春庭Annex カフェらパンセソバージュ~~~~~~~~~春庭の日常茶飯事典

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ぽかぽか春庭「2023年1月目次」

2023-01-31 00:00:01 | エッセイ、コラム


20230131
ぽかぽか春庭2023年1月目次

0101 ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2023文日記新年(1)謹賀新年
0103 2023文日記新年(2)2023ふみ日記新年
0105 2023文日記新年(3)花のある近景-千の花束をあなたに
0107 2023文日記新年(4)再開青い鳥通信
0108 2023文日記新年(5)新年美術館初詣
0110 2023文日記新年(6)『長崎幻想』新年美術館初詣恵比寿篇
0112 2023文日記新年(7)アイス・エクスプロ―ジョン2023

0114 ぽかぽか春庭ことばの知恵の輪>ことばの倉庫(1)17文字倉庫
0115 ことば倉庫(2)2003年-2005年のつぶやき31文字

0117 ぽかぽか春庭アート散歩>2023正月アート散歩(1)クリスチャン・ディオール夢のクチュリエ展 in 現代美術館
0119 2023正月アート散歩(2)野口里佳不思議な力展 in 東京都写真美術館
0121 2023正月アート散歩(3)交歓するモダン機能と装飾のポリフォニー in 庭園美術館

0122 ぽかぽか春庭シネマパラダイス>2023シネマパラダイス睦月(1)「人でなしの女」

0124 ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2023文日記1月(1)寒波
0126 2023文日記1月(2)冬眠中
0128 2023文日記1月(3)雪
0129 2023文日記1月(4)大相撲初場所観覧
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ぽかぽか春庭「大相撲初場所観覧」

2023-01-29 00:00:01 | エッセイ、コラム
20230129
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2023文日記1月(4)大相撲初場所観覧

 相撲大好きな娘。両国で行われる場所で、桟敷席に2人で座れる席があるときだけ本場所を生観覧したいと望んでいます。桟敷席に4人座るのでは、狭すぎて1時間も座っていられない。私と娘のふたりで4人分の体積になりますから。
 桟敷席の後ろに寄りかかり、足を延ばして座ることができる間だけ、幕下あたりからの5時間の長丁場、ゆったりと観覧できる。桟敷がふたり席の21年22年、何度か桟敷席で観覧できました。
 何度かの観覧の経験で、今回娘は座椅子を持ってきました。「重いのを運ぶのは大変だけれど、おかげで今回が一番疲れないで見ていられた」

 2023年初場所、桟敷席前列から半分は4人席になりました。ふたり席は後方です。桟敷席西側11列の席、思ったよりは見やすい席でした。
 さじきで一番土俵の近くにすわれたのは、桟敷の2列目。もうこんな近くの席は手に入らないでしょうね。(むろんお金さえ出せば砂被り席でもとれるけれど)

 1月18日11日目。
 これまで、入場してこなかった相撲博物館。もう、本場所を観覧することもなくなるかもしれないので、博物館を見学。引退した3横綱、白鵬鶴竜稀勢の里の綱や化粧まわし、着物が展示されていました。
 博物館の中に野見宿禰神社が勧請されていました。4センチほどのかわいいおすもうさん人形におみくじが仕込まれているので、買ってみました。娘にあげたら小吉でした。まあ、我が家はそんなもの。

 幕下後半の試合から観覧。幕下15枚目付け出しから1場所で幕下通過し、来場所から十両関取になる落合の取り組みも見ることができました。1日おきの幕下相撲ですが、ちょうど落合取り組みの日でよかったです。

 立ち合い中の落合


 十両優勝の朝乃山の取り組みも応援できました。三段目から頑張って着実に元の地位復帰目指している朝乃山、幕内復帰が楽しみです。

 1横綱1大関という寂しい番付の上、横綱は休場。横綱土俵入りがない本場所は寂しいものですが、一人大関の貴景勝が頑張っていました。
 娘は、贔屓力士の熱海富士、遠藤、宇良の応援タオルを用意していて、取り組みの前後にはタオルを出して応援しています。残念ながら、熱海富士は11日目から休場。

 幕内土俵入り
 

 2023年初場所11日目。貴景勝は琴の若に敗れましたが、15日目に3敗同士の決戦で琴勝峰に勝ち、12勝3敗で優勝しました。横綱不在最高位の責任を果たすことができ、よかったです。横綱になれるかなあ。 

 今場所から声出し応援も可能になったのですが、贔屓力士の名前を呼ぶ声はまだ大きくはありません。わたしもせいいっぱい拍手をすることで応援。
 今場所、遠藤は9勝6敗で勝ち越しましたが、宇良は7勝8敗で惜しくも負け越し。

 取り組みに向かう宇良

 がんばって精進している人がいて、その人を応援することで力を分けてもらえるスポーツ観戦。
 我が家は個人競技のマラソン、フィギュアスケート、相撲が中心ですが、サッカーラグビー野球応援の人も、格闘技応援の人も、せいいっぱい応援して、エネルギーを分けてもらいましょう。

 優勝カップ前で
 1月18日


 掲載できずにいた大相撲初場所観戦コラム。ようやくUPして、冬眠続けます。

<つづく>
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ぽかぽか春庭「雪」

2023-01-28 08:08:01 | エッセイ、コラム
20230128
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2023文日記(3)雪

仕事遅くなり、降り始めた雪の中を帰りました。

各地でまた雪の被害が出るかも。みなさま御身大切に。
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ぽかぽか春庭「冬眠」

2023-01-26 00:00:05 | エッセイ、コラム
20230126
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2023文日記1月(2)冬眠中

東京も氷点下になる寒波。ニュースでは高速道路で車が10キロも立ち往生している様子を繰り返しています。
冬眠中春庭はかじかんでいます。
不要不急の外出はするなとのお達しなれど、午前中歯医者の定期クリーニングと千円ヘアカットと買い物。温かいのがいいからおでんセットなど買って帰る。

午後は、セットに大根ジャガイモ人参を加えておでん煮込み。大鍋。圧力釜でトリ肉とキャベツのスープ。フライパンでピーマンひき肉詰め。オーブントースターで豚肉巻(エリンギと人参を巻いて焼いてからチーズをのせる)

チン料理も多いこの頃にしては3日分くらいの料理したのに、娘からは「父と上野の森美術館で兵馬俑展見て、「帰りに上野エキュートでメルヘンサンドイッチ買った」とメールがきた。ま、これから土曜日までひと鍋づつ食べていくさ。


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ぽかぽか春庭「寒波到来」

2023-01-24 12:49:23 | エッセイ、コラム
20230124
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2023文日記1月(1)寒波

10年に1度という強い寒波襲来なんですと。
寒さのせいではあるまいが、パソコンも凍る。
スマホの操作苦手なアナログ人、しばし寒さにダウン。冬眠します。



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ぽかぽか春庭「人でなしの女」

2023-01-22 00:00:01 | エッセイ、コラム
20230122
ぽかぽか春庭シネマパラダイス>2023シネマパラダイス睦月(1)「人でなしの女」

 私のふつうの暮らしの中では、絶対に見に出かけようとは思わない映画。思いがけない映画にであいました。
正月写真美術館の「長崎幻影」も、そうだったけれど、「ふつうなら見ようとも思わない」映画に巡り合う。
 100年前に撮影された映画『人でなしの女』1923制作1924年公開。白黒。無声。
 公開当時、あまりの「モダン」ぶりがすぎて、公開中止の憂き目にあったという映画です。1986年修復復元。庭園美術館の「交歓しするモダン」の企画上映。「モダニズム」の錚々たるアーティストたちがスタッフとして集合しているのがすごい。

監督・脚本:マルセル・レルビエ
原作:ピエール・マッコルラン
オリジナル音楽:ダリウス・ミヨー ジャン・クリストフ・デヌー(復元版の音楽は別)
邸宅外観デザイン:ロベール・マレ・ステヴァン 
セットデザイン:カヴァルカンティ、クロード・オータン=ララ
家具デザイン:ピエール・シャロー
服飾デザイン:ポール・ポワレ

出演:
・歌姫クレア・レスコーClaire Lescotジョルジェット・ルブラン
・発明家エイノール・ノルセンEiner Norsenジャック・カトラン
・Frank Mahlerフレッド・ケラーマン
・Kranineレオニード・ワルティ・デ・マルト
<あらすじ>
 画面に、住宅の模型が映る。アールデコのモダンな住宅。模型に近づくと、画面切り替わり、ドアの前には馬車と共存している時代の最先端の車が何台か止まり、貴顕紳士が下りてくる。
 パリ郊外の高台にある、「モダン」な邸宅。窓の飾りもドアも思いっきり新しいスタイル。さまざまなインテリアデザイン。
大勢の崇拝者を持つ歌手クレール・レスコーの家だ。
 歌姫のごきげんを取り結ぼうと、夜な夜な男たちがクレールのサロンに集う。富豪、詩人、劇場支配人、ターバン巻いているインドの王子、世界人類の幸福を叫ぶロシア人革命家?
 クレールの化粧はばっちりのアイメイク、首の後ろを飾る羽飾りなど、ナチュラルメイクを尊ぶ現代女性には違和感あるけど、20世紀初頭の男たちにとっては、クレールは女神だ。

 クレールは男たちを適当にあしらいつつ、楽団に演奏させている。食事のテーブルは家の中にしつらえた池の中の島にテーブルが置かれ、豪華な食事が並べられている。給仕たちは、そろってへんてこりんな仮面をつけていて、クレールに奉仕している。池には3羽の水鳥がいて、ぐるぐる回って泳いでいる。クレールは、インドの王子にも大富豪にもなびかない。男たちが自分に夢中になっているようすを楽しんでいるだけだ。

 クレールに思いを寄せている発明家のエイノール・ノルセン。(アイネル、エアノルなど、訳者によって違う表記)ノルセンが、ひとり遅れて自慢の車でやってくる。
 取り巻きの求めに応じて、クレールが歌い始める。

 ここまでがやたらに冗長で、現代映画なら5分で描写するシーンを延々30分くらい続けていて、途中エイノールがクレールを口説いて、それをクレールが軽くあしらうシーン、寝ていた。
 見逃したシーンは。
 クレールが単独世界旅行に出かけると発表。行かないでほしいと願い出るエイノールに、クレールは他の求婚者と同じように、そっけなくあしらう。侮辱されたと感じたエイノールは落胆する。エイノールは、昔風の美男に造詣されていて、戦前の宝塚男役ふう。

 居眠りから映画に戻ると、エイノールが「あなたのいない世界では生きていけないから、別の世界へ行きます」なんて、失恋自殺をほのめかす手紙を仮面給仕に託して、車で出発。
 車で走るシーンは、100年前は画期的であっただろう疾走、疾走、爆走。
 ロバがひく荷車に乗った田舎娘が、エイノールの車が土手から川に向かって転がり落ちるのを目撃する。

 クレールは、シャンゼリゼ劇場の公演に向かう予定だったが、エイノール自殺の報を田舎娘がもたらす。娘の目撃談から、警察もクレールのとりまきも大騒ぎ。車の落ちたあたりを探しても、死体は見つからなかった。

 田舎娘のロバ荷車が止まっているうしろのドアデザインがアールデコ。ロバと対比、ねらったのか。


 車の転落を告げる田舎娘女優さん、かわいい。でも、主役女優は、ジョルジェットブラウンだ。映画の資金提供者だから。

 エイノール・ノルセン自殺の報を聞いた人々は、たちまち反クレールとなる。「クレールに恋する若い発明家の自殺」という事件の報

はすばやく市民につたわっており、だれもが公演中止を想像した。
 しかし、クレールは敢然と顔をあげ、歌うことを決めた。クレールは「冷い女」「人でなしの女」と非難される。
 しかし、クレールの歌を聞いた観客は、絶妙な歌声にうたれ、非難を忘れ絶賛の拍手を送る。無声映画だから歌声は聞けないが、歌に酔いしれる観客の顔の描写。

 帰宅しようとするクレールの楽屋に見知らぬ男が現れ、ノルセンの死体が発見されたが、確かにエオノール・ノルセンだという証言がふたり分必要だ、と言う。警察関係者にしては不審な様子。
 クレールがノルセンの家に入ると、警察かと思った男は姿を消してしまう。エオノールの死体に風が吹きかかり、クレールはびくびくする。ホラーっぽいつくり。死体の顔はよく見えないようになっているので、絶対これはエオノールじゃないなと思っていると、エオノールが姿を現す。車が川に落ちた時、エオノールの姿が映っていなかった事情が明かされる。エオノールは「最初は本気で死ぬつもりだった」というのだが、落ちる直前に飛び降りて、車だけ崖から落ちたのだ。

 発明家の家の装飾は、わけのわからぬとびっきりの「モダン」。


 クレールの衣裳はポール・ポワレ。マントの背中などモダンデザインの極致。
 この映画が100年前の制作で、やたらに描写が冗長であることに目をつぶれば、邸宅や家具、クレールの衣裳を見ているだけで、当時のモダニズムが目に焼き付く。この映画により、100年前にモダンデザインがどのように実際の家のなかでインテリアや衣服として表れていたのかを見ることができる。

 ストーリーは、クレールがエイノールの家に入ってからとたんに「100年前のサイエンスフィクション」的になって、いろいろな機械、器具やフーコーのふりこのようにゆれつづける振り子、「危険、近づくと死ぬ」という機械も動いていて、SFチック。

 死んだはずのノルセンが真相を伝える。 
 エオノールの発明品のひとつは、人の歌を瞬時に世界中に届けられる機械。(実際のラジオの発明は1900年レジナルド・フェッのセンデンによる)
 クレールは、世界の人々が自分の歌に聞き入っているようすを映像でみる。(1920年代、まだテレビはなかったけれど)

 クレールを金や権力で囲おうとするこれまでの取り巻き立ちと比べ、エオノールはクレールの歌そのものを評価し、世界に広めようとしていた。クレールは、ほかの男たちとは違うエオノールの恋を受け入れることにする。エオノールの歌を聞く聴衆のすがたの中に、マサイ族みたいな女の人がいたのがおもしろかった。私がマサイ族の家に泊まったとき、まだケニアにテレビが普及しはじめたころ。マサイ族の家にはラジオもなかった1979年。1923年にニューヨークの家とマサイ族の家に同じ水準でテレビがあるってこと。ちゃんとマサイもラジオ聴いている。この聴衆の姿を映し出すテレビも、エオノールが発明した、という想定。

 次の劇場公演のあと、エオノールの家ですごす約束をしたのだが、それに嫉妬したのが、インドの王子。クレールの乗った車に「強力な毒を持つ小さなアジアの蛇」を隠し入れる。花束の中に隠れていた蛇に噛まれて、クレールは絶命。
 エオノールは、「危険、近づくと死ぬ」という機械を実際に動かしてみることを決意。電磁波か何かを照射して、死んだクレールが生きかえる。二人の恋はようやく成就。めでたしめでたし。

 「人でなし(L'Inhumaine)の女」というタイトルは、人類(humanité)のために自らが実験台となった女を意味しているのだそう。humanitéは、同時に人でなし(L'Inhumaine人間ではない)。

 とにかく135分は長かった。でも、この作品が100年前に作られたことを思うと、よくぞ残されていた、と思う。
 モダンな家や家具、衣裳。今回の展示イベントとして、この映画上映を決めたのはよい企画でした。
映画学校の教材や映画史映像研究の教材映画として貴重な作品。研究者でもなければ、100年前の映画を見ることは、無かったと思うのでよい機会になりました。
モダンすぎて公開中止になった一番の問題シーンはなんだったのだろうか。死んだ人が生きかえるというところが、バチカンあたりの激怒をかったのかな。神を冒瀆しているとかで。神の権力を人間が奪うのはまずいんだね。イエスが死人を蘇らせるのは父の息子だからOKだけど、優男の発明家がやっちまうのは、まずいんだね。まだニーチェも神は死んだという前だし。

DVDが発売されています。

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ぽかぽか春庭「交歓するモダン機能と装飾のポリフォニー in 庭園美術館」

2023-01-21 00:00:01 | エッセイ、コラム


0230121
ぽかぽか春庭アート散歩>2023正月アート散歩(3)交歓するモダン機能と装飾のポリフォニー in 庭園美術館

 会期:2022年12月17日(土)–2023年3月5日(日)

 1月11日、白金の庭園美術館に出かけました。(娘はサントリー美術館に行っていて、別々でした)
 庭園美術館の前身である旧朝香宮邸が、アールデコの神髄を集めたような邸宅ですから、「モダン」を展示するのにふさわしい場所柄です。

 旧朝香宮邸公開のおりに何度か見かけた椅子も、展示されていました。背もたれの絵はマリーローランサンが描いた、という椅子です。
制作年1924 アンドレ・グルー(デザイン)、マリー・ローランサン(絵付)、アドルフ・シャノー(制作)
  

 1910年代から第二次世界大戦の直前までの西欧社会にあふれたさまざまなモダニズム。展示は、ファッション、テキスタイル、椅子を中心とした家具、食器カトラリーまで、時代の息吹が聞こえるような、個性あるれるデザインがすばらしかったです。 

 庭園美術館の口上
 1910年代から30年代は、西欧を中心に日本を含む世界各地で様々なモダンの形が現われた時代でした。
 機能主義に基づく「モダニズム」は、いまなお当時の中心的な動向とみなされていますが、一方で、大衆消費社会が進展したこの時代は、常に新しくあるために装飾することに価値が置かれた、儚き「モダニティ」の時代でもありました。実際、この対立的に捉えられることの多い二つの「モダン」はいくつものモダンの形をうちに含み、それらは複雑に関係しながら濃密な時代を作り上げていたのです。
 当時の作家たちは、時間差なく情報を共有し、国やジャンルを越えて同期し合い、その範囲は、絵画、彫刻から、家具、食器、洋服、さらにそれらを収める建築や都市まで、いわば、私たちの生活空間、身体活動全般におよんでいます。
 ウィーン工房は、フランスのファッションデザイナー、ポール・ポワレと刺激し合い、一方で、ロベール・マレ=ステヴァンなど同国のモダニストにも影響を与えました。その生活全般への眼差しはまた、日本の森谷延雄や斎藤佳三にも共有されるものです。同時性絵画で知られるソニア・ドローネーはファッションの仕事に専心し、ルネ・エルブストらモダニストは都市を彩るショーウィンドウデザインに大きな関心を払いました。そして、バウハウスでは女性作家が織物に新たな光を当て、また同校を離れた作家たちが、ブルク・ギービッヒェンシュタイン美術工芸学校を舞台に応用芸術教育に取り組むことになります。
 1914年に勃発した人類史上初の世界大戦が象徴するように、この時代の最大の出来事は世界が一気に同期したということでした。その急速に変化する社会のなかで、作家たちがときに交わり、共鳴しながら探求したいくつものモダンの形を紹介します。

 展示構成
・Chapter1:1900-1913
1-1 ドイツ応用芸術とウィーン工房の転換期
1-2 ポール・ポワレとウィーン工房
1-3 ポール・ポワレとフランスファッション
1-4 フランスにおける室内装飾の新傾向
Chapter2:1914-1918
2-1 ダゴベルト・ペッヒェと大戦期ウィーン工房
2-2 フランツ・チゼックとウィーン美術工芸学校
Chapter3:1919-1925
3-1 女性作家たちのウィーン工房
3-2 日本における生活改善運動
3-3 フランスにおける新旧室内装飾
3-4 戦後フランスファッションの展開
3-5 都市芸術 通りの芸術
3-6 装飾と抽象
3-7 初期バウハウス
Chapter4:1926-1938
4-1 デッサウ以降のバウハウス
4-2 バウハウスから離れて
4-3 UAM:フランスのモダンデザイン
4-4 ファッションのモダニズム
4-5 日本におけるモダンデザインの動向

 三菱1号館で見た上野リチの作品もたくさん展示されていたので、「わぁ、また会えた」と思って見入りました。

 フリーチェ・リックス・ウエノ「テキスタイルデザイン・クレムリン」


 いつも記念の絵ハガキを買うのですが、今回買った絵ハガキは結局上野リチのテキスタイルデザイン4枚でした。好きだと思うものを買うので、三菱1号館のときと同じものを買っている気がします。

 ソニア・ドローネーの絵もよかったです。中学生のとき、「抽象画はわからんけど、ドローネーの絵は好き」と思って以来、ロベルト&ソニア・ドローネー展が開かれたことがあったのにも気づかず、今回はじめて写真版ではない絵を見ることができました。
 ソニアは、早いうちに油絵からテキスタイル作品に転向したので、絵は貴重品。ソニアが息子のためにパッチワークで毛布を作ったことから、テキスタイル、ファッション、舞台衣装などにも進出し、かずかずの作品を手がけました。

 ソニア・ドローネー「リズム」1915-1930

 ポールポワレから始まるモダン・ファッション。ポワレのドレスやシャネルの服の展示、現代ファッションの大元だなあと、拝見。

 シャネル

 


  
 

 









 旧館展示の

 旧館「殿下書斎」に展示されたコートドレス

 新館展示のシャネル

 カトラリーや香水瓶も「モダン」なデザインは少しも古びない。

 政治や社会の問題で「近代」については、さまざまな暗部もある中、デザインにおける「モダン」は、私たちの生活の中に今もなお輝いている。近代社会批判もわかるけれど、衣服や生活雑貨、家具などで、どれほど「モダン」が画期的なものだったか、見て歩くの、楽しかったです。

<おわり>
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ぽかぽか春庭「野口里佳不思議な力展 in 東京都写真美術館」

2023-01-19 00:00:01 | エッセイ、コラム


20230119
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2023文日記正月アート散歩(2)野口里佳不思議な力展 in 東京都写真美術館
 
 東京写真美術館、毎年2日3日は無料観覧の日。
 「美術館で初詣」3日は恵比寿詣で。

 写真美術館の正月恒例だった雅楽演奏会が中止になっていること、残念に思っていましたが、コロナのためだと思い込んでいました。
 毎年雅楽演奏をしてくださった橘雅友会メンバーの一員だった写真美術館研究員の金子隆一氏が2021年6月に逝去なさっていたこと、知らないでいました。
 金子氏は、台東区谷中の慈雲山正行院 に生まれ、住職を受け継いだほか、写真史家、写真コレクターとして、写真美術館の研究員として活躍。数々の写真展を企画運営しました。さらに雅楽において篳篥演奏家として演奏活動も行うという、多彩多能な方でした。私より1歳年上の方、2021年の他界は残念至極。
 人の3倍も活躍され、十分に生きつくしたこととは思いますが、私にとっては、正月に雅楽が聞けなくなったこと残念。無料で聞けるところ、ほかにはないからなあ。
 これまでのご活躍をしのびつつ、お正月の写真美術館へ出かけました。

 3日に、写真美術館の無料公開の展示「野口里佳不思議な力展」を観覧。
 開催期間:2022年10月7日(金)~2023年1月22日(日)

 美術館による作家紹介
 野口里佳 Rika Nogichi
 さいたま市出身。那覇市在住。1992年より写真作品の制作を始め、展覧会を中心に作品を発表。現代美術の国際展にも数多く参加している。2002年、第52回芸術選奨文部科学大臣新人賞(美術部門)を受賞。国内での主な個展に「予感」(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館、2001年)、「飛ぶ夢を見た」(原美術館、2004年)、「光は未来に届く」(IZU PHOTO MUSEUM、2011–2012年)など。
 作品は東京国立近代美術館、国立国際美術館、グッゲンハイム美術館、ポンピドゥ・センターなどに収蔵されている。

 写真美術館の口上
 このたび東京都写真美術館では「野口里佳 不思議な力」展を開催します。 野口里佳は1995年「写真3.3㎡(ひとつぼ)展」と1996年「写真新世紀」展でのグランプリ受賞以降、〈フジヤマ〉(1997年–)、〈飛ぶ夢を見た〉(2003年)、〈太陽〉(2005–08年)、〈夜の星へ〉(2014-15年)などの写真・映像作品を国内外の展覧会で発表し、国際的にも高い評価を受けている写真家です。 野口はこれまでに、水中や高地、宇宙といった未知の領域と人間との関わりをテーマにした作品を手がけてきました。近年では、日常や周囲に満ちる無数の小さな謎の探求を通して、見るものの感覚や想像を解き放つような表現を追求しています。写真と映像、ドローイングによって構成される本展は、初期作品〈潜る人〉(1995年)から最新作〈ヤシの木〉(2022年)までを出品作品に含み、時間や場所も超えていく写真の「不思議な力」に導かれるように、野口がこれまでに出会ってきた様々な現象や光景が描き出されます。その独自の作品表現に触れることは、それぞれの存在がこの世界に生きていることの意味を見つめ直し、また写真・映像のもつ「不思議な力」とは何なのかを考えるきっかけとなることでしょう



 展示第1室は写真撮影可能エリア。
 スプーンの先にリングがくっついている写真。どちらかが磁力を帯びていてくっついているんでしょうけれど、「目に見えない力」を表したいのかなあと思います。

 第1室以外の写真は撮影禁止なので、画像は借りもの。
 ヤシの木を写した写真は3枚並んでいました。


 初詣の写真美術館。野口里佳の写真、実をいうと、悪くはなかったけれど、特別衝撃を受けたとか、美しさに見とれた、という感じでもなかった。
 才能のある写真家だということはわかったけれど、昨年末12月に見た星野道夫や藤原新也に比べると、「ほかの展覧会や写真集も見たい」という気持ちは高まらなかった。まあ、そんな展覧会もあるってこと。

<つづく>
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ぽかぽか春庭「クリスチャン・ディオール夢のクチュリエ展 in 現代美術館」

2023-01-17 00:00:01 | エッセイ、コラム


20230114
ぽかぽか春庭アート散歩>2023正月アート散歩(1)クリスチャン・ディオール夢のクチュリエ展  in 現代美術館
 
 現代美術館は、これまでは「正月の愉しみ」から除外してきました。どの駅からもバスに乗るか歩くかで、ちょっと不便な場所にあります。
 しかし、2023年は、江戸東京博物館が改修休館中のため、三が日に開館している現代美術館へ。

 クリスチャン・ディオール展。
 シニア料金1300円を、2023年の「支払い始め」として入館。(一般チケット2000円)10時半からチケット売り場に並び、11時に購入できた券は「15時から入場可能」。
 ランチにサンドイッチの店でホットサンドを食べて休憩したり、所蔵コレクション展を見たりして時間をつぶし、15時から「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」展を観覧しました。 

 ディオールの代々のデザイナーの手掛けたドレスやデッサン画。展示空間の作り方がとてもおしゃれで、美しかった。重圧象平さんのデザインだということです。

 現代美術館の口上
 OMA2のパートナーである建築家、重松象平氏が日本文化へのオマージュとしてデザインした新しい空間演出に導かれ、フロランス・ミュラー氏のキュレーションにより再考案されたこの回顧展では、創設者クリスチャン・ディオールが影響を受けた芸術から、彼の庭園に対する愛、豪華な舞踏会の魔法、ディオールのコレクションに最初から影響を与えていた日本の豊かな創造性への魅力など、素晴らしい発見を伴う75年を超える情熱にスポットが当てられています。ユニークなコラボレーションと相互への賞賛によって結ばれたこの揺るぎない友情は、ほとんどが初公開となる貴重なアーカイブ資料によって映し出されます。
「ニュールック」の永遠の象徴である「バー」スーツをはじめとした、過去から現在までのアクセサリーやオートクチュール モデルの数々。クリスチャン・ディオール、そしてイヴ・サン=ローラン、マルク・ボアン、ジャンフランコ・フェレ、ジョン・ガリアーノ、ラフ・シモンズ、マリア・グラツィア・キウリといった後継者である歴代のクリエイティブ ディレクターたちが考案した作品のひとつひとつが公開されています。本展では、東京都現代美術館が所蔵する貴重な作品や、日本人写真家・高木由利子氏3が本展およびポスターのために撮り下ろした写真など、魅力的な作品が展示されます。また、クリスチャン・ディオールの先見性を受け継ぎ、「ディオール レディ アート」や、「レディ ディオール アズ シーン バイ」などで再解釈されたバッグ「レディ ディオール」、「ミス ディオール」、「ジャドール」といった、フレグランスの世界など、ディオールの歴史と絶え間ない創意工夫の賜物である、斬新なアイコンも展示されます。

 クリスチャン・ディオールは、1957年に心臓発作で急逝。以後、イヴ・サンローラン、マルク・ボアン、ジャンフランコ・フェレ、ジョン・ガリアーノ、ラフ・シモンズ、そして現在のデザイナーであるマリア・グラツィア・キウリと、そのスピリッツが継承されていきました。 

 最近では美術館などで、ファッションをアートとして展示することが多くなりました。2022年は三菱1号館でココ・シャネル展を見て感銘深かったですし、2023年はじめに、クリスチャン・ディオール展。よい展覧会でした。会場内、どこも撮影自由でした。

 展示第1室の展示は、1947年『コロール』(別名「ニュールック」)コレクション「バー・スーツ」 


 美しい衣裳の展示を見て、「わぁ、これ着てみた~い!」とは決して思わない「ぼろは着てても心は錦主義」の春庭ですが、むろんプレゼントしてくれるというなら、ぜんぶ欲しい。すてきな服ばかりでした。

 田舎で育った私にとって「ファッション」とは、雑誌の中の、あるいは遠い東京のお金持ちや映画スターなどが身にまとうものであって、自分とは無縁のものと思っていました。しかし、おしゃれ大好きな姉は、ファション雑誌をおこずかいで買ってきて、洋裁を習っていた伯母の服作りを見よう見まねで、高校生くらいから「着たい服」を作ってファッションを楽しんでいました。
 ファッションに無縁の私でも、おしゃれ好きの姉からディオールとピエール・カルダン、イヴ・サンローランの名前は聞きかじっていました。東京オリンピックのころのこと。

 しかし、私がディオールの名を知るより前に、1957年にクリスチャン・ディオールは亡くなっていて、私が聞きかじった「ディオール」とは「メゾン・ディオール」のことであり、代々のデザイナーに継承された「ファッション企業」のことでした。

 今回の展示では、イヴ・サンローラン、マルク・ボアン、ジャンフランコ・フェレ、ジョン・ガリアーノ、ラフ・シモンズ、そして現在のデザイナーであるマリア・グラツィア・キウリ、綺羅星のごときデザイナーの服がブースごとに並び、華やかでした。

 ことに、ディオールと日本のかかわりについて展示してある第2室では、ライセンス契約を結んだ鐘紡と大丸がディオールの型紙で服を制作して販売したこと、ディオールほかメゾンのデザイナーが日本美術に深い関心を持っていたことなどが、よくわかる展示でした。
 現在の上皇夫妻結婚式(1959年の明仁皇太子と美智子様)のウェディングドレス3着をディオール社が制作したことなども、写真展示で示されていました。

 それぞれの時代のデザイナ―の代表作が並んだブースをめぐります。日本の着物を取り入れたり、アフリカやラテンアメリカ、アジアの民族衣装を取り入れたりしながら、さまざまなデザインが並んでいました。

 圧巻の空間は、吹き抜けを利用した段々に並んだドレス。「ディオールの夜会 」と名付けられた空間です。
 1段に4~7着のドレスが6段に並べられ、それが鏡に反転して写り込んでいるために、色とりどり形もそれぞれのドレスが、魔法のようにきらめいていました。


 白い花の房が天井から下がり、それが床の下の鏡に映されて、白い無限の花園の中にドレスが並ぶ空間も、「無限の夢幻」という雰囲気を出していました。

 
 1階と3階、広い現代美術館ならではの空間の使い方もあって、3時の入場から5時半まで、ディオール社のバッグが並べられている展示室、香水の展示など「ディオールの全貌」という感じで歩き回りました。

 この先、これらのドレスを着ることは決してなくても、「お金持ちは、アフリカの飢えた子供の姿に涙したあと、1着数百万円のこの服を着てパーティに出かけるんだろう」なんてこと考えずに、アートとして楽しむことにします。

<つづく> 
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ぽかぽか春庭「2003年-2005年のつぶやき31文字」

2023-01-15 00:00:01 | エッセイ、コラム
20230115
かぽか春庭ことばの知恵の輪>ことば倉庫(2)2003年-2005年のつぶやき31文字

 年末、掃除もせずにぼうっと座り続けていました。
 よしなしごとが去来するなか、時間の浪費には変わりないのに、「フジ子ヘミングショパンの島を訪れる」なんていうドキュメンタリーを横目で見ながら過去ログザッピングしてことばを集めました。
 OCNカフェがつぶれて今のgooに移転するとき、私がパソコンわからんちんのため、消えてしまったログもあったのですが、ブログを始める2003年より前のものを書き留めておいた部分はのこっていました。

<1998年3月>
 (新聞日曜版にオギノ博士の事績記事ありて)
・我が排卵も命なきまま、命無き無精卵焼くサニーサイドアップに
・たったふたつ命となりぬ我が卵子受胎奇蹟の命なりしを
 (RPGゲームをする子)
・幾たびも死んで幾たび生き返るRPGのみ好める子
・「シマネキ(死招き?)」とう毒草に触れ勇者果て淡々リセット押す子の背中
 (先の代の地久節という日に)
・生きながらもがりの宮に坐すごとき国母と呼ばれし女の一生
 (深夜のコンビニで)
・コピー機の閃光コンビニ午前2時深夜の孤独を写しとらむか

<1998年3月>
 (テレビの自然番組をみて)
・アイアイもベローシファカも滅びゆくマダガスカルの森の荒廃
・否(いな)否と吠えるましらよ虚虚虚虚と啼く鳥熱帯雨林の滅亡
<1998年8月>
 (新宿にて)
・唇(くち)赤き老い街娼(たちんぼ)の口ほどの日輪沈みぬ二丁目の角
 (吉本ばななの感想を娘と語り合う)
・「ばなな」読み、娘と交わす感想が、バナナシェイクにふるふる溶けてく
・子音母音子音母音と重なりて開音節にてもの言う我ら
 (母と私と娘と)
・我娘(あこ)の歌と亡母(はは)の残せし歌並べ旧盆の夜はひとり歌よむ
・娘(こ)の詠みし歌とわたしの腰折れを母の形見の句集にはさみぬ
・ただ一度全国版に載りし母の一首をかたみに三十年生く
 (旧盆前後)
・受身形(パッシブフォームPassive form)のパッシブ(passive)受苦形と訳したり殺され焼かれ屠らるる夏
 (日本語教室)
・午後クラスに満つる使役形「せる・させる」日本語覚えさせるが、わが職(なりわい)なり
・「意向形」立とう進もう愛し合おうFormはかくもたやすきものを
 (文法を教えながら)
・「抱かれれば、愛されれば」と仮定形しかない受動態(パッシブボイス)の一日(ひとひ)よ
・「たい」「たけれ」会いたい見たい愛したい、動詞になれぬ希望の助動詞
 (ひらがなを教えながら)
・「あ」「い」愛は日本語のLOVE愛されぬ妻なりし我が教えるひらがな
・「こ」を九十度まわすと「い」だよ、留学生笑いつ手習い恋来い四月
 (エイトマン主題歌をきく)
・殺人を犯せし歌手のうたう歌に低く唱和す我も罪びと
 (原宿界隈)
・「ブラームスの小径」とう路地すりぬけてキラー通りへ向かう殺意か
 (夏の死角)
・三角函数わからないまま塾やめて、さよなら三角またきて死角
・詞(ことば)喰らう玻璃ハリ破離と詩歌食う飢えし心が食っても食っても
・午後の曳航東京ベイにひかれゆく少年の刃先よ空を切り裂け
 (夏の葬列)
・亡き叔父はとび頭(かしら)なり葬列は木遣りうたいつ静かに歩む
・炎天に黒列細く上りたり我がいえの墓は山中の墓
・夏の葬列。くるくるくると黒き日傘を回していたり墓につくまで
 (銀河鉄道)
・ジョバンニよ私も切符ないままで銀河鉄道廃線めぐる
 (夏の通勤)
・顕微鏡の精虫遡行さながらに地下鉄階段群流くだりぬ

<2000年2月>
 (チョコレート革命)
・チョコムースのような歌詠む歌人いて「革命?」なんとも甘すぎるんです
 (2月の居酒屋)
・のんだくれ女がコップあおりつつ「カクメイが希望のことばだったよ」
・コリコリと軟骨噛めば我が大腿四頭筋へと罅いる味す
 (路地の店)
・元皇民朴の書きたるカナクギの「レイメンありマス」アリラン亭前

<2002年4月>
 (最終章の春・ホスピスの姉)
・静心なく花の散るホスピスの窓よりながむる最終章春
・枝えだに宿り木やどし けやき樹は若葉を萌やして大地母のごと
・緩和ケア病棟の庭七本の桜の若木すこやかに立つ
・ホスピスの窓にふりしく花追いて最期の春を瞳(め)に写しとる
・プリンペランとう点滴薬を身のうちにポロンパランと注ぎて寝る姉
・ホスピスの庭に光(ライト)をあふれさせ旅立つ人へのカーテンコール
 (姉よ)
・春の光浴び舞う花よ来年は私はいないがまた咲け花よ
======================
<2003年>
 (カフェ日記を書き始めたころの31文字)
09/27 宇宙(コスモス)へ旅立つ人へ一輪の秋桜たむけてグラスほす夜(春庭)
2003年10月
haruniwa  紅葉する前に剪られし街路樹の梢の枝の打ち震えたり

2004年1月
(自衛隊先遣隊の出発に際して春庭のよめる)
・女正月雄々しき女達集い「殺すな」という声を揃えて
2004年4月
haruniwa  花の色もうつりにけりな春庭のわがみ片脱ぎ丁半壺ふり 
2004年7月
・夏色に命輝く思い出の麦わら帽子トマト向日葵(春庭)
2004年8月 
・スプラッシュ!雫のひとつぶひとつぶが 水かく手足のメダイヨンだね(春庭)
2004年4/07/29朝 (ボランティア日本語教室)
・ジャンボ!ハバリ?サバンナの風つれてくる「ンジョキ」はいつも青いバンダナ
・「ありがとうテリマカシ」と、はにかんで インドネシアのレラ笑う朝
・黒き手に赤道の響きダンたたタン ンゴンベ太鼓が教室にダン
・コリアンのハルモニ、アリラン低く唄う 日本語サークル午後のつどいに 
・ボランティア地球の仲間コスモス会おひさまサークルにほんご教室
・あかさたな ひとつひとつの音節に文字あることばを今日も習いつ
・アイウエオあいは最初に覚えてね 誰かにあいを語る日のため
・愛されたい愛したいけど愛、曖、哀、「たい」どこまでも希望の助動詞

04/07/29 夕(I can fly!)
・トフスランとビフスランとが遊ぶ谷ゆうらんゆすらんひがなフラココ
・黒きものブンブンと飛ぶ目の中に「飛蚊症だって」ブンブンぶぶぶん
・9階の窓よりダイブのんちゃんのカレ、夕焼けへGo! I can フラァイ!
・9階の窓より飛べないワタクシは さよなら三角夕焼け子!焼け
04/07/29 夜 (空の巣症候群)
・ほたほたと卵(ラン)生(ア)れる日よ生れ出でて またも下水の奥にスッぽ~ン
・エストロゲン、プロゲステロンもなくなれば わたしは青い管のみの肉
・産み終えれば我が卵巣はかじかんで、ゴナドトロビンに反応せずあり
・月ごとの血の祭り果て空子宮 祭りの後はかくまでからっぽ
・ジャンクフードを腹いっぱいに詰め込んで今宵も脂肪の滾る満月

2004年12月
・大波の呑みこむ木々も船家も巨人倭人も流されて消ゆ(春庭)
2005年3月
・春驟雨 しゅうしゅうと落つ 窓を打つ うつウツ欝撃つ 啾々(しゅうしゅう)と落つ<春庭> 
・思春期の子の親なれば吹き荒れる春嵐にも萌える芽を待つ<春庭>
・白木蓮の白き翳りは秘めしまま三十路乙女も花嫁となる<春庭>
・姉妹(あねいもと)たわいなきことメールにてかわしつ春のひと日を過ごす<春庭> 
・一房の卵(ラン)とし生きた日も遠く 黙(もだ)して食す朝のオムレツ<春庭> 
2005年4月
・欅若葉の道を過ぎゆく親子連れ恐竜展のカタログかかえて(春庭)
・散り果てて冷雨の宵の川縁(かわべり)に 一葉桜の細き枝揺れる(春庭) 
・光るビル散るちるミチル舞う桜 空にわたしに青い鳥にも(春庭) 
・レインボウ・ブリッジ望む浜離宮 江戸の春日(はるひ)を海に降らせる(春庭) 
・一葉も見し上野山の糸桜 明日質入れの帯締めて見る (春庭)
・初恋の蒼き翳りを染め出して群青と藍と勿忘草色(春庭)
(隅田川べり)
・散り果てて冷雨の宵の川縁(かわべり)に 一葉桜の細き枝揺れる(春庭)

2005年10月
・ラ・トラヴィアータ乾杯の歌を口ずさみ秋の黴雨(ついり)を飲み干してみる(春庭)
~~~~~~~~~~~~~~~~~
2013年正月
・芋も好き餅も好きなり今朝の春体重計を新調せむとて(虚子の本歌取り春庭)
・年立つや自転車でいくシャッター街大売り出しはまだ先のこと(春庭)
・正月の番組に笑う声のして団地の窓は同じ形ぞ(春庭)
・元旦の厚き新聞広げては、電子ブックの広告を見る(春庭)
・街歩きの果てジュピターの輝ける1月の空希望はあるか(春庭)
・蓬髪のままに迎えし新年よ今年は彗星めぐる年とふ(春庭)
・初風は団地広場に凧をあげベランダに立つ蓬髪に吹く(春庭)
・初日記未知のページの白(ブランク)の希望という名の行間数える(春庭)
~~~~~~~~~~~~~~
<2013年3月>
・三月の春今生れなんとし佐保姫あなたも産みを苦しむか 春庭
・佐保姫の糸染め縫うて山肌の薄緑にぞけむりし明け方 春庭
<2013年4月>
 (大村益次郎像前で歌舞音曲をきく、かっぽれと阿波踊りを見ました)
・散りてこそ咲かめと散った若人よ二度と我が子を散らせはしません(春庭)

千鳥ヶ淵
・花筏散り敷くひとひらひとひらの命かがやく水面の白かも(春庭2013)

<2013年4月>
近代美術館前(皇居一周マラソンが盛んな日)
・しだれ桜垂れてお堀に枝うつす平河門まえランナーとび去る(2013)
近代美術館(中村彝の作品前で)
・ニッポンの桜をいかに刻みしかエロシェンコ像目つぶりしまま(2013)
新宿二丁目(チーママにかわりて詠める)
・老いてなお夜桜に寄す秘め心あの人はいまあの人は今(2013)

 つぶやき全部を拾い集めたわけじゃないけれど。そのときどきのつぶやきは、それも私の一部。
 
<おわり>
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ぽかぽか春庭「17文字倉庫」

2023-01-14 00:00:01 | エッセイ、コラム
2023014
ぽかぽか春庭ことばの知恵の輪>ことばの倉庫(1)17文字倉庫

 おりにふれて、自分の感情やその日そのときの状況を31文字にしておいたり17文字でつぶやいたりしてきました。たいていは、つぶやくだけで詠み捨てにしていたけれど、ブログのはしっこに書き留めておいたものもあり、それを拾ってみました。

 年末年始に何もしたくないのだけれど、時間の浪費に罪悪感を持ってしまう貧乏性だもんで、ぼうっとテレビ見ているだけじゃ、なんだか時間を無駄にしているような気がして、過去ログをざざっと流して拾えるだけ拾ってみました。

 17文字の拾い集めは、まだ始めたばかりです。2004年を流し見ての、つぶやき2005年~2013年は、たまたま残っていたものだけ記録。流し集めはまたゆるゆると。そのときそのときのつぶやきですが、並べてみるとほんとうに稚拙な575です。でもこれも私の心にとっては、何かの記録になるかもしれませんから、100歳過ぎに「思い出し法による脳リハビリ」のためにまとめておきます。

2004年1月19日
・霜柱の公園囲む団地群 春庭
2004年4月
 (女相撲の力士の名が「若みどり」と知りて)
・若みどり投げ飛ばしたき人もあり 春庭 
2004年5月
・若苗の細く天指す学校田 
2004年7月
・集真藍(アジサイ)や株ごとの色 わたし色 春庭
・陽を放つごとく雨中に咲くあじさい 春庭 

2004年8月
・鉄の雨きび畑に降りし真夏(春庭) 
・人質の首切り落とす砂漠首夏(春庭)
・炎昼やビル陰ランチの工事びと(春庭) 
・炎帝やポケモン図鑑に熱中す(春庭) 
・遠き朱夏 女盛りなんてあった?(春庭) 
・傷心の夏のはてにも雲の峯(春庭) 

2004年12月
・凍てる夜もしらじら壁を見て眠る (春庭)

2006年1月
・軍靴の音、骨まで響く骨正月
・ぜにかねのニュースは遠し女正月 (春庭)
・八十媼の唇に紅、女正月(春庭) 
・老いの身にウォッカ注ぎ骨正月(春庭) 

2013年3月
haruniwa  色づかぬ葉もありしまま冬立ちぬ

<2017年3月>
・花冷えや検査の結果にうなだれて(春庭)
・団地窓堅く閉ざして凍て返る(春庭)
・音楽室から春待つ子らの卒業歌(春庭)
・幾万の啓蟄の日の虫の顔(春庭)

<2018年3月>
・日の中の白壁大手門の春 春庭
・大手門を染めて早春の入り日 春庭

<つづく>
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ぽかぽか春庭「アイス・エクスプロ―ジョン2023」

2023-01-12 00:00:01 | エッセイ、コラム


20230112
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2023文日記新年(7)アイス・エクスプロ―ジョン2023

 2023年1月7日に、娘と「アイス・エクスプロ―ジョン」を観覧しました。
 1月6~8日、計6公演、KOSE新横浜スケートセンター、のうち、7日土曜日17時開演の部)
 
 前回このアイス・エクスプロ―ジョンを見たのは2020年1月でした。
 東側短い側のアリーナ席一番前での観覧でしたから、正面出入口から一気に目の前まで滑り込んでくるシーンの大迫力に感激でした。
 2023年の今回は、正面席の東側より。アリーナ席一番前。

 2023年のアイス・エクスプロ―ジョンも、とてもよかったです。プロデューサーを務める高橋大輔座長が細かいところまで演出を考えた、というショウですが、高橋と同じプロダクション所属の荒川静香ほか、急遽出演が決まったミハル・ブレジナまで、それぞれのスケーターが美しくカッコよく決まっていました。

 入口で配られていた出演順。
 もう公演は終了しているし、テレビ放映もあったので、載せても大丈夫と思います。(セットリストをすぐにブログアップすると、娘に叱られる。これから見る人にとっては、どんな順なのかも愉しみにしているのだから、ネタバレになってはいけないって)曲名などは、テレビ放映から拾ったもの。
<第1部>
0.     オープニング1 出演、振り付け:マッシモ・スカリ ♪Unspoken words
1.オープニング2 全員(振付:マッシモ・スカリ)♪傀儡謡(くぐつうた)陽炎は黄泉に待たむと
2.荒川静香 振り付け:デヴィっとウィルソン♪Who wants live forever
3.來田奈央&森田真沙也
4.ユラ・ミン
5.エイドリアン・カーハート&オレクサンドル・コロソフスキー
6.本郷理華
7.折原裕香&ユホ・ピリネン
8.三宅星南
9.村上佳菜子
10.村元哉中&高橋大輔 振り付け」マッシモスカリ ♪Love goes 
11.グループ1(振付:ケイトリン・ウィバー) 村元哉中、ケイトリン・ウィバー、エイドリアン・カーハート、ユラ・ミン、折原裕香、宮原知子、中西樹希、小川真理恵、オレクサンドル・コロソフスキー、アンドリュー・ポジェ、ユホ・ピリネン、小林宏一
(休憩)
<第2部>
1.グループ2(振付:宮本賢二)♪Max Brhonメドレー 高橋大輔、ジェイソン・ブラウン、ミハル・ブレジナ、オレクサンドル・コロソフスキー、アンドリュー・ポジェ、ユホ・ピリネン、三宅星南、森田真沙也、小林宏一、吉野晃平
2.グループ3(振付:ユラ・ミン) 村元哉中、村上佳菜子、ユラ・ミン、折原裕香
3.宮原知子
4.友野一希
5.グループ4
① (振付:マッシモ・スカリ)♪What a wonderful world 高橋大輔、ジェイソン・ブラウン
② (振付:ケイトリン・ウィバー)♪Your are a memoriy 荒川静香、ケイトリン・ウィバー、エイドリアン・カーハート
③ (振付:マッシモ・スカリ)♪The power of mind 高橋大輔、マッシモ・スカリ、ジェイソン・ブラウン、吉野晃平、荒川静香、ケイトリン・ウィバー、エイドリアン・カーハート、中西樹希
6.ミハル・ブレジナ
7.三浦佳生 (振り付け:吉野晃平)♪組曲 I with Taro Hakase
8.村元哉中&マッシモ・スカリ
9. ジェイソン・ブラウン
10. ケイトリン・ウィバー&アンドリュー・ポジェ
11. 高橋大輔(振り付け:)♪Krone
12. フィナーレ(振付:宮本賢二) 全員

 オープニング、振り付けのマッシモ・スカリが登場。日本のアイスショウで彼自身が滑る姿を見せるのは初めてだというので、貴重な機会でした。
 グループナンバーは、全員が黒い衣裳(揃いではなくて、それぞれが持っていた黒い衣裳、という感じ)で、ひとりひとりの見せ場もあり、マッシモ・スカリの振り付けもよかったです。

 グループのあとは、荒川静香の優雅な舞。荒川の細さしなやかさに、すごいと思う。2006年トリノ五輪の金メダルから17年もたっているのに、不滅のスケーター。
 変わらず美しいイナバウアー


 テレビ放映では、第一部プログラム3から9までごっそりカット。若手の三宅星南、いつも楽しいナンバーを見せる村上佳菜子は放送でも見たかったな。
 私のすわった正面席1列目17の席の隣にスケーター出入り口のひとつがある++ので、出入りのスケーターを見ることが出来たのもよかったです。ただし、大ちゃんが私のそばの出入り口から出入りすることは、ありませんでした。

 第2部オープニングの男性10人グループナンバーは、宮本賢二の振り付け。全員それぞれの白い衣裳にサングラス。ストップモーションを取り入れたダンスカッコいい動き。
 ジェイソンブラウンと高橋大輔がいっしょに踊ったり、女性3人のパートがあったり、試合では見ることのできない組み合わせが新鮮でした。


 高橋がマッシモ・スカリを膝上にのせて滑ったり。荒川、ケイトリンウィーバーエイドリアン・カーハートの3人でのスケートは、三美神のようで美しかった。

 白い長めのスカートをパッと脱ぎ捨てると、カラフル華やかなショートスカートになった宮原知子の滑りはテレビではカットされました。

 
 これまでのコミカルな役どころのエキシビナンバーが多かった友野一希が、ビジュアル系ロックスターのようなメイクと黒い衣裳ですべるのもカッコよくすてきでした。世界選手権、頑張ってほしい。

 フィナーレ前の高橋大輔ソロナンバーは、2017年のエキシビナンバーKrone。3年ぶりに2アクセルジャンプに挑戦。私が見た7日17時の回ではころんでしまいましたが、テレビ中継ではなんとかこらえていました。ただ立っているだけで、大ちゃんの存在感美しさは、際立っていましたから、ジャンプ決まらなくてもいいの。試合ではもうシングルは見られない大ちゃんですが、フィナーレ前のソロ、とてもよかったです。
 

 全員でのフィナーレ。振り付けは宮本。賢二

 アイスリンクと私の席の間は1メートルほど。直接冷えがきて寒いことはさむかったけれど、スケーターが目の前まできてくれる席で見ることができてうれしかった。 
 スケーターの衣裳も照明の効果も、よい演出でした。特に第2部は、全体がひと続きの流れに乗って進行したので、第2部はフィナーレまで「一気見」でした。選手権などでは演技が終わって、点数がでるまでは目をつぶって目を休める時間にしたりするけれど、しっかりリンクを見つめていないと見逃したらたいへん。

 録画中継のテレビ放映。2023年1月9日(月)10:05~11:00 テレビ東京
 1700-1910(途中休憩20分)の110分のうち、若いふたり來田奈央&森田真沙也のアイスダンスなどはカットされてしまい、CM含めて55分。

 2020年1月のアイスエクスプロージョンでは、村元哉中&高橋大輔は、手をつないで二人ですべるだけしか見せていなかった。初々しかったけど、この先、アイスダンスの形になるのかなあ、と心配でした。それが、2023年1月には、全日本フィギュア選手権優勝。シングルとアイスダンスの2種目優勝という唯一無二の存在になりました。もともとの天才であったのは確かですが、どれほどの努力を重ねてきたのでしょう。だけ高橋大輔、として、充実のアイスダンス。世界選手権に向けて頑張ってほしいです。

 アイスエクスプロージョン前日公開リハーサルのかなだい。

<おわり>
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ぽかぽか春庭「長崎幻想』新年美術館初詣恵比寿篇」

2023-01-10 00:00:01 | エッセイ、コラム
20230110
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2023文日記新年(5)『長崎幻想』新年美術館初詣恵比寿篇

 美術館初詣、1月3日は恵比寿の写真美術館へ行きました。毎年2日3日は無料観覧の日。

 写真美術館の正月恒例だった雅楽演奏会が中止になっていること、残念に思っていましたが、コロナのためだと思い込んでいました。
 毎年雅楽演奏をしてくださった橘雅友会メンバーの一員だった写真美術館研究員の金子隆一氏が2021年6月に逝去なさっていたこと、知らないでいました。
 金子氏は、台東区谷中の慈雲山正行院 に生まれ、住職を受け継いだほか、写真史家、写真コレクターとして、写真美術館の研究員として活躍。数々の写真展を企画運営しました。さらに雅楽において篳篥演奏家として演奏活動も行うという、多彩多能な方でした。私より1歳年上の方、2021年の他界は残念至極。
 人の3倍も活躍され、十分に生きつくしたこととは思いますが、私にとっては、正月に雅楽が聞けなくなったこと残念。無料で聞けるところ、ほかにはないからなあ。
 これまでのご活躍をしのびつつ、お正月の写真美術館ですごす。

 写真美術館に着いたのが、13時ちょっと前。ロビーには13時上映の映画を待つ人が集まっていました。
 上映直前に来たのも年の御縁に違いない。まったく知らなかったドキュメンタリー映画『長崎幻想 父・井上ひさしへの旅』を見ることに。シニア券千円。
 上映期間2023年1月2-6日 

 荷物をロッカーにしまったりしている間に13時。
 2日のクリスチャン・ディオールのほうは、ファッションに興味を持つ若い人や、家族連れなどもいて、にぎわっていましたが、ホールの席についている観客は、ほとんどが高齢者です。写真美術館と言う場所柄も「長崎」という題材も、地味ですからね。

 井上ひさしが構想していた舞台『母と暮らせば』。「ヒロシマ」が舞台である井上の戯曲『父と暮せば』と対になる形として構想されたけれど、井上の他界によって実現しませんでした。
 『母と暮らせば』は、井上ひさしの構想を受け継いだ山田洋二によって、吉永小百合二宮和也主演の映画として完成しました。
 山田洋二監修によるこまつ座の舞台作品にもなり、さらに、井上の娘で劇団こまつ座を継承した井上麻也が、山田洋二と共同執筆として小説にしています。

 今回の映画は、松村克弥の構成編集によるドキュメンタリー。井上麻也が長崎を訪れ、さまざまな場所で父が構想した、ヒロシマが舞台の『父と暮らせば』と対になる形になるはずだった長崎を歩いた記録です。



 長崎生まれで被爆者でもある美輪明宏が冒頭とエンディングの語り役を務めています。
 江戸時代の出島の紹介。出島の遊女からシーボルトの日本妻となり、のちの女医イネを生んだ「お滝」、グラバー邸などが案内されます。

 井上麻也さんは、江戸時代の禁教令のなか、信仰を捨てずに処刑された26聖人の碑などをめぐっていきます。
 静かに長崎をめぐる画面でしたので、浦上天主堂の大司教さんと会うシーン、大司教さんと麻也さんが、どんな会話をしたか、まったく頭に残っていません。この場面寝ていた。すみません。
 原爆に対して声高にモノ言う映画ではないのですが、松村監督のライフワークでもあるナガサキの被爆者を描く手法、淡々とした運びの場面に、ついつい。寝ちゃってもったいなかったと思います。

 ラストシーンは、『長崎の鐘』で知られる永井隆の孫にあたるかたとの対話。バイオリンによる「長崎の鐘」のメロディと、美輪明宏の語りでエンディングになります。

 お正月は「明るく楽しく笑っていられる映画」が人気なのは知っています。お正月には重いかな、と思える映画、上映会は長崎ほかで小規模には続いていくでしょうが、たぶん、東京の一般映画館では上映されないだろうから、見ることができてよいお正月の過ごし方だったと思います。
 
<つづく>
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ぽかぽか春庭「新年美術館初詣」

2023-01-08 00:00:01 | エッセイ、コラム
20230108
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2023文日記新年(4)新年美術館初詣

 毎年正月の初詣代わりに出かけていたのが、両国の江戸東京博物館と恵比寿の写真美術館。両館とも、2日3日は無料観覧できます。

 2023年正月は、江戸東京博物館は改修のため閉館中。かわりに、例年は「ちょっと遠い」という理由で、正月に出かけたことはなかった木場の現代美術館に「初詣観覧」に出かけることにしました。
 2日は現代美術館、3日は写真美術館。

 はじめてお正月に出かけた現代美術館。所蔵コレクション展は無料ですが、せっかく遠くまで来たのですから、有料でも特別企画展の「クリスチャン・ディオール展」を観覧することに。

 10時開館に間に合わず、菊川駅から都バスで現代美術館前に降りた時は10時半。当日券を求める人の列は長く並んでいました。しまった、9時半くらいまでに着くのが正解だった。11時すぎまで並んで、ようやく買えたのは、15時に入場できるチケットでした。シニア料金1300円が今年の「初支払い」です。

 15時までだいぶ待たねばなりません。チケット購入列に並んでいる間に12時近くになったので、まず、「2階のサンドイッチ」という店でホットサンドを購入し、屋上中庭のテラスで食べました。うっすら白い雲が流れていき、しばしば飛行機も通りすぎる、快晴の青空。気持ちのいいお正月の天気です。

 所蔵コレクション展は無料公開。何度見ても、現代美術は「わからん」そしてなにかを「感じる」も湧き起らないことが多く、どうも相性が悪い。見ているうちに脳が疲れてくる。


 まあまあ疲れないで見ていられたのは、具象に近い、陶器作品、笠原恵実子「Untitled -石の花 」(常設展はフラッシュを使わなければ写真撮影自由なのですが、カメラを忘れてスマホで撮影したので、以下の写真は借り物)。


 ゆっくり1階と3階の「所蔵コレクション」を眺めて、館内の椅子でしばし休憩して、15時。いざ、ディオール展へ。レポートはのちほど。

<つづく>
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ぽかぽか春庭「再開青い鳥通信」

2023-01-07 00:00:01 | エッセイ、コラム
20230107
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2023文日記新年(4)再開青い鳥通信

 2011年4月に「青い鳥通信」を開始しました。
 3,11のあと「地震酔い」と呼ばれている「ずっと揺れ続けている」感覚が続きました。心理学では、自分の心の不安の表れによって「揺れ続けている」と脳が感じてしまう感覚らしいです。最初は自分だけおかしいのかと思って不安になったのですが、災害のあとなどに、起こりがちな心理状態なのだと知って、落ち着くことができました。

 そんな不安の解消のために、「青い鳥通信」を始め、青い鳥さんに一か月に10枚、3日に1枚の絵ハガキを送付し始めました。
 河原温の「I am still I alive. まだ生きてる」というコンセプチュアルアートのまねっこです。河原温が無事を知らせる手段として友人に毎月1回世界各地の絵ハガキ(ニューヨーク滞在中はニューヨークの絵ハガキばっかりだが)。文面にはどのハガキにも、ただ「 I am still alive.まだ生きているよ」

 春庭の月10枚の絵ハガキには、日常のつぶやきやら、絵を書いた画家の説明やら、にぎやかに書いています。

 2011年4月から2022年3月までの11年間に1320枚を送付し、青い鳥さんに受け取っていただきました。
 しかし、ちょうど干支がひとめぐりする4月を前に、青い鳥さんから連絡がありました。「5月に引越しを控え、受け取ったハガキの保存も難しいので、新居が落ち着くまで、ハガキ受け取りはお休みします」
 一戸建ての住まいが老朽化したことによる引越しで、新居は県立団地。集合住宅です。

 引越しした新しい部屋は2階で、「郵便受け」は1階なので、「ハガキはまだ待って」というラインを受け取りました。エレベーターもあると思いますが、車いすで部屋から出てエントランスのメールボックスに行くのだって、青い鳥さんにとっては一仕事になります。
 また、住む地域が変わればヘルパーさんやケアマネジャーも変わります。郵便受けの鍵を預けていろいろな書類を受け取って部屋へもってきてもらうにも、信頼関係が重要。いろいろが落ち着くまでハガキ送付を遠慮しました。

 9か月の通信停止期間を経て、新年になるのを機にハガキ送付を再開しました。
 毎年、1年間のテーマカラーを決めています。ウサギ年は、白兎にちなんで、白地の絵ハガキを集めてあります。寅年は黄色の絵ハガキを120枚集めたのですが、90枚は次の寅年にとっておきます。

 絵ハガキに書くことは、絵の説明や日常生活のたわいない話。
 2023年1月の絵ハガキは、ブルーナのミッフィうさぎ、ピーターラビットの絵ハガキなど、順次送っていきます。

 青い鳥さんに送る絵ハガキの中の1枚。2022年のピーターラビット120歳記念展で購入した「マクレガーさんの畑で人参食べるピーター」



 青い鳥さん、「絵ハガキ受け取りボランティア」をよろしくお願いします。

<おわり>
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