白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

棋士紹介第7回・酒井佑規初段

2019年02月21日 21時31分43秒 | 棋士紹介
<本日の一言>
木曜日は日本棋院棋士の公式対局日です。
日本棋院ネット対局幽玄の間では多くの対局が中継されました。
帰宅後真っ先に確認したのは杉内寿子八段の対局ですが、本日の結果は残念でしたね。
内容の派手さで言えば、加藤祐輝六段と彦坂直人九段の対局が断トツでした。
ちなみに、私の対局も中継されていましたが・・・。
後半は緩みすぎ、大ポカもありと、ちょっとだらしない内容でしたね。
</本日の一言>

皆様こんばんは。
本日は棋士紹介シリーズの第7回です。

<酒井佑規初段(公式プロフィール)>

平成16年(2004年)4月14日生まれの14歳、朴訥な印象を受ける中学2年生です。
しかし、若い・・・。
私が入段した時、彼は1歳ぐらいですよ。

今まで、杉内八段以外は棋道賞受賞者から選んできましたが、今回はネタができたので臨時でご紹介することにしました。
酒井初段の対局が終わった後、ベテラン棋士たちが彼を取り囲んで碁を見せてもらっていたのですが、私もその輪の中にいたのです。
非常に若い棋士ということで注目していたこともありますが、なんと言っても碁の内容に驚きました。





1図(テーマ図)
酒井初段の黒番、相手は芝野龍之介二段です。
なお、うろ覚えなので手順などに間違いがある可能性もありますが、その点はご容赦ください。

さて、昼休みに碁を見に行ったらこんな盤面でした。
この黒の構えは、一体???
?マークが沢山浮かびましたが、再開時間が近付いたので自分の対局に戻りました。





2図(実戦)
序盤のこの場面、黒×が弱いのでまず黒AやBと逃げる手が思い浮かびます。
あるいは、黒Cと攻撃から入り、白△との競り合いに持ち込みたくなる人もいるでしょう。
しかし、酒井初段の選択はなんと黒D!





3図(実戦)
左下の黒2子を捨て、中央に勢力を築く大作戦でした。
この思い切りの良さにはビックリです
左辺から下辺にかけての白地は、ざっと85目ぐらいありそうに見えますからね・・・。

そしてこの黒△です。
辺の星から上にコスミとは、見たことのない構えですが・・・。
この手には、どうやら凄い決意が秘められていたようです。





4図(実戦)
白が右辺に侵入したのは当然です。
白7までと進んだ場面がテーマ図でした。
皆様は、現在どんな状況になっていると判断されますか?
「白が右辺で治まり、これから黒が中央をどれだけまとめられるかが勝負」といったところではないでしょうか。





5図(実戦)
そう思った方は大外れです。
昼食休憩時の私もですが・・・(笑)。

実戦は、なんと右辺白を皆殺しに行きました!
確かに部分的に2眼はありませんが、外側が穴だらけなので、こんな石が死ぬとはとても思えません。
おそらく、芝野二段もそう思っていたでしょう。
しかし、酒井初段は全力で白を追い詰め、ついに仕留めてしまいました。
しかも残り1分の秒読みに急き立てられながらです。
恐ろしい腕力ですね。

正直なところ、結果を知っていても酒井初段の作戦は無茶に思えます(笑)。
しかし、昨日も書いたように若いうちはどんどん無茶をして良いと思います。

ところで、かつて加藤正夫名誉王座と言う大棋士がいたのですが・・・。
加藤名誉王座が22歳六段の時、高川秀格九段の大石を仕留めたエピソードがあります。
局後の高川九段は、「こんな石が取られるのかねえ」と加藤六段の腕力に呆れたそうです。
酒井初段は、第二の加藤正夫になれる素質を秘めているのかもしれませんね。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 仲邑菫新初段-黒嘉嘉七段 | トップ | SENKO CUP開幕! »

棋士紹介」カテゴリの最新記事