く。「莎草かやつりぐさ」 (2)「莎鶏サケイ」とは、キリギリス科の昆虫の名。クツワムシ。
 サ・シャ  糸部
解字 「糸(ぬの)+少(ちいさい⇒ほそい)」の会意形声。細い絹糸で織ったうすい絹織物をいう。
意味 (1)うすぎぬ。目があらく地のうすい絹織物。「紗巾サキン」(うすぎぬの頭巾)「紗窓サソウ」(うすぎぬを張った窓) (2)[国]「羅紗ラシャ」とは、毛織物の一種。「更紗サラサ」とは、模様を型で染めたり手描きした綿布。
 ビョウ  禾部
解字 「禾(いね・むぎ)+少(ちいさく細い)」の会意形声。稲や麦の穂先の細くかたい毛。のぎ。きわめて細いので、転じて、きわめてわずかな時間をいう。
意味 (1)のぎ。稲や麦の穂先のかたい毛。 (2)かすか。わずか。 (3)びょう。時間の単位。一秒。「一分一秒を争う」
 ビョウ・すがめる  目部
解字 「目(め)+少(ちいさい⇒ほそい)」の会意形声。片目を細めて見ること。転じて、細く小さい・かすかの意ともなる。
意味 (1)すがめる(眇める)。片目を細くする。片目を細くして見る。「目を眇めて狙いをつける」「矯(た)めつ眇めつ」(いろんな向きからよく見る) (2)すがめ(眇)。やぶにらみ。斜視。流し目。「眇目ビョウモク」 (3)細く小さいさま。かすかなさま。「眇眇ビョウビョウ」(小さいさま。かすかなさま)「眇少ビョウショウ」(①小さいこと。②自分を謙遜していう)「眇末ビョウマツ」(①背丈が小さい。②自分を謙遜する)「眇身ビョウシン」(小さな身体)
 ビョウ  氵部
解字 「氵(みず)+眇(かすかなさま)」の会意形声。水がはてしなくひろがり、遠くがかすかに見えるさまで、はるか・ひろい意となる。
意味 (1)はるか。とおい。ひろい。「渺渺ビョウビョウ」(遠くはるかなさま)「渺茫ビョウボウ」(はるかに遠い)「渺漫ビョウマン」(ひろくはるか。渺も漫も、はてしなくひろい意) (2)かすか。はっきりしない。「縹渺ヒョウビョウ」(①かすかではっきりしない。②ひろくはてしない。)

わかい
 ミョウ・たえ  女部
解字 「女(おんな)+少(わかい)」の会意。若く美しい女。転じて美しくすぐれている意となる。
意味 (1)たえ(妙)。いうにいわれぬほど、すぐれていること。美しいこと。「妙技ミョウギ」「絶妙ゼツミョウ」 (2)不思議なこと。「奇妙キミョウ

形声字
 サ・シャ  女部
解字 「女(おんな)+沙(サ)」の形声。サ・シャの発音で梵語の音訳字に用いられる字。
意味 「娑婆サバ・シャバ」(①梵語sahaの音訳字。人間がさまざまの苦しみに耐え忍んでいるところ。人間の世界。 ②シャバの発音。[国]刑務所など自由を束縛されている所から見る外の自由な俗世間) 「娑羅双樹サラソウジュ」(釈尊が涅槃に入った臥床の四方に2本ずつあった娑羅樹サラのき
 サ  糸部
解字 「衣(ころも)+沙(サ)」の形声。サという名の衣。
意味 「袈裟ケサ」に用いる字。袈裟とは梵語kasayaの音訳で、僧侶の衣服の意。衣の上に左肩から右腋下にかけて、斜めにおおう布をいう。
 セイ・ショウ・かえりみる・はぶく  目部

解字 甲骨文字と金文は、目の上に生セイ・ショウ(土から草が生え出る)を付けた形。土の線は目と同化しており目の上に屮(草)のみが出ている。目の上に生えるように付けた眉飾りの意で、これにより呪力を増やす意味がある。省は呪力を増やした目で地方を巡察して、取り締まり見回ること。見回った後に取り除くべきものを取り去るので「はぶく」意となり、また、自分の行為も見るので「かえりみる」意となる。篆文から生の形が変化し、現代字は「目+少(ショウ・セイ)」の形声になった。ショウ・セイの発音は、「生」を表しているのは言うまでもない。
意味 (1)視察する。巡察する。「省審セイシン」(つまびらかに調べる) (2)安否をとう。みまう。「省問ショウモン」「帰省キセイ」(郷里に帰って親の安否を尋ねる) (2)はぶく(省く)。へらす。「省略ショウリャク」 (3)かえりみる(省みる)。「自省ジセイ」「反省ハンセイ」(自分の心に立ち返って考える)「省察ショウサツ」(自分自身を省みて考えをめぐらす) (4)国の行政機関。「省庁ショウチョウ
<紫色は常用漢字>

   バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。






コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音符「学ガク」<伝達の行なわれるところ>と「覚カク」「攪カク」「鷽カク」

2023年09月16日 | 漢字の音符
[學] ガク・まなぶ  子部

解字 甲骨文は「家屋の形+爻コウ(つたえる)+左右の手」で、左右の手で知識や文字を伝える教育施設を表す。金文は、家屋の中に子がいる形で、大人が知識や知恵を建物の中で子に伝達すること。子どもからみると学ぶ意となり、また、学び舎となる。旧字は両手が𦥑キョクに変化したになり、新字体は学に簡略化される。
意味 (1)まなぶ(学ぶ)。「学力ガクリョク」「学習ガクシュウ」 (2)まなびや。「学校ガッコウ」(3)がくもん。「学問ガクモン」「学者ガクシャ」 

イメージ 
 知識や文字を「伝達する」(学・覚・攪・鷽)
 「形声字」(鱟・黌)
音の変化  ガク:学  カク:覚・攪・鷽  コウ:鱟・黌

伝達する
 カク・コウ・おぼえる・さます・さめる  見部
解字  旧字はで「見(みる)+學の略体 (伝達する)」の会意形声。見た刺激が脳に伝達されて、身体で感じること。知覚される意。新字体は覚に変化。
意味 (1)気づく。かんじる。「知覚チカク」「感覚カンカク」 (2)おぼえる(覚える)。(2)さとる(覚る)。さとり(覚り)。「覚悟カクゴ」(①[仏]さとること。覚も悟も、さとる意。②心構えをする)「正覚ショウガク」(正しいさとり。真理) (3)人に知られる。「発覚ハッカク」 (4)さめる(覚める)。さます(覚ます)。「覚醒カクセイ
 カク・ガク・うそ  鳥部
解字 「鳥(とり)+學の略体(伝達する)」の会意形声。口笛を吹くような鳴き声を発するウソドリ。(うそ[嘯]とは口笛を意味する古語)口笛は相手に情報を伝達する手段とされた。

うそ(「ウィキペディア」より)

鷽替(うそが)え神事の鷽・横手神明社(ライオン誌日本語版ウェブマガジンより)
意味 うそ(鷽)。アトリ科の小鳥。うそ(鷽)はスズメよりやや大きく日本全国で生息する。「鷽替(うそが)え」(各地の天満宮で行なわれる正月行事。参詣人が授与品の木製鷽を境内で互いに交換する)
 コウ・カク・みだす・まぜる  扌部
解字 「扌(て)+覺(伝達する)」の会意形声。伝達を手で妨げて相手をみだすこと。転じて、まぜる意ともなる。[説文解字]は「亂(乱)す也(なり)。手に従い覺の聲(声)」とする。
意味 (1)みだす。かきみだす。「攪乱カクラン」(かきみだす) (2)まぜる(攪る)。かきまぜる。「攪拌カクハン

形声字 
 コウ・かぶとがに  魚部
解字 「魚(水の中を泳ぐ動物)+學の略体(ガク⇒コウ)」の形声。コウという名の水中動物である「かぶとがに」をいう。地理書の[山海經註]は「鱟魚の形は惠文冠の如し」とする。惠文冠とは明の第2代皇帝の惠文帝(建文帝とも)の帽子型の冠。惠文帝は文治政策を重視した皇帝であったので、學(まなぶ)の略体に魚をつけた帽子のような魚(かに)を表した(私見)。


①かぶとがに(ネットの販売サイトより) ②惠文帝(「Weblio辞書」より)
意味 「鱟魚かぶとがに」に用いられる字。カブトガニ目(剣尾類)に属す節足動物。丸い兜を伏せたような頭胸甲と、側縁に棘をもった腹甲から成り、後端に細長い尾剣がある。日本では瀬戸内海・九州北西の浅海底にすむ。兜蟹・甲蟹とも書く。
 コウ  黄部
解字 「學の略体(まなびや)+黄の旧字(コウ)」の形声。コウは廣コウ(ひろい)に通じ、広い学び舎をいう。黌の後に宇や堂ドウなど広い建物を表す字が付くことが多い。音符は黄コウだが、字の構造を説明しやすいためここに重出した。
意味 まなびや。学舎。学校。「黌宇コウウ」(まなびや)「黌堂コウドウ」(まなびや)「黌舎コウシャ」(=校舎。学校)「昌平黌ショウヘイコウ」(江戸の昌平坂にあった幕府直轄の学問所)「済々黌セイセイコウ」(熊本県立高校の名称)
<紫色は常用漢字>

    バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。

           

 
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音符「蒦カク」<鳥を手にとる> と「獲カク」「穫カク」「蠖カク」「護ゴ」

2023年09月14日 | 漢字の音符
  増補改訂しました。
 カク 艸部           

解字 甲骨文は「隹(とり)+又(て)」の会意。鳥を手にとる形で、鳥にかぎらず、ものを手に入れる意。金文から冠毛がついた隹になり、現代字は冠毛⇒艹に変化した蒦になった。金文は獲カク(える・えもの)と同じ意味で使っていることから獲の原字。現在、蒦カクの意味は獲がになっているので、音符だけの字になった。
意味 手にいれる。える。

イメージ
 「手に入れる」(獲・穫・護・蠖)
音の変化  カク:獲・穫・蠖  ゴ:護

手に入れる
 カク・える  犭部
解字 「犭(いぬ)+蒦(手に入れる)」の会意形声。犬を伴なった狩で隹(とり)や獣を手にいれること。隹や獣だけでなく、物をえる・つかまえる意となる。
意味 (1)える(獲る)。つかまえる。手にいれる。「捕獲ホカク」「漁獲ギョカク」「獲得カクトク」 (2)つかまえて手に入れたもの。「獲物えもの
 カク・かる  禾部  
解字  「禾(こくもつ)+蒦(手に入れる)」の会意形声。穀物を刈り取って手に入れること。
意味 (1)かる(穫る)。とる。穀類をとりいれる。「収穫シュウカク」(穀物を刈り取って手に入れる)「耕穫コウカク」(耕作して収穫する)「秋穫シュウカク」(秋の農作物のとりいれ) (2)手中にとりおさめたもの。
 ゴ・まもる  言部
解字 「言(言葉をかける)+蒦(手に入れる)」の会意形声。手に入れたものを、言葉をかけながらまもること。獲物の幼鳥や幼獣などを保護したのが原義かと思われる。のち、まもる・かばう意となった。[説文解字]は「救い視る也(なり)。言に従い蒦の聲(声)」とする。発音は、カク⇒コ・ゴに変化。
意味 (1)まもる(護る)。かばう。たすける。「保護ホゴ」「護衛ゴエイ」「護身術ゴシンジュツ」 (2)梵語の音訳に用いる。「護摩ゴマ」(焼く意の梵語。木を燃やし仏に祈る儀式)
 カク・ワク  虫部
解字 「虫(むし)+蒦(える)」の会意形声。進む距離(ながさ=尺)を蒦(え)ようとする細長い虫。両端に足がついた細長い身体を曲げて頭尾を合せ、進む方向へ頭をのばして、尺(ながさ)を蒦てから尾を引き寄せ、同じ動作をくりかえして進む虫。[説文解字]は「尺蠖セッカク・セキクヮク,屈伸する蟲也(なり)。虫に従い蒦の聲(声)」とする。

「しゃくとり虫とは」より
意味 (1)しゃくとりむし。シャクガ科の蛾の幼虫。すんとりむし。「尺蠖セッカク」(しゃくとり虫) (2)かくれる。しりぞく。「蠖屈カツクツ」(尺取虫が伸びるために一時からだをちぢめること。人が将来の雄飛に備えて慎み深く世を渡ること)「尺蠖セッカク乃(の)屈するは以(も)って信(の=伸)びんことを求むれば也(なり)[易経]」
<紫色は常用漢字>

    バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。



コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音符「光コウ」<ひかり>「洸コウ」「恍コウ」「胱コウ」と「晃コウ」「幌ほろ」「滉コウ」

2023年09月12日 | 漢字の音符
 コウ・ひかる・ひかり  儿部
    
解字 「火+儿(ひと)」の会意。甲骨文字はひざまずいた人(卩セツ)の上に火がある形で、松明などの火を持ちじっと坐っているさまで光を表した。金文は火の形が変化した。篆文から、ひざまずいた人⇒儿に変化し、現代字は光となった。同じ作り方の字に、目を人の上にのせた見、口をのせた兄などがある。
意味 (1)ひかる(光る)。ひかり(光)。てらす。明かり。「光線コウセン」「月光ゲッコウ」 (2)輝かしい。ほまれ。「栄光エイコウ」 (3)時間。とき。「光陰コウイン」 (4)ありさま。けしき。「光景コウケイ」「風光フウコウ」「風光明媚フウコウメイビ」「観光カンコウ」 (5)つや。いろ。「光沢コウタク」 (6)ひろい。あまねく。「光宅コウタク」(徳が天下に満ちておおう=光被コウヒ

イメージ  
 「ひかり・ひかる」
(光・洸)
 「形声字」(胱・觥)
 「その他」(恍)
音の変化  コウ:光・恍・胱・洸・觥

ひかり・ひかる 
 コウ  氵部
解字 「氵(みず)+光(ひかる)」の会意形声。①水がゆれうごいて光るさま。②水の湧いて光るさま。③勇ましいさま。④地名。の意味がある。[説文解字]は「水涌(わ)き光る也(なり)。水に従い光に従う,光は亦(また)聲(声)」とし、水がゆれうごいたり、湧いて光るさまをいう。転じて水の勢いが盛大で勇ましいさまにもいう。
意味 (1)水がゆれうごいたり湧いて光るさま。水が深いさま。「洸洸コウコウ」(①水が押し寄せ光るさま。②水がゆらめき光るさま。③勇ましいさま)「洸洋コウヨウ」(水が深くて広いさま。また、学説・議論などが深く広いさま)「洸蕩コウトウ」(水が豊かなさま) (2)川の名。「洸水コウスイ」(山東省にある川) (3)人名用漢字。たけし。ひかる。ひろ。ひろし。ふかし。みつる。
形声字
 コウ  月部にく
解字 「月(からだ)+光(コウ)」の形声。身体のなかでコウ(光)という発音のところをいう。「膀胱ボウコウ」に用いられる。
意味 「膀胱ボウコウ」とは、尿を一時的にためておく袋状の器官。「膀胱炎ボウコウエン
 コウ・つのさかずき  角部
解字 「角(つの)+光(コウ)」の形声。コウという名の獣の角の形をした酒杯(さかずき)をいう。
意味 (1)つのさかずき(觥)。兕牛ジギュウという牛に似た一角獣の角でつくったさかずき。のち、銅製や玉製。七升あるいは五升はいるとされる大きな酒杯。「觥籌交錯コウチュウコウサク」とは、籌(かずとり)の遊びで負けたものに觥(つのさかずき)で酒を飲ませ、その動きがいりみだれ、宴会の盛んなこと。 (2)おおきい。「觥飯コウハン」(大盛の食事) (3)「觥觥コウコウ」とは、強く正しいさま。
その他
 コウ・とぼける  忄部  
解字 「忄(心)+光(ひろがる)」の会意形声。光が四方に広がるように心がひろがり、ぼんやりする・うっとりすること。
意味 (1)うっとりする。ぼんやりする。「恍惚コウコツ」(①うっとりとするさま。②老人などがぼんやりとしてはっきりしないさま。)「恍然コウゼン」(ぼんやりしてよく見えない) (2)[国]とぼける(恍ける)。 

   コウ・あきらか
 コウ・あきらか  日部
解字 「日(太陽)+光(ひかる)」の会意形声。太陽が光り輝くさま。
意味 (1)ひかる。かがやく。あかるい。「晃晃コウコウ」(あかるくかがやくさま)「晃曜コウヨウ」(光かがやくこと) (2)あきらか(晃か)。あかるい。 (3)人名用漢字。あき。あきら。きら。てる。ひかる。みつ。

イメージ
 「ひかる」
(晃)
 「ひろがる=光」(幌・滉)

ひろがる
 コウ・ほろ  巾部
解字 「巾(布)+晃(=光。ひろがる)」の会意形声。布をひろげる意。ひろげて覆うこと。543年の[玉篇]は「帷幔イマン(たれぎぬ・まく)也」とする。
意味 (1)たれぎぬ。たれぎぬの看板。「幌帷コウイ」(とばり)「幌竿コウカン」(たれぎぬの看板を掛ける旗竿) (2)ほろ(幌)。車につける覆い。「幌馬車ほろバシャ」 (3)ほろ(幌)。矢を防ぐため武士が背にかける布袋・母衣(ほろ)。 (4)地名の音訳字。「札幌サッポロ」(北海道の道都。アイヌ語のサッホロの音訳字。発音・サッホロの意味は諸説ある)
 コウ・ひろい  氵部
解字 「氵(みず)+晃(=光。ひろがる)」の会意形声。水がひろがり深いさま。
意味 (1)ひろい(滉い)。水がひろがり深いさま。「滉漾コウヨウ」(深くて広い水のさま)「滉瀁コウヨウ」(水が広々とたゆたうさま=滉蕩コウトウ) (2)人名用漢字。あきら。こう。ひろ。ひろし。ふかし。みつ。
<紫色は常用漢字>

    バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。


コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする