漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「席セキ」「蓆セキ」 と 「度ド」「渡ト」「鍍ト」

2024年04月03日 | 漢字の音符
    セキ <敷物>
 セキ・むしろ  巾部 xí

解字 甲骨文字は敷物である席(むしろ)の象形。金文は「厂(石の略体)+巾(ぬの)」で、ムシロが巾に代わり発音を表すセキ(石)がついた。巾は布の字では、植物性の繊維の巾を槌などでたたく形であり、ごわごわとした布の意。これを敷物にしたと思われる。篆文第1字は古文(春秋戦国期)で、「厂(石の略体)+敷物」の𠩛で、甲骨文字の敷物がもと帰りしている。篆文第2字で、現在の字体に通じる席の字ができた。この字の巾を除く上部(广+廿)は、石が変化した形で発音のセキを表している。石の字のこのような変化は、ショの上部にもみられる。
 席というと今ではイス席を思い浮かべるが、漢字が出来たころの古代では敷物であった。異体字に𥔆セキという字があるが、この字は甲骨文字の敷物に発音を表す石をつけた形で、初期の席の形をよく表している。
意味 (1)すわる場所。占める位置。「座席ザセキ」「首席シュセキ」「末席マッセキ」 (2)敷物。むしろ。ござ。「席巻セッケン」(むしろを巻くように土地を攻め取ること) (3)しく。敷物をしく。

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 「しきもの」
(席・蓆)
音の変化  セキ:席・蓆

しきもの  
 セキ・むしろ  艸部 xí
解字 「艸(くさ)+席(しきもの)」の会意形声。草でできた敷物。
意味 (1)むしろ(蓆)。わらなどを編んで作った敷物。「蓆子セキシ」(むしろ)「茵蓆インセキ」(茵も蓆も、しとねの意。敷物) (2)おおきい。ひろい。


    ド <敷物を広げて大きさを測る> 
 ド・ト・タク・たび  广部 dù・duó
   
解字 「席の略体+又(手)」の会意。席は敷物を表し、度は手で敷物をひろげること。敷物は一枚の長さ・幅が決まっており、敷物を何枚も敷くことによって、長さや広さが分かるため「はかる」「ものさし」「めもり」の意となる。
意味 Ⅰ.ド・トの発音。 (1)ものさし。めもり。「尺度シャクド」「緯度イド」 (2)ほどあい。ていど。「速度ソクド」「程度テイド」 (3)たび(度)。回数。「毎度マイド」「都度ツド」 (4)きまり。のり。「制度セイド」「法度ハット」 (5)強めて言う接頭語。「度胆どきも」(きもを強調していう。=度肝)「度胆を抜く」(きもをつぶさせる。驚かせる) (6)(渡と通用する)わたる(度る)。こえる。「度越ドエツ」(こえる)「度航トコウ」(=渡航) (7)地名。姓。「度会わたらい」(①三重県度会郡度会町。②姓)
 Ⅱ.タクの発音。 (1)はかる。おしはかる。「忖度ソンタク」(他人の心をおしはかる。忖も度も、はかる意)

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 「はかる」(度・渡) 
 「敷物をしく」(鍍)
音の変化  ド:度  ト:渡・鍍

はかる
 ト・わたる・わたす  氵部 dù
解字 「氵(水)+度(はかる)」の会意形声。度には、はかる意の他に「わたる」意味もあり、水(みず)を度ること。川や湖・海を渡ること。また、水の深さをはかりながら川を渡るとも解字できる。
意味 (1)わたる(渡る)。わたす(渡す)。川や海をわたる。「渡河トカ」「渡航トコウ」(船で海を渡る)「渡来トライ」(外国から渡ってくる) (2)とおる。過ぎる。経る。「渡世トセイ」「過渡カト」(移り行くこと) (3)[国]わたす(渡す)。手渡す。ゆずる。「お金を渡す」「譲渡ジョウト」 (4)地名。姓。「渡辺わたなべ」「渡会わたらい」「渡嘉敷とかしき」「渡瀬わたらせ」「渡島おしま

敷物をしく
 ト・めっき  金部 dù
解字 「金(きん)+度(敷物をしく)」の会意形声。金の膜で敷物をしくように他の金属をおおうこと。
意味 (1)めっき(鍍)。金の薄い膜で、他の金属を覆うこと。「鍍金トキン」(青銅などに金をめっきする)「鍍銀トギン」(銀をめっきする)「鍍(めっき)がはげる」(本性が表れてごまかしがきかない)
<紫色は常用漢字>

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