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ぽかぽか春庭「やっこくなぐれる」

2017-01-14 00:00:01 | エッセイ、コラム
20170114
ぽかぽか春庭ことばのYaちまた>やっこい脳のための新語旧語(1)やっこくなぐれる

 「ヤッコイって、方言なの?」と、娘が聞いてきました。料理番組を見ていたとき、料理人が「これ、ヤッコクなるまで煮てください」と言ったら、まわりの人から「ヤッコクってなんですか」という質問が出たのだそうです。

 娘は「私は普通に使っていたけれど、意味がわからない人がいるってことは、方言なんだろうと思った」と、言うのですが、私もごくあたりまえに使っていた語なので、方言という意識を持っていませんでした。群馬県では日常語と思います。娘は、弟が生まれた5歳のとき1ヶ月間と、母が中国に出稼ぎに行った9歳のとき半年間、群馬県で過ごしたので、だいぶ群馬弁が身についています。

 「やっこい」は柔らかい、「ひゃっこい」はひんやりしている。東北から北関東地方にかけての方言のようです。群馬ではさらにヤッケー、ヒャッケーになるときも。
 料理用語などは、日常茶飯語ですから、母から子に伝わることが多いのでしょうが、私は「ヤッコイ」を娘に伝えた覚えがないのです。たぶん、群馬にいる間におじいちゃんなどが使っていて耳に残っていたのでしょう。

 すみともさんのサイトで「なぐれる」を知りました。私の持っている古語辞典にはちゃんと載っていました。ラ行下二段活用の動詞。手持ちの国語事典では、3種類チェックしたけれど、登載されていなかった。
 すみともさんの説明「なぐれる、とは、横の方へそれる。落ちぶれる。身を持ち崩す。売れ残る。仕事にあぶれる」
 すみともさんの母上は、さしみなどがだめにならないうちに食べようとするとき「なぐれないうちに食べる」と表現なさったよし。
 すみとも母上は、もっぱら刺身の食べ方に関して「なぐれる」を使ったということですが、母から子へ、料理や食べ物についてのことばが台所や居間で伝わっていくこと、うれしくなります。

 今まで知らなかったことばを教えてもらうと、なんだか自分のことば袋が膨らんで、得した気になります。お金は少しも貯まらないけれど、ことばを貯めていると思うと、まずしい暮らしもちょっぴり豊かな気分でいられます。

 今夜も一汁二菜。豚角煮+大根。圧力釜で炊いたので、大根がやっこい、というよりぐずぐずになったけれど。これって、大根がなぐれた?こんぶとレンコンの炒め煮(生協市販品)、わかめとネギと大根の味噌汁。餅バター焼き。
 料理しながら、娘息子に伝えることばがあったか。う~ん、黙って作り、テレビ見ながら食べました。3月には仕事にあぶれる予定の、なぐれている息子。30すぎても売れ残っているなぐれた娘。落ちぶれてなぐれっぱなしの母。総勢なぐれている家族の食卓でした。

 体も脳も、年取るほど硬直してきて心のやわらかさも失われてきます。もっともっとやっこい脳と心でいるために、去る語を惜しみつつ来る語を拒まず、ことば袋に入れていきます。

<つづく>
コメント (4)
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