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ぽかぽか春庭「2019年7月目次」

2019-07-30 00:00:01 | エッセイ、コラム


20190730
ぽかぽか春庭2019年7月目次

0702 ぽかぽか春庭ことばの知恵の輪>感じる漢字(1)部首・鳥と馬
0704 感じる漢字(2)鍵と林と森

0706 ぽかぽか春庭ことばの知恵の輪>再録感じる漢字(1)音読みと漢字のツクリ。転注文字の『令』
0707 再録感じる漢字(2)七夕
0709 再録感じる漢字(3)中国語国名表記クイズつき

0711 ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2019十九文屋日記夏の行楽(1)スパリゾートハワイアンズ2泊3日
0713 2019十九文屋日記夏の行楽(2)スパリゾートハワイアンズのポリネシアンダンスショー
0714 2019十九文屋日記夏の行楽(3)スパリゾートハワイアンズ温泉三昧

0716 再録感じる漢字(4)和製漢語について「中華人民共和国」って70%日本語です」
0718 再録感じる漢字(5)中国語の外来語表記オノマトペ表記
0720 再録感じる漢字(6)続・中国語オノマトペ表記
0722 再録感じる漢字(7)漢字表記の基準
0723 再録感じる漢字(8)明治時代の漢字かな使い分け
0725 再録感じる漢字(9)平成の漢字かな交じり文
0727 再録感じる漢字(10)新聞のふりがな
0728 再録感じる漢字(11)同音漢字使い分け、作る・造る・創る
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ぽかぽか春庭「同音漢字使い分け、作る・造る・創る」

2019-07-28 00:00:01 | エッセイ、コラム
20190728
ぽかぽか春庭ことばの知恵の輪>再録感じる漢字(11)同音漢字使い分け、作る・造る・創る

 春庭コラムの中、漢字について書いたものを再録しています。
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2006/01/17 水  
I・Ro・Ha Jrui Show Time(色葉字類抄待夢)>漢字の使い分け(作る・造る・創る)

 a*****さんからいただいたコメントへの返信。「つくる」の使い分けの、より詳しい解説です。


「造る」と「作る」の 使い分けについて。a*****さんのコメント。
 「錠前を作るの「作る」ですけど、時々出てきては、迷うことがありました。手で動かせる比較的小さな物は作る、車や船など大きな物は造るという区分で大体納得していますが、それでも固形の物と量的なもの、無形のもので、違ってきそうで釈然としないこともあります。稲作、作曲/刺身のお造り、木目の浮造り(うづくり)、酒・味噌の醸造・・・・・製作と製造は、慣用的多数派で決まるのでしょうか。


 多くの辞書では、つくる対象のものの大きさ、加工の度合いによっての使い分けを解説しています。
 大修館「現代漢和」の使い分けを中心として、解説すると。

作る=偏は「人」。旁(つくり)の「乍」は、木の小枝をナタで切りのぞいて形づくる、の意。人がナタをふるって枝の形を整え、道具として使えるように作ることが基本の語義。
 主として規模の小さいものや抽象的なもの、無形のものをつくるときに用いる。
例)米を作る、規則を作る、小説を作る
  稲作、豊作、秀作、佳作、作詩、作者、作品、作法

造る=繞(にょう)は「進んでいく」の意。旁は告。つげる。屋内で供物をそなえ、祈るさまから、「いたす、すすめる」の意となり、さらに「人工のものが目的の形にいたる」の意味から「つくる」を意味するようになった。
例)船を造る、庭園を造る、酒を造る、
  造船、造園、酒造、醸造、偽造、造花、造詣、造語、造作、造反

創る=旁の「リ(りっとう)」は、刀の意。扁の「倉」は、「傷を受ける、きずつく」刀を入れ、はじめに切り込むことから「工作のはじめ」「新しくものをつくりはじめる」の意となった。今までなかったものを、はじめて創り出す。
例)神が天地を創る、会社を新しく創る、(一般的には作るでもよい)
 新しくつくるの意味で 創案、創意、創刊、創作、創設、創立、独創
 傷の意味で 銃創、創痍(満身創痍など)

 「作る」が一番幅広く使うことができ、創る、造るの意味もカバーする。
 「造る」は、人工的につくり出す、という意味が大きく、造船、造園など規模が大きい場合につかう。
 また、自然にないものを人工的につくり出すとき、小規模なものであっても、造るを使う。「作り花」はあっても、熟語としては「作花」ではなく、「造花」になる。

 「造る」は、人工的に「改変する」という意味が大きく、もとの材料から大きく変化した場合に使用される。

 稲をつくるに当たっては、種籾から稲穂まで自然の推移に従ってつくられるので、大規模農業であっても、「稲を作る」。
 一方、酒は、稲籾から大きな変化をたどって、もとの形とはまったく異なるものに出来上がるので、小規模な家内作業で行うとしても、酒造、「酒造り」のほうが、酒作りよりふさわしく感じられる。

 製作と製造の違いも、人工的な変化の度合いが大きい場合や規模が大きいほうを製造とすることで、よいのではないでしょうか。

 さしみを「お造り」と言うのも、元の魚から見た目に大きく変化した形となり、人の手が入ったことがはっきり感じられることから、「造」を用いる、作詩作曲は、抽象的なものをつくる、という解釈でよいと思います。

 木材加工の「浮造り(うづくり)」ということば、はじめて知りました。
 木目が浮き出る加工をほどこした板を見たことはありましたが、それを「うづくり」と呼ぶとは知りませんでした。

 これも、ただ薄くひいた板ではない、人工的な手を加えて木目が浮き上がってくるようにする模様だから「浮造り」になるのでしょうね。

 建築や室内装飾に携わっている方にとっては、よく知られた語なのでしょうが、私ははじめて知りました。新しいことばを覚えるのは、こころ楽しいものです。ありがとうございました。


<つづく>
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ぽかぽか春庭「新聞のふりがな」

2019-07-27 00:00:01 | エッセイ、コラム
20190727
ぽかぽか春庭ことばの知恵の輪>再録感じる漢字(10)新聞のふりがな

 春庭コラム「漢字について」を再録しています。
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2005/12/19(月) 
日本語相談(4)>新聞のふりがな

 12/15、漢字で書くか、ひらがなで書くかの使い分けについての相談に対してお答えしました。つづきです。
 「どの単語を漢字で書くか」について、個人的な日記や手紙では自由に表現してよい。新聞や雑誌などでは、内閣告示による「常用漢字表」と「送りがなの付け方」に準拠し、メデイアごとに基準が設定されている。

 私のパソコン上に置いてある『朝日新聞の漢字用語辞典』は、朝日新聞からもらったのではなく、朝日生命が保険加入者へのサービスとして配ったもの。夫の友人が勧誘員であったころ、つきあいで保険に入ったときにもらった。保険料払う金もないので、とっくに解約してしまったが、辞典は残った。

 新聞社などでは、どの語を漢字で表記するか平仮名にするか基準がある。
 植字工が活字を拾って並べた組版によって新聞印刷を行っていた当時、常用漢字以外の漢字を紙面に載せるのは、さまざまな制約があり、漢字表記は重要な問題だった。
 しかし、現在はコンピュータで紙面を編集し、漢字の使用に関しても、技術的な制約がなくなった。使用できる常用漢字人名漢字の種類も増え、ルビ付き(ふりがな)の紙面も簡単に作れるので、漢字表記は多くなっている。

 2005年12月18日の朝日新聞で、ふりがな付きで表記されている漢字を拾ってみよう。記事の文中から人名地名以外の漢字を抜き出す。
 新聞は「義務教育修了の人が読める内容であることが望ましい」とされているので、フリガナがついている漢字は、義務教育では習わなかった読み方や、読むことが難しいと新聞社が判断した漢字であろう。

 新聞社内部の記者が書いたと思われる記事には、ほとんどフリガナはない。社内の漢字基準に従っているのだろう。しかし、外部からの寄稿記事などでは、執筆者の記述をそのまま表記するようにしているらしく、フリガナ付きが多くなる。

1面 槻(つき)=けやきの異名 総苞(そうほう)=花全体を包み込む部分  

2面 完璧(かんぺき) 真摯(しんし) 7面 焙煎(ばいせん) 橋梁(きょうりょう) 

8面 愕然(がくぜん) 謳う(うたう=紙上では言偏に区) 

11面 躾(しつけ) 蒙古斑(もうこはん) 捉える(とらえる) 曖昧(あいまい) 均霑(きんてん) 拡がる(ひろがる) 

12面 煌めく(きらめく) 微かに(かすかに) 痕(あと) 掌(てのひら) 真鍮製(しんちゅうせい) 覗く(のぞく)貼る (はる) 椅子(いす) 燭台(しょくだい) 旅行潭(りょこうたん) 爪(つめ) 精緻(せいち) 拮抗(きっこう) 壷(つぼ) 叱る(しかる) 咳(せき) 嚔(くさめ) 蠢く(うごめく) 急遽(きゅうきょ) 臆病(おくびょう) 

13面 驚愕(きょうがく) 瞠目(どうもく) 噛む(かむ) 轢かれる(ひかれる) 止む(やむ) 捧げる(ささげる) 推戴(すいたい) 籠める(こめる) 籠る(こもる) 侮蔑(ぶべつ) 具わる(そなわる) 剃髪(ていはつ) 波瀾(はらん) 拠る(よる) 正鵠(せいこく) 

14面 辿る(たどる) 審らか(つまびらか) 恣意(しい) 囚われる(とらわれる) 所詮(しょせん) 俺(おれ) 笊(ざる) 失踪(しっそう) 形而上(けいじじょう) 舌鋒(ぜっぽう) 

15面 荒唐無稽(こうとうむけい) 山姥(やまんば) 棺桶(かんおけ) 渡守(わたしもり) 

27面 戌(いぬ) 

32面 明瞭(めいりょう) 嬉しい(うれしい) 傾げる(かしげる) 訛(なまり) 弾ける(はじける) 労る(いたわる) 頷く(うなずく) 

37面 忸怩(じくじ) 潮騒(しおさい)

 いかがでしょうか。「カナがふってなくても読めるわい」と思う漢字、「え、これって漢字ではこう書くんだったのか」と思う字、「私はこの場合、漢字は使わない」という字、それぞれにあるでしょう。

2005/12/19(月) 
日本語相談(5)現在の基準

 「12月18日新聞、紙上の漢字フリガナを読む」
 w*******さん の感想「 均霑、忸怩、は読めないし、書けませんし使えません。」(2005 12/19 9:44)
 私も同じようなもんです。フリガナがなかったら読めなかっただろうと思うのは、「均霑」「審らか」の2字でした。

 「つまびらかにする」を漢字で書くとしたら、私は「詳らか」の方を使い、「審らか」を書くことはない。「審議する」など音読み熟語は読み書きするけれど、訓読みの「審らか」を読み書きしたことはなかった。

 均霑(きんてん)の「霑」っていう漢字、はじめて見た。「均霑=平等に利益をえること」という意味。執筆者が社会経済学者であることから、おそらく経済学では、ふつうに使われていることばなのだろう。
 これは「霑」という字が常用漢字外なので、雑誌新聞などにこの語が載るときは、ずっと「均てん」と記述されていたのだろうと思う。経済にうとい私は、「均霑」に初めて出会った。

 この語を私も使うけれど、漢字では書かない、というのは、「所詮→しょせん」。
 副詞、接続詞、感嘆詞はできるだけ平仮名で書く。「而るに→しかるに」「寧ろ→むしろ」「嗚呼→ああ」など、私は漢字で書かないようにしている。連体詞も、「所謂→いわゆる」と、ひらがなで表記する。

 また、訓読みの動詞は、できるだけ平仮名で書くのが私の好み。「労る→いたわる」「頷く→うなずく」「弾ける→はじける」「捧げる→ささげる」
 「蠢く→うごめく」は、平仮名で書くこともあるけれど、虫がぞろぞろ動いている感覚を出したいときのみ漢字で「蠢く」

A:たとえば、せつぞくしやふくしなどは、ひらがなでかくほうがおおい
B:たとえば、接続詞や副詞などは、ひらがなで書くほうが多い。
C:例えば、接続詞や副詞等は、平仮名で書く方が多い。

 Aは、分かち書きしないと、読みにくい。ひらがなだけで表現する場合、分節ごとに区切って表記する。
 漢字を習う前の、ひらがなだけで表記してある日本語教科書は、この分かち書き方式。
 視覚障害者用点字も、この方式。
 たとえば せつぞくしや ふくしなどは ひらがなで かくほうが おおい。

 単語を知らない日本語学習者にとって、ならんでいる単語を区切ることはたいへん難しい。「区切ることはたいへん難しい」というこの一文を学習者に読ませてみると、クラスにひとりは「くぎること はたい へん むずかしい」と読む学生が出てくる。そして「ハタイ」を辞書でひいても、意味がでてこない、と悩むのだ。

 Bにするか、Cにするかは、各個人の好みになるだろう。
 何度も書いていることだが、個人の日記や手紙、個人の思想の表現や、小説詩などの創作において、どのような表現をするかは自由であり、漢字の使用も自由でいいのだ。

 非自立語は、単独で使うことができず、必ず何らかの自立語に附属して用いられる。
 「ども」は、「私ども」「手前ども」「あそこらにいるガキども」など、他の名詞に附属して用いる。

 そこで、「非自立語はひらがなでかく」という原則に従えば「子ども」になる。しかし、長年の表記慣用から、「子供」と書きたい人も多い。書き手によって、また、表現媒体によって、「子供」と書くか「子ども」と書くか、別れるだろう。

 「捏造」の「捏」は、常用漢字表に入っておらず、「他の漢字による表記さしかえ」もなかったので、長年「ねつ造」と、「ひらがな漢字交ぜ書き熟語」になっていた。
 しかし、近年「捏造」という語を雑誌新聞で使用する頻度が高くなり(「旧石器出土の捏造」など)、「捏造」と、漢字を書いてふりがなをつけることが多くなった。

 「捏造」にするか「ねつ造」にするかも、個人の表現はどちらでも自由。
 ただ、公共の場での公文書やマスコミの文章には、基準があったほうが便利、というだけ。

 何度も書くが、「正しい日本語」とか「美しい日本語」などに、決まりもなにもない。個人にとって「美しい」と感じる表現があれば、それが美しい日本語なのだ。
 社会においては「相手を不愉快にさせない表現」によって「的確に自分の思うところを伝達、表現」できればそれでいいのであって、「正しい漢字表記」などというのも、「現在のところ、決まりに従っている方が便利」というだけである。

 「正しい敬語の使い方」やらも「大多数に不愉快な感じを与えない」ために便利、ということにすぎない。敬語をつかわなくても、みんなが平気になれば、敬語もすたれる。

 これまた何度も登場するが、今から千年前、「枕草子」の中で清少納言は「近頃は言葉遣いが乱れていて嘆かわしい」と書いており、清少納言が聞いたら、今の「正しいとされている日本語」など、世も末の末、とても日本語とは言えないしろもの。
 でも、清少納言がどう嘆こうと、私たちは現代日本語を駆使して表現するしかない。

 漢字ひらがな表記も、今の基準が変わっていくことはありうる。
 敗戦直後のように「漢字も仮名もやめて、ローマ字一本にしよう」というのやら、「日本語は非論理的な言語だから、日本語を廃止してフランス語を国語にしよう」だのという論が出てくることはもはやないだろうが、表記の基準など、今後どんどんかわっていくだろう。

 私は、「どんどん変わる日本語」のウォッチングを続けるのをおもしろがっている一派である。世につれことばも変わっていくのは当然のことなのだ。
 どんどん変わるからこそ、「規範を設けたい」ということにもなるのだけれど。

~~~~~~~~~~

20190727
 「自分がなじんだ日本語が、おかしな言葉遣いになっている。若い人たちのことば、なってない」と嘆くことは、上記のように清少納言の昔から、いや文字表記・書き言葉がなかった時代にもあったに違いない。
 しかし、私の世代が厳しく注意され、「そんな日本語はない!」と教師に叱られた「ら抜き可能形。食べれる見れる出れる」は、今は辞書にも搭載され、若い世代には標準的表現になっています。

 ことばの変化は、これからも続くと思いますが、私はわたしの日本語を使っていくのみ。学生が「来週の授業、でれません」と言ってきたときは「はい、来週は出られないんですね」と答えるだけで、「でれない、じゃないだろ」なんと言いません。「先生の授業、ヤバイっすよ」と言われても、ほめことばと思ってにこにこ。次の授業で「ヤバイ」と「すごい」の語彙意味変遷をちらりと教えておく。いまは誉め言葉としても使われる「すごい」も平安時代はそうではなかった。

 自国語表記をハングル文字ひとつに統一した韓国朝鮮、中国語由来の語彙がたくさん含まれているベトナム語なのに、アルファベット表記にしたベトナム。それぞれの国語政策です。日本語は、「ローマ字統一表記論」その他さまざまな議論があった中、漢字かな交じり表記を続けました。私は、日本語の表記にいちばん合っていると思っています。非漢字圏の留学生にとっては、漢字習得が日本語の難しさのひとつになっているのは事実ですが。

<つづく>
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ぽかぽか春庭「平成の漢字かな交じり文」

2019-07-25 00:00:01 | エッセイ、コラム
20190725
ぽかぽか春庭ことばの知恵の輪>感じる漢字(9)平成の漢字かな交じり文

 春庭コラムの中、漢字について書いたものを再録しています。
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2005/12/23(金) 
日本語相談(8)漢字とひらがな(最近のエッセイ)

 ごく最近の文章をみてみよう。2005年12月9~15日の「R25」
 「R25」は、25歳前後の男性勤労者を対象としたフリーマガジン。私、25歳でも、男性でもないけれど、無料大好きなので愛読中です。
 巻末に連載されていた、石田衣良のエッセイ。 若者向けのエッセイなので、ひらがな、カタカナがぐんと多くなる。


 「このコラムを読んでいるそこのあなた、つぎの日曜日に簡単な料理をはじめてみませんか。最初はオムレツとか野菜炒めなんかでいいと思う。オムレツなら好きなチーズでもいれてみる。野菜炒めなら肉にちゃんと下味をつける。それくらいでぐんとおいしさがアップする。どちらの料理も火加減が肝心なので、よくフライパンを焼いておくこと。失敗しても自分でつくった料理はいとしいもの。ファッションなんかより、料理のできる男のほうが、ずっと合コンでのポイントも高いのだ。 みんな、がんばれ!」

 カナモジ会の主張ほどカナが多くはないが、一般的には漢字で書かれる「始めて→はじめて」「作った→つくった」など、仮名書きが多いことがわかる。
 近頃のカタカナ外来語の多さ、漢字表記の少なさをお嘆きの方のためにこのエッセイを「できるだけ漢字で」「外来語なしで」表記するなら、

 「 此の囲み記事を読んで居る其処の貴男、次の日曜日に簡単な料理を始めて見ませんか。最初は洋風卵焼きとか野菜炒め等で良いと思う。洋風卵焼きなら、好きな酪酥醍醐も入れて見る。野菜炒めなら肉にちゃんと下味を付ける。其れ位で群と美味しさが上昇する。どちらの料理も火加減が肝心なので、良く揚げ物用平鍋を焼いて置く事。失敗為ても自分で作った料理は愛しい物。流行衣服等依り、料理の出来る男の方がずっと男女合同懇親会での点数も高いのだ。皆、頑張れ 」

 内容は同じこと書いてあるのに、印象がまったく変わってしまうことがわかる。
 この漢字表記だと、おそらく「R25」の読者は、ページをひらいても、読まないだろう。紙面の字面がたいへん重苦しく、おいしいオムレツもお腹にもたれる感じがしてしまう。

 私は、石田衣良の「ひらがな多めエッセイ」の表記法、読みやすいと感じた。
 ただし、子どもや学生が漢字を覚えなくてよい、という意味ではない。

 漢字教育をおろそかにすることには、反対。
 漢字語彙は、日本言語文化の根幹ともいうべき財産である。漢字語彙、漢字文化を学び取ったのちに、自分の文章をひらがなで開いていくことは、かまわないが、最初から漢字を知らないのでは、2000年間に培われた知的財産を放棄することになる。
 (「培われた」を「つちかわれた」と、ひらがなにするか、迷ったけど、漢字覚えろという部分なので、一応漢字表記)
 漢字教育とはすなわち語彙教育であって、漢字を知らないと日本語の語彙の重要部分を担う漢字熟語を使いこなせないことになる。

 ろくじょうさんから「渙発」という熟語についてコメントをいただいた。ろくじょうさんの母上から戦地の父上にあてた手紙の中にあった言葉。

 「大詔渙発」という言葉について、戦後生まれは見たこと使ったことなく、知らないままでした。和語でいうと「すめらみこと、みことのりをのたまふ」でもって、取り消しはきかないよ、っていう意味。

 コメントへの返信。
「大詔が渙発されました」の「渙発」、ろくじょうさんの日記ではじめて見ました。
「綸言汗のごとし」は知っていたけど、「渙汗」は知らなかった。ほんと、勉強になります。

 才気煥発の「煥」も、「渙」も常用漢字表からもれて、使われなくなった。それでも才気煥発のほうは、四字熟語の本などに載ることがあったので、忘れられなかったけれど、「大詔渙発」のほうは、歴史を勉強していない私には「死語の世界」でした。
==============
 大詔渙発の渙、才気煥発の煥、常用漢字からはずれた→学校で教えず、印刷物に載ることがなくなる→読める人がいなくなる→死語の世界へ

 私は高校時代、古文は好きだったが、返り点レ点一二点上下点というのが面倒で漢文はさぼった。だから、漢文脈の文体を駆使できる人、すごいなあとその文体に見とれてしまう。
 大学入試から漢文必修がなくなって、今や漢文読解は、高校国語教育においても風前の灯火。
 若い方々、どうぞ、漢字漢文をケギライしないでくださいネー。(自分は棚に上げていう)


~~~~~~~~~~~~~

2005/12/24(土) 
日本語相談(9)漢字とひらがな(漢字率計算)

 明治の随筆(幸田露伴)と、最近のエッセイ(石田衣良)の漢字率を出してみよう。分節で分かち書きをして、漢字を含む分節と、含まない文節を数える。(ただし、分節の分け方は、学者によってことなるので、日本語教科書の分節基準による。)
 (分節は、基本の自立語に、助詞や接辞が附属したものをいう。小学校では「ネ」を入れて読め、と教える。「春さんはネ 昨日ネ 学校をネ 休んだんだネ。」この文は、分節4つ。)


「 棊は 支那に 起る。博物志に、尭囲棊を 造り、丹朱 これを 善くすと いい、晋中興書に、陶侃荊州の 任に 在る 時、佐史の 博奕の 戯具を 見て 之を 江に 投じて 曰く、囲棊は 尭舜 以て 愚子に 教え、博は 殷紂の 造る 所なり、諸君は 並に 国器なり、何ぞ 以て 為さんと いえるを 以て 夙に 棊は 尭舜時代に 起るとの 説 ありしを 知る。然れども 棊の 果して 尭の 手に 創造せられしや 否やは 明らかならず、猶博物志の 老子の 胡に 入つて 樗蒲を 造り、説文の 古は 島曹博を 作れりと いうが如し、此を 古伝説と 云う可きのみ。」

 71分節あるうち、ひらがな表記の分節は3つ。漢字率、約 96%

「 この コラムを 読んでいる そこの あなた、つぎの 日曜日に 簡単な 料理を はじめてみませんか。最初は オムレツとか 野菜炒めなんかで いいと 思う。オムレツなら 好きな チーズでも いれてみる。野菜炒めなら 肉に ちゃんと 下味を つける。それくらいで ぐんと おいしさが アップする。どちらの 料理も 火加減が 肝心なので、よく フライパンを 焼いておくこと。失敗しても 自分で つくった 料理は いとしいもの。ファッションなんかより、料理の できる 男の ほうが、ずっと 合コンでの ポイントも 高いのだ。 みんな、がんばれ 

 52分節あるうち、ひらがな表記の分節は31。漢字率約40%

 ふたつのエッセイだけの比較では断定できないが、100年のうちに、漢字使用率が大幅に少なくなっていることがわかる。

 常用漢字表にない漢字は使用しないのが原則であるが、「愛がん動物」とか、「長年当校で教べんを取られた先生」など、漢字ひらがな混じり熟語というのは、なんだか、まぬけな気がする。
 「敵の間ちょうを捕らえた」など、「間ちょう」って何?っていうことになり、「間諜(かんちょう=スパイ)」であると理解するのに時間がかかる。「愛玩動物」「教鞭」「間諜」と漢字で書いて、ふりがなを振ったほうが、わかりやすい。

 私の表記基準。非自立語、接続詞、副詞、感嘆詞などは、できるだけひらがなで書く。ひらがなで書いても、意味が通じる和語動詞(訓読み動詞)」は、ひらがなで書くことを優先する。
 「かく」は「書く」「掻く」「欠く」などがあり、「よんでいる」は「読んでいる」「詠んでいる」「呼んでいる」などと、まぎらわしいので漢字で書くが、「労る→いたわる」「捧げる→ささげる」「傾げる→かしげる」など、ひらがなで書いても他の語とまちがえることが少ない動詞は、ひらがな書き優先。

 常用漢字外の熟語にはできるかぎり、ふりがなをつける。という方針で、表記していこうと思っている。

 最後に、もう一度、確認を。
 「個人の表現は、他者を傷つけない限り、どのような表現も自由」。

 漢字とかな表記、「基準はあるけれど、基準だけを墨守する必要はない。要するに誤解を生むことなく、自分の表現したいことが、的確に伝わること」、これができればよいのだから。

~~~~~~~~~~~~~~
20190725

 漢字とひらがなカタカナの混ぜ具合、文章の内容にもよりますが、文体によって印象が変わります。みなさま、それぞれのお好みで漢字表記をお使いください。 

<つづく>
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ぽかぽか春庭「明治時代の漢字かな使い分け」

2019-07-23 00:00:01 | エッセイ、コラム
20190723
ぽかぽか春庭ことばの知恵の輪>再録感じる漢字(8)明治時代の漢字かな使い分け

 春庭コラムの中、漢字について書いたものを再録しています。
~~~~~~~~~~
2005/12/21(水) 
日本語相談(6)>漢字とひらがな(明治の随筆)
 
 現在、新聞社でサイト編集をしているまっき~さんからのコメント。
「 編集やって気付いたのが、「子供」「子ども」「捏造」「ねつ造」とか、使い分けが多いですね。」 (2005 12/19 9:21)

 「子供」の「供」。「供」の、もともとの意味は「寄り添う者、つき従う者、ともだち」の意味である。「部長のお供をして接待へ」など。
 しかし、「子供」という語のばあい、「供」は、「ども」の当て字。「ども」は、名詞につけて複数を表わす非自立語である。非自立語であるので「どもが歩いている」などとは表現できない。

 12/19に解説した「子ども」の表記について、付け加え。
 「ども」は名詞について複数を表わす、と書いたが、「ども」は、自分より目下の存在を複数にする場合と、自称を謙遜卑下して複数する場合に用いる。

 「私ども」「近所のガキども」「幕府の犬ども」は、よいが、「先生ども」「お母さんども」などの場合、先生やお母さんを低くみておとしめるという語感になったしまう。
 耐震強度偽装の建築屋ども、歳費お手盛りで税値上げに賛成する議員ども、など、意図的に「ども」を使うことはあり得るが、一般の名詞には使わない。
 一般の名詞を複数にするときは、「たち」を使う。「学生たち」「お母さんたち」など。
 
 同じ複数でも、「私たち」と「私ども」は、語感がちがう。「私ども」は、謙遜意識を含む。また、「たち」と「ども」は共起しない。(一つの語のなか、文のなかでいっしょに用いられることを共起するという)
 「私どもたち」とは言えない。

 しかし、「子ども」に関しては「子どもたち」と言える。これは、「子ども」の「ども」が「複数をあらわす接尾辞」から「子ども」というひとつの単語の一部に昇格し、「こども」は、ふたつに分けられないひとまとまりの単語と見なされるようになったからである。
 「子+ども」から、「こども」という一単語になり、それに、さらに複数の「たち」がついて「子どもたち」となっている。
 「子ども」をひとつの単語と見なした場合「子供」という表記でよいことになる。

 そのため、「子ども」「子供」両方の表記が混ざって使われているのだ。「朝日新聞用語辞典」では「こども」の表記は「子供」と出ているが、2005/12/20夕刊一面のコラム「ニッポン人脈記」の中では「子ども」と表記されている。

 このように、漢字とひらがなの表記も「ゆれ」があり、変化がある。
 日本語の文法や発音も大きく変化してきた。文章史においても、古事記の文章から現代の文章まで、さまざまな表現があり、表記があり、変化しつつ現在の文体になっている。

 古事記からの文体変遷史となるとさても壮大なことになるので、近代文体史のなかの、漢字ひらがな表記の問題にかぎって、表記の変遷をほんのさわりだけ、見ていこう。
 近代日本語史の流れからいくと、確実にひらがなカタカナ表記が増えていく傾向にある。
 漢字と仮名の割合。時代を追って見ていこう。
 
 幸田露伴が明治時代に書いた「碁」についてのエッセイ。(原文の旧字旧仮名遣いを新字新仮名で表記)
 読まずに、字面だけ眺めてください。エッセイといっても、漢字が多いことがわかる。
 
棊は支那に起る。博物志に、尭囲棊を造り、丹朱これを善くすといい、晋中興書に、陶侃荊州の任に在る時、佐史の博奕の戯具を見て之を江に投じて曰く、囲棊は尭舜以て愚子に教え、博は殷紂の造る所なり、諸君は並に国器なり、何ぞ以て為さん、といえるを以て、夙に棊は尭舜時代に起るとの説ありしを知る。然れども棊の果して尭の手に創造せられしや否やは明らかならず、猶博物志の老子の胡に入つて樗蒲を造り、説文の古は島曹博を作れりというが如し、此を古伝説と云う可きのみ。」

 エッセイといっても、難しいですね。こういうエッセイを楽しんで読む読者層も、漢文の素養がたっぷりの人達だったのでしょう。

<つづく>

2005/12/22(木) 
日本語相談(7)>漢字とひらがな(明治大正昭和の文)

 ろくじょうさんが紹介してくれた、明治時代の手紙文。
 「お目にかかってお礼を申し上げるべきなのに、熱がでちゃったんで、ゆるしてね」という内容だと思うのだけど、まあ、難しいこと。。


 「 小生義 以テ拝趨鳴謝可仕筈之処、先日来 間歇熱状ニテ平臥罷在暫時不敬可 御海恕奉願候 」

 仮名書きは「以テ」の「て」と「熱状ニテ」の「にて」二ヶ所のみ。

 大正7年に、群馬県の蚕種業者である田島信が書いた「欧米旅行日誌」の冒頭。(原文旧字カタカナ書き旧仮名遣いを新字新かなで表記)

 寺や漢学塾で基礎的な教育を受けただけの農民出身の商人であるが、明治時代に書き留めた旅行記に、大正時代になって、序文を書いた。
現在ではカタカナで書く国名地名も、伊太利亜国(イタリア国)未蘭府(おそらくミラノ市)と、できるかぎり漢字で表記していたほか、文全体に漢字が多い。

 大正期になっていても、一般の人は文章を書くとなると、まだまだかしこまって一筆啓上していた。

 「伊太利亜古国未蘭府於て蚕種売捌の紙数代価及び買人姓名日々明細筆記、明治三十一年水害の節日記浸水汚染す、文字誤謬多く慚愧を忍で書 」

 明治期の言文一致運動を経て、明治後半から大正にかけて、夏目漱石らによって、日本語の書き言葉、文章の規範が確立した。文章史において、漱石以後は、現在の文章とかわらない表現になってきているのである。

 漱石は、漢詩漢文によって教養の基本を築いた人。漢文素養にプラスして英文学研究者として研鑽をつみ、さらに、江戸期の随筆や俳句俳文、円朝らの落語速記録を重ね、近代文体の確立に苦心した。
 これらを総合して現在の「現代文」が成立していった。

1909(明治42)年の漱石の文章『永日小品』より。
 高浜虚子らとの交友記、正月の一日を闊達に描写している。現在の文章を読むのと、かわりなく読める。


 「雑煮を食って、書斎に引き取ると、しばらくして三四人来た。いずれも若い男である。そのうちの一人がフロックを着ている。着なれないせいか、メルトンに対して妙に遠慮する傾きがある。あとのものは皆和服で、かつ不断着のままだからとんと正月らしくない。この連中がフロックを眺めて、やあ――やあと一ツずつ云った。みんな驚いた証拠である。自分も一番あとで、やあと云った。
 フロックは白い手巾(ハンケチ)を出して、用もない顔を拭いた。そうして、しきりに屠蘇を飲んだ。ほかの連中も大いに膳のものを突ついている。ところへ虚子が車で来た。これは黒い羽織に黒い紋付を着て、極めて旧式にきまっている。あなたは黒紋付を持っていますが、やはり能をやるからその必要があるんでしょうと聞いたら、虚子が、ええそうですと答えた。そうして、一つ謡いませんかと云い出した。自分は謡ってもようござんすと応じた
。」
 (引用者注:メルトン(melton) 肉厚ののケバ立った紡毛地。平織りの生地をフェルト状に仕上げたもので、防寒用のコ-トやブレザ-に用いられる。)

 昭和期の文章のなかで、漢字が多そうな文を選んでみる。
 中島敦も漢文の素養があり、中国の歴史などに取材した小説を執筆した。
1942(昭和17)年、中島敦「盈虚(えいきょ)」より

 「衛の霊公の三十九年と云う年の秋に、太子が父の命を受けて斉に使したことがある。途に宋の国を過ぎた時、畑に耕す農夫共が妙な唄を歌うのを聞いた。
既定爾婁豬 盍帰吾艾(牝豚はたしかに遣った故 早く牡豚を返すべし)
 衛の太子は之を聞くと顔色を変えた。思い当ることがあったのである。
 父・霊公の夫人(といっても太子の母ではない)南子は宋の国から来ている。容色よりも寧ろ其の才気で以てすっかり霊公をまるめ込んでいるのだが、此の夫人が最近霊公に勧め、宋から公子朝という者を呼んで衛の大夫に任じさせた。宋朝は有名な美男である。衛に嫁ぐ以前の南子と醜関係があったことは、霊公以外の誰一人として知らぬ者は無い
。」

 昭和になると、中島のように漢文の素養が豊かな作家でも、だいぶ漢字の使用はすくなくなっていることがわかる。
 「寧ろ→むしろ」「其の→その」「此の→この」など、現代ではひらがなで書かれるほうが多い単語も漢字で書かれているが、読みにくくはない。


<つづく>
コメント (2)
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ぽかぽか春庭「漢字表記の基準」

2019-07-21 00:00:01 | エッセイ、コラム
20190722
ぽかぽか春庭ことばの知恵の輪>感じる漢字(7)漢字表記の基準

 春庭コラムの中、漢字について書いたものを再録しています。
~~~~~~~~~

2005/12/15 木
日本語相談>(2)漢字表記について

 k****さんは、40歳以上年下の中国から来日した奥様と、自船での沖釣りを愛する、悠々自適の太公望。奥様の日本語上達のために、日本語学校への送迎と、日本語学習への援助を続ける愛妻家です。

 k****さんからの質問。
お早う御座います!チョッとお尋ね致します。
漢字の事ですが、こと・を漢字では「事」と書きますね。
今は漢字の「事」を使用しないで「こと」と書くのですか?
嫁さんの日本語学校では「事」と書くとバツなのです。今は、ひらがなで「こと」と書かなければならないそうです。
先生、この事はどうなのでしょう。教えて下さい。 (2005 12/12 9:19)

返信)漢字の基準
 現在の文部科学省国語審議会による「表記基準」や新聞社表記基準によると、名詞としての実体を有している単語は漢字で表記するが、文のなかで、単語としての独自性を持たない(自立語ではない)語については、ひらがな表記をする、という方向がしめされています。
原則>自立語は漢字で、文中の機能を担う助詞、助動詞、補助動詞などはひらがなで。

 たとえば、「いる」という動詞。「昨日、寒かったので、ずっと家に居た」という場合、「居る」は、動詞としての実体を有しているから、漢字で書いてよい。
 しかし、「一日中、遊んでいるばかりで、仕事をしていない」というとき、「遊んで居る」と書かない。この場合の「いる」は補助動詞(アスペクト継続相をあらわす)であって、本動詞の働きとは異なるから。

 名詞も同じ。「事を荒立てる」などは名詞としての実体があり「事件」「ことがら」という意味があるので、漢字で書くのはOK。
 しかし、「中国へ行ったことがあります」の「こと」は、「行く」を名詞化するための、補助的な用法であり、「中国へ行くのは来年です」の中の「の」と同じです。この場合の「こと」は、「形式名詞」であり、補助的な働きをしています。
 「の」をひらがなで書くように、補助的な「こと」は、ひらがなで書く方がのぞましいとされています。

 ただし、表記は、あくまでもひとつの指針であり、個々の表現者が「これは漢字で表記したいと思ったとき、「遊んで居る」と書いても「行く事」と書いても、間違いとは言えないのです。表現は自由。

 日本語学校の先生は、原則を原則通りに杓子定規にバツをつけているのだと思いますが、テストの場合、基準を設けて採点しなければならないので、原則優先にしているのでしょう。

 日常の手紙などでの漢字表記は、ひらがなでも漢字でも、自由に書いてよいと思います。(2005-12-12 11:10:45)

 明治時代の文章などでは、漢文脈の文章では特にそうだが、今ではひらがなで書くような語も、できる限り漢字で表記しようとしている。
 漢字とかなの混ぜ具合に心をくだいた文章家もいるほどで、どの語を漢字で書き、どの部分をひらがなで書くかは、書き手の文体意識に左右される。

 また、「カナモジ会」運動をすすめた人々のように、漢字で書かないと意味が区別できない同音語以外は、できるかぎり平仮名で書こうとする人もいる。
 
 原則はあるが、ある語を漢字で書くかどうかは、表現者それぞれに任されている。以下、ABC,お好みで。

A: 分かち書きで表記しない場合、漢字は単語と単語を区別する、目で見る「単語」区別の役割も担っている。
B: わかちがきで表記しないばあい、漢字はたんごとたんごをくべつする、目でみる「たんご」くべつのやくわりもになっている。
C:わかちがきでひょうきしないばあい、かんじはたんごとたんごをくべつする、めでみる「たんご」くべつのやくわりもになっている。」


~~~~~~~~~~
20190721

 だれもが気楽に文章をパソコンワープロやスマホで書けるようになった現代。漢字変換も、クリックひとつで手軽にできます。そうすると、昔は漢字で書いていたけれど、最近の常用漢字基準ではひらがなで書くようになった語も、漢字変換の候補に出てくるようになり、若者の中には、「こういう漢字だったのか、ちょい、かっこいいかも」と使う人も出てきました。
 
 私はひらがなで表記している「ありがとうございます」を「有難う御座います」と書く人もいるし、「しかしながら」を、漢字変換で出てきた「併し乍ら・然し乍ら」という表記を使う若者もいます。
 「表記は、個人の好みで」というのが私の方針ですが、私は、漢字で書かなければ意味が通じにくい、という場合以外は、できるだけひらがなで書きたい。

 漢字は自立語と付属語を分かつ目印にもなっているので、漢字にしたほうが、意味が通じやすい場合には漢字を、ひらがなで書いても意味がまぎらわしくない場合にはひらがなで。

<つづく>
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ぽかぽか春庭「続・中国語のオノマトペ」

2019-07-20 00:00:01 | エッセイ、コラム
20190720
ぽかぽか春庭ことばの知恵の輪>再録感じる漢字(5)続・中国語オノマトペ

 春庭コラムの中、漢字について書いたものの再録です。
 中国語のオノマトペについて、追加部分の再録と、新記載部分。
~~~~~~~~~~

2009/04/30
ニーハオ春庭ニッポニアニッポン語教室>漢字の国のアリス革の宮(7)だれが決めるの?外来語表記

オノマトペ2弾
kotosuzume (2008-06-23 10:59:36 )
 先日の続編です。
 島さんに春庭さんのご解説を紹介すると、「私の興味は、中国で地方の発音が違うのにスターリンとかプーチンとかの中国語表記を誰が決めるのか?ということです。これを中国人に質問して話題にすることがよくあります。動物の鳴き声などの表現方法は、低学年向け教科書や漫画の作者が使った表現が一般化したのかと思っています。」と、まだかかえている物がありそうな口調です 
 確かに、発音が異なる民族が沢山いて、お互い言葉が通じないと言われる大国で、どうやって外国の固有名詞を対応付するのでしょうね。これを考え始めるとまた頭の中がぐるぐるしそうです。ご解説その2、よろしくお願いします。  古都雀
==========
Re:オノマトペ2弾回答
haruniwa (2008-06-23 22:32:26 )
 中国では、ひとつの漢字に、標準語(北京官話=マンダリン)の発音は一つだけです。
 しかし、地方では方言の差がおおきく、名前などでも、南方で「陳=チェン」さんだった人が、北京の大学に入ったときは、「陳=チン」さんと呼ばれます。
 地名では、広東地方の「広東」を例にとると、広東地方では「Gwong・dung」という発音ですが、北京語では「Guǎngdōng」になります。

 外国人の人名は、最初は文字がないのですから、発音が優先されます。
 国営新聞社である「新華社」などが、もっとも早く、報道などで人名表記をするので、おおよそは新華社報道の表記が優先的に広まります。
 しかし、古い人名表記などでは、そのような中央優先ではなかったので、スターリンの表記も)、「斯大林」、「史達林」の2種類(ほかにもあるでしょう)が流通しました。

========
Re:オノマトペ2弾
kotosuzume (2008-06-24 23:32:12)
 早いもの勝ちですかね。それにしても、やはり言葉は心の組立て材料でしょうから、この材料選び、組み合せの妙というな詩情を感じますね。面白いものです。
 時間を見つけて、ご案内の記事を読んでみます。ありがとうございました。 当の社長が言っていました。「これを追及すると一冊の本が出来るねえ」って。酒席の雑談に花が咲き、実が生った気がします。 古都雀
==========
 以上、掲示板での「中国語の外国人名表記オノマトペ表記」についての質問と回答、再録でした。古都雀さん、ひでさん、ご質問をよせていただき、ありがとうございました。あちゃさんからの「日本の地名は自然の状態を表していることが多いですが、中国はどうですか」という質問にはのちほどお答えします。
~~~~~~~~~
20190711
 
 2009年にはあまり出ていなかった中国語のオノマトペ(象声詞)について、10年たった2019年にはいくつかのサイトで中国語オノマトペのまとめサイトも出てきました。

 春庭編集の中国語オノマトペ。本格的に知りたい方は、上記の呉川『オノマトペを中心とした中日対照言語研究』などをご参照ください。中国語のオノマトペが豊かになってきたのは、日本語の漫画表現を翻訳する苦労からも広がったようで、ここにも中国語と日本語の交流の結果があります。
 以下は、ネット参照による春庭のまとめ中国語オノマトペです。参照させていただいたサイトのみなさま、謝謝。

<自然の音>
・隆隆(longlong)ロンロン [口古]隆(gulong)グーロン 雷・雷声
・嗖 sōu=風の音「ぴゅー」
・哗哗 huāhuā 雨や水の流れる音。
・哗啦 huā lā=水を撒く音、水が流れる音(水多め) 「ざばー」「ざぁ」「どばっ」
・哗啦啦 huālālā 物が落ちたり崩れたりするときの音。チャリーン
・啪嗒 pā dā 水の音(水少なめ) 「ぽとっ」「ぽつっ」
・扑通 pū tōng=水に落ちる「ボトン」
・喀吧 kābā 鋭くて短い音、枝などが折れる音。

<物音>
・lingling(リンリン)鈴の音 鈴鈴
・咔嚓 ka cha=「ガチャ」「ガサッ」
・咚咚 dōng dōng=「ドンドン」「バンバン」
・咣当 guāng dāng=「ポカッ」「ガタッ」
・啪嗒 pā dā=「ポト」「パチ」「カタ」
・咕噜咕噜 gūlugūlu 鈍くて長い音。煮物が煮立つ音。ものが転がるときに出る音。
・轰 hōng 爆音や雷などの音。ドカーン。
・轰隆轰隆 hōnglonghōnglong 重くて鈍い音。列車の音
・乓 pāng にぶくて軽い音、銃声など。
・咔嚓 kāchā 軽くて鋭い音、カメラのシャッターの音、カギをかける音
・砰 pēng 爆発音、ガラスが割れる音
・噼里啪啦 pīlipālā はじけるような音。パチパチ。パラパラ。
・嗡嗡 wēngwēng 長くてにぶい音、扇風機の音、蚊やハチの飛ぶ音。

<人の行動・動作>
・嚓嚓 chā chā=ごしごし擦る
・阿嚏 ā ti=くしゃみの音「ハックション」
・呼噜呼噜 hū lū hū lū=いびきの音「ガーガー」「スースー」
・呼呼 hū hū=息を吐く音「フーフー」
・噗噗 pū pū=息を出して吹く「ブーブー」「プー」「フー」
・哈哈 hāhā 笑い声。ハハ。
・呼哧 hūchī 荒い息づかい、あえぐ息など。はあはあ、ぜいぜい
・呼噜 hūlū 鼻や喉の音。グルグル、グーグー。
・吁吁 xūxū あえぐ音、息をつく音。ハアハア。
・吁吁 yūyū 馬や牛を止めるときの掛け声。どうどう

<動物鳴き声>
・犬 汪汪wāngwāngワンワン
・猫 喵喵 miāomiāo ミャオミャオ(ニャーニャー)
・子猫 咪咪 mīmī ミーミー
・牛 哞哞 mōumōu モーモー
・羊ヤギ 咩咩miēmiē ミェミェ メェーメェー
・馬ロバ 咴儿咴儿huīrhuīr ヒヒール(ヒヒーン)
・虎ライオン 嗷嗷 āo'āo ガオゥ 
・豚 [ロ古]噌 guluグールー (ブーブー)
・ネズミ 吱吱 zīzī チューチュー
・アヒル 呱呱 嘎嘎 guagua クァクァ(グアグア)
・蜂 [ロ翁 ロ翁] wengwengウェンウェ) 
・鳥 啾啾jiujiu ジュージュー(チュンチュン) [ロ査 ロ査] chacha(チャーチャー)
・小鳥さえずり 叽叽喳喳 jījīzhāzhā (チチチ)
・カッコウ 布谷bugu(ブーグー)
・にわとり 雄鶏 喔喔 wōwō オーオー(コケコッコー) 雌鳥 咯咯[ロ達] コーコー グーダー (コッコー)
・カエル 呱呱 quāguā ケロケロ(カエル)
・コオロギ 啾啾 jiūjiū ジゥジゥ(コロコロ)
・カラス 哑哑 yāyā ヤーヤー (カァーカァー)

<擬態語>
・習習 xíxí シーシー (そよそよ)
・哆嗦 duō suo ダォスォ(ゾクゾク)
・瞟 piǎo ピィアオ(ちらっと見る)
・忽悠悠 hū yōu yōu フヨーヨー(ひらひら)
・哧溜 chī liū チリュー (滑る様子つるっ


 日本語のオノマトペは、留学生向けのオノマトペ事典に載っているものだけで500程度。実際には5000語以上あるといわれています。一方中国語のオノマトペはせいぜい300ほど。それでも、硬い文体しか記録されていなかった昔に比べれば、漫画アニメの翻訳などで中国語オノマトペが豊かになったのではないかと感じます。



<つづく>

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ぽかぽか春庭「中国語の外来語オノマトペ表記」

2019-07-18 00:00:01 | エッセイ、コラム
20190718
ぽかぽか春庭ことばの知恵の輪>再録感じる漢字(5)中国語の外来語表記オノマトペ表記

 2009年の春庭コラムの再録です。中国赴任中の執筆だったので、資料が足りずやや不足な面がありましたが、そのまま再録します。
~~~~~~~~~~~~~~~

ニーハオ春庭「中国語で書く国名人名」
2009/04/27
ニーハオ春庭ニッポニアニッポン語教室>漢字の国のアリス革の宮(4)中国語で書く国名、人名

 中国語での外来語表記方法のついで。
 中国語の人名地名表記とオノマトペ(擬声語擬音語擬態語)の表記方法について質問をいただきました。掲示板に昨年書いた回答を再録します。
==============
質問です
kotosuzume (2008-06-21 00:55:31)
 今晩は。
 寝て忘れないうちに書き込みします。
 先ほどまで、馴染み連と飲んでいたのですが、そこで、擬音の話題になったのです。
 と言うのも、東南アジア系の店員が居たり、フランス勤務経験者が居たりで、ロシア人の名前を中国ではどの様に文字で書くのだろうか、犬の鳴き声は、中国、東南アジアではどう言うのだろう、時計の音は、電話の呼び出し音は・・と、尽きません。
 そこに春庭さんが居ればなあと思ったしだいです。
 どのように発音し、文字に表すのでしょうか。  古都雀

Re:中国の人名地名表記について回答
haruniwa (2008-06-21 11:10:02)

1)中国語外国の地名人名表記

 1994年に中国に滞在したとき、町のメインストリートは)、「斯大林大路」でした。「スターリン大通り」です。2007年に滞在したときは、自由大路に変わっていました。
 本国ロシアでもそうでしょうが、中国でもスターリンの名を冠した建物や通りの名がめっきり減りました。

 国会図書館で推奨している「中国語での外国人人名表記」の本は
『世界地名人名辞典 : 中日欧対照』竹之内安巳著 国書刊行会 1978 (G64-5)
です。ご参照ください。

 ニュースで見聞きしているロシア人ほか西欧人の名前、中国語表記の一例
 普京プーチン 布什ブッシュ 薩科斉サルコジ 道格拉斯・麥克阿瑟ダグラス・マッカーサー(Douglas MacArthur) 希特拉ヒットラー 本拉登または本拉丹ビンラディン

 地名表記で注意すべきは、日本語で外国地名を漢字表記したものと、中国語表記が異なる場合があることです。

 フランス:日本語漢字表記「仏蘭西」、中国語漢字表記「法蘭西」
 ドイツ:日本語「独逸国」、中国語「徳意志国」など。アメリカは、日本では米国(ベイコク 阿米利加)、中国では美国(メイグォ 亜美利加)です。

 北京オリンピックの入場行進での204の国とオリンピック委員会設置地域の表記をみることができました。
 入場行進の国名プラカードは簡体字表記でしたので、日本の漢字におきかえた国名表記を、春庭掲示板に掲載しておきました。(春庭bbs2008/08/09を2009/04/27に再録)
 中国の漢字表記では国名はこうなるということを、お暇なおりにでも、ながめてくださいませ。

<つづく>

ニーハオ春庭「中国語で書くオノマトペ」
2009/04/28
ニーハオ春庭ニッポニアニッポン語教室>漢字の国のアリス革の宮(5)中国語で書くオノマトペ

 4月18日に、桃の花が咲きだした中を、近所の南湖という人工湖の公園の一部分だけ散歩しました。日本の上野公園とか代々木公園などに比べるととても広いので、湖の周りを一周するのは無理ですが、「やれ、うれしや、今年は春が早い」と思ったのは、気が早かった。先週1週間はまた冬に逆戻り。夜には最低気温が零下にもなりました。しまおうかと思ったコートを羽織っても寒い。夜はヒーターをつけています。

 氷のような冷たい風と、冷たい雨。雨は、気温改善のための人工雨だ、という話も聞きました。農業のために、当地では、雨が必要な時期には飛行機を飛ばして人工雨を降らせることがよく行われるという話です。
 雨は中国語で「雨ユィ」です。「雨が降る」は、「下雨シャァユィ」。発音を聞いていると、シャァユィ、シャァユィ、シャヮシャァと、雨が降る擬音(オノマトペ)のように感じます。
========

投稿者:w*******(2009-04-27 09:49)
雷の音はどのように表現しますか?日本語で「ピカッ!ゴロゴロ!」
水に飛び込む音「ザッブーン」または「ドボン」古池やかわず飛び込む水の音の音「トポン」は?
========
というご質問をいただきました。
 去年、掲示板に記した同様の質問に対する春庭回答を再録して上記のご質問のお答えとさせていただきます。
 日本語は、たいへんオノマトペが豊富な言語です。他の言語で、日本語と同じほどオノマトペの種類が多く、あらゆる現象の音を言語音として表現しているということばは、多くありません。
 英語にも中国語にもオノマトペは存在しますが、翻訳しようとすると、日本語の精密多彩なオノマトペを翻訳することが困難です。

 上記の質問の「サッブーン」「ドボン」なども、的確な中国語をさがすことはむずかしい。似たオノマトペがあるとしても、たとえば、雷鳴の「ゴロゴロ」にあたる音は中国語でも表すことができます。隆隆(longlong)ロンロンというのが、雷鳴のオノマトペです。

 しかし、オノマトペのうち擬態語となると、「ゴロゴロところがる」のと「コロコロところがる」の微妙な違いを、的確に翻訳することは難しい。
 音を聞き分けて「雨がシャーシャー降る」と「ジャージャーと降る」の違いを中国語のオノマトペ(象声詞)で表すことは難しいです。
 
 以下、掲示板に描いた中国語オノマトペの例について回答です。haruniwa (2008-06-21 12:12:3)
中国語オノマトペ(象声詞) 象声词=模拟自然界声音的词。

犬 汪汪(ワンワン)
鳥の一種 啾啾jiujiu(ジュージュー)
雷声 隆隆(longlong)ロンロン [口古]隆(gulong)グーロン
鈴の音 鈴鈴lingling(リンリン)
など。

<つづく>

ニーハオ春庭「中国語の動物鳴き声」
2009/04/29
ニーハオ春庭ニッポニアニッポン語教室>漢字の国のアリス革の宮(6)オノマトペを書き表す方法

 オノマトペについて回答つづきharuniwa (2008-06-22 21:23:07)
1)オノマトペ(擬態語擬声語擬音語)は、副詞の乏しい日本語にとって、副詞的表現を豊かにするために欠かせない語です。
 多くのオノマトペ研究者が存在しています。

2)鶏の鳴き声、日本語では「コケコッコー」と聞き取っています。しかし、英語では「コッカドゥルドゥルドゥ」と聞いている。人の耳は音の聞き取りも多様ですね。

 セミの鳴き声を聞いたときの脳波。
 日本語母語話者には「ミーン、ミーン」や「ジージー」と、聞こえますが、この鳴き声を「言語野」の脳が受け持って認識します。
 ところが、英語圏など、印欧語母語話者は、セミの鳴き声は、ノイズ(言語音以外の雑音)を認識する分野の脳によって認識するという脳波研究がでています。
 オノマトペが豊富な日本語、きっとさまざまな音を言語野によって認識しているんでしょうね

2)擬声語擬音語
 各国語それぞれに、動物の鳴き声や音をあらわした擬音語が存在します。
 でも、ことばが違えば、聞き取る音も異なります。
 日本で授業をしているとき、春庭のクラスにはさまざまな国の留学生が集まるので、ときどき「この音はどう表現するか」という擬音語擬声語を教えあう時間を作ったりします。
 異文化理解の一環です。
 韓国語、中国語をはじめ、いろんな国の犬や猫の鳴き声の言い方、音の表現が集まって、楽しいですよ。
 いろんな鳴き声のなかで、各国語でこれだけはみな同じ音にきこえる、という鳴き声は、「カッコウ」ですが、中国語でカッコウは「ブーグー」。ちょっとちがいますね。

 以下、中国語(普通話)での鳴き声(簡体字が表示されない漢字を作字してありますが、口偏がついた文字が多いです)
犬 汪汪(ワンワン)
猫 [ロ苗 ロ苗](ミャオミャオ)
牛 [ロ牟 ロ牟] moumou(モウモウ)
羊 [ロ羊 ロ羊] miemie(ミェミェ)
アヒル 呱呱 guagua(グアグア)
蜂 [ロ翁 ロ翁] wengweng(ウェンウェン)
豚 [ロ古]噌 gulu(グールー) 
鳥 啾啾でjiujiu(ジュージュー) [ロ査 ロ査] chacha(チャーチャー)
カッコウ 布谷bugu(ブーグー)
にわとり 雄鶏 [ロ屋 ロ屋] oo(オーオー)雌鳥 咯咯[ロ達](グーグーダー)

 私のオノマトペ対照調査は、各国留学生から聞き取り調査したものです。日本語のオノマトペを授業で紹介するついでに、留学生にオノマトペに興味を持ってもらうために「この音をあなたの国のことばではどう言い表すか」とたずねた「教室活動」の一環ですから、本格的なオノマトペ対照ではありません。
 本格的な研究書として、呉川(日本大学教授)の『オノマトペを中心とした中日対照言語研究 』などがあります。



<つづく>
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ぽかぽか春庭「和製漢語について「中華人民共和国」って70%日本語です」

2019-07-16 00:00:01 | エッセイ、コラム
20190716
ぽかぽか春庭ことばの知恵の輪>再録感じる漢字(4)和製漢語について「中華人民共和国」って70%日本語です」

 2009年4月に書いた漢字についてのコラム再録です。
 2009年3月―9月、中国に赴任して日本文科省国費留学生となる中国人学生に日本語を教えていました。中国と日本との漢字にまつわるかかわりについて書きました。
~~~~~~~~~~~~
20090424
ニーハオ春庭ニッポニアニッポン語教室>(2)チャイナ・ピープルズ・リパブリック「和製漢語」

 有栖川宮熾仁親王が錦の御旗を押し立てて江戸へ入城し、時代は明治。文明開化は疾風怒濤で世を変えていきました。
 明治時代、西欧の思想や科学・産業がどっと日本に入ってきました。福澤諭吉、西周らは、それらの新しい概念の語を、苦心して日本語に翻訳しました。日本語へ翻訳したといっても、和語ではなく、「和製漢語」を案出したのです。

 日本語が漢字表記を取り入れて以来、千年の間に「日本製漢字語」がぽつぽつと生まれて定着してきました。
 その中には、やまとことばでは「おほね」だった野菜に「大根」という当て字を用いたために、現在では音読みの「ダイコン」が定着している漢字語や、「ひのこと」の当て字「火事」が「カジ」として広くもちいられている「和語→漢字語」もあるし、日本で漢字の造語法を利用して作られた漢字語もあります。たとえば、芸を仕事とする者だから「芸者」、三本の糸を用いる楽器「三味線」など、中国の漢語にはなかった漢字語を用いてきました。

 幕末から明治時代にかけて、英語その他の西洋語から「科学」「哲学」「郵便」「野球」などが翻訳されました。日本語では「野球」と翻訳したBase ballは、中国では「棒球」と翻訳するなど、日中でことなる翻訳をした語がそれぞれに定着した語もありますが、多くの和製漢語がそのまま中国語にも定着しました。明治時代以後に来日した「清国留学生」たちが、日本製漢語を中国へ持ち帰ったためです。

柳父章「翻訳語成立事情」


 幕末以降、西欧由来の新概念や事物、個人・社会・主義などの翻訳された和製漢語を逆輸入した中国の人々は、もともと中国の漢語だったと信じて使っています。

 もともとあった中国の漢語、「自由」「観念」「福祉」「革命」などに、西洋の概念をあてはめて、新しい意味を持たせた語もあります。「自然」は日本語も「じねん」と読むときは仏教用語であり、「万物が現在あるがままに存在しているものであり、因果によって生じたのではないとする無因論」「ひとりでに、おのずから為す」という意味を持っていました。英語のnatureの翻訳語として「自然しぜん」が採用されました。

 そのため、中国語母語話者は、「革命など、もともと中国語にあった語彙だ」と思っています。もともとの「革命」の意味は、「命(天命)を革(あらた)める」という意味でした。王朝の交替などの場合に使われていた語を、英語のrevolution(語源は「回る、回転する」)にあてはめた語です。現在の中国では、現在古代中国語の意味としてより、日本が意味を改編した「revolution」の意味で使っています。

 言葉が社会に定着して使われるようになれば、その語がどこからやってきたかなどと言うことは、まったく気にせずに、もともとある言葉として根を下ろします。これは、日本人が煙草や天麩羅を、ポルトガルから来たなどと意識せずに「もともとの日本語」と信じて使っているのと同じです。

<つづく>

2009/04/25
ニーハオ春庭ニッポニアニッポン語教室>(2)チャイナ・ピープルズ・リパブリック「中華人民共和国」って70%日本語です

 「中華人民共和国」の「人民」「共和国」も和製漢語です。明治の日本人は、the people→人民、republic→共和国と、翻訳しました。
 中国からの留学生のなかで、「日本の漢字は、中国から輸出したものですよ。日本の語彙のほとんどは中国からの借り入れじゃないですか」と、いばる学生がいると、私は反撃します。

 「中華人民共和国」のうち、自前の語は「中華」だけだよ。人民も共和国も、日本人が作った言葉なんだからね。あんたたちの国名は、7文字のうち5文字が日本製だ!」
 「中華人民共和国」という国名の70%は、日本語(和製漢語)です。

 上海外国語大学日本語学部の教授をされていた陳生保『中国と日本――言葉・文学・文化』(麗澤大学出版会2005年)の中に、毛沢東の『実践論』の分析があります。
 陳教授が「日本で作られた漢語なしには、中国人の思想を書き表すこともできない」例としてあげている毛沢東の論文「実践論」の中、< >をつけた語彙は日本から中国へ伝わった漢字語です。毛沢東の原文では< >がついていませんが、同じ漢語で中国語を書いています。
========
 マルクス以前の<唯物論>は、人の<社会性>を無視し、人の歴史的発展を無視したもので、認識<問題>を観察した。それがために、認識と<社会>実践との依存<関係>、すなわち、<生産>と<階級><闘争>にたいする認識の依存<関係>を了解することができなかった。
 まず第一に、マルクス<主義>者は、こう思う。人類の<生産活動>は、最も基本的な実践<活動>であり、その他のすべての<活動>を決定するものである。人の認識は主として、<物質>の<生産活動>に依存し、しだいに、<自然>の<現象>・<自然>の性質・自然の法則<性>・人と<自然>との<関係>を了解する、その上、<生産活動>をとおして、各種の、ことなる程度で、しだいに人と人の一定の相互<関係>を認識する。
これらの一切の<知識>は、<生産活動>をはなれては得ることができない。<階級>のない社会では、どの人も<社会>の一員という資格でその他の<社会>のメンバーと協力し、一定の<生産関係>を結び、<生産活動>に従事して人類の<物資>生活の問題を解決する。いろいろな<階級社会>では、各<階級社会>のメンバーは、やはりいろいろ違った方式で一定の<生産関係>を結び、<生産活動>に従事して人類の<物資>生活の<問題>を解決する。これが人の認識発展の基本<的>なみなもとである。
============

 いかがですか。毛沢東も己の思想を著すために、語彙の25%は、日本で創作された漢字語彙を使っているのです。

 私がここで言いたいことは、この語はどっちが本家か、なんていう「本家・元祖・家元」争いではなく、ことばというものは、持ちつ持たれつ、交流しあうなかで語彙をふやしていくものだ、ということです。

<つづく>

2009/04/26
ニーハオ春庭ニッポニアニッポン語教室>(3)リーチ一発大三元

 結婚式に「新郎」と向きあう女性を中国語では「新娘」と呼びます。「娘」というのは、母親の世代の女性を意味しており、「新娘」といえば、これから母親になっていく新しい女性のこと。「我的娘」を日本語に訳すと「私の母」という意味になります。
 「新娘」という古来の中国語があるのに、brideの和製漢語「花嫁」はブライダル産業の発展とともに、中国でもおおいに知られる語彙となりました。
 lost loveの和製翻訳語「失恋」も、中国恋愛事情において、よく見かける語になりました。

 日本へ入ってきた中国語は、時代によって発音が変わっています。飛鳥奈良以前に入って来た発音は呉音といいます。中国の南方の発音に近いです。「行」という字を例にすると、修行(しゅぎょう)、行者(ぎょうじゃ)など、仏教関係の語に呉音「ギョウ」が多く残されています。平安の遣唐使らが伝えた発音を漢音といいます。「旅行」「行動」など、一番多いのが「コウ」と発音される漢音です。鎌倉以後に日本へ入った発音を「唐宋音」と呼びます。これは、熟語の数が少なく、「行灯(あんどん)」「行脚(あんぎゃ)」など、ごく一部です。唐宋音がない漢字がほとんどです。現代中国標準語(普通話)で「行」の発音は「シン」です。
 近世近代以後に、新しく日本へ入ってきた中国語は、できるだけ原音に近く発音されることが多いので、漢字の音読み(呉音・漢音)とはちがう読み方がされています。表記は漢字もありますが、カタカナ表記されることも多い。

 中国語の餃子(ヂャオズ)。
 日本でも餃子という漢字を用いますが、日本での読み方は「ギョウザ」。漢字表記もカタカナ表記もどちらも使われています。

 中国では、ほとんどが水餃子(茹で餃子)であるのに比べ、日本では焼き餃子が、ラーメンと並ぶ「国民食」として普及しました。おいしいギョウザ大好きです。
 (「毒入りギョウザ」のメタミドホス、いやなカタカナ語が耳になじんでしまいましたが、これはまた別のおはなし)

 餃子は昔のお金の形なので、中国人にはめでたいとき縁起物として食べられてきました
 明治食品HPから借り物画像


 麻雀マージャンも近代に入った読み方です。「立直」も、音読みのリッチョクではなく「リーチ」という中国発音のまま、日本語になりました。 
 マージャンパイのひとつ、白板(パイパン)。文字や絵が描かれていない白いマージャンパイです。
 白い部分に黒い文字がないところから、現在日本語としては、別の意味が備わり、使われています。別の意味を知りたい方は、ウィキペディア検索をどうぞ。
 黒いモジャモジャがなくて、つるっと白いのがいいという方に好まれるパイパン。

 あ~、私、マージャンはギョウザと同じくらい好きですが、パイパンは、大三元のときくらいしかご縁がなくて、、、、。
 パイパンプレイがお好きな方、「中チュン」や「發ファー(はつ)」とも仲良くしてやってね。3つずつ集めれば、大三元よ!って、ちがうプレイだよね。お好きにどうぞ。

 さて、漢字本家の中国では、外来語をどのように取り入れているのか、次回以降、お伝えします。
 日本で作られた漢字語はすんなり中国へ入りますが、英語など日本語ならカタカナで書いている語を、中国語はどのように書き表し、どのようにして自国語へ取り入れているのか、というテーマです。


<つづく> 
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ぽかぽか春庭「スパリゾートハワイアンズ温泉三昧」

2019-07-14 00:00:01 | エッセイ、コラム
20190714
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2019十九文屋日記夏の行楽(3)スパリゾートハワイアンズ温泉三昧

 スパリゾートハワイアンズ、水着を着て入る温泉、裸で入る温泉、そして1998年にオープンした江戸情緒がうりものの温泉、「江戸情話与一」。
 企画段階では、ハワイアンなのに江戸情緒?という声もあったそうですが、世界最大の露天風呂というキャッチコピーで、今では人気の温泉になっています。

 温泉でのんびりが一番。
 朝いちばんに行ったら、雨の中の露天風呂、だれもいなかったので、一枚。小雨の温泉、屋根のある部分にいれば、入っていられます。雨の中の露天風呂は初めての体験でした。

 雨の中の露天風呂、与一


 水着エリア


 プール、スパガーデンパレオで
 

 プールで平泳ぎしてみた69歳10ヶ月。


 プールエリアの一番のアトラクションは、高さと距離日本最大と言うウォータースライダー「ビッグアロハ」。こわがりの我が家、だれも行きませんでした。


 湯疲れ、泳ぎ疲れしたら、リビングでひとやすみ。「フラガール物語」など読みながら。


 3日目の昼も、娘息子がカフェで一休みの間に、昼のショーを見ました。

 
 ポリネシアンダンスショー終了後、プレミアムシート席の観客はダンサーといっしょに写真を撮ってもらうサービスあり。


 イケメンのファイアーナイフダンサーとは、こんなツーショットも。


 プール内カメハメハ大王像とツーショット。もっているバッグは、館内用の入場券などがセットされているもの。着ているムームーは、ジュニアスイートに宿泊した人だけの色なので、滞在中、私のほか、この色のムームーを着ている人に会いませんでした。ちょこっとスペシャル感!


 モノリスタワーの食事は、2晩ともポリネシアン料理店のバイキング。和食系もデザートも充実していて、2晩同じ店であきた、ということもなくおいしくいただきました。

 28日朝ごはん。和食系あれこれ並べました。浮かれたトロピカルジュースはオプションなので別料金。


 3日間、楽しく過ごしたハワイアンズ。温泉もプールもダンスショーも、とても楽しかったです。
 「楽しかったし、ジュニアスイートの客室は快適だったけど、つぎは、バス3時間ではなくて、電車で行けるところがいいという、娘の感想。さて、次の温泉は、、、どこにしましょうか。

<おわり>
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ぽかぽか春庭「スパリゾートハワイアンズのポリネシアンダンスショー」

2019-07-13 00:00:01 | エッセイ、コラム

 昼のショーのオープニング。ポリネシアミクロネシアの国々の旗が行進

20190713
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2019十九文屋日記夏の行楽(2)スパリゾートハワイアンズのポリネシアンダンスショー

 西欧のホテルのベッドサイトや物入の引き出しには聖書が入っています。アパホテルの引き出しには、元幕僚長の書いた国家防衛論の本が入っています。(No thank youという人多し)
 スパリゾートハワイアンズモノリスタワーの引き出しには『フラガール物語』が入っていました。2泊3日で、温泉やダンスショーのあいまに、一冊読み終わりました。速読は私の得意技。(清水一利『常磐音楽舞踊学院50周年史 フラガール物語』講談社 2015)

 今ではいっぱしのフラガール通です。


 映画『フラガール』のダンスの先生平山まどか(演:松雪泰子)のモデルになった早川和子(1932~カレイナニ早川、Ka-Lei-nani=美しいレイ(花輪))は、当初、まどかの人物設定に納得できませんでした。飲んだくれで借金からに逃げてきた、という設定。松竹歌劇団の踊り子をやっていたけど、都落ちせざるをえなくなりフクシマくんだりまで来た、というのも実像と違う。

 早川は、クラシックバレエなどの舞踊を納めたのち28歳でハワイに渡り正統派のフラを学びました。横浜で教室「早川洋舞塾」を持っているダンス教師で、社長の中村豊に頭を下げられ、数年だけならと、ダンス指導を引き受けたのです。
 中村が出した条件は、ただのダンス教室ではなく、きちんとした認可を受けた学校にするから、ということでした。常磐音楽舞踊学院は、福島県認可の正規の各種学校です。
 それから幾星霜。2019年87歳の早川は学院の最高顧問として、後進の指導にあたっています。常磐音楽舞踊学院は、創立から55年たちました。学院のダンサー指導に一生をかけた早川を、中村豊は「早川先生は学院と結婚してつくしてくれた」と感謝したそうです。

 映画公開後に、しずちゃん蒼井優と並ぶ早川和子(画像借り物)

 
 学院一期生だった小野恵美子(1943~旧姓豊田、ハワイアンネーム:レイモミ小野Lei-momi=美しい真珠)の実像も、映画の設定とはちがいます。映画では蒼井優演じる谷川紀美子は、高校卒業したばかりのダンス経験もない女の子になっていました。
 豊田恵美子は、常磐炭鉱事務職の父を持ち、幼いころからクラシックバレエのレッスンを受けていました。進学校の福島県立磐城女子高等学校のダンス部の部長をつとめ、常磐音楽舞踊学院発足時には、15歳から21歳までいた一期生18人の中、21歳のリーダー。当初から、他のダンス経験のない一期生を早川の右腕として指導しました。
 1966年の開業時から10年間ハワイアンセンターの舞台に立ち、結婚を機に引退。その後は常磐音楽舞踊学院の教授をつとめつつ、自分のダンススクールを持ち、後進を指導しています。

 『フラガール物語』によれば、現在は認知症の療養中。ご主人の談話によると、いろいろなことを忘れていっても、曲がかかるとダンスはしっかり踊ることができるそうです。

 学院創立当時。右から早川和子、中村豊、豊田恵美子と学院生(画像提供小野恵美子「フラガール物語」より)。 岸部一徳が演じた社長吉本紀夫よりも、モデルになった中村豊社長のほうがずっとダンディでかっこいい。教養あり趣味豊かな、誰にでも気配りのできる社長だったそうです)
  

 フラやポリネシアンダンスの振り付けは、早川やレイモミ小野らの独自の振り付けがなされています。
 ハワイ語にして歌われたハナミズキの曲で


 そんなフラガール物語を読んでのタヒチアンダンスショー、熱が入りました。
 また、フラガールだけでなく、ファイアーナイフダンスという男性ダンサーによる火がついた棒をくるくると回すショーもすごかったです。
 もともとは、サモアに伝わる、武器(ナイフ)として火の棒を戦いにつかったものが、儀礼としてダンス化された、ということのようです。日本ではシバオラというこのスパリゾートハワイアンズのグループが、唯一のダンサーチーム。



 ダンス大好き春庭は、昼のショーは27日昼ひとりで、後半だけ観覧。28日最前列プレミアム指定席で娘息子と三人で。29日自由席ひとりで。夜のショーは27日夜最前列プレミアム指定席娘とふたりで。28日夜は自由席で娘とふたりで。と、5回も見ました。どんだけ好きかって。
 できれば、来年あたり、ミサイルママとフラを発表会プログラムにとりいれるのもいいかなって気持ちもあって、何度も見ました。何度見ても結局振り付け覚えられませんでしたけど。

 バンドも専属のハワイアンバンドです。


 以下、昼のショーと夜のショーと、順不同。
















 ソロダンサーは、フラガールたちのあこがれの存在。ハワイアンダンサーネームがもらえて、舞台を独り占めにして踊れます。


 ラストのタヒチアンダンスは、映画フラガールで蒼井優がソロダンサーとして舞台に立つ感動シーンで踊ったものが、歴代のソロダンサーに受け継がれ、衣装もふりつけも同じでショーのラストをしめくくっています。


 プールの中にあるパネルのうしろに立ってダンサー気分。 ポリネシアンダンサーになったつもりで。


<つづく>
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ぽかぽか春庭「スパリゾートハワイアンズ2泊3日」

2019-07-11 00:00:01 | エッセイ、コラム

 スパリゾートハワイアンズのポリネシアングランドショー

20190711
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2019十九文屋日記夏の行楽(1)スパリゾートハワイアンズ2泊3日

 娘の「温泉熱」、5月に横浜一泊の「万葉の湯」を楽しんだのですが、そのときの選択肢のひとつ「スパリゾートハワイアンズ」に、「やっぱり行きたい」ということになりました。

 常磐炭鉱が閉山になり、その跡地に1966年「常磐ハワイアンズ」ができた当時のこと。生意気盛り若輩者の気分としては「ハワイまで行けない一般庶民がせめてハワイ気分を楽しもうとしてフクシマに行くのって、なんだかなあ」と感じたものでした。

 「トリスを飲んでハワイへ行こう」というキャッチコピーが大当たりして、当選目当てにトリスウイスキーを買う人が増えた、という時代。ハワイは庶民にはあこがれの地であり、しかし、高くて手も足もだせない遥かな島でした。
 それが。東京から3時間ほどの道のりの地に、ハワイができた!

 スパリゾートハワイアンズ


 もともとは、常磐炭鉱閉鎖に伴う人員の雇用確保のために、当時の社長中村豊が思いついた起死回生策でした。
 常磐炭鉱の石炭は質があまり良くない上に、他の炭鉱にはない弱点がありました。地下を掘ると、温泉が噴き出してくるので、その温泉を捨てる費用が年間数億円もかかっていたのです。
 中村社長の逆転のアイディア。「もてあましていた温泉を活用しよう」
 温泉構想に、だれもが「10年もたたずに倒産する」と思ったのだそうです。さびれて閉山した炭鉱の町の温泉に入りたい人なんかいるのか、と。

 その後の中村の発想、「炭鉱で働いているヤマの男たちの子どもたちにも働いてもらおう。温泉のレストランの調理場ウエイトレスはもちろん、娘っ子にフラダンスを躍らせて、温泉のウリにしよう」は、映画『フラガール』に描かれ、舞台化もされて、日本中知らない人はいない物語になりました。
 2006年公開の映画、日本アカデミー賞はじめ、さまざまな賞を受けました。

 『フラガール』、私も大好きな映画です。
 しかも今年は「フラガール婚」で盛り上がりました。フラガールのリーダー役で出演した蒼井優が、共演者であった南海キャンディーズしずちゃんの相方山里亮太と結婚したのです。しずちゃんとの友情の延長として山里とも食事をするようになり、ついに結婚に至った、というフラガール婚、やっかみ半分のコメントもありますが、私はお似合いだと思っています

 フラガール婚もめでたい話ですが、フラガールを養成する「常磐音楽舞踊学院」の創立55周年、というのもめでたい話です。

 中村が「常磐ハワイアンズ」設立を決めたとき、だれもが「失敗するにきまっている事業」と思ったし、「娘っ子にダンスを躍らせる」も、「ヤマの娘たちに裸踊りをさせるなんてとんでもない」と、反感を買いました。

 裸踊りと反発されたフラやポリネシアンダンス。たしかに1966年当時には刺激的衣装に思えたでしょうね。


 フラダンス、タヒチアンダンス、ポリネシアンダンスのショウは、常磐ハワイアンズの第一のアトラクションです。そのダンサーは、自前で設立した常磐音楽舞踊学院で育てる、という中村の方針。ハワイから本物のフラダンサーを連れてきた方が安上がりだ、自前のダンサー育成は費用が掛かりすぎる、という反対を押し切って学院が設立され、福島県から各種学校の認可を受けました。学院は何度も閉校の危機にみまわれましたが、現在までポリネシアンダンスのダンサーを育てています。

 2011年震災後に「フラガール全国きずなキャラバン」に参加し、現在は引退している元フラガールたちが、「2019年お礼キャラバン」を行います。
 2011年の「フラガール全国きずなキャラバン」は、5月から10月までの間に全国26都府県と韓国・ソウルを含む125カ所で247回の公演を行いました。すべて観覧無料のボランティア活動です。
 その後、無事ハワイアンズが復活し、営業も順調なことから、2019年常磐音楽舞踊学院55周年の記念もあって、フラガールOGによるお礼公演が無料で開催されるのです。

 「温泉に入りたい」という娘に対して、私は「フラガールたちを見たい」というほうが強かったです。
 『フラガール』の物語に加えて、2011年3.11の震災直後の「フラガール全国きずなキャラバン」のドキュメンタリーも、とても感動的でしたから、ぜひとも生の舞台を見たい、という気持ちで「スパリゾートハワイアンズ2泊3日」に賛成しました。

 木曜日朝、さいたま新都心からバス直行便に乗車。車酔いする娘息子は乗車1時間前に「酔い止め」を服用。9時前にハワイアンズに向けて出発しました。
 途中、サービスエリアに2度立ち寄り、12時にスパハワイアンズのホテルのひとつモノリスタワーに到着ました。



 モノリスタワーロビー


 娘が選んだのは、2014年にオープンしたモノリスタワー10階のジュニアスイート。我が家には分不相応な2室つづき、4人部屋ですが、この際「えい、利殖に励んで数億円貯め、フラガール美女を射止めた山ちゃんに続け!」と、ジュニアスイート宿泊です。山ちゃんの何に続いたらいいのかわからないけれど。


 リビング


 部屋に入ると、さっそく「ウェルカムトロピカルフルーツ」が届けられました。バスで少し疲れたという娘と息子は、フルーツを食べながら夕方まで休んでいる、というので、私はひとりで昼のポリネシアンショーを見に出かけました。


 ゆっくりしていないでさっさと見にいけばよかったのですが、ひとりだと舞台までたどりつかないかもしれないから、娘か息子どちらかがいっしょに行かないか待っていました。
 が、ふたりともその気なし。2泊3日の間には、ショーを見るために、2日目の昼と夜の2回、最前列指定席がとってあるから、そのときに行けばいい、という。
 私は少しでも多くショーを見たいので、ひとりで出かけました。

 方向音痴の私、広いスパリゾートの中、モノリスタワー10階からショーステージ「ウォーターパーク・ビーチシアター」までたどり着くのに時間がかかり、2時すぎから見ました。

 ファイアーショーとタヒチアンダンス、よかったです。





 スパリゾートハワイアンズのゆるキャラ「ココねぇさん」


<つづく>
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ぽかぽか春庭「中国語国名表記クイズつき」

2019-07-09 00:00:01 | エッセイ、コラム
20190709
ぽかぽか春庭ことばの知恵の輪>感じる漢字(5)中国語国名表記クイズつき


 来年は東京オリンピック。我が家なんと、娘と息子が一番見たい「水泳」のチケットが3席当たりました。らっき~。女子高クラスメートやっちゃんは、現役の大学馬術コーチですから、馬術競技を全試合総なめにして申し込みをしたのですが、全滅だったとか。これからもなんとかチケットを手に入れる努力は続けるそうです。我が家も息子申し込みの分は全滅だったので、ひとつでも当たれば幸運です。

 我が家が水泳以上に見たいのは、2022年の北京冬季五輪です。フィギュアスケート、なんとかチケットを手に入れたい。中国語で書く各国の漢字表記もおさらいして、楽しみに待っています。
 2022年の冬季五輪。北京、張家口市などで開催されます。国名の漢字表記は2008年北京五輪の時と変わらないと思うので、復習しつつ、入場券の発売はいつなのかいくらなのか。いまからフィギュアスケートのチケットめあてにそわそわしています。
 
 中国語での漢字国名表記のクイズ。日本ではよく知られている国名ですが、漢字表記にすると。1-15でいくつ答えられるでしょうか。
例)緬甸(ミャンマー)

やさしい(漢字やピンインの発音をみるとわかってくる)
1)菲律宾(Fēilǜbīn)
2)新加坡(Xīnjiāpō)
3)不丹(Bù dān)
4)沙特阿拉伯(Shātè ālābó)
5)以色列(Yǐsèliè)

ややむずかしい
6)墨西哥(Mòxīgē)
7)新西蘭(新西兰 Xīnxīlán)
8)西班牙(Xībānyá)
9)美国(Měiguó)
10)越南(Yuènán)
11)埃及(Āijí)

むずかしい(日本の漢字表記と異なり発音も違うのでむずかしい部に入れました)
12)巴西(Bāxī)
13) 俄罗斯(Èluósī)
14)法国
15)徳国

 解答は、下記一覧表で探してください。画数順です。7月後半、春庭の漢字についてのコラム再録を続けます。

~~~~~~~~~~

中国語の外国名表記一覧(簡体字バージョン、画数順)

希腊(ギリシア)
几内亚(ギニア)
几内亚比绍(ギニアビサウ)
土耳其(トルコ)
土库曼斯坦(トルクメニスタン)
也门(イエメン)
马尔代夫(モルジブ)
马耳他(マルタ共和国)
马达加斯加(マダガスカル)
马来西亚(マレーシア)
马里(マリ)
马拉维(マラウィ)
马其顿(マケドニア共和国)
马绍尔群岛(マーシャル諸島)
开曼群岛(ケイマン諸島)
不丹(ブータン)
厄瓜多尔(エクアドル)
厄立特里亚(エリトリア)
牙买加(ジャマイカ)
20)比利时(ベルギー)
瓦努阿图(バヌアツ)
以色列(イスラエル)
日本(日本)
中华台北(中華台北)……台湾。
中非(中央アフリカ共和国)
中国香港(中国香港)……一国二制度のため中国本土と代表団が別。
冈比亚(ガンビア)
贝宁(ベニン)
毛里求斯(モーリシャス)
毛里塔尼亚(モーリタニア)
丹麦(デンマーク)
乌干达(ウガンダ)
乌克兰(ウクライナ)
乌拉圭(ウルグアイ)
乌兹别克斯坦(ウズベキスタン)
巴巴多斯(バルバドス)
巴布亚新几内亚(パプアニューギニア)
巴西(ブラジル)
巴拉圭(パラグアイ)
巴林(バーレーン)
巴哈马(バハマ)
巴拿马(パナマ)
巴基斯坦(パキスタン)
巴勒斯坦(パレスチナ)
古巴(キューバ)
布基纳法索(ブルキナファソ)
布隆迪(ブルンジ)
东帝汶(東ティモール)
卡塔尔(カタール)
50)卢旺达(ルワンダ)
卢森堡(ルクセンブルク)
乍得(チャド)
白俄罗斯(ベラルーシ)
印度(インド)
印度尼西亚(インドネシア)
立陶宛(リトアニア)
尼日尔(ニジェール)
尼日利亚(ナイジェリア)
尼加拉瓜(ニカラグア)
尼泊尔联邦民主共和国(ネパール連邦民主共和国)
加纳(ガーナ)
加拿大(カナダ)
加蓬(ガボン)
圣马力诺(サンマリノ)
圣文森特和格林纳丁斯(セントビンセントおよびグレナディーン諸島)
圣卢西亚(セントルシア)
圣多美和普林西比(サントメ・プリンシペ)
圣基茨和尼维斯(セントクリストファー・ネイビス)
圭亚那(ガイアナ)
吉布提(ジブチ)
吉尔吉斯斯坦(キルギス)
老挝(ラオス)
亚美尼亚(アルメニア)
西班牙(スペイン)
百慕大(バミューダ諸島)
列支敦士登(リヒテンシュタイン)
刚果(布)(コンゴ共和国)
刚果(金)(コンゴ民主共和国、旧ザイール)
伊拉克(イラク)
伊朗(イラン)
危地马拉(グアテマラ)
匈牙利(ハンガリー)
多米尼加共和国(ドミニカ共和国)
多米尼克(ドミニカ国)
多哥(トーゴ)
冰岛(アイスランド)
关岛(グアム)
安哥拉(アンゴラ)
安提瓜和巴布达(アンティグア・バーブーダ)
安道尔(アンドラ)
汤加(トンガ)
约旦(ヨルダン)
赤道几内亚(赤道ギニア)
芬兰(フィンランド)
克罗地亚(クロアチア)
苏丹(スーダン)
苏里南(スリナム)
利比亚(リビア)
利比里亚(リベリア)
100)伯利兹(ベリーズ)
佛得角(カーボベルデ)
库克群岛(クック諸島)
沙特(サウジアラビア)
阿尔及利亚(アルジェリア)
阿尔巴尼亚(アルバニア)
阿联酋(アラブ首長国連邦)
阿根廷(アルゼンチン)
阿曼(オマーン)
阿鲁巴(アルバ)
阿富汗(アフガニスタン)
阿塞拜疆(アゼルバイジャン)
纳米比亚(ナミビア)
坦桑尼亚(タンザニア)
拉脱维亚(ラトヴィア)
英国(イギリス)
英属维尔京群岛(イギリス領ヴァージン諸島)
肯尼亚(ケニア)
罗马尼亚(ルーマニア)
帕劳(パラオ)
图瓦卢(ツバル)
委内瑞拉(ベネズエラ)
所罗门群岛(ソロモン諸島)
法国(フランス)
波兰(ポーランド)
波多黎各(プエルトリコ)
波(ボスニア・ヘルツェゴビナ)
孟加拉国(バングラデシュ)
玻利维亚(ボリビア)
挪威(ノルウェー)
南非(南アフリカ)
柬埔寨(カンボジア)
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俄罗斯(ロシア)
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萨摩亚群岛(サモア諸島)
洪都拉斯(ホンジュラス)
津巴布韦(ジンバブエ)
突尼斯(チュニジア)
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埃及(エジプト)
埃塞俄比亚(エチオピア)
莱索托(レソト)
莫桑比克(モザンビーク)
150)荷兰(オランダ)
荷属安的列斯(オランダ領アンティル)
格林纳达(グレナダ)
格鲁吉亚(グルジア)
索马里(ソマリア)
哥伦比亚(コロンビア)
哥斯达黎加(コスタリカ)
特立尼达和多巴哥(トリニダード・トバゴ)
秘鲁(ペルー)
爱尔兰(アイルランド)
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捷克(チェコ)
基里巴斯(キリバス)
菲律宾(フィリピン)
萨尔瓦多(サルバドール)
萨摩亚(サモア)
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博茨瓦纳(ボツワナ)
斯里兰卡(スリランカ)
斯威士兰(スワジランド)
斯洛文尼亚(スロベニア)
斯洛伐克(スロバキア)
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ぽかぽか春庭「七夕」

2019-07-07 00:00:01 | エッセイ、コラム

 鏑木清方「七夕」

20190707
ぽかぽか春庭ことばの知恵の輪>再録感じる漢字(2)七夕

 漢字についての春庭コラム再録です。
 七夕とは、日本古来の「棚機(たなばた)・棚幡」に中国伝来の「七夕チーシー」「乞巧奠(きっこうてん)」が習合(ミックス)し、棚機を七夕と表記するようになったのです。2013年のコラムから復習します。
~~~~~~~~~~~

2013/07/07
ぽかぽか春庭@アート散歩>織り姫たちの千年(1)たなばたさま、おりひめさま

 七月七日には、「字がじょうずになるように、短冊に書く」そして「さまざまな願い事を星に祈る」など、地方地方によっていろいろな行事が行われます。たなばたに「七夕」の漢字をあてる熟字訓は、中国の節句の文字「七夕チーシー」をそのまま当てたためで、古来の日本の行事の意味では、漢字を当てるとしたら「棚機(たなばた)」や「棚幡」でした。

 先祖の魂を呼ぶため「機織りによって出来た幡」を飾ってきました。この「ひらひらすることによって魂を呼ぶ」「幡」は、現代でも「盆棚」を座敷にしつらえる地方では、葉のついた枝を飾ったりするなど、残されています。七夕笹飾りの笹の葉も、もとは魂を呼ぶための依り代(よりしろ)であったのです。

 先祖の魂祭のほうは、仏教伝来後は「盆」行事に移行し、「たなばた」は中国の織り姫彦星伝説と日本の「棚機津女(たなばたつめ」の伝説・神話が習合して、現在のたなばた祭りになりました。

 牽牛が牛を引いて耕作した野菜などの「種物(たなつもの」と、織り姫が養蚕によって絹を織り上げた産物の「はたつもの」を供えることにより、食と衣の安定供給を願いう行事なのだとも。

 月岡芳年「月百姿 銀河月」


 織り姫の伝説から、織物に関する行事も多くの地方で行われてきました。
 奈良平安時代の宮中や貴族の館では、中国唐時代に盛んであった「乞巧奠(きっこうてん)」の行事がとりいれられ、庭に針や糸を飾って、針仕事ほかの手仕事技芸の上達を願ったそうです。

 機織り仕事をする者にとっては、1年1度のたいせつな行事でした。
 糸をあつめて布を織る、編む。布をあつめて糸と針で身にまとう衣服を縫う。糸や布をさまざまな方法で色鮮やかに染める。
 布仕事は、人類が手によって成し遂げてきた仕事の中でも、「食べ物を手に入れる」という生存に直接関わる作業のほかの仕事では、もっとも古くから延々と続けてきた仕事と思います。

 日本には古来より、大陸からまた南方から、さまざまな染織方法が取り入れられ、友禅染など日本独自に発達を遂げたにすばらしい染め物や織物が生まれました。

 最近の織物情報、糸情報で一番興味深かったのは、「くもの糸」を蚕に作らせる方法が開発された、という記事。遺伝子操作であることはちょっとひっかかりますが、蜘蛛の遺伝子を蚕に移し、蚕の吐く糸が蜘蛛の糸と同じに強くしなやかな糸になるよう、遺伝子組み換えが成功したというニュースでした。お釈迦様がたらした一本のくもの糸に何万もの地獄の人々がつかまった、というのは「おはなし」であるとして、蜘蛛の繊維は、鉄鋼とおなじくらいの強度をもっているそうです。


歌川広重「市中繁栄七夕祭」名所江戸百景より

~~~~~~~~~~~~~  

20190707
 「七夕」は、中国の「チーシー七夕」を日本語の「たなばた棚機」に当てはめた熟字訓です。「熟字訓の話題は、またのちほど。
 7月後半は、春庭漢字コラムの再録を続ける予定です。

 さて、今年の七夕短冊にはどんな願い事を書いたでしょうか。私はむろん、いつもの「家内安全国家安泰世界平和宇宙長久。それにつけても金の欲しさよ」です。なにせ100歳まで生き抜くには2000万円必要だという国に住んでいますからね。18歳から70歳まで延々と働き続け、細々とした収入の中から年金も納めてきたけど貯金なし。自分が年金をもらう年齢になったら、年金では老後はまかなえず、これからも働き続けることになっています。今のところ、週に5日の労働もこなせていますけれど、持病持ちの身、これから先、何が起こるかはわかりません。心細いです。

 家内安全。なんといっても、家族の健康がなにより大事。
 娘息子、私、健康を大切にしたいです。夫?去年足の骨折で骨をつないだボルトを抜きだす手術をすると騒いでいますが、たぶん大丈夫でしょう。心配なら、2000万の保険でもかけておいてくださいまし。

 星に願いを。
 
<おわり>
コメント (4)
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ぽかぽか春庭「音読みと漢字のツクリ。転注文字の『令』」

2019-07-06 00:00:01 | エッセイ、コラム
20190706
ぽかぽか春庭ことばの知恵の輪>再録感じる漢字(1)音読みと漢字のツクリ。転注文字の『令』

 春庭コラムの中、漢字について書いたものを再録します。
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2006/06/23 金
ニッポニアニッポン語教師日誌>日本語ってどんな言語?まずは発音から(43)音読みと漢字のツクリ

 今まで何気なく発音していたり、書いていたりしたことに、あれっと思って立ち止まり、日本語への興味をかき立てられたり、確認したりする機会が、脳内に生まれたなら、春庭、とてもうれしく思います。

 「音訓の規則って漢字のツクリに関係あるんですか」
という質問をp*********さんからいただきました。(2006/06/16)
 日本語の文字と発音に興味関心を向けてくださり、うれしいです。

 漢字は、成り立ちから、象形文字・会意文字・形声文字・指事文字・転注文字などがあります。(転注については後ほど解説)

 漢字のツクリ(旁)は、形声文字の音読みに関係しています。
 以下、p**********さんからの質問にお答えし、bbsに書き込んだ文を再録します。

<漢字の発音 haruniwa  2006-06-19 09:19:06  p********* bbsより>

 音訓の読みのうち、訓読みは、漢字の意味に日本語をあてはめたものです。
 中国の漢字「山」は、古代中国語の読み(発音)は「サン」、現代中国語の読みは「シャン」、意味は「土地がたいへん高くなっているところ」を表わしています。

 中国の漢字が日本に移入されたとき、日本語では「土地がたいへん高くなっているところ=やま」だから、「やま」と読むことにした。これが訓読みです。

 漢字は、「山」のように、ものの姿形からできあがった「象形文字」が基本です。
 「田」「川」も、「山」と同じく、土地の姿を絵にしたものからできた文字です。
 「鳥」や「馬」は、動物の形から文字が出来上がりました。

 二つの漢字の意味を足してできた漢字を会意文字といいます。
例)月と日があわさると、あかるいから、「明」。
  山のように大きな石があったら「岩」。

 指事文字は、一二など数を示したり、上下など位置を表わす文字。
 横棒ひとつあれば「一」、ふたつあれば「二」、みっつあれば「三」
 □のまんなかを、縦棒で区切れば「中」

 横棒のうえに、トをおけば、「上」、したに「ト」をおけば「下」
 これら、数や位置関係を表わした漢字は、非漢字圏の留学生にも意味が推測でき、覚えやすい漢字です。

 さて、ご質問の「音訓の規則って、漢字のツクリに関係あるのか」という点について。

 ほとんどの漢字は形声文字です。扁(へん)や冠(かんむり)などで、意味の部類を表わし、旁(ツクリ)で、発音を表わす。

 発音をあらわす「旁(ツクリ)」と意味の部類をあらわす「扁・冠・足・繞(ニョウ)」などの組み合わせ方を古代中国人が発明したので、漢字の種類は飛躍的に増えました。
 雨冠と言偏の漢字例をあげてみましょう。

<つづく>

2006/06/24 土
ニッポニアニッポン語教師日誌>日本語ってどんな言語?まずは発音から(44)部首Kanji radicals

 形声文字、扁(へん)や旁(つくり)の組み合わせの例。
 雨冠と言偏の文字を出してみます。
 雨に関わるという意味を冠が表わし、発音を冠の下の部分の漢字が受け持っています。
 日本語の音読みの発音は、古代中国での発音なので、現代中国語標準語の発音とは異なります。

意味:雨に関係する
発音:ソウ→相であらわす
形声:霜→音読み「ソウ」(現代中国語の発音はシュァン)
訓読み:シモ  

意味:雨に関係する
発音:ム→務であらわす
形声:霧→音読み「ム」(現代中国語の発音はウー)
訓読み:きり

意味:言(ことば)に関係する
発音:ゴ→吾であらわす
形声:語→音読み「ゴ」(現代中国語の発音はユェ)
訓読み:語る=かた(る)

意味:言(ことば)に関係する
発音:ホウ→方であらわす
形声:訪→音読み「ホウ」(現代中国語の発音はファン)
訓読み:訪ねる=たず(ねる)

 以上のように、漢字の形声文字については、p**********さんが「関係あるのかも」とおっしゃるとおりです。
 「漢字のツクリは、音読みに関係している。ツクリが発音をあらわしている」

象形文字、会意文字、形声文字について解説したついでに、漢字の成り立ちについて、あとひとつ解説。

 「転注文字」って、どんな漢字でしょう。
 転注文字とは、元の意味から発展して新しい意味を持った漢字です。
 例をあげておきます。

1 「令」のもとの意味は「命令する」の「令」。呉音「リョウ」漢音「レイ」
 「律令りつりょう」は、「律=主として刑法」と「令=主として行政法」のふたつで構成された法律。
 転注して、意味が進展しました。命じられたことの中味をさしていたことから、命令を出す人のことも「令」と呼ぶようになりました。

2 「令」は、人の上に立って命令を出す長官の意味も表わす→県令=県の長官

3 さらに、人の上にたつような身分の高い人の家族への尊称となった→令嬢・令息・令夫人

<つづく>

~~~~~~~~~~~~

20190704
 「令和」の令について、13年前2006年に考察したときは、まさか新元号に使われる漢字とは思っていませんでした。
「令」は、命令という元の意味から「命令を出す身分が高い人の尊称」にかわり、さらに「よい・立派な」という意味に転注されるまで、かなりころころと転々しました。

 万葉集から引用といっても、前書きに書かれた漢文からという、むりくりの「令月」引用でしたが、万葉仮名とは、漢字を利用した文字であり、日本語は中国語の漢字を応用して発展したことを、皆が思い出せてよかったんじゃないかしら。
 「日本語が、万葉集が、古事記が」と、日本を強調した結果、日本語表記は、中国からの文化の流入によって豊かになったのであることが再確認できました。

 日本のことばと文化は、大陸からも半島からも、シベリアなど北の地方からも南の島からも、さまざまな文化が押し寄せ、ミックスされ、この地に残ってきたものです。
 さまざまな文化を伝えてくれた人々に感謝。それをこの風土に合うようにアレンジし伝えてくれた人々に感謝。

 令和時代には、その名にふさわしく各方面とのよき交流と和を大事にしてほしいと思います。

 早速並んだ令和商品、ラベルを張り替えればいいだけの日本酒は当日から登場


 ♪新元号がレイワっで酒が飲めるぞー、酒が飲める飲めるぞ、酒が飲めるぞー
 まあ、いつでも飲んでいますけどね。

<7月後半へつづく>
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